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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「SHAME -シェイム-」
「私たちは悪い人間ではない。居た場所が悪いだけ」とシシーは言います。二人は過去に一線を超えてしまったのか、それとも瀬戸際で留まっているのか。背徳の道には突き進めないブランドンですが、地獄に落ちても構わないように見えるシシーの無数の手首のリストカットの痕は、ブランドンと同じ苦しみを味わっているのだと思うのです。
主役二人が素晴らしいです。何作かファスベンダーの作品は見ていますが、この作品が断トツの演技です。押し出しの効く男性的な見栄えの良い容姿からは、今回のような際物的役柄でも、大器のオーラが垣間見えます。繊細さと線の太さの両方を感じさせるムードも良く、今作では冒頭の電車のシーンでのセクシーさは、もう目が眩むようでした。圧巻は娼婦二人とのセックスシーンの際の射精の表情。哀しみと快感と空虚が入り交じった表情は、本当に痛々しくて可哀そうで、涙がでそうになりました。こんなシーンで女性を泣かせるのは至難の技です。
キャリー・マリガンが演技巧者なのはわかっていますが、今回が一番唸りました。可愛くて無邪気で自堕落なシシー。しかし誰とでも寝る彼女は、女としての薄汚さもあるのです。薄汚さの根元を突き詰めると、彼女の哀しみが噴き出します。女としての薄汚さの中に哀しみを滲ませるのは、これまた至難の技かと思いますが、本当に脱帽の演技でした。
過激で背徳的な題材なのに、とても粛々とした作品です。この二人はこれからも同じ事を繰り返し、苦しみながら生きるのでしょう。時の過ぎ行くまま、きっとそのうち世界で二人きりになるのでしょうね。それは地獄なのか背徳の甘美なのか・・・。ラストのブランドンの号泣は、そのまま今も私の心まで掻きむしるのです。
03月12日(月)
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