ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[927467hit]

■「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」
トーマス・ホーンは、アメリカのクイズ番組で抜群の正解率を誇っていたのを、製作陣が目をつけたのだとか。難しい役で、長いセリフ、感情の起伏が激しいアスペルガーの特性を、演技が初めての子が、よくここまで表現出来たなと感嘆します。この設定で、純粋さや賢さを浮き上がらせるのは、本当に難しいと思いますが、演技派のキャストを向こうに回して、一歩も引けを取らず堂々の主演でした。

ハンクス、サンドラもすごく良かったですが、やはり出色はシドー。私はこの人を初めて観たのが、劇場初公開時の「エクソシスト」のメリン神父だったので、すっかりお爺さんの今でも、全く違和感がないのです。老いて益々、枯れたのではなく年齢に合う豊かさと知性を感じさせる彼は、オスカーと同じく繊細で不器用、そしてお茶目な愛すべき間借り人さんを、余裕を持って演じています。27日発表のアカデミー賞の助演男優賞は、クリストファー・プラマーが下馬評では優位ですが、私はシドーに取って欲しいなぁ。間借り人さんは、オスカーに近づきすぎて、彼と一緒に傷ついてしまったんですね。

「ものすごくうるさい」世界での体験を通じて、人と接触するのが苦手だった彼は成長し、心身ともに接する事ができるようになります。特に自ら母の膝枕を求めた時は、本当に良かったなと、思い出して書いている今も、涙が出ます。父の残した鍵は、結果的には息子託したメッセージとなったのですね。その他、数々挿入されるエピソード全てが滋味深く心に残りました。

9・11だけではなく日本でも3・11があり、世界中の様々なところで災害以外でも、オスカーの哀しみを抱える人々がいます。それは私であり、あなたのはず。イギリス人のダルトリー監督が、敬意を持ってアメリカの9・11のその後を描いた意味は、そこにあるのではないかと思います。この作品から勇気を貰って、乗り越えていければいいな、と思います。

02月25日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る