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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「犬の首輪とコロッケと」
全然ノーマークの作品でした。監督は吉本の長原成樹。関西ローカルでは有名人ですが、それ以外では知名度は低いでしょうか?成樹の子供の頃からデビュー当時までの実話が元の作品です。実は彼は在日韓国人で、うちの息子たちの中学の先輩でして、生粋の生野区育ち、年齢も同年代と私と共通項の多い人です。公開10日ほど経って知り、これは是非とも見なくっちゃと、終映間近の14日に無事鑑賞。場面の切り替えが悪かったり、舌足らずや尻切れトンボの描写も多いですが、暴力や貧困をメインに押し出し、芸人らしくギャグやユーもがたっぷり織り込まれる中、タイトルの「犬の首輪」と「コロッケ」の意味は充分伝わり、監督の熱い心意気が伝わる、秀作や佳作ではなく、力作でした。

大阪の生野区育ちのセイキ(鎌苅健太)は、幼い頃から悪ガキで札付きの在日の不良少年です。子供の頃お母ちゃんは亡くなり、塗装業を営むお父ちゃん(山口智光)と、優しく大人しいお兄ちゃん(波岡一喜)の三人暮らしですが、素行の悪さがたたって、とうとう少年院に入ることに。一年後出院した彼を、友人が日本人のOLミチコさん(ちすん)を紹介します。在日であること、少年院帰りである事など意に介さず、包み込むような愛情をセイキに注ぐミチコさん。セイキは彼女に報いるため、真面目な大人になろうと、決心します。

生野区というのは特殊な地域で、人口の1/4が在日韓国人・朝鮮人です。それでも細かく地区によって違いがあり、私が育った東大阪よりの地区では、当時小学校の40人クラスで5人ほど、ど真ん中に位置する地区では、今でもクラスの9割方が在日と言う地区もあります(もちろん大阪市立の学校ですよ)。なので温度差はかなりあり、この作品で描かれた子供同士の日本人VS在日の「抗争」など見たことはありません。私は中学から地域を離れ女子校に行ったため、益々その手の事情には疎くなり、へ〜、こんな事があったのかとびっくり。いやいや同胞の事も、知らない事はまだまだ多いようで。

数は力と言う論理はここでもあり。以前生野区でも在日が一番多く住む地区で商売をしている人から、「私は韓国人が嫌いじゃないねん。生野の韓国人は態度がでかいから嫌いやねん。藤井寺の韓国人は、もっと大人しい。」と言われた事があります。あっち向いててもこっち向いても在日なら、小さくなる必要がないですからね。言った人は無意識だったでしょうが、私はその言葉に、あんたら在日は、小さくなって生きとったらええねん、と言う意味合いを嗅ぎとります。でも嗅ぎとっただけ。それで食ってかかることもないし、まぁそんなもんやろと聞き流しました。いちいち腹立ててたら身が持ちませんから。私は優秀ではなかったけれど、品行方正で真面目(いやほんまに)な在日の女子生徒、かたやセイキは筋金入りの地域で名だたる不良少年。それが全く同じ在日としてのアイデンティティーを持って生きてきた事を、この作品で知り、感激するのです。

幼馴染のトシが事故で亡くなったのは、職場の差別が一因でした。葬儀の際に、在日系の差別を訴える若い人の団体から、いっしょに訴えようと誘われますが、セイキは「別によろしいわ」と拒みます。そんなしょうもない事で、俺の親友は死んだんやない、と言いたいのです。私も被差別対象者として、声高に差別を訴えるのは大嫌いです。私の父親は、日本人と対等に仕事をしようと思ったら、日本人が百万なら、韓国人は三百万持たないといけないと常々言っていました。それやったら三百万持つ人間になったらええねん。それだけの事です。いやなら、帰化したら済むやん。それが私が子供の頃、大人たちが「韓国人の根性みせたれ!」と口々に言っていた意味だと、私は思います。

ミチコさんの父親から、「朝鮮人で少年院帰りの君とミチコとでは・・・」と言われると、「僕、朝鮮人ちゃいます、韓国人です」と答えるセイキ。日本の人には、当時よりましでしょうが、未だに一緒くたの「在日」なのでしょうね。確かに北朝鮮系の人とは分かり合える部分もありますが、思想の全く違う国であり、どちらに属するのか、私たちには重大な事です。私もこの場面なら、同じことを言うでしょう。


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02月19日(日)
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