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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」
その後、患者はひと波乱起こすのですが、明日死ぬかもしれない老がん患者に、この動機は如何にも弱い。また孫が何より大事の描写ですが、孫は生きる望みではなく、幼稚園や学校に行く年齢が多いので、誕生日や運動会・学芸会を一つの目標や目安にする場合が多いはず。もちろん孫は可愛いでしょうが、年寄りと孫の強引なセット販売は、現実とは些か食い違う気がします。

そして危険を顧みず患者の元に駆けつける佐和子。こういう時は勝手に行動せず、上司の支持を仰ぐべきです。自分がケガをすれば、自分だけではなく、病院側や上司、強いては患者にまで迷惑が及ぶもの。この強引なナイチンゲール精神をナースのスタンダートにされると、現役のナースさんたちが可哀想です。それと佐和子が「この仕事をするにあたっては、もう家を守れない」も、現役ナースさんたちに失敬極まりない発言です。専業主婦と同じように家事は出来ないでしょうが、結婚も子育ても、周囲の手助けを受けながらこなしているナースさんたちは、一杯います。

訪問看護は、私は精神科の事しか詳しくはわからないし、ターミナルは昼夜問わずの時もあるかもです。しかし医療者側が私生活も犠牲にしてこそ、立派な医師・ナースのように描く事には、私は反対です。観客に誤解されるような描写には、疑問が残りました。そしてこの事を夫婦の絆が再び結ばれるように描くベタな演出には閉口しました。邦画は往々にしてこういう思い込みの激しい描写があり、垢抜けないなと思いました。

佐和子の仕事ぶりを見たのにも関わらず、朴念仁ここに極まれりの滝島の行動には、がっかりしました。しかしその後が、あっと驚くドンデン返し。こんな古臭い夫が、普通の夫には出来ないホームランをかっ飛ばしてくれるのです。反省して学習したんだと、胸が熱くなりました。

運転の際の周囲の風景がとても美しく、最後の運転の様子には素直にご苦労さまと言う気になりました。新米運転手(中尾明慶)やかつての同級生(仁科亜希子)の扱いは、もうちょっと工夫が欲しかったです。無くても可。娘とその夫(小池栄子・塚本高史)もしかり。要するに夫婦以外はイマイチでした。

しかし米倉斉加年演じる老人の「お前(滝島)、老後の時間なんて短いと思っているだろう。これが長いんだよ」と言う言葉が強く印象に残ります。隠居すると、毎日が長いなどとは、思いつきませんでしたが、当たり前ですよね。やっぱり一日でも長く働くなくちゃ。

平日お昼でしたが、観客もそこそこ入っており、ヒットの気配です。若いときは「俺がカラスを白だと言えば、お前も白だと言え」と妻に言っていたご主人方、老後は喧嘩したら先に謝る方が得策ですよ。だってそれは、あなた方の若き日の仕返しをされているわけで。うんうん、それが夫婦円満の秘訣です。

12月06日(火)
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