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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「キッズ・オールライト」
満たされない日々を送るジュールスと、初めて「家庭」に新鮮な安らぎを覚えるポール。次第に親密になっていくのには、子供と言う介在があったからです。だってレイザーは遺伝子上は二人の子供だもの。それが安心感を与え、迷える心に拍車をかける。子はかすがいと言う言葉は、これには当てはまりませんが、遺伝子の持つ吸引力にはすごく納得させられます。
さぁどうなっちゃうんだろう?とハラハラしましたが、この家庭は砂の城ではなかったのです。ポールは自分の子供二人が良い子で嬉しかったでしょう。しかし父親ではありません。養い躾け自分の時間を犠牲にして、愛情を注ぐ、それが子育てです。子供たちがしっかりその事を認識していたのは、とても嬉しかったです。如何に二人のママが、一生懸命子供たちを愛したかの証のようです。
演じ手が全て素晴らしい!熟年大物女優のベニング&ムーアはこの作品でも絶好調。本当に何でも演じられるのねと感心。ベニングは限りなく誠実で理知的で男勝り、ムーアは老いても愛らしく、二人が結婚生活を継続出来ている様子もすごく納得。あのキスは長年人生を共にしている人のキスですよ。表現出来過ぎていて、本当にびっくり。ミアは「アリス・イン・ワンダーランド」より、ずっとずっと魅力的だったし、ジョシュも思春期男子の、家庭の事情で爆発できない憂鬱を、すごーく上手く表現していました。
そしてラファロ!本当は敵役のはずの役柄ですが、彼の好演で監督の意図通り共感の出来る、魅力的な人に感じました。髭面にワイルドな風貌から醸し出し温かなセクシーさは、男性だけが出せるもの。ポールが自分を父親と錯覚してしまう気持ちもわかるし、突然の家族の出現に、このまま年取っていいのか?と迷う気持ちも本当によく伝わります。ゲイのトム・フォードが撮った「シングルマン」のジュリアン・ムーアの役柄のように、これがレズビアンの監督の男性への見識のような気がして、好感が持てました。これもラファロありきですね。この作品でグッと女性ファンが増えるかも?
ラスト近くのジュールスの家族へ向けての正直な言葉には、思わず号泣してしまいました。本当は母なんて妻なんて、賢くもなくいつも迷いながら、でも必死で家庭を支えているのです。小さいもんですよ。しかし夫と子供たちを愛しているとは、心の底から言えるのです。結婚には様々なステージがあって、そのどれもが楽あれば苦あり。継続させていくのは、それはそれは大変です。たまに寄り道があってもいいじゃないですか。それはストレートでも同性愛でもいっしょ。監督がそれを言いたかったのなら、大成功の作品です。
05月03日(火)
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