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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ランナウェイズ」
映画の焦点はジョーンとシェリーに絞られています。同じように荒ぶる心をアナーキーな日常を送ることで、どうにか持ち堪えていた二人。その鬱屈した思いを一身にバンド活動に注ぎます。屈辱的な練習、稼いでいるのに食費さえ満足に与えないフォーリーに耐え、段々逞しく実力を上げていく彼女たち。ツアーの合間のドラッグ、セックス、アルコール、お遊びのような同性愛。行儀が良いとは言い難い無軌道ささえ輝きがあります。希望を持って邁進しているので、「青春の光と影」の影の部分は、それが何かもわからぬのだと感じさせ、上手い語り口だと思いました。

彼女たちの頂点である日本公演の熱狂的な様子が描かれ、彼女たちがキモノを羽織る姿がありますが、あっ!それ「ミュージックライフ」で観た!と、ちょっと嬉しい私。リタが着ていたチープトリックのTシャツは、私も持っていました。有名な「チェリー・ボンブ」でのシェリーのコルセット姿は、東京公演の時に彼女が考えたと描かれていますが、実際はそれより以前からコルセット姿でした。ただ私は、大人たちの考えだと思っていたので、シェリー本人の発案とは意外でした。コルセットは「チェリー・ボンブ」の時が主で、後は画像のジャンプスーツが基本です。

「リンダ・ラブレイス(当時有名なポルノ女優)になるつもり?」と、反対するジョーンを押し切るシェリー。キワモノ的扱いになろうと、客寄せパンダに徹しようとする彼女。それはフォーリーの意図で、バンドで一人フューチャーされることに対する、メンバーへの彼女なりの誠意だったのかも知れません。

複雑な家庭の難儀は全て双子の姉マリー(ライリー・キーオ。なんとプレスリーの孫!)に任せ、自分だけが夢を実現させる事へ罪悪感を感じるシェリー。シェリーのアイドルはデヴィッド・ボウイ。複雑な家庭に嫌悪していた彼女は、「ウェイトレス以外の人生」を目指し、好きな音楽の道に入りますが、ロックには拘っていなかったはず。対するジョーンのアイドルはスージー・クアトロ。のちにセックス・ピストルズに代わり、指向がパンクに移っていくのがわかります。人生の全てをロックに賭けたいのです。その思いの違いが、様々な葛藤を乗り越えられないシェリーにしたのですね。「家族と過ごしたい」シェリー。「家族ってうちらじゃないの?」と答えるジョーン。少女たちの哀しい温度差です。

キワモノの大物と言うと、フォーリーもプロデュースしたことがあるKISS。自分たちであのメイク考え、火を噴くパフォーマンスも考えたとか。浮き沈みを超え、伝説のバンドになったKISSと、4年で解散してしまったランナウェイズ。この作品を観て、単に彼女たちの精進が足りなかっただけではなく、KISSは「大人」で「男」のバンドだったからだなと感じさせます。

クリスティンが当時のジョーンに本当にそっくりなんで、とっても感激しました!女の子っぽい彼女が、美形だけど男前な風情が前面に出ているジョーンを演じて、全く違和感なかったです。ダコタは撮影当時は15歳で、コルセットで歌う姿も披露。その他果敢に演じた大人なラブシーンもあり、子役からは完全に脱皮したと思いました。ステージを降りた時の知られざるシェリーの素顔を、繊細に演じていたと思います。リタも似ていた子を探していましたが、サンディは、もうちょっと美人だったなぁ。

フォーリーを演じたマイケル・シャノンが怪演。やり手の海千山千、彼女たちを食い物にしながら、狡猾に巧みに操っていく様子が本当に憎たらしくて。変態っぽい風情でしたが、彼女たちに手を出さなかったのは、「商品」だったからでしょうか?内容がぬるくなりつつあると、彼が出てきて辛くて苦い現実を映し、画面を引き締めます。容赦なく描かれていますが、ご本人さんはどう思っているのか聞きたいな。ジョーンは以前からレズビアンと囁かれていますが、そういうシーンも入っているのを彼女が許したということは、事実上のカミングアウトでしょうか?


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03月20日(日)
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