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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「毎日かあさん」
ユーモラスな幻覚だった「酔い〜」に対して、こちらの夫の幻覚は痛々しく哀しい。戦場にいる自分の子供たちを保護しようとすると、彼らから石を投げられる。きっと情けない父親である自分を、心の底では責めているのでしょう。そこで感情が爆発して見境なく暴れる。これが所謂「酒乱」というものの根底なのかと感じました。「酔い〜」の妻は、この時泣いていましたが、こちらの妻は怒るでもなく止めるでもなく、もちろん泣かない。冷ややかな蔑みの目で夫を見つめるだけです。寸でのところで、飯の種である妻の原稿だけは、破るのをとどまる夫。髪結い亭主の情けなさがいっぱいですが、彼にとっては、破らないことが、せめてもの妻への償いだったのかも知れません。
女が離婚を考える時、子供の事で思いとどまることがあります。しかし本当にもうダメだと思ったら、経済的な事も何もかも考えず、離婚してしまうものだと思います。言い換えれば、子供の事が頭に浮かぶときは、まだ引き返せる時だと思います。「夫の手を離せないのは私の方だった」と独白する妻ですが、こんな修羅場でも、冷静に冷ややかに夫を観る自分がいやになったのじゃないか?そんな気がします。
離婚後の交流時、プレゼントは何か問われても、「ない。みんなあるから」と答える妻。死の間際の夫から、心からの感謝の言葉を聞いても涙を流さない妻。物凄くわかる。長年暮らすと、夫が何を考えどういう人かがわかってくるものです。実現できないものをねだっても不毛。自分で得る方が早いのです。私だって長年夫の前で泣いていません。心を鈍感にしなければやっていられないのです。それを世の夫は、やれ女は結婚したら強くなるだの、ふてぶてしくなるだのと言うわけですね。あれが欲しいとねだり、夫の前でヨヨと泣く可愛い妻をお持ちの方は、俺は立派な亭主だと胸を張ってもよろしいかと思います。うちはもちろん違います(きっぱり)。
そんな妻が夫の後姿を眺めながら、「依存症には治療が必要なのに、それを知らなくて、この人は10年間も嘘つきだとか怠け者だとか言われ続けてきたのだ・・・」という後悔の滲む独白は、胸を打ちます。「酔い〜」ではそのセリフはなく、鴨志田穣という男性の、夫としての潔さがわかります。
元夫の死後、泣き続ける妻。やっと泣けた妻を観て、心から良かったと私もいっしょに泣きました。その意地っ張りさもとても理解出来ます。ずっと観ていて、私は彼女ほど甲斐性もなく、夫にも苦労していないのに、何故同化してしまうほど気持ちがわかるのかと不思議でした。それはラストの妻の言葉で謎が解けました。「家事をし、仕事をし、子供を育て、夫を見送る。女がみんなしていることだ。」あぁ、そうなのです。私だって自分の苦労は並みの苦労で特別な事じゃない、女ならみんな経験していることだと、自分自身を励まし、主婦仲間と語り合って頑張ってきたじゃないの。「泣く暇があるなら笑おう」。この豪快にして繊細、物事に動じない人生観こそが、西原理恵子の虜になる人が続出する所以なのでしょう。私もすっかり彼女が好きになりました。
キョンキョンは絶品。老けたというより年食ったという表現がぴったりの、生活感溢れる理恵子の毎日を好演しています。とにかく表情一つ一つの語りがすごい。お婆さんになっても立派に主演を張れる女優さんでいられると思います。永瀬正敏も、苦悩や葛藤を心に押し込めている夫を好演。キョンキョンとは本当に元夫婦なので、あうんの呼吸もぴったりでした。子役二人を挟んで、本当の家族のように見え、この二人に子供がいてもやっぱり離婚していたんだろうか?と、ふと思いました。
子役二人が超可愛い!離婚して以降の親の心を思い測るブンジが特に良く、「男はバカだけど、腐っても男」が持論の私ですが、幼い時からそうできているんだなぁと、改めて感じました。面白かったのは、二作品とも、各々自分の母親が出てきますが、お互いの姑は全く出てこず。まぁ自分の母親に感謝が自然の成り行きですよね。夫を嫌っていた(当たり前だ)妻の母が、死期が間近い元お婿さんに、柔和な笑顔を向けていたのが、とても嬉しかったです。
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02月06日(日)
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