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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「レスラー」
一時は引退を納得する彼が、引退した往年の選手たちとともに出席したサイン会。すっかり老いた車椅子や義足の元レスラーの姿を映します。そこにはもう「プロレスラー」の面影は全くありません。場末でも何でも、自分の輝く場所はどこなのか、彼は思い知ったのではないでしょうか?
ラストの試合で語るランディの、「俺の引退を決めていいのはファンだけだ。ファンが俺の家族だ」との言葉は、とても感動的です。本当の家族からは逃げられ、愛する女性との間ももどかしく進展しない、そんなろくでなしで不器用な男を心から愛してくれるファンを、家族だと言い切るランディ。彼の居場所は、リングしかありません。それは寂しさからだけではなく、虚構にしか生きられないからでもなく、ランディという男の宿命ではないかと思います。決して現実逃避だとは、私は思いませんでした。ストップモーションで終わるラストは、観る人に委ねられますが、私には「至福」と言う言葉しか、頭に浮かびませんでした。
大好演の女性二人に支えられ、アロノフスキーがランディ役に熱望したというロークが、期待以上の演技でとにかくお見事でした。どうしても本当のロークの俳優としてのキャリアがダブって感じますが、それも良いスパイスでしょう。セクシー系の優男だった人ですが、こんなにワイルドなろくでなし親父が似合うようになるなんて、人生捨てたもんじゃないですね。私は「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」の彼が一番好きでした。その頃の画像です。
まっ、今とだいぶ違いますが、今作で彼のファンになる人も多いかも?とにかく抜群のおススメ作品です。私はアロノフスキー作品は初めてですが、多分今までの作風とは異なっていると思います。プロレスラーの生きざまという骨太の幹を主体に、底辺に生きる人々へ、厳しくも温かい眼差しで繊細に描いた秀作でした。
06月17日(水)
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