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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「グラン・トリノ」
しかし神父は神ではなく、ウォルトにとってはただの若造です。最初手強い相手だ、優位に立たなければと、年長の親しくも無いウォルトに、「コワルスキーさん」ではなく、「ウォルト」と話かけ一蹴された神父ですが、めげずに彼と会話を重ねるうち、ウォルトにも変化をもたらせます。神がもたらした変化ではなく、それは神父自身の成長なのでしょう。

一見小さな町に起こったお話のようですが、朝鮮戦争からベトナム戦争、そして多数の民族で成り立つアメリカの歴史をも描いています。ウォルトが誰に懺悔したか、グラン・トリノは誰に渡すのか?そこに監督イーストウッドが、これからのアメリカの在り方を示唆しているのではないでしょうか?アメリカだけではなく、もしかしたら、世界中に向けたメッセージなのかも。それは血や人種に惑わされない、そして宗教にも支配されない世界です。そしてラストのけりの着け方。イーストウッドの数々の雄姿が記憶にいっぱいの私たちには、物語の構成上抱く感情以上に、万感迫るものがありました。きちんと伏線も張ってあり、とても立派な始末の付け方です。

私にとってのイーストウッドは、山田康雄の吹き替えが当たり前だったので、レンタルする時も、わざわざイーストウッド作品だけ、吹き替え版にしたものです。テレビの洋画劇場が全盛だった子供の頃、私が憧れたのは、イーストウッドではなく、ヘストンでありニューマンでした。それが時を経て、彼らが段々活躍する場所が減っていくのに対し、監督として類まれな実力を発揮し、俳優としても最後まで主役を張ったイーストウッド。いつのまにか、映画ファンとして敬意を持って彼を観る私がいます。さよなら、俳優イーストウッド。物心ついた時から、ずっと私を楽しませてくれて、本当にありがとう。これからも監督のあなたに、ずっと期待し続けます。

05月06日(水)
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