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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ダウト 〜あるカトリック学校で〜」
息詰まるような校長とフリン神父の対決場面の後、校長の告白と涙が胸に迫ります。決して懺悔ではなく。そして、限りなくクロを感じさせる事の真相は、結局グレーのままです。事実やうやむやで終わります。神に対し大罪を犯しても守りたかった正義は、歪曲して守られましたが、司祭や理事長の方針は、フリン神父へは「寛容」でした。フリン神父の爪と同じです。長く伸ばしていても、清潔ならば良いのでしょう。これはフリン神父の性癖自体、カトリックでは見て見ぬふりの事柄なのかと感じさせます。それだけ数が多いからかも知れません。


校長の正義事態、彼女の私怨が混じっているように感じ、素直に受け入れ難いものがあるものの、長年シスター=女性であることで、虐げられていた背景に思いを馳せると、納得もできます。そしてあの涙。鉄の意志を持つように見える彼女こそ、か弱い心の持ち主なのでしょう。自分のしたことに対して、神を恐れ、本当にドナルドのためになったのか?自己満足の正義ではなかったか?何より欺瞞に満ちた自分を許せなかった。私は涙の意味をそう取りました。

ストリープとホフマンの対決場面は、確かに素晴らしいですが、二人の演技力を持っては、このレベルは軽くクリアかとも思いました。私は一瞬にして場をさらったデイビスと、どんな役柄を演じても、常に「可憐さ」を漂わせるアダムスの方が印象に残りました。


時代背景を考えると、当時の混沌としたアメリカの縮図が、四人の登場人物に凝縮されて、映し出されているのかも知れません。しかし今の時代でも充分に通用する心理描写です。さしずめ揺れ動く心を体現していたシスター・ジェイムズが、一番一般大衆に近いのでしょう。私は真実の追求よりも現実を優先し、何が一番大切で必要か、揺るぎない強さと意思を持つ、ドナルドの母に一番共感しました。

03月12日(木)
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