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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ヤング@ハート」
病院で入院中の、ガンで闘病歴のあるメンバーは、「あと10年は頑張りたいよ」と語ります。老人とは過去の出来事は良い事も悪い事も、繰り返し語るものです。しかし現在や未来の自分への願いは、なかなか出てくるものではありません。映画は現在の彼らの境遇については語っても、彼らがどんな人生を送りどんな社会的地位だったのかは、ほとんど触れません。語るのは今の彼らの事と、歌への取り組み方や熱意だけ。今と未来を大切にする老人だけが、過去から解放されるのだと感じます。

言い換えてみれば、昔を振り返るばかりのお年寄りは、未来への希望がないからなのですね。これを一概に老人ばかりに罪を押しつけていいのか?とも思います。私たちは何をすべきか?ボブから学ぶことはたくさんあります。

この年代では避けて通れないのが「死」です。メンバーの死をコンサートの前に知らせるボブ。動揺を避けるため、終わってからでもいいのにと思う私。ボブは語ります。「メンバーの死の哀しさは、歌うことで皆で分かち合うんだよ」。最年長メンバーの92歳のアイリーンは語ります。「私は歌うわよ。だって亡くなった人もそれを望んでいるはずだから。私が死んだら、虹の上に座って、みんなが歌う姿を見守るの」。表面だけの付き合いでは、ここまで死が間近なお年寄りの心を理解するのは無理でしょう。根底に彼らへの敬意を持つボブだからこその、対応だったのです。

場内は笑い声と感動の涙がいっぱいでした。その笑いは上品でゆったりした、お年寄りならではのユーモアに包まれていました。とあるバラエティ番組の御長寿クイズなる作られた老人のボケぶりを、「癒される」と称して笑いものにするような欺瞞は、皆無でした。

老人とは昨日出来たことが、今日や明日には出来なくなっていくものだという固定観念が、私にはありました。しかし「ヤング@ハート」のメンバーは、人とはいくつになっても新しい課題を克服できるのだと、昨日歌えなかった歌を、今日は見事に歌って見せてくれます。そこには保護される老人像は、全くありません。私たちと対等かそれ以上の彼らに、心から畏敬の念が湧いてきます。彼らの公演は全てソールドアウトだそうな。そりゃー、そうですよ。スクリーンで観たって、こんなに感動するんだから。思わずスクリーンに向かって、スタンディングオべーションしそうになっちゃった。

12月11日(木)
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