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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「パコと魔法の絵本」
ヘンテコな患者たちにはそれぞれヘンテコな背景があり、ヘンテコなペーソスを漂わせます。それにしんみりしていると、ドリフ風のコントあり、「魅せられて」を歌うおかまの国村隼ありと、ずっとしんみりさせてはくれません。でも面白いんだなぁ。若い子はこんなのわかるのかなぁ?と思っていた時、ヤンキーナース・タマ子役の土屋アンナの室町への説教を聞き、なんと私の心の浮かんだのは、あの美空ひばり。

以前観た美空ひばりの特集番組である投書が読まれました。

集団就職で都会に出てきたが、辛いことばかりで自殺をしようと思った。そんな時いつも心の糧にしていたひばりさんの歌が流れてきた。私に自殺するな、頑張れば良い事があると励まされるような気がした。以来辛い時には彼女の映画を観て歌を聞いて、頑張ってきた。今では息子夫婦と孫に囲まれ幸せに暮している。

こんな内容でした。これを聞いた時ほど、心底美空ひばりはすごい人だと思ったことはありません。だって見ず知らずの人の自殺を思い止まらせたんですよ?きっと投書主のような人が、他にもたくさんいたのでしょう。昔はファンの人生を支えるスターが、たくさんいました。タマ子にとって室町は、彼女の美空ひばりだったんだなぁと涙していた私は、あぁここの病院の時代は、昭和なんだと初めて気づきます。トリッキーな作りなので、わかりませんでした。さっきから数々のエピソードで私が泣いて笑って流していた涙は、昭和の哀歓を見せられていたからなのですねぇ。「嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」で、父ヒロシの臭い靴の匂いで、走馬灯のようにヒロシの生い立ちが流れる時に流した涙と、似た涙でした。

阿部サダヲが歌う「人間なんて」も、「大人帝国の逆襲」の時に流れていた同じ吉田拓郎の、「今日までそして明日から」を意識したのかしら?歌詞の内容が真逆なのですね。「今日までそして明日から」からは希望が見出せ、「人間なんて」は不透明な今の時代を映し。

涙の止まらない大貫が、「私はこんな弱い人間ではなかったのに」と語ると、医師は「弱いとダメなんですか?」と問いかけます。これは前を向き勝つことだけが命題だった、昭和には無かった答えです。頑張っても報われることが少ない現代に向けての言葉だと思いました。

CGと扮装した患者たちが合体した「ガマ王子とザリガニ魔人」の場面は、非常に見応えあり。躍動感とユーモアに富んでいて、子供達は大喜びするんじゃないでしょうか?CGと生身の人間との境目もあまり感じられず、上手くつないであります。日本のCGはチャチな感じのものが多いですが、これはハリウッドのものと、遜色ない出来だったと思います。

舞台を思わすアクの強い演技で頑張るキャストの中、とにかくパコ役のアヤカ・ウィルソンが超可愛い!子どもなりの透明感を漂わせ、とても素直な演技です。「パコ、今日が誕生日なんだよ!」を聞く度、涙がボロボロ出ました。

パコの記憶に残りたいと思った大貫の心は、きっと彼の残りの人生を豊かにしたでしょうね。誰かのために何かをしたいと思う気持ちは、結局は自分の支えになるんだと、このヘンテコな人たちに教えてもらえます。予告編で引いてしまった人は、騙されたと思って観て下さい。「こどもが大人に読んであげたい物語」というのは本当です。子供たちに連れて行ってもらって、懐かしい時代の香りを嗅いで、先行き不安な今の時代を乗り切りましょう。ゲロゲ〜ロ!

09月22日(月)
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