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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ラスト、コーション 色、戒」
激しいセックスシーンも話題です。荒々しく攻撃的な男の精を受けるその時、女の心には、肉体を通じて自分を愛してやまない男の心も、注がれ続けたのでしょう。そんな気持ちが伝わるので、行為の後に涙を流すチアチーの女心が哀しいです。ただ興味本位に煽情的なだけではなく、充分二人の感情が伝わるシーンでした。


これからこの二人はどうなるのか?イーは本当にチアチーの素性を知らないのか?そういったサスペンスフルな展開の中、チアチーの取った行動は、私の涙を誘いました。あの口紅のついたコーヒーカップが目に浮かびます。

終盤近くの「この指輪は私のものではない」と語るイー。その言葉に観客は救われるのに、イー自身にはとても非情な言葉だという皮肉。トニー・レオンはハリウッドからもオファーが来ているそうですが、アメリカ映画で、この憂いを観たいなぁとも思います。

見事に再現された当時の上海は、全てセットだそうでお見事です。中国の作品で抗日を描くのに、二方の光も影も上手く目くばせ出来ています。これは監督のリーが、台湾出身という中国系でも微妙な位置の人であると言うのが、功を奏しているのでしょうか。

欺瞞・孤独・不倫関係の情欲といった、いわば男女の愛の哀しみの部分を描いているのに、観終わって残るのは、純粋な相手を思う愛です。私は前半で書いたような引っかかりがあったのが、却ってのめり込み加減がほどほどなり、細部に深く味わうことが出来ました。長尺の作品ですが、あっと言う間の154分です。どうぞご覧になって下さい。

02月09日(土)
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