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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「女系家族」(京マチ子 名作映画まつり)
文乃は親兄弟とは早く死に別れ、それ故か有馬で温泉芸者をしていた時に、嘉蔵に見初められます。娘たちの様子を見ると、妻にも「婿養子」と見下されていたと想像される嘉蔵。高慢な自分の家の女たちにはない、男を立てて頼って尽くしてくれる文乃を、愛おしく感じたのでしょう。文乃の欲のない様子や、陰膳をして嘉蔵の供養をする姿に、普通の不倫関係のような、爛れた雰囲気は漂いません。それは演じる若尾文子の、楚々としながら芯の強い文乃の造形が感じさせるものです。有馬の芸者上がりと聞き、娘らに嘲笑されるシーンなどと共に、耐え忍ぶ文乃に観客が同情出来るよう作ってあり、それがラストの爽快感を導きます。
嘉蔵の遺言により、文乃の出産した男子が店の後継者として定められます。今まで耐え忍んでいた文乃は、別人のように気丈です。反対に憑きものが落ちたような上の二人(蚊帳の外気味だった雛子は、サバサバ)。今まで観たものは、文乃は本当はしたたかな、やっぱり妾を出来るような女、嘉蔵は今までの怨念を、死して晴らすといった風情でした。
しかし今回の文乃は、自分自身の思いより、何とか恩人の嘉蔵の心に報いたい一心が、彼女を強くさせたと感じました。彼女の器の大きさも、宇一の数々の不正を暴きながらも、「今までの番頭さんの功績に免じて、故人に代わり免責をお願いしたい」と言う姿に表れていました。
そして一番店を継ぐのに固執した長女が、「お父さんに、しっかり生きろと言われている気がするわ」と言い、家を出る決意をするのです。嘉蔵の遺言は、欝憤を晴らしたものではなく、世間知らずで高慢ちきな、人として未熟な娘たちが、それに気付くように仕向けた、父親としての愛情のように感じました。監督三隅研次の暖かい愛情の籠った解釈のおかげで、この通俗的なお話は、一段も二段も格上の、普遍的な意味を持つ秀作になったと感じました。
キャストが超豪華で、他にも長女をたぶらかす踊りの師匠に田宮二郎。最初から長女をたぶらかす気満々なのがわかるのですが、それでも乗ってしまうわなぁと思わす、男前ぶりです。キザではないのがポイント。大阪の女は、いくら男前でもキザな男が大嫌い。小悪党らしい怪しさもチャーミングに感じさせ、本当に素敵。もし田宮二郎主演の作品をリメイクするなら、阿部寛が似合うと思いますが、いかが?
鴈二郎も狸親父の番頭を演じて出色。北林谷栄の愛人相手に、しっぽりとしたシーンもあるのですが、老人なのに艶っぽい風情を醸し出し、とぼける時の絶妙の間合いで笑わせます。こんな大役者なのに、貫禄を押さえて女性陣を立てながら、強く自分を生かす芝居が出来るなんて、腕のある人はひと味もふた味も違いますね。
次女の鳳八千代は、姉妹の真ん中でうっ屈して生きてきた恨みを、あちこちにぶつける気持ち、よーく理解できる好演でした。清楚で優しげな美貌は、こんなことに巻き込まれなかったら、穏やかな養子婿の夫と幸せに暮らせたろうなと思うと、ちょっぴり同情出来ます。
三女の高田美和は、自由奔放ながら、人としての良き素養は姉妹で一番持ち合わせている雛子を、伸び伸びと演じていました。彼女は「女系家族」には縁が深く、ドラマで長女や文乃を演じています。最近見かけませんが、どうされているんでしょうね。またテレビでお目にかかりたいです。
そして期待の京マチ子。わ〜、もう綺麗で可愛い!私はいっくら綺麗な人でもね、可愛いげのない人は好きじゃないのです。「お母さんから、総領娘はどっしりとしているもんや、と教えられていますのや」と、一番難しいこと言う割には、養子も取らんと勝手に嫁入りして勝手に出戻るなど、妹たちや店のことなども全然考えていない自己チューぶりです。しかし、その華やかさと貫録は、皆を圧倒して黙らせてしまうのも納得の艶やかさです。それと裏腹の世間知らずさで、田宮二郎に騙されてしまうのですが、普通はそれ見てみぃと、溜飲が下がるもんですが、コントラストの鮮やかな演技で、思わず可哀想だと感じさせます。う〜んやっぱり千両役者ですね。満足満足。
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01月20日(日)
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