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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「自虐の詩」
幸江の過去は、いなかの少女が都会に出てきて転落するモデルケースのようなものです。そんな幸江が、精神誠意自分に愛を示すイサオに、段々心を開いていく様子はとても自然で、この辺の描き方は説得力ありで、前半何故幸江がイサオと決して別れようとしないのか、謎が解けるようになっています。

が、問題はイサオ。何故どブスの幸江、それも当時はあんな仕事をしていた彼女に、そんなに入れ込む?食堂のマスターはだね、ろくでもない男にけなげに尽くす彼女が可哀想で愛おしく、同情から愛に変わるのは全然納得なのですが、なんである意味自分の人生を投げうってまで(親の代から極道のエリート)、彼女のために堅気になるの?その背景が全然描かれていないので、とても不思議でした。それと幸江のお母さん。辛い環境の彼女が、もの心つく前に出ていった母親を慕い、母にしたためた手紙はじーんとは来るのですが、夫に愛想を尽かして、娘を置いて出て行った母でしょう?ここも母が出て行った、やむにやまれぬはずの事情を描かないと、幸江の行動に説得力がありません。

こう言う風に描き方が不足しているので、折角ちょっといいなぁと思うセリフやシーンがあっても心に残らず、全部忘れちゃった。一番覚えているのは、精一杯の心づくしを幸江に渡した、熊本さんの作ったお弁当です。

最後の方も、あぁここで終わってくれれば、という後に、蛇足的に話が続くので、間伸びした印象は免れません。でもこれ、多分原作はすごくいいんだと思うんですよ。今日は古本屋に行きましたが、ありませんでした。新刊でもそれほど高くないので、是非読もうと思います。

11月07日(水)
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