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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「シッコ」
しかしあまり違和感を感じないのは、ムーアの作家性に慣れたのもありますが、彼が主張する「昔の助け合いの精神が豊かだった、あのアメリカの善意の心は何処へ?」というこの気持は、本心だとわかるからです。「華氏911」がなければ、私もまた違和感や疑問がいっぱいだったと思いますが、あの作品を通して自国アメリカを憂いている彼は本物でした。映像作家、それもドキュメンタリー畑の人は、観る順番も大事だと思いました。
この作品はアメリカ国民に実情をしってもらうと共に、諸外国でもアメリカの医療の実態を訴えかけて、問題提議をしたいのでしょう。山師が信念の人に見えてきます。それほど日本に住む私が観ても、アメリカの医療は悲惨でした。
アメリカとは犬猿の仲のキューバは、たとえ敵国の人間であろうと、キューバで医療を受ける人は無料です。その善意溢れる様子を映し、医師であるゲバラの娘まで引っ張り出してくる辺りは、ツボをおさえた作りです。
さてさて日本は健康保険制度はきちんとしています。しかし末端の末端で医療を観ている私でさえ、医療費はひたひたと崩壊の道を歩み始め、自由診療と言う名の、高額な医療費を払う日が目前なのを感じます。現場の医師や看護師は慢性的に不足、医療者側が受け取る診療報酬は少しずつ引き下げられ、患者側は老人医療や乳児医療も少しずつ引き上げられています。アメリカ方に少しずつ進んでいるのは明らかです。この映画を対岸の火事とはせず、まずは一人一人医療費削減に協力することが大事だと思いました。タクシー代わりに救急車を呼ばない、ちょっとしたことで夜間救急に飛びこまない、保険料はきちんと払うなど、現状でも誰にでも出来ることはあると思います。
それぞれのお国柄、国民性に合った的確な医療制度はあると思います。フランス式は魅惑的ですが、あれは国民性がもっと成熟していなければ無理なので、日本ではちと厳しいかな?私は全く無料は、絶対「タダだから」と、大した病気でもないのに、病院に人が溢れかえる気がする(昔老人の医療費が無料だった頃、点滴を受ける”元気な”老人がいっぱいいたよ)ので、とにかくせめて現状維持を保てるよう、政治家さんたちにはお願いしたいです。
08月31日(金)
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