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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「それでもボクはやってない」
徹平はフリーターの若者ですが、一部上々企業に勤めるサラリーマンも冤罪を被害を訴えているところをみると、現在の社会的地位に関わらず、これは男だというだけでまずは犯人扱いです。我が家は53歳から14歳まで男ばっかり4人いますが、この作品を観ていると状況証拠がいっぱいです。夫はいい年をして通勤電車の中で携帯でゲームをするのですが、人様から見れば不審人物かもしれない。長男はガタイがでかく、オマケに坊主頭で眼光鋭いバタ臭い顔です。会社へは(CADの専門職)成人式に親が奮発して買ってやったカシミアのロングコートを着ていくのですが、中学の時の同級生に偶然会った時「お前、街金になったんか?」と言われたそう。次男は今はサラリーマンですが、声優志望なのでオタクグッズをいっぱい所持。中2の三男は「お母さん、おっぱいは男のロマンやで」とほざきながら、兄ちゃんたちの「ヤングジャンプ」のグラビアをニタニタしながら見る様子は、頭の中は「オッパイがイッパイ」の模様。もしもね、うちの家族の誰かが痴漢に間違われたら、全部証拠がために使われちゃう可能性大なんです。
つまり、男なら変態でもなんでもなくても、横一線で犯人扱いだということです。

私が興味を引いたのは、刑事や検事が何度も発する「こんな純真な中学生になんてことをするんだ!」と言う言葉。これは裁判官からも聞かれます。金髪のヤンキーの威勢のいいお姉ちゃんが、「てめぇ、アタシのケツ触っただろう!?話つけようじゃないか!」と凄んでいたら、周囲の反応はこの作品の俊子と同じだったのでしょうか?容姿や年齢によっても違うと思います。痴漢冤罪裁判の0.1%の勝訴の要因は、本当にやったかやっていなかったかではなく、被害者が若く清純そうに見えるか見えないかではないのかな?パーセントの問題ではなく、これは男女共に由々しきことだと思うのです。

大昔、東陽一監督の「ザ・レイプ」で、レイプ犯を告訴した田中裕子は、示談にしなかったため、勝訴はしたものの、自分の男性遍歴や知られたくない過去を暴露され、恋人を含め多いのものを失いました。このような前例はたくさんあり、レイプ犯の弁護人は、被害者のためだからと、示談を勧めるというのも聞きました。判決にも被害者が処女であったかどうかが争点になるとも聞きます。全く持って腹が煮えくり返る思いでしょう?>女性の皆さん。この作品で、イマドキ珍しいいたいけな女子中学生を被害者にしたのは、深読みかもしれませんが、男性をのみならず、性犯罪は例え勝訴でも、女性にも屈辱的な要素を多くはらんでいると、周防監督は言っているように感じるのです。示談という一見穏便な方法に隠された欺瞞は、人の尊厳を著しく貶めることでもあるわけです。

出演者は総じて皆好演。加瀬亮、いいですねー。どの作品でも存在感が抜群で、地味な容姿を逆手に取って、どんな役でもスイスイこなしています。もっとも印象深かったのは、最初の大森裁判官役の正名僕蔵。本当に素人の人を連れて来たのかと思うほど地味〜な外見から、人情味があり裁判官の正義である、「無実の人を有罪にしない」という信念を飄々と演じて◎。彼のおかげで、冷静沈着ステロ型裁判官な小日向文世も、より際立ったと思います。役所広司は悪くなかったけど、もっとキャラの薄い人でも良かったかも。瀬戸朝香は唯一作品から浮き気味でした。私は彼女自体は嫌いではありませんが、「デスノート」の全然らしくない元FBI捜査官や今回の役など無理感が目立ちます。ちょっと仇っぽい美貌を生かした役の方が彼女のためにはいいと思いますが。検事役尾美としのりの抑制された台詞回し、情緒は安定、でも冷たい様子も抜群に上手かったです。「愛ルケ」の陣内&ハセキョーペアは、必ず観て反省して欲しいです。


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02月08日(木)
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