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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「愛の流刑地」
冬香は仕事で忙しすぎる夫に不満があったのは、夫役仲村トオルの法廷での証言でわかりますが、それにしては回想シーンで子供と遊んでいたり、父親を見つけて、子供達がパパーと飛んで走るシーンなどの挿入もあり、これもいったい何を言いたいのかわからない。夫と子供は別物ですが、女は良き夫ではなくても、良き父親なら、少しのことは我慢出来るもんです。今のご時世では子供が三人居て専業主婦というのは経済的に恵まれているのでしょう。いくら夫が会社人間だったとして、その不満のはけ口に見出したのが開発された女体とは、いかにも男のファンタジーです。冬香は元から淫乱だったのだと表現したければ、(以下上の文章参照)。
冬香はセックスの最中、「殺して・・・」と始終言うようになり、その結果が殺人なわけですが、その結論付けは、子供を捨てて菊治の元へ行くことも出来ず、迷いあぐねた選択が、菊治に殺してもらうことで、菊治の最後の女にとなり、一生彼を我が物にしたいということらしいです。これが菊治が法廷で叫ぶ、「あなたは死にたいほど、人を愛したことがありますか!」の絶叫の主旨なんですって。へぇ〜〜〜〜〜。
好きにすれば。
ホントにね、月光院の方が三倍くらいましです。だいたい死にたかったら、自分で死ねば?こんな情事の最中に死んだら、格好のワイドショーネタになり、自分の子供達がどんな思いをするか、わかるだろうが?菊治の元妻に「あんたも首を絞められたのか?」と下卑たいたずら電話がかかってくると出てきますが、それなら仲村トオルも、「あんたの嫁さんは、あの最中にしょっちゅう首を絞めてと言ったのか?」とからかわれるだろうが。エリートサラリーマンが出世の道も断たれるだろうし、そうすると路頭に迷うのは子供達だよ。まぁここまで頭が回れば、あんなことしないか。要するに浅はか過ぎるわけ。それをご大層に至高の愛みたいに言うから腹が立つのです。ただの幼稚な中年男女じゃん。
しかし淳一さまの原作は、人妻と旅したり、エッチの最中で死んだりが多いなぁ。人妻と旅行ってそんなに興奮すんの?これは今回、多くの渡辺作品で著者を投影した人物を演じた津川雅彦が、「年を取ると先を考えて、もう手が出ないよ。」と語ったように、現実ではもうないことなので、作品の中で夢を描いているんですかねぇ。
寺島しのぶは、演技は上手いです。でも美しくない。同じ脱いで濡れ場を演じた「赤目四十八滝心中未遂」で、安娼婦役があれほど美しかったのに。菊治が何故夢中になるのか、彼女がどういう女性なのかがイマイチ観えてこず、あれでは今まで夫で満足出来なかったのが、満足させてくれたのが菊治だった、だから夢中になった、だけに観えます。魔性の女としてもファムファタールとしても、色艶が不足。寺島しのぶはせっかく演技力があるのですから、もう30半ばだし、脱ぎがOKだからでキャスティングされた作品は、辞めた方がいいと思います。
トヨエツは・・・まぁこんなもんかな?幼稚な愛を大人の愛のように語れても、世間並みの知恵のある大人ではないです。だいたい「これ以上冬香をさらし者にしたくない」だとぉ?あんたも娘がいんだろうが?それなりに名前も知られた作家の娘だってみんな知っているのに、殺した女の世間体より、自分の娘が晒されている世間の冷たさを思いやれんのか?(ムカムカムカ)菊治もまた、スランプに陥っている時、自分のファンだった女の体を開発した、それが男としての自信を取り戻すきっかけとなり、彼女にのめり込んだだけに感じました。
ちょっと激しい濡れ場を連続して見せれば、狂おしい愛を描けるってもんじゃないでしょう。あれでは肉欲に溺れている自分たちの言い訳に、愛を持ち出しているようにしか思えません。
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01月16日(火)
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