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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「涙そうそう」
カオルの「にーにー!」連発のはしゃぎっぷりに、多少ウザイものを感じていた私は、ふとこれは実の兄ではないのを知っているから、無理に子供っぽく装っているのかもと感じていましたが、恵子の「洋くんが思っているほど、カオルちゃんは子供じゃないわよ」という鋭い女の勘的セリフで確信しました。いつまで経っても妹離れしない兄に、もっと自分のことを大切にしてと、カオルは兄からの独立するといいます。兄の愛を重たいと言いながら、心から兄を愛するこらこそ、自分の存在が兄の足を引っ張ってはいけない、そう思う心が滲み出ていました。
しかしこんな良いシーンをぶち壊す展開がこの後に!何で無理無理洋太郎を病死させるかなぁ。肉体労働でがっちり働き、質素でも健全な食生活を送っている様子を何度も描いているのにですよ!何故にこの若さで過労死?あっけない臨終の後に病院中に響くようなカオルの「にーにー!」の絶叫に、場内すすり泣きの中、一人だけ凍りつく気分になる私。極めつけは洋太郎の葬式の後、カオルに届く振袖の着物。ご丁寧に手紙まで添えてあり、「今まで何もしてやれなかったが・・・」って、あれほど妹のために頑張っていたのに、そこまで言わすと厭味です。
今の時代は離婚も再婚も多く、ステップファミリーという子連れで第二の家庭を築く人も多いでしょう。あながち奇抜な設定ではないと思います。兄妹の愛と男女の愛の間を揺れ動く二人を丁寧に描いて、兄は店を持ち家庭を築き、妹は優秀な頭脳を生かした仕事につき、故郷の島で里帰りに再会する、そんな血縁を越えた兄妹になる姿を、ラストに私は観たかったと思います。
暖かく懐の深い沖縄の人々の様子は、しっかり受け取れました。血のつながらないカオルを快く育てたのも、無理を感じませんでした。一番良かったのは、古いビルの上の物置を改造した兄妹の家。狭いながらもきちんと整理され、心身ともに健康な二人を表しているようでした。家の前のテラスには花がいっぱいで、潤いと暖かさがいっぱいでした。あんな家に住んでみたいなぁ。
10月21日(土)
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