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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「フラガール」
死に体寸前のやる気のなさと侘しさを、気の強さだけで踏ん張っていたまどかが、教え子たちの純粋な上手くなりたいという懸命な気持ちに触れ、今一度ダンサーとしてのプライドを取り戻し、まどかの再生物語にもなっているのは、定番ですが観ていて嬉しいものです。それは吉本の言う、「東京のダンサーに踊ってもらっても意味がない。この炭鉱の田舎娘に上手に踊ってもらってこそ意味がある!」との信念にも、繋がることだと思います。
このお話の良いところは、炭鉱にしがみつく人間を古臭いと否定せず、彼らの自分の今ある境遇の中から、最善の方法を取って生きてきた姿を尊重しながら、その世界を飛び出そうとする若々しい姿も、両方肯定して描いているところです。飛び出そうとする力は、ともすれば自分ひとりで頑張っていると思いがちですが、それは違います。紀美子の兄の姿、親友が紀美子の初舞台に祈りを込めて送るハイビスカスの髪飾りなど、たくさんの人の助けや思いが血となり肉となって、その人に力を与えるのです。あの枯れそうな椰子の木が持ちこたえたのは、そういう意味ではなかったでしょうか?
その思いの集大成が、フラガールたちの踊りです。本当に見事な出来栄えで、なかでもソロでタヒチアンダンスを踊る蒼井優は圧巻。上記に書いた感情が入り交ざって、観ながら感激で涙がボロボロ。彼女は幼い時よりバレエを習っていたそうですが、見事という他ない踊りでした。私はダンスは全然わかりませんが、同じ踊りを踊って、松雪泰子は情熱的で妖艶、優ちゃんは可憐ながらセクシーと、受ける印象もはっきり違いました。
通俗的といえば通俗的。どこかで観た聞いたお話のはずです。しかし丁寧に心のひだを一つ一つ紐解いて描けば、時代の波に飲まれて落ちぶれた人や街が再生するお話は、いつの時代にも受け入れられる、普遍的な題材なのです。やはり映画は、希望と感動を与える物であって欲しいなと、平日ながら、お子さんから(前日運動会があって、振り替え休日なため)お年寄りまで満員の劇場で感じました。
09月27日(水)
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