ID:10442
ケイケイの映画日記
by ケイケイ
[928156hit]

■「マッチポイント」
なかなか妊娠しないクロエが不妊治療に懸命な中、皮肉にもノラが妊娠します。しかしこの女二人がギャーギャーギャーギャー、鬱陶しいったらありゃしない。妻の頭は妊娠でいっぱい、子供さえいれば何となく鬱蒼とした、この家の空気も晴れるのよと思い込んでおり、夜は「もう一週間セックスしていないわ」だは、朝は朝で「今出来そうなの。出勤前にしない?楽しいわよ」って、アホかあんたは。夫はまるで種馬扱い。全くお嬢様ってやつは、何でも自分中心だね。対する愛人は、子供が出来た、あんたのせいだ、離婚して私と結婚するって言っただろう、あんたが言えなきゃ私が言うわよと、責めまくる。あのファム・ファタールぶりやいずこ、ただのおバカなあばずれに成り下がってしまいます。あのね、あんたが言ったんでしょう?「私と寝るようなヘマをしない限り、あなたはクロエと結婚出来る」って。そんなヘマするような男が、あんたのために今の生活を手放すわけないでしょう?クリスが両方から逃げたくなって当然よね・・・

あれ???

それっておかしくない?

どうして私は彼女たちに同情しないのか?良き家庭を夢見て、子供のいないわが身を嘆き、早く子供をと若妻が思うのはもっともなハズ。今まで男に程よく弄ばれ捨てられて、もう2回も堕胎しているノラ。可哀想なノラ、哀れなノラ、今度こそ絶対子供が生めますように。そう思って当然なのに、私が鬱陶しく彼女たちを感じるのは、妻と愛人の間でコソコソ渡り歩き、お里の知れる卑屈なな小心者さを感じさせるクリスを含め、この三角関係を意地悪く面白がってアレンが描いているからのような気がします。上流階級を描く時の皮肉は下々の目線が面白かったのに、男女を描く皮肉は、アレンの女修行がそうさせたのか?しかし私は無粋者で色恋沙汰の修羅場も経験ないので、このラブアフェアをスリリングだと楽しめる器量がありません。何か不愉快なのだな。

この後ノラの始末に困ったクリスは、ノラのアパートの隣の老女も巻き込んで、彼女を殺害します。しかし「運の良い」クリスは逃げ切ります。これからのクリスの人生は、罪の意識と妻の実家の重圧に押しつぶされる、辛い人生だと暗示していますが、これもどうも私は納得いきません。運だって金次第ってか?何もクリスが捕まればいいってもんでもないですが、もうちょっと捻らんかいという感じ。例えばですよ、クリスは間違ってクロエを殺した、目撃したノラは自分の産んだ子をクロエとの子ととして、クリスに育てさせる、そしてクロエの子は自分が育てる。これで一生ノラにとってクリスは金の成る木・・・ってのはいかがでしょう?なんか「氷点」とか吉屋信子の少女小説みたいかな?今の時代なら昼メロの「牡丹と薔薇」の世界かしら?

そういうすごーく俗っぽい内容を、グイグイ引っ張って見応えある作品にしたアレンの力量は素直に認めます。完成度は高し、でも私は好きくない作品なのでありました。

09月15日(金)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る