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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「博士が愛した数式」
昔から浅丘ルリ子は厚化粧が目立ちますが、今回はそれに老いが目立ちすぎるなと感じていました。それは博士と事故前、道ならぬ恋に落ちていたからなのですね。毎日博士は事故直前で記憶が始まります。自分の老醜を恋しい人に見せたくなかった女心なのですね、あの厚化粧。自分が誘った能を観た帰りに事故に遭ったこと、博士の子を生む勇気がなかった自分。博士を見るとき罪悪感でいっぱいになるのに、彼から一瞬たりとも目が話せない兄嫁。いつも「義弟」と他人行儀に呼ぶのは、自分を戒めるためだと解釈しました。哀しく複雑な女心に胸が締め付けられます。
杏子の手を握り、「暖かな手だ。女性の手は冷たいと思っていた。」という冷たい手は、事故直前重ねた兄嫁の手だったのでしょう。彼の記憶に深く深く残る彼女。博士の人生には冷たい手も暖かい手も、両方必要なのだと思います。
ネタバレ終わり*************
80分しか記憶がないと言う割には、それと感じさせる描写が希薄で、1日は記憶が持つように感じ、原作ではどういう風に描いていたか気になります。
記憶出来ないことをメモして服に安全ピンで留めまくっている博士は、「メメント」を彷彿させます。ちょっとユーモラス、そして深く哀しさを感じさせます。満開の桜を散歩する博士と杏子、真夏のルートの試合の観戦など、四季折々の美しさと楽しさを映す撮影と、演じる出演者の誠実さが、この物語を哀しさより、品の良い優しさで包み込む感じになったと思います。
寺尾聡は博士そのものだと感じさせて絶品。深津絵里は、この人を見て大好きだという人も少ないでしょうが、嫌いだと言う人もめったにいないでしょう。そういう無個性さがいつまでも新鮮さを失わない秘訣かと感じました。初の母親役も上手にこなし、ピュアな印象が強く残ります。ルート役の斉藤君が、大人になったルートを演じた吉岡秀隆にそっくりだったのがご愛嬌。でもあの寝癖はいりません。彼を持ってくると、すぐそういう風に演出しがちですが、それはもう監督さん方、止めてもいいじゃないでしょうか?
01月27日(金)
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