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ケイケイの映画日記
by ケイケイ
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■「ブラザーフッド」
家に帰り、社会人の20歳の長男に「お父さんが倒れて働かれへんようになったら、あんた、どないする?」と聞いたところ、「俺の給料全部家に入れるわ。」と、事もなげに言うのです。年子の次男も今年から社会人なのですが、「あの子はどない言うやろ?」と話すと、「あいつもそう言うに決まってるやん。俺より家族を思う気持ちは強いで。」と言い切りました。うちにはまだ下に小6の三男がいるのですが、父親代わりは自分がすると言うのです。
何故そんなことを聞くのかと言うので、この作品の兄弟の話をしました。「ふーん、いざとなったら、日本の人も同じように思うんちゃう?」私もそうだと思います。
在日3世として生まれ、いずれ日本人になるであろう息子から図らずも聞いた、韓国人の心。そしてこの作品を観て胸を熱くした私も、何故帰化しないのかと問われ、韓国人の誇りという大層なものでもなし、何なのだろうと言う自分自身の疑問も、常々夫の言う「国籍が変わっても、中身がいっしょじゃ同じことやろう。」と言う言葉は、やはり正しいのだと思いました。
婚約者を殺され、弟も死んだと思い込んだジンテは、国に絶望と憎悪を感じ、北側に寝返ります。そしてそんな兄を救い出そうと、身の危険を顧みず敵のアジトに臨むジンソク。また殺し合いが始まり、やっと見つけた兄は、あんなに愛した弟がわからない。殺されそうになるのに、一方的に殴られる弟。何度も何度も「兄さん!」と呼びかけ、やっと正気に返る兄。戦争とは、あんなにも大切にしていた者さえ忘れさせてしまう、イデオロギーとは、戦争とは、いったい何なのだろう?私が一番戦争の悲しさむごさを感じたシーンでした。
遠く日本に生まれ育ち、日本の学校に通い教育を受けてきた私にも流れる民族の血。その同じ血が流れている者同士のこの戦争を、当時体験した方々の気持ちは、筆舌に表すことは出来ないでしょう。今も世界のどこかで戦争、内戦が行われています。その無残で哀しくやりきれない姿を白日にさらした作品です。娯楽大作と名がつく作品ですが、とても心に重くのしかかり疲れる作品です。しかし見応え、心に響く内容の充実さは充分です。自信を持ってご覧になる事をお薦めします。
06月30日(水)
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