ID:102711
声優さんと映画とアニメと
by まいける2004
[857800hit]
■失うことを恐れない若さが与える恐怖感
「ダークナイト」(闇の騎士?)
バットマンビギンズの続編です。登場人物もほぼ継続。
先行でこの週末の夜だけという変則公開を今日のレイトショーで観てきました。
凄かったです。
とにかく、これは間違いなく、出演者全員の演技対決、一人ががんばっているのではなくて、主要キャストみんな物凄いです。
152分という長丁場。しかし非常に脚本が練れていて、演出やエピソードの配置緩急のつけ方も上手く、飽きさせずに最後まで一気に魅せる仕上がりでした。凄いです。久々に現実の時の流れを完全に忘れて、物語世界にのめりこんでみてしまいました。
バットマンとして、自身のすべて、プライベートも愛も自分のアイデンティまで捨て、犯罪と戦い、悪をなすものを懲らしめるブルース。彼は自分の行為が実は犯罪者を煽っている、犯罪をエスカレーションさせているだけではないかと、苦悩します。そして彼は悪に立ち向かう絶対の善としてではなく、悪を封じるパワーゲームの中のダークナイトとして苦悩しあがきます。
今回の敵は、真の宿敵ジョーカー。彼は恐ろしいまでの知性と何も恐れない悲しみの狂気を宿し、人を信じず、あたかも自分の存在意義を自分の行為で確かめるためには悪意しかないかのような振る舞い。
バットマンを支える人々、巻き込まれる人々、ブルースに関わる人々、そしてジョーカーに関わる人々、一般市民。
みんな存在感があって、脚本が生きてる、いい演出でした。監督も鬼才だと思います。
バットマンの存在が街の犯罪者を怖がらせ、犯罪の減少に貢献しても、犯罪はなくならせることは出来ない。
生活のすべてをなげうってまでも、悪と戦い続けるバットマンそして、同じく犯罪と立ち向かう警察関係者(今回も唯一の見方のゴードン警部さん健在)、新たに登場する検事のハービィ・デント(アーロン・エッカート)、元恋人の検事補レイチェル。
悪を取り締まるにはパニッシュメント(罰)を恐れさせる力を持って制圧するしかない、しかし、その制圧しようとする力をさらに上回る知恵と力を持つ犯罪者が現れたら・・・犯罪は時には必要悪でもあり、完全に無くすことが出来ないなら、なぜすべてを捨ててまで自分たちが立ち向かわねばならないのか。人は結局エゴの生き物であり、偽善では生きられない、一番大切なもの、家族を奪われたら、奪われそうになったら、人間はどうなるかは自明の理ではないか・・・そうジョーカーは薄ら笑いを浮かべながら問いかけて来ます。
とにかく、主演も共演もすべて実力派のメインキャストの中で、実年齢は圧倒的に若いはずなのに、まったく互角、あるいは全員を喰って、さらに観客をも喰ってすべてを虜にしたと言っても過言じゃないほどに、ヒースのジョーカーの存在感は凄かったです。
いろいろな局面で自分のこと、相手への思いを語るジョーカーには、犯罪者の持つ狂気、計り知れない知性、まだまだ本当の彼を見せてくれては居ないのだという得たいの知れなさ、そして何よりバットマンの宿敵たる、実は同類の人間であり、もしかするとお互いこそが心に持つ闇の最大の理解者ではないかと思わせるやりとり、どれも見ていてドキドキしました。
まさに、ジョーカーが片鱗だけですべてを見せないその心の闇が、計り知れなく恐ろしかったです。
そして、何より、実感したのは、このジョーカーの若さが武器になっていたことです。もちろん若造の空気は片鱗も見せませんが、その演技や動作にうっすらと感じさせる存在感のエネルギーは、実はジョーカーの持つ若さに関係しているのだということを、後半へ向かうにしたがってさらに感じさせ、これがさらに恐怖感を煽ってくれた感じがします。
若いが故のバイタリティと自らの欲望への執着、失うもののない身軽さ、そして守るべきものがないがゆえの無謀さ。
そこがまた、ジョーカーの大胆不敵さと、やらかすことのスケール感を出していたのだと思います。
現実世界では、彼(ヒース)を永遠に失ってしまったことで、ファンはいやおうなしに作品をみて悲しみと喪失感が深くなります。
実際、見終わったエンドロールで、2番目に出てくる彼の名前を見て、本当に寂しい気持ちを実感しました。
[5]続きを読む
08月03日(日)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る