日々の泡

2013年10月03日(木) アンクリーヴス著「青雷の光る秋」読了

衝撃的なラストシーンだった。ペレスの婚約者であるフランが最後に犠牲者になってしまう。行きの通勤電車で読み終えたのに今布団の中に入っている時間になってもまだ悲しみを引きずっている。今回の舞台はペレスの故郷であるフェア島。フランを両親に紹介すべく一緒に実家に逗留中に野鳥ウォッチセンター?で殺人が起こる。野鳥研究では名が知れている女性がペレスの婚約パーティーの夜、何者かによって殺される。頭には鳥の羽が飾られていた。センターには一人の女性が調理人として雇われていたが、彼女も殺されてしまう。センターには何人かの野鳥ファンが泊まり込んで観察をしていた。結局、最初に殺されたセンター長の妻でもある野鳥研究者はかつて一人の男の発見を横取りして世の中に出た。それをうらんだ男が、妻と一緒に過去を忘れたようなふりをして泊まり込み、女性に復讐したのだった。嵐にも襲われ、島は一種の監禁状態となる。フランを失ったペレスは警察もやめて故郷の牧場に戻ろうと考える。何の気力もなくなってしまったのだ。しかし、最後の場面で両親がペレスにフランのスケッチブックを見せる。そこには行きの小型飛行機で死ぬ思いをしたフランが冗談半分に書き綴った遺書が書いてあった。自分に何かあった場合は、娘のキャシーをペレスに託すというものだった。ペレスは、自暴自棄になることもできず、キャシーを育てるために警察をやめることもできなくなった。彼は、いままでの心優しさを失い、冷徹な景観となるだろうというようなことが書かれて印象的だった。



2013年09月22日(日) ヨハン・テオリン著「赤く微笑む春」読み始め

「冬の灯台が語るとき」の「黄昏に眠る秋」の続編、図書館で予約しておいたもの。最近、筋を追わずにじっくり読むことができる。ただし、あいかわらず読んだ端から忘れていくのだが。北欧、アイルランド物はちょっととっつきにくいが、だんだん身近なものになってきた。まず、冒頭から引き込まれた。3月のエーランド島北部。マルネス高齢者ホームでは、入居者芽見守るなか、遺体が運び出されて行った。元船長のイェロフは、ずっと考えていたことを実行に移すべく事務所に行く。ここにいたら次に運び出されるのは自分だという。だから自分のコテージに帰ると言う。娘のユリアも反対するが、生きてホームを出たい、村で死にたいという彼の決意は固かった。すごいと思った。そうだ、いくつになっても自分の生き方は自分で決めていいのだ。勇気さえあれば、人間は自分の生きたいように生きられるのだと思った。還暦を前にこんなことがひどく魅力的に思えた。何人もの、いや何組もの家族が登場する。色々な問題、悩みを抱えた人々。妻と別れ双子を育てているペール。定職はない。娘は重い病気にかかり入院している。別れた妻とその夫が看病をしているが、ペールは娘と対峙する勇気がない。気が弱いのだ。かれにもひどく共感を覚える。ミステリーだからもちろん事件が起こる。実はペールの父親のジェリーはいわゆるアダルト映画を製作して一財産を築いたが、最近は病気がちだった。ペールは父親をスタジオまで迎えに行って、燃え盛るビルから父親を救い出すが、男女が死に、父親に嫌疑がかかった。ペールは真犯人を見つけようとするが、父親も車でひき逃げされ死んでしまう。映画製作に関わった人々を訪ね歩いてる内にいろいろなことがわかってくる。エイズに犯されてしまった女性。名前を貸したために殺されてしまった男。結局ペールの異母弟が全財産を手にいれようとしての犯罪だった。最後の場面がすごい。この異母弟がペールを車で引き殺そうとする。ここでイェロフが動かない体を必死で引きずってペール救出に向かう。あわやというところで彼がフロントガラスを狙って投げつけた杖が運転手の注意をそらせ車は崖にぶつかって大破する。これと平行して他にもいくつかの物語が進行する。ヴェンデラとマックスという夫婦は、威嚇的なマックスのせいであまりうまくいっていない。ヴェンデラはたまに安定剤に頼る。彼女には不幸な少女時代があった。家の近くにあったエルフの岩。少女時代、彼女は母親の宝石を一つずつこの岩に置いて願い事をした。彼女は3匹の牛の世話をしなければならなかった。父親がつれてきた二階に住んでいる謎の人物に食事をつくって持っていかなければならなかった。遠足に行きたくて、願い事をすると、牛小屋が燃え、牛は死に彼女は遠足に行くことができた。謎の人物は彼女の兄だった。イェロフは一人で妻の残した日記を読みながら夜を過ごした。日記には不思議なことが綴られていた。妻が家に一人でいると、取り替えっ子がよく訪ねてきた。彼は彼女に宝石をくれた。あるとき、彼女は彼を追っていって、彼が石切場で岩に埋もれて殺されてしまう現場を目撃する。彼女は殺した男を知っていた。障害を持つ息子のことも。彼女は罪の意識に悩まされながらも決して他言しなかった。さて、ペールの娘は手術も成功し、夫と別れたヴェンデラとの明るい未来もほのみえるラストシーンだった。

イェロフの存在がこのシリーズの要となっていることは確かだ。



2013年09月20日(金) 山本兼一著「赤絵そうめん」読了

図書館から借りた「とびきり屋見立て帖」単行本 一日の通勤で読了。たまたま「今日返却された本」の棚で「千両花嫁」を借り、なかなか面白かったので続編を予約しておいたもの。これはシリーズ3巻目。幕末の京都が舞台。これはちょっと珍しい。きれいな器だったらそうめんを食べるという我儘な孫娘のために赤絵の器を探している豪商。骨董品が日常に使われていて、登場人物が生活を楽しんでいるのが目に浮かんできて楽しい。



2013年09月18日(水) 山本兼一著「ええもんひとつ」読了

「とびきり屋見立て帖」シリーズ第2巻 道具屋の若夫婦と見習いの子供たちの和気藹藹とした会話がほのぼのとしていて面白い。




2013年09月11日(水) アン・クリーブス著「野兎を悼む春」読み始め

シェトランド四重奏シリーズの第3作目とのこと。昨日読み終えた「大鴉の啼く冬」が一話目で、夏の話が挟まるはずなのだが、なぜか先日借りてそのまま返却した秋と3作は図書館にあるのだが不思議なことに夏だけなない。仕方なく飛ばして読み始めたが、1300円もする文庫など買いたくないし、図書館に入るのを待つしかないかもしれない。一作目はシェトランド本島が舞台だったが、今回は小さなウォルセイ島が舞台らしい。一巻目にも出てきた警官のサンディが冒頭から主要な人物として登場する。遺跡を調べている大学院生とその助手。二人をもてなしていた老女が突然誰かに殺害される。多分親戚の男が野兎を退治していて誤って撃ってしまったのだろう。 今回はペレスという警部の人物像もかなり掘り下げている。一作目で少し気があるようだったバツイチの子供を持った母親といまや恋人同士となっているらしい。やはり二作目を読むべきか。



2013年09月10日(火) アン・クリーブス著「大鴉の啼く冬」読了

犠牲になった(なりかけた)少女3人には共通点があった。名前がCで始まること、そしていかにも自分が偉そうに行動すること。それは他のごく普通の人間を死に至らしめる程、一瞬にして憎しみを買うのだった。二番目の殺人が起こった時、村人たちはみんな殺人現場のすぐ近くにある家に住む知的障害のある老人マグダフが犯人だと思った。彼は一番目のまだ遺体が見つからない少女の殺害者だとみんな思っていたが、証拠がなかった。ときたま挟み込まれる彼のモノローグ、母親が誰にも言ってはいけないと言った言葉。実は母親こそがその少女を殺害したのだった。幼くして死んだ自分の娘のおもちゃを決して返そうとしない少女に怒りを爆発させたのだ。二番目の殺害はキャシーという映画製作に心血を注いでいる高校生。彼女の唯一の友人であったサリーは、教師をしている母親のせいで、友人もなく、生まれたときからシェトランド島で孤独だった。誰もが十人全員について知り抜いている閉鎖的な世界。そこへやってきたキャシーは自由だった。人が何と思おうと、自分を通した。そんな彼女を見ているとサリーのこれまでの苦しみは一体なんだったのだろうと思わせられる。ペレスと言う警部がなかなか魅力的だ。フェア島で牧場を営む生活も可能であるという局面でやはり警部を選ぶあたり面白い。とにかく最後の最後まで犯人はわからなかった。意外性という点では、最高だ。そういえば、キャシーが題名としても、またそのモチーフとしても使ったフロストの炎と氷という英詩は学生時代に授業で習い、特に記憶に残っているものだ。人類の最後は炎に包まれるものかもしれないし、冷たい氷に包まれえて滅びるのかもしれないという、印象的なものだった。



2013年09月03日(火) ジル・チャーチル著「枯さわぎ」読み始め

あいかわらずの主婦探偵の二人が出てくる。ガーデニングの講座をとったが、直前に講師が何者かに襲われて入院してしまう。たまたま講師宛の花束がルーシーに誤送されてきたところから話が始まる。講師の代役が立って、講座が無事始まるが、参加者の庭をみんなで回ることになる。シェリーはいつもの要領の良さを発揮して園芸会社にレンタルで俄か作りの素敵な庭を手に入れ、それを知ったルーシーも負けじと小鳥の水浴び場まで買い込む。



2013年09月02日(月) 小路幸也著「オールマイラヴィング」読了

慶子から借りる。東京バンドワゴンシリーズ。10月からのテレビドラマ化ということで、そろそろキャスティングが見えてきた。それでも、最初に頭の中で描いた人物像がすっかりはまっているせいか、そのままである。いつもながら幸せな一家に微妙な嫉妬心を覚えつつ。みんな才能のある人ばかりで、家柄が良かったりなんだかんだで少し腹の立つ小説である。



2013年08月29日(木) 三島有紀子著「しあわせのパン」読了

同名の映画のDVDをTSUTAYAで何度も手に取りながら、借りていなかった。見る前から内容がわかるような気がしたからだ。なんだか感動するのが億劫だったというか。一瞬の安らぎがほしくて、図書館で借りた。まあまあ面白かった。自作の童話が別についていて、なかなか凝ったつくりだった。 こういった食べ物系はやっぱり癒される。



2013年08月26日(月) 「アンソロジー カレーライス!!」読み始め

月曜の朝から読む本でもないとは思いながら、土曜にようやく予約していたのが手に入る。なんと紙までちょっと黄色っぽい。考えていた物よりかなり渋い。まずは目次を見てのけぞる。池波正太郎、井上靖、向田邦子、中島らも、内館牧子、安西水丸(この人だけ知らない)林真理子、伊集院静、小津安二郎、井上ひさし、町田康、寺山修司、伊丹十三、獅子文六 とりあえず、今日読んだところまで書き写して見た。すごいメンバーである。このあとも著名人が続く。楽しみだ。同じテーマでずらりと並ぶと、作家の力量などとは言わないが、比較検討ができてかなり楽しい。それにしても、カレーとはよいテーマを思いついたものだ。日本人なら誰でも一くさり話したくなる話題には違いない。


 < 過去  INDEX  未来 >


para