ミステリー小説 作者:現代 日本 出版社・値段:角川 2000円 99年の一番最初に読んだ本。かの名作差気宇、「幻の女」を思わせる題名に思わず買ったが、あまり面白くなかった。読後感がよくない。 結局はやくざの世界の話であったこともあるが主人公の弁護士の心の動きにあまり共感をもてないのも原因の一つ。 主人公の弁護士は、汚職をして職を追われた父親を非難したが、翌日父親は自殺をし、長年そのことがトラウマになっている。離婚暦あり。 世の中を斜に捉えているよくいるタイプだが、被害者の部屋にあったぬいぐるみを「ムーミンにでてくるスナフキン」とちゃんと描写しているところが妙にちぐはぐだった。 些細なことではあるが全編そんな気持ちにとらわれる個所がかなりあった。なにか作者の趣味がでているようで、興ざめである。 数年前に突然姿を消してしまった恋人が再度弁護士の前に偶然姿をあらわしたとたんになにものかに殺されてしまった、というなかなか興味をひかれる設定であるが、弁護士の義父が娘かわいさに、その女性に男と別れるようにたのみこんだとい事実があったり、やくざの親分の未亡人によるやくざの美学が語られたり、やはり陳腐な部分が多かった。 ただその女性と弁護士がつかのまの平安なひととき、コンビニで鍋セットを買い、その鍋の湯気越しにその女性が「楽しいね」と語りかける場面は、その後その女性の不幸な過去が語られていくにつれ、なんども脳裏に浮かんできた。 この女性が過去を他の女性ととりかえた、というところがこのミステリーのポイントなのだが、あまり必然性が感じられなかったのが、読後、つまらなかったという感想になってしまうのだろう。
その他 作者:現代 JAPAN 出版社・値段:講談社文庫 619円 最近よくみかける「ショムニ」という言葉。 文庫本でもみかけたものの意味不明。 韓国語かしらんと思っていた矢先、私の会社での出来事を掲示板に綴ったところ、ご常連さくらさんより「ショムニ」みたいとレスポンスをいただき、「えっ??」と思った私、早速気になっていた文庫本を購入しました。なんと、「庶務2課」という意味だったんですね。 TVドラマの小説化したものなんて...とちょっと抵抗を覚えつつも、バスの中で読み始め、降りるべき停留所を危うくパスしてしまうほど、すぐにハマってしまいました。美しいオフィスの地下に存在する「庶務2課」は問題OLの流刑地。一瞬ブス揃いの掃き溜めかと思いきや、実は異能揃いの美女揃い。 親分格の千夏をはじめ、個性的な人物が登場します。筋書きもおもしろいですが、表現もなかなかおもしろく、多分TVを見た方にも別の楽しみ方ができるのではないかと思います。最後の方で、どたばたの大騒ぎの後、庶務2と書かれたプレートが振動で外れかかりますが、その覆われた部分には「倉庫」という文字が...というくだりにも爆笑してしまいました。でもただただ笑わせるだけの小説ではありません。 千夏のせりふ、「会社は自分のためにある」という言葉は会社つとめをしている私にとって目からウロコでありました。 倒産しかかった会社を救おうと言う、珍しく愛社精神の発露であるかのような一連の出来事があり、みんなの絶賛を浴びようと言うその瞬間に実は単に会社対抗のクイズ合戦にでたいがための行動とわかり、みんながげんなりするというエピソードがありましたが、これこそまさに「現実」と「事実」と「真実」のパターン。 自分の思った通りに生きること。人生を愛すること。 人生を愛していない人間には真実の愛社精神も育たないとすれば、ショムニの面々こそ、愛社精神に富んでいるというオチになるかもしれません。いつもはバラバラなショムニたちが一致団結するところなど、団体物に弱い私は結構目頭を熱くしたりもしたのでありました。...で、実はこのTVドラマ、漫画が原作と知り、常日頃、漫画のノベライズだけは読まない筈だったのに、とショックを受けたのでした
| 1998年08月13日(木) |
藤沢周 ブエノスアイレス午前零時 |
純文学小説 作者:現代 日本 出版社・値段:文芸春秋 芥川賞受賞作品。 ジャンルとして純文学を選択しつつ、今年に入って1000回目くらいに純文学の定義について考え込む。 それにしても最近、主人公が少々一般社会からはみでている小説が多い。昔なら挫折と言った重い主題となるところを軽く流しているところに時代を感じる。 しかし、ここ10年〜20年の価値観の変わり様は眼を瞠るものがあり、目安となる普通の生き方なるものが、あやふやになってきている今、[社会からはみだした]という表現はまもなく死語になるのではないかと、これは少々嬉しい予感がある。 ただドロップアウトしている[主人公]が劇中劇を演じているかのように現実味がないことも確かである。 もっと読み応えのあるものが読みたいとやはり最後には思った。1998年8月13日深夜
ミステリー小説 作者:現代 JAPAN 出版社・値段: 題名に惹かれてこの作家を初めて読んでみました。一見平凡な日常の背後に隠された人間の狂気や情念が浄瑠璃の世界を織り交ぜることにより表現されていて面白く読みました。 猫は可愛い反面、少々不気味で得体のしれない部分を持っていますが、人間の一番身近にいるだけに本当に不思議な存在で有るとも言えるように思います。そこが魅力ですが。 話は別ですが、浄瑠璃の山椒太夫が出てきましたが、ラストシーンの息子が親の刑に立ち会うだけでなく、そのクビを自ら鋸で挽くという残酷なシーンを久々に読みました。日本の物語でもっとも残虐な部類に入る話だと以前に思ったことを思い出したので書き添えます。1998/8/13
| 1998年08月10日(月) |
車谷長吉 赤目四十八瀧心中未遂 |
恋愛小説 作者:現代 日本 出版社・値段: 文藝春秋 いっつも迷ってしまうこのジャンルという項目...まあ心中未遂だからここでいいのかな〜っと...。直木賞受賞作品。 この夏、暇に任せて芥川賞2作品、直木賞作品1作を読みましたが、不思議なことに3作品とも底辺にいきる人間を描いた物...。 これって流行なのでしょうか。 だったら私が次回、ホームレスの段ボール生活をしている女性の話を書いたら賞が貰えるのでしょうか...まさかと思いつつもそんなことを思わず考えてしまうほど、これまた底辺に生きる男の話。 それもお定まりのごとく、かつては広告代理店に勤めるサラリーマンだったらしい。 そんな人間がいかにも自分は今、身を持ち崩していて、これこそ自分らしい生き方なのだ、なんていう感じでそばにいられたら、それこそ、もともとそこにいた人間にとっては迷惑以外の何ものでもない。 そんなあれこれを描いた小説である。いまどきの小説家はここまで具体的に底辺を描かねば自分の存在の不安定さを受け入れることができないのだろうか。 このいまの不安定さを受けいるれためにはそこまで墜ちなければいけないのだろうか。 そこでしか人間は安らぎをえることができないのだろうか。思わずそんなことを考えざるを得ないほど、今夏の文学賞は揃って底辺に墜ちた人間を肯定をもって描いていた。しかし、果たして3作のいずれかが底辺を書き得たとはとても思えない。底にいる人間には文学など、到底書き得るものではないと思うからである。ものを書こうと思った瞬間、人間は自己顕示欲の塊になってしまう。そういうものではないだろうか。 とにかくこの心中未遂物、底辺にある女は描きやすいが、描かれた底辺にある男はどこか嘘臭い...とふと思った。 宴会帰りの頭で一所懸命書いてみましたが(ここに書くと女神様扱いしていただけるので)とにかく今夏3作品を読んでみてまたしても純文学と大衆文学の違いは一体どこにあるのだろうかと思った。 週末の産経新聞の書評には、人間に生き方についての真摯な思惑を描いた物が純文学ということになるようだが、それにはかなり異議のあるところである。尻切れトンボですが取り敢えず....
| 1998年08月04日(火) |
コーンウェル スズメバチの巣 |
ミステリー小説 作者:現代 米国 出版社・値段: 約千円(返せ〜) 本格警察小説とありましたが...。一応メインになる事件はあるのですが、なにやらいろいろなエピソードが入り交じって、そのどれもが妙に単純な勧善懲悪的なものがあり、(私には)残念ながらあまり面白くなかったです。解説には翻訳に妙に時間がかかったようなことがかかれていましたが、このつまらなさが原因ではないかとふと思いました。 でもそこが解説者のつらいところ、これはシリーズ化させるため一応登場人物の紹介をしているのだろう、と書いてありました。 なにが一番ひっかかるかというと、警察の高い地位にいる女性が二人出てくるのですが、書き分けがあまりできていないような....。 (この二人の仲は良好なのですが、他の部分で女性の敵は女性...という表現が目立ちました。 確かにそれは言えているかもしれませんが)でもこういった優れた女性の影で平凡な夫がつぶされていくというエピソードはなかなか考えさせられるものがありましたが、やはり滑稽さが強調されていてあまり気持ちがよくありませんでした。 考えて見ればコーンウェルは例の検死官の話を数冊読みましたが私の趣味ではないようです。(つい人気があると読んでしまう人) もうちょっとメインの犯罪が盛り上がりを見せて解決していればこれほどぶつぶつと読後感を述べることもないのですが。(朝からちょっと不機嫌な私でした。)1998/8/4 あっ 「氷の家」がそのままだった。 これは面白かったのでそのうちに感想を書きたいと....。
| 1998年08月01日(土) |
尾崎諒馬 思案せり 我が暗号 |
ミステリー小説 作者:現代 JAPAN 出版社・値段:角川書店 1040円 五線譜に隠された暗号とは...一つの暗号が浮かび上がってきたかと思えばさらにちがった視点で解読を試みると、あらたな暗号が現れる...。現在の謎を解き明かしていくと、ちがった過去が現れる、 最後の最後まで読者にたいして謎をつきつけてくるサービス精神には敬服しますが、これは文学ではなく、まだ単なる筋書きをノートに書き付けただけのような気がします。 狙うところは良いのですが、まだまだ熟成させていないような感じです。なによりも気になるのは、この人はミステリーや青春小説だけを読んできたのでは無いかと思われること。 今、若い世代が、青春小説だけを読み、それを土台に青春小説を書いていくということ。 文学はどこへ行くのだろうかと少々肌寒い気がしないでもない。
| 1998年07月21日(火) |
サンドラスコぺトーネ 潔い死を |
ミステリー小説 作者:現代 U.S.A. 出版社・値段:扶桑社 女性探偵もの。シリーズになっています。事件の捜査、解決についてはそれほど面白いとは思いませんが、ずっと私が買い続けているのはきっと大の甘党であるヒロインがチョコレートケーキの誘惑とダイエットの狭間で戦っている箇所に惹かれるのでしょう。 飼っている2匹の猫の描写も可愛い。今回はどうやらパソコンの扱いについては私とどっこいどっこいのヒロインが掲示板やメールにはまっている様子が楽しかったです。なにか...ミステリーの感想になっていませんね。1998年7月21日
その他 作者:現代 日本 出版社・値段:新潮文庫 今年の新潮文庫の100冊の1冊 著者は手に取るまで知りませんでした。実は新潮文庫の100冊から2冊買うとパンダのキーホルダーを貰えるというCMにつられ、なにがなんでも2冊買おうと見回したのですが、結構読んだことがあるものか、またはこれから読もうと買ってあるものばかり。結局この本と同じ著者の[ポプラの秋]を買いました。著者は東京音大を出てオペラの台本を書いている内に物書きになったようで、この本は日本児童文学者新人賞をとっています。内容は悪ガキ3人組が[死]というものに興味を持ち、近所の今にも死にそうなおじいさんを四六時中見張ることにより死に遭遇してみようと試みます。ずっとおじいさんの行動を見ている内に両者に妙な連帯意識が発生し、子供たちの目にはただの老人と映っていたおじいさんがだんだんに一個の尊重すべき存在に変わり、まだただ毎日を惰性で暮らし、死をまつばかりだったおじいさんの方も見られているという意識により、身辺を小ぎれいにしたり、という変化がでてきます。もちろんなによりも孤独からの解放のききめでしょう。 昨年の神戸の事件以来、子供に[死]というものを理解させる試みが多く報道されていますが、そういったことを考えると作者の意図が丸見え、という感じで少々興ざめな点もありますが、最後にはやっぱり涙が...心温まる一冊でありました。(1998年7月15日)
| 1998年07月13日(月) |
田辺聖子 おちくぼ姫 |
その他 作者: 日本 出版社・値段:角川 昔、子供用の落窪物語を読み、その後やはり田辺聖子の[舞え舞え蝸牛]という題で読みましたが、これはさらにそれを若い人向けに書き直したとのこと。 いわゆるシンデレラストーリーですから現代向けに脚色しなくても十分面白いように思います。 もちろん原典を読んでいませんからなんともいえませんが、いくら若者を古典になじませようという目的にしろ、ちょっとくだけすぎではないかと思いました。作中人物の心の動きを現代人の発想に変換しているのですが、古典を読んでいて、現代の考え方とのずれを感じることもその魅力ではないかと思います。(1998年7月13日)
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