ミドルエイジのビジネスマン
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2012年04月15日(日) ほとんど区別がつかない

デイサービスを開業した。利用者はまだいない。

半年ほど前に開業計画のお話を聞いてもらった縁で、グループで7人もの訪問者があった。元々は環境保護のために石鹸を使おうという市民運動から始めた人たちなのだそうだ。今では、県議会や市議会に議員を送るほどの力を持つようになった。庭に咲いたというクリスマスローズと水仙の小さな花束を開業祝いに持参していただいた。透明のガラスのコップに活けられた清楚な花の香りがいつの間にか玄関ホールに満ち、幸せな気持ちにしてくれた。

その数日後、開設に向けてお世話になったフランチャイズ本部のメンバーお二人と飲み会を開いた。ちゃんこ鍋をつつきながらなごやかに話をしているうちに、先方も意見を言い、こちらも好きなだけ文句を並べた。

近所の奥さん達と昼下がりのお茶飲み話をしているようであり、また、同じ会社の友達同士の飲み会のようであり、相手と自分の立ち位置があまり違わないので、自分たちがどこの組織に所属しているのかほとんど区別がつかない。この仕事は、立場が違ってもそれぞれの利害が正面から衝突することのない、へんてこりんなところがある。そういう幸せをずっと分かち合うために、資金が続く数ヶ月以内になんとか軌道に乗ってもらいたいものだ。


2012年04月08日(日) 一度だけなら

畑の脇には小さな森がある。農作業の合間にお日様が斜めに射す様子を眺めたり、風のざわめきや野鳥のさえずりを聞いたりするのは楽しみだ。久しぶりに畑に足を向け、早くも立派に成長したアサツキをつまんだり、まだ芽は出ないかとジャガイモの畝を見たりしていると、トランクの蓋を開けたまま、枝のついた木を満載した乗用車が駐車場に乗り込んできた。

悪い予感のとおり、ひとりのオジサンが、育ちすぎて持て余した自宅のヒバの生垣を何本も切って森に捨てようとしているのだ。天気の良い日に気持ち良く時を過ごしていたのに、なんと間の悪いことだろう。一度だけなら、見て見ぬフリをしようと思ったが、幹が腕の太さほどに育ったヒバの木を5〜6本も森の中に持ち込んだオジサンは、トランクを開けたまま帰って行った。

案の定再び荷を積んで現れたので、捨てても置けず、粗大ゴミの不法投棄になりますよと声を掛けた。土に還るからいいと思ったと、一旦屁理屈をこねたが、捨てようとしている場所はそもそもご自分の土地ではないでしょうと返すと、持って帰るという。ヒバの山が土に還る間もなく、森が粗大ごみ廃棄場になるのは目に見えている。大きな車に乗っていて、廃棄のお金がない訳でもないだろうに、平気でああいうことをするかな。

一度だけなら、許してあげる。昔の歌謡曲の歌詞のような、そんな気になったのは、どこかでオジサンがこちらのことを知り、今度は謂れのない悪口を広げるかもしれないなどと一瞬心によぎったからだ。

商店街の食品店など、近所の人を相手にしている小商いではこんな経験はしょっちゅうあるに違いない。子供ではなく、いい年をした立派な身なりの近所の人が万引きをしているのを発見したお店のオバサンなら、どうするだろう。相手がよく買い物をしてくれるお得意さんだったら、あえて見逃すこともあるだろう。ソッと胸にしまわれたままの小さな罪が世間には思ったより沢山あるのかもしれない。


2012年04月01日(日) バンド・オブ・ブラザーズ

利用者第一号になるかもしれないとケアマネジャーから連絡のあった方の条件は、案の定、厳しいものだった。先方はただ送り先に困っているだけかもしれないが、そうだとすれば私達は天に試されている。

隙があれば突撃し、敵わぬときは退却する。レンタルDVDで観たバンド・オブ・ブラザーズのように重戦車の機甲師団に対してライフルだけでも立ち向かうのだ。それを可能にするのはチームの結束力しかない。頼むぜ兄弟、逃げるなヤングボーイ。

思うに、小さなデイサービスが成り立つかどうかは、結局需給バランス次第なのだが、その中で生き残るためには、私達の存在を知ってもらい、期待に応え、その期待を上回る成果を出して信頼を勝ち取るしかない。スタートはゼロからだ。

大丈夫ミスター、私達が救い出します。さあ兄弟、列を組んで進もうぜ、担架は持ったか。


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