台所のすみっちょ...風子

 

 

ささやかな罪 - 2004年01月10日(土)

「1月21日は外で飯でも食うか」

と旦那が言うので

「その日はなんの日でしたっけ?」

と聞き返したところ、それが忘れちゃならない結婚記念日で、

旦那が2人のことを思ってそう言ってくれたのだと知り、

「ありゃりゃ、、またやってしまった」と深く反省したのは

一昨日のことであった。

その場ですぐさま詫びを入れ、「で、どこで食事するつもり?」

と聞くと、彼は柔らかな笑みを見せながら、

「ミン○ン」という。

「ミン○ン」とは家の近所のラーメン屋で、行列ができるほどの店。

豚の背油が浮いた醤油ベースのスープに、分厚すぎるチャーシューが

人気の秘密だ。


せっかくの申し出だったが私は断った。

何故ならそこは、

美味しいけど、

店が狭く席数が少ないため、

ほとんどの客は、入り口近くの小さなカウンターで、

立ち食い。


ということは、

記念すべき日に、

背油の浮いたラーメンを、

夫婦で、

立ち食い?

いくら不景気だからって、

一杯のかけそばじゃあるまいし。



私は思う。

結婚記念日を忘れていた妻の罪。

大切な記念日を立ち食いラーメンで済まそうとした夫の罪。

結婚とは日々のささやかな罪の積み重ねであるのかもしれないと。



おしまい。


...

アイディアマン - 2004年01月09日(金)

夜、11時。

私は玄関の扉を開けた。

不揃いに脱ぎ置かれた夫の靴が見える。

「今日は新年会で遅くなる」と言っていた彼が先に帰っていたのだ。


靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、音を立てぬよう静かに

リビングに入る。

思った通り、彼は酔いつぶれ寝ていた。ホットカーペットの上で。

その姿は、まるで浜に打ち上げられた鯨、またはトドのよう。

「波の音さえ聞こえてきそうだ・・」

そう思いながら、寝ている彼を起こさぬよう、私は鞄をそっと白い革張りの

ソファーに置き、ふと、そう何の気なしに飾り棚に視線を移した。

すると・・・

そこには・・・

猿の・・置物・・?・・かよ!

なんと、棚の一番上の段にオレンジ茶の猿の置物があるではないか。

それは、横向きに座った猿が片手を壺にかけ、笑みを浮べながら、

顔だけを正面に向けている、、というもの。

しかも、その色といい、ニホンザル的な体の作りといい、

明らかに和調であるにも関わらず、

近くまで行って確認したその顔つきは、メガネ猿そっくり。

いったい何国の猿なのだ?

そして何故、私のお気に入りのペンが壺に挿してあるのだ?


慌てて夫を起こし聞いてみた。

「ねえ、ねえ、、あの猿どうしたの?」

「う〜ん、あれぇ〜?あれはねぇ〜今日行ったちゃんこ屋さんでもらってきたの」

「どうして、もらってくんだよ!」

「明けましておめでとうございますってくれたからぁ〜。いいでしょ〜」

「良くね〜よ!」

「これだけは置かせてくれいよぉ〜!ほらほらぁ〜見て〜、本当は爪楊枝立て
なんだけど、俺はねぇ〜、ペン挿してみたんだぁ。ペン立てに使おうと思って。
 ど〜お?」

「・・・・・・・」



あれから2時間、彼は今、すっかり夢の中。

ひっそりとした部屋の中、私は棚の上の猿をもう一度手に取り、

そして呟かずにはいられない。

ペン立てって・・言われても・・・。

どお?って言われても・・・。

壺の穴が狭すぎて、、、、ペンが一本しか入んねぇ―じゃん、、と。



おしまい。


...

共通点 - 2004年01月07日(水)

友人A子は高校の同級生。

住む場所が遠く離れ、会う回数が減った今でも

私達は仲が良い。


が、彼女と私にはほとんど共通点といったものがない。

例えば彼女は、赤点まみれの私と違って

成績はどの教科もトップクラスだったし、

その後、進んだ道も正反対であった。

私が大学を出て、「仕事のためよ〜ん」とかなんとか言いながら、

洋服を買いあさり、着飾ることだけが命の薄っぺらなデザイナーを

している間に、彼女はしっかりとした堅実な仕事につき、

現在もバリバリと働いている。


さて、こんな私達ではあるが、敢えて共通点を挙げるとすれば、

それはお互い「年下の旦那を持つ」ということ。

年も私のとこが5つ下なら、彼女のとこは6つという具合だ。


で、一昨日、東京に戻る前の日のこと。

彼女と彼女の旦那さんを交えて3人で食事をした。

彼と会うのは一昨年の夏以来である。

私は驚いた。

もともとハンサムボーイではあったのだが、

この一年半でさらにその風貌に磨きがかかっていたからだ。

肩までのサラサラとしたロン毛に涼しげな切れ長の目、

そして高くスマートな鼻、顎に生やしたミュージシャンばりのヒゲ。

彼の白い肌で覆われた体は、まるで0.3のシャーペンで描いた素描の

ように細く、美しい。

それは、細々書くより、松○優作の息子に近い、と

言った方がいいかもしれない。


久しぶりに会った彼女の夫。

少女漫画から抜け出たような美男子を鑑賞できたことを

ありがたく思いながら昨日東京に戻った私は、

一足先に帰っていた自分の旦那を2日ぶりに見て、

ふと思わずにはいられなかった。

「・・・ふ、太い・・ご、ごつい・・そして・・オヤジ・・」と。



改めて感じる彼女の旦那との違い。

同じ年下である、ということはその若さから放出される

輝きも一緒であったハズなのに・・・


彼女と私の数少くない共通点。

信じてきたそれが、今、少しずつ崩れようとしている。



おしまい。


...




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