■虹色のマフラーをこの冬はじめて巻いてみた。虹色といっても草木染めのようなやさしい色で、楽しいけれど派手にはならない。通勤の間、このマフラーに出会ったニュージーランド旅行を振り返っていた。13年前の春休み。妹の高校の卒業旅行ということで二人で3週間かけて南島を旅した。最初に滞在した街クライストチャーチで教会を見学したら、日曜礼拝の後のティータイムに誘ってもらえた。MIF(ミルク・イン・ファースト)という言葉をはじめて知った。牛乳の後に紅茶を注げば自然に混ざるのよと教えてくれた女性が「ダニーデン(Dunedin)というステキな街に両親が住んでいるから行ってみたら?」と言ってくれた。ご両親は見ず知らずの東洋人姉妹を暖かく迎えてくれた。「一日4回はお茶をするのよ」とオバサマはおいしい紅茶を何杯も注いでくれた、アイスクリームを添えて食べた巨大なアップルパイのおいしさが忘れられない。地元のハイスクールも見学させてもらい、国語の授業(『怒りの葡萄』が題材だった)に出席したり、技術の授業で作った木工のお盆をお土産にもらったりした。わたしたちが去る日、オジサマは「君たちが僕たちを忘れないように」と毛糸でできた小さな羊を二匹手渡してくれた。写真を撮るとき、ハイチーズのかわりに「Kiwi」と言うのがおちゃめなオジサマだった。ダニーデンの夫妻の紹介で、今度はテ・アナウという自然豊かな街に住む一家を訪ねた。若夫婦と3人の小さな子どもたち。遊び相手ができて大喜びの子どもたちとはすぐに仲良くなれた。ピクニックバスケットを持って自然公園を散策した。とにかく空気が澄んでいて、自分まで透き通れそうなきれいな場所だった記憶がある。一家の家業は羊の放牧。夕方になるとスクーターに乗って丘を走り、羊たちを小屋に追い戻す。若いお父さんの運転するスクーターの後ろに乗っけてもらった。起伏のある草の上を疾走する感覚はたまらないスリルがあった。羊の毛刈りも見せてもらった。ふわふわの毛をバリカンで剃られると羊は情けないぐらいやせっぽちになった。着太りしてたんだなあと驚いた。テ・アナウの一家もダニーデンの夫妻と同じように「ニュージーランドに来たときはいつでもここを家にしていいよ」と言ってくれた。クライストチャーチの教会での思いがけない出会いがなければ訪ねることもなかったかもしれない二つの町のあの人たちは今、どうしているだろう。わたしはあれから3度引っ越してしまったけれど、日本からの手紙は今も同じ住所に届くだろうか。虹色のマフラーを見ながら、そんなことを思っていた。ニュージーランドのウールは日本の虫の口にも合ったようで、青から緑にかけての3センチ四方がごっそり虫に食べられてしまっている。その虫食いを内側に隠し、赤から黄色の部分を外側にして使い続けている。襟元をあったかく包んでくれる七色の毛糸は、心優しくて懐かしいひつじの国の人たちの思い出につながっていて、とても手放せそうにない。そういえば今年はひつじの年。◆いまいまさこカフェfashion gallery 2002年01月15日(火) ノベライズ
2002年01月15日(火) ノベライズ
■成人の日といえば1月15日だったけれど、ハッピーマンデーでそうとも限らなくなった。この3連休は成人式関係のニュースが目についたが、「何も起きなくてよかった」と主催者の市役所や区役所の担当者が心からほっとしたり涙をにじませたりしているのを見ると、なんとも不思議な気持ちになった。何か起きるからイベントなのだと思っていたけど、何も起きないことを祈られるイベントもあったのだなあと。主催者がワクワクしないイベントに出席者がワクワクすることがあるのだろうか。用意する側もされる側も乗り気ではないのに、義務や慣習のように毎年繰り返されている印象もなきにしもあらず。広告代理店やイベントプロデュース会社と組んで、「いいよなー、新成人は」とうらやましがられ、20才であることがプラチナチケットになるようなイベントにしてしまうのもありなのではと思う。さて、自分のときはどうだったかと振り返ると、会場の市民会館の前まで行き、ひさしぶりに会う同級生たちとの昔話に夢中になっているうちに式典は終わっていた。出席した子に「どうやった?」と聞くと、「忘れた」と感想が返ってきた。もらった記念品を見て、みんなで首をかしげた。新成人になってトクした気にはなれなかった。■新聞記事にも成人の日に寄せた記事が目立った。その中で光っていたのは、さだまさしさんのコメントに引用されていた、あるナヴァホインディアンの言葉。「わたしたちが今生きている大地は、先祖から譲り受けたものではなく、子孫から借り受けているもの」という趣旨。わずか数行に、気づきや反省や感謝や思いやりや想像を一瞬でうながしてくれる力があった。新成人にこの言葉を贈るさださんのセンスにも感心した。20才と百ン十か月になるわたしの心にも響くメッセージだった。 2002年01月13日(日) ごちそう
2002年01月13日(日) ごちそう
■考え事をしながら家事をすることが多いので、キッチンの思わぬ場所から思わぬものが出てくる。電子レンジを開けると冷蔵庫に入れたはずの牛乳パックが鎮座していたり、逆に、電子レンジから消えたはずの豚まんが冷蔵庫の中でカチカチに固まっていたりする。今朝、ひさしぶりにホットサンドを焼こうと思ってサンドイッチメーカーの蓋を開けると、こんがり焦げ目のついたサンドイッチがすでにあるではないか。一瞬「!?」となったが、すぐに謎は解けた。前に焼いたのを食べ忘れたのだ。最後にサンドイッチメーカーを使ったのは、いつだっけ。大晦日だったっけ。ひっそりと年を越したサンドイッチは焼きたてのようにきれいだった。キッチンが冷蔵庫並みに寒くて良かった。■サンドイッチメーカーは友人の披露宴の引き出物カタログで選んだもの。前々から職場の同僚たちが「あれは使える」と話していたのを聞いて欲しくなっていたので、飛びついた。明太子とマヨネーズ、黒豆煮、パストラミハムとチーズなど、いろんな具を試してみたけど、今のところツナがお気に入り。ノンオイルのツナにマヨネーズとワサビを混ぜ、チーズを乗っけて焼く。今朝は大好物のブルサンアイユ(ブルサン社のガーリック入りチーズ)を使ったら、新しいおいしさ発見。 2002年01月11日(金) 親孝行
2002年01月11日(金) 親孝行
■エスニック料理のなかでタイ料理と並んで好きなのがベトナム料理。生春巻きと魚醤の味が好き。最近あいついで見つけたのは渋谷の東急東横店地下FOODSHOWにあるサイゴンと恵比寿西に去年末オープンしたNha Viet Nam(ニャーヴェトナム)。サイゴン(写真左)はデパ地下のイートインなので、一人でも立ち寄りやすい。鶏肉のフォーに生春巻きとちまきがついて税込みで900円ちょっと。唐辛子入りのお酢をかけると本格的な味。ニャーヴェトナム(写真中・右)は2階の陽の当たる窓際が気持ちよくておすすめ。靴を脱いで上がる個室は固めのクッションに腰掛けて足を投げ出せるので、掘りごたつ気分を味わえる。デザートのタピオカがおいしかった。ベトナムは行ってみたい国のひとつ。ピンクとオレンジのアオザイを作ってみたい。 2002年01月08日(火) Georg Jensen
2002年01月08日(火) Georg Jensen
■「2時頃帰ってくるからね」と言い残して義父母は出かけてしまい、次男(ダンナの弟)の嫁とともにおせちの準備をすることになった。大阪の実家ではおせちはセルフサービスだが、東京のダンナの実家では朱塗りのお盆に美しく盛りつける。「どうやって並べるんだっけ。覚えてないよねー」と言うと、「去年写真に撮ったのを持ってきました」と盛り付け例がバッチリ写ったスナップ写真を持参している次男の嫁。つくづくえらいぞ。「味がうつらないように、お箸替えてくださいね」とアドバイスを受け、義母が用意してくれた煮物やかずのこや海老や蒲鉾や栗などを手分けして並べていく。「雅子さん、いりこは頭がついているほうがいいですよね」と頭のついたものをキャスティングし直す目配りもさすが。帰ってきた義母は開口一番「まあ、ちゃんと頭のついたのでそろえてくれて!」と感激していた。気のつく嫁がいるおかげで、わたしも一緒にほめられていい気分。今年はちゃんと写真を撮ったので来年はおまかせあれ。一人一人おとその杯を受けて「あけましておめでとうございます」の挨拶をして、おせちをいただき、お雑煮食べて、お茶して、年賀状書いて、また食べて、のんびりのんびり過ごす。夜はNHK-FM『ニッポンハッピーデイズ』を聴く。古きよきラジオ黄金時代を明るく描いた1時間45分の長編オーディオドラマ。 2002年01月01日(火) 幸先1999年01月01日(金) テスト
2002年01月01日(火) 幸先1999年01月01日(金) テスト
■大晦日とは思えないほど大掃除がはかどっていないわが家にダンナの弟夫妻がやってきた。似たもの同士が結婚するように世の中できているのか、なまけ者の長男夫婦とは対照的に次男夫婦は実によく働く。身長が足りなくて替えるタイミングを逃していた電球を次男は次々と替え、その嫁は埃と虫の死骸で汚れた電球カバーを磨き上げてくれる。「掃除が大好きなんです。とくに拭き掃除」と目を輝かせるこの嫁、大阪からクイックルワイパー持参でやってきた。感心感心。ガラス窓がピカピカになった。家の掃除があらかた終わると、次男はパソコンの掃除(ウィルス退治と散らかったファイルの整理)に取りかかり、嫁はうちのダンナが今日になって書きはじめた年賀状にせっせと切手を貼っていく。できすぎた夫婦の協力で、家の中は見違えるようにきれいになった。「電球がつくと、こんなに部屋が明るくなるんだね」とはしゃいでいる私とダンナを見て、次男夫婦は苦笑。今年最後のティータイムは、おみやげに買ってきてもらった大和郷のパウンドハウスのケーキ。ケーキ好きの間で日本一と噂される苺のショートケーキをはじめ、どのケーキも愛らしい姿で誘惑してくる。フォークでつつきあって食べる。来年もおいしいケーキに出会えますように。 2001年12月31日(月) 祈り2000年12月31日(日) 2000年12月のおきらくレシピ
2001年12月31日(月) 祈り2000年12月31日(日) 2000年12月のおきらくレシピ
■名古屋に住む小学校時代の同級生・亜紀ちゃんから「赤レンガ倉庫でやってる石井竜也の展覧会に行くんだけど、一緒に横浜めぐりしない?遊ぶパワーなら負けないよ」と挑発的なお誘い。朝11時に桜木町駅で待ち合わせ。横浜は行くたびに風景が変わっている気がする。また新しい建物ができていたが、ゆったりと距離を保って建てられているせいか息苦しさはない。馬車道と呼ばれるウッドデッキの道を15分歩いて赤レンガ倉庫着。「NUDE」と題されたエキシビジョンは、石井氏が1997年から行っているアートライブ(観客の前で真っ白な立体像に絵を描いていくパフォーマンス)で創り上げた作品約50体を一堂に展示したもの。年ごとにテーマがあり、2002年は「卵」をテーマにテロでゆれる世界に平和のメッセージを発信。「混卵」「戦卵」など作品のタイトルのつけ方もユニーク。■赤レンガ倉庫のテナントを冷やかし(CA4LAで帽子とっかえひっかえしたり、ランドリーでクリスマスプレゼントのシャツを買ったり)、中華街へ。重慶飯店で餃子や小龍包や大根餅など飲茶のランチ。土産屋めぐりをし、怪しいチャイナ服ロボットに手招きされて奥まった雑居ビルの中へ。雑貨屋がいろいろ入っていて楽しいところだった。椰子の実の器に魅せられて観葉植物を、アイデアに膝を打ってポケットつきマグネットを買う。長い行列の江戸清のチャーシューパオ(焼豚入り豚まん)をほおばる。お土産に買った同發飯店の豚まん2個も家に帰ってぺロリ。完全に豚まん中毒だ。通常の体積の倍は軽くあるジャンボ豚まん、3個でいったい何グラム!?■夕方5時から石井竜也GROUND ANGELなるイベントをやるということで、30分ほど歩いて赤レンガ倉庫に戻る。地上に天使が舞い降りるってことで倉庫の前の石畳に映像が映し出されるのだが、真横から見るとよくわからなかった。倉庫の1階にある馬車道アイスは、かなりヒット。上にかぶせた最中の皮をスプーンで割りながら食べる。「ハーゲンダッツでよりどり7つ盛りの日(そういうのが名古屋の店にはあるらしい)もぺロリと食べれる」というアイス大好きな亜紀ちゃんも大満足。おそろしくきれいな夜景に口を開きっぱなしにしながら横浜の町を後にする。建物ごと浮かび上がるような光の量にも、それを狙って三脚を立ててカメラを構える人の数にもびっくり。いやはや昼も夜も絵になる街。
■ロッテルダムに赴任中の夫とロンドンに留学中の妻という夫妻が一時帰国して訪ねてくれる。「500キロの距離だから東京-大阪みたいなものよ」と言われ、ヨーロッパだなあと感じる。英語で仕事をすることについては「語学力の問題よりも、日本語で言いたいことを持っているかどうかが大切。伝えたい気持ちがあれば伝わる」という言葉に納得。「イギリスの水はコーヒーには向いていないので紅茶が発達した」「ヨーロッパの人はアメリカが好きじゃないのか、スタバを見かけない」「ロンドン大学と名乗る大学は何十とある」「ロッテルダムでカフェというとマリファナのことを指す場合があるので注意」などと興味深い話を聞かせてもらう。おみやげのオランダコーヒーはカフェオレ向きの苦味が気に入る。こってり甘いメープルシロップのワッフルと一緒にいただく。■海外に暮らす知人が年々増えてきた。おさななじみで日本一おしゃべりなヨシカはべルリンで研究生活を送っているので、日本はここ数年少し静かだ。彼女から届いたメールに書かれていたベルリンの映画事情が面白かった。(以下引用) 「さすがにベルリンは大きな映画祭をやるだけ心意気のある街で、映画の人気度はちょっとしたもの、それにものすごい数の映画館があります。それにもピンキリで、日本のワーナーマイカルみたいな音響も座席も整ったキレイなのや、この前行ったある映画館は、広い部屋に、普通の家にある2,3人掛けのソファーを100人分くらい並べたものでした。映画は白い壁に映し出されて、部屋の中は黄色、水色、黒や赤などナド色とりどりのソファー、部屋の脇にはバーがあって、映画に支障の無い様に赤外線ランプみたいなランプの下で商売やってます、客はバーに座ってでも、ソファーに座ってでも映画を見ることができます。とても変わった風景でした」
■年賀状を書く。メールがあるので以前よりはありがたみは減ったけれど、「年賀状だけで(年賀状があるおかげで)つながっている人」は結構いる。年に一枚が大事な意味を持っている人から順に書くので毎日のように会っている職場の同僚は後回し。20枚ほど書いてから、はっと気づく。切手を買ってない。できるだけ早く届けたいので、郵便局が開く連休明けまで待てない。虎の子の切手コレクションをくずすことにした。コレクションといっても大げさなものじゃなくて、いろんな種類の記念切手を少しずつ取っておいたもの。マニアックな記念切手や花シリーズ、日本の歌シリーズ、建築シリーズなどなど。12年前の未年のお年玉切手もある。当時は41円だった。10円足して出してみよう。ガーデニングをはじめた友人には花の切手、猫に縁のあるあの人には猫が日向ぼっこしている切手、元気かなあと気になる彼女には「上を向いて歩こう」の歌詞が入った切手、新婚さんには花嫁の切手‥‥とうまい具合にマッチングできる場合はいいのだが、シンクロの切手、これはどうしよう。しゃれのわかる高校時代の同級生、O君なら笑ってくれるだろう。競輪の切手が当たったKちゃん、免許取立てにこじつけるのは無理があるよね。お許しを。こうして42枚の年賀状が旅立った。■夜は銀座小劇場で鉄カフェ1st drip(第1回公演)を見る。座長(でいいのかな)で脚本・演出の川上徹也さんに招待していただく。16のショートコントというかショートショート劇。いつもの川上さんの作品とは趣が違い、どっと爆笑という感じではなく、くすっと笑えるような話。肩の力を抜いて、それこそカフェでお茶するように楽しめる1時間40分だった。個人的にはいろいろと疲れもたまっていたときで、味つけといい温度といいちょうどいい飲みごろ。次回来店時には別のものが飲みたくなっているかもしれないけど。役者さんたちとお話ししたいなあと思ったら「一緒に飲みに行きませんか」と川上さん。喜んで!と返事したものの川上さんを見失ってしまい、一人で銀座4丁目の角のル・カフェ・ドトール(別名:高級ドトール)でお茶して帰る。 2001年12月21日(金) サプライズ
2001年12月21日(金) サプライズ
■わたしの健康運を司っている星があるとしたら、その星は今、とても悪い位置にあるのではと思う。前代未聞のかぶれ事件に続いて、今年最悪の風邪を引き、昨日病み上がりで出社したら、頭がふらふらしていたせいか、指一本で引出しを開けようとしてしまった。伸びきった爪が一身でGを受け止めた瞬間、メキッといやーな感覚が走った。真中あたりで爪が横に裂け、割れ目から血がじわーと滲んでくる。あまりの痛さにギャーギャー騒いだら、血に弱いまわりの男性社員たちのほうが青ざめた。かろうじてつながった爪を死守しなければ生肉が裸になってしまう。まずはこの伸びた爪を短くせねば。こいつがでしゃばるから災いを招いたのだ。しかし爪切りを当てるだけでも激痛が走る。爪の裂け目を押さえて固定し、慎重に爪を切る。それからうがい用に持っていたイソジンで消毒し、バンドエイドで固定。だが、きつく巻くとうっ血するので包帯に切り替える。お風呂に入るときはビニール袋をかぶせて水から守り、寝るときは手袋代わりに靴下をはめて衝撃を避け、生爪様の機嫌を損ねないように気を遣いながら生活している。ちょっとでも手荒なまねをしたら生肉の刑。 2001年12月20日(木) 幸せの粒
2001年12月20日(木) 幸せの粒
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