2002年03月15日(金)  月刊公募ガイド

■『月刊公募ガイド』という雑誌がある。コンクール情報(ハガキで応募できるお手軽ものから文芸、写真、アート、料理などなど)、入賞のノウハウ、輝かしい受賞作品、受賞者の言葉、第一線で活躍する人たちのアドバイスなどがギッシリ詰まっていて、好きなことを極めて賞金やプロの座を射止めたい人にはサイコーの手引書である。ここまでヨイショするのは、コピーもシナリオも公募ガイドに教わったから。わたしにとって母校ともいえるこの雑誌に、今日取材を受けてきた。8年前に一度取材していただいた時は『公募ファン』というページだったが、今回は『シナリオライターのお仕事』というカッコいい連載ページの一回分を飾ることになっている。■取材は渋谷の喫茶店で編集者さん、ライターさん、カメラマンさんと女性ばかりで和やかに進行。4月9日売りなので、27日公開の『パコダテ人』を紹介するには絶好のタイミング。ストーリー発想の裏話、前田監督のシナリオ発掘、映画化にこぎつけるまでの道のり、函館市民の協力、全国に広がる応援の輪……幸運な出会いに恵まれ、世界が広がってきたエピソードを披露する。昨日プレス試写を見たばかりのライターさんが「この映画をつくる過程そのものがドラマですね」と熱心に耳を傾けてくださるので、気分がよくてついつい話しこみ、1時間の予定時間を30分オーバーしてしまった。写真撮影は「なるべく引きで撮ってくださいね」とお願いし、バッグにつけたピンクのシッポを強調。カメラマンさんは、シッポが風になびく瞬間を狙ってくれた。■取材後、「今井さんからお便りを受け取って、わずか1週間。まさに引かれ合っているとしか思えません」と編集者さんからメール。「次号は誰を取材しようか」と彼女が考えあぐねていたところに、「公募ガイドから生まれた映画のご案内です」と封筒にデカデカと書かれたパコダテ人試写状が届き、すぐさま取材を申し込んだとのこと。こちらこそ、シナリオを書くきっかけをくれ、函館の映画祭の存在を教えてくれ、『パコダテ人』誕生に導いてくれた雑誌に紹介してもらえるとは、願ってもないことだった。相思相愛の取材の成果をお楽しみに。


2002年03月14日(木)  『風の絨毯』記者発表

■夕方6時半より『風の絨毯』製作記者発表。会場の銀座ソミドホールに開始5分前に到着。用意した席はプレス関係者で埋まり、作品紹介パネルを並べた左右の壁には製作関係者がずらり。最後列に居並ぶテレビカメラの数も半端じゃない。司会者の紹介でプロデューサーの益田さん、ショジャヌーリさん、タブリージーズィー監督、主人公さくら役の柳生美結ちゃん、その父・誠役の榎木孝明さん、母・絹江役の工藤夕貴さんが登壇し、それぞれが作品に込める思いを語る。企画段階から作品に関わっている工藤さんは、「こうして製作発表できるところまで来たんだなあと感無量。9月のテロ以降考えさせられることは多いが、みんな同じように家族がいて笑ったり泣いたりするんだというこんな作品が今こそ必要だと思う」。イランから帰国したばかりの榎木さんは、1か月半に及ぶロケを振り返り、「大変面白い経験をした。台本は、あってないようなもの。監督は映画は生き物だと言い、役者のそのときの実感を言葉にさせる。さくらには一切台本を読ませず、撮影当日になって設定だけ与えた」。美結ちゃんは「撮影は大変だったけど、みんなが優しくしてくれて楽しかった」。監督は「日本は急速に未来へ向かうなかで、大切なものをどこかに置き忘れている。だが、過去がなくては現在も未来もないわけで、この作品では過去の尊さを見つめることをしたかった」。ショジャヌーリ氏は「ペルシャ絨毯はたくさんの結び目からできている。この映画も絨毯のように編んでいる最中だが、合作映画を撮る作業そのものが文化の架け橋だ」。映画初プロデュースの益田さんは高山の祭屋台の写真を見せ、「伝統の祭屋台の見送り幕にペルシャ絨毯をかけるという実話から生まれた作品。日本とイランの文化交流になることを願う」。続く質疑応答では、監督に日本の印象を聞いたり、榎木さんにイランロケの様子を聞いたり、次々と手が挙がる。熱心にメモを取るライターさんたちを見ながら、この人たちの書いたものがすべて記事になるのかなあと圧倒される。フォトセッション中も質問が飛び交い、記者発表後には各社の個別取材が続いた。■会場で「パコダテ人の今井さん?」と声をかけてくださった映画ライターさんと名刺交換して、びっくり。会社の先輩コプーライターの知り合いということで、昼間ウワサをしていた人だった。


2002年03月12日(火)  FOODEX

FOODEX

■フーデックスというなんとなく大阪弁っぽい響きのイベントは、英文表記にするとFOODEX、食べ物の国際見本市のこと。『風の絨毯』がらみでお邪魔した『JAPANTEX』はファブリックの見本市だったが、こちらの主役は口に入る物。会場の幕張メッセは世界中の食べ物のにおいと、それを売り込む人々そして新しい食材を求める人々の熱気でムンムン。ほとんどのブースで一口ずつ試食が用意されていて、来場者はそれを飲み食いしながら広い会場を回り、商談を繰り広げる。うどん、草餅、生春巻き、黒タピオカ入りミルクティー、野菜ジュース、シャンパン、チリワイン、ニュージーランドのビール、ハンガリーのチキン煮込み、チーズ、ガーリックトースト、クランベリーチョコレート、鮪のパエリア……もう胃の中は万国博状態。会社のお得意先が出展している関係で視察に訪れたのだが、広告代理店のコピーライターなど出展者にとっては商談の対象外(色分けされた名札を見ただけで関係者かどうか識別できる)なので、誰も話し掛けてこない。それでも「おいしいですねえ」「原材料は何ですか?」とこちらから質問したり、見本をもらったり、ペルシャフードのブースでは『風の絨毯』の話をしたりして楽しむ。一緒に回ったデザイナーのF氏は「俺は意味のない会話はしない」と遠巻きに見ていたが、要はいろんな人と話をするのが好きなのだ。■昨日からカバンにシッポをつけて出歩いている。撮影で使った全長50センチほどのショッッキングピンクのシッポ。上司や同僚は、わたしが何を身につけていても、もはや驚いてくれないが、世間の視線も拍子抜けするほどあっさりしている。せめてFOODEXの来場者の目に留まっていればいいのだけど。


2002年03月11日(月)  漫画『軍鶏』

■漫画をあまり読まなくなった。興味がなくなったわけではなく、時間と機会がないだけだ。目の前にあれば、むさぼるように読む。今日、美容院で手に取ったのは一条ゆかりの『デザイナー』。親の顔を知らずに育ったトップモデルが、母親だと知ったトップデザイナーを失脚させるために執念を燃やし、ファッション界を舞台に骨肉の争いを繰り広げるジェットコースターな展開。自分の髪の毛そっちのけで読みふける。「私は漫画中毒ですね」と言い切る美容師さんが「今はまっている」と紹介してくれたのは、『軍鶏』。刑務所を出て更正する男がボクシングに目覚める話!?タイトルのつけ方が渋い。


2002年03月10日(日)  循環

■春らしい晴天。ルッコラとデージーを植える。ルッコラはゴマの香りのハーブ。おいしく育ちますように。■夕方、スポーツジムへ。講習を受けてから初めてなので、指導員さんがつきっきりでマシンの使い方を説明してくれる。2時間で十分汗をかく。何年も見向きもしなかったスポーツ飲料を飲み干す。晩ごはんがおいしい。米が進む。ダンナの沖縄土産の紅いもスイートポテトをぺろりと食べ、さーだーあんだぎーに手を出す。さーだーは砂糖、あんだぎーはドーナツを意味するらしい。運動不足解消のつもりが、食べ過ぎて太ったら悪循環だ。■今夜の『あるある大辞典』のテーマは、リサイクル。自分のゴミの捨て方が間違いだらけなのを知る。ティッシュの箱やDMの封筒からビニールをはがして古紙回収に出すのはえらいと思っていたが、新聞と一緒に出してはいけないらしい。新聞と折り込みチラシ以外の紙は雑誌扱いで別にまとめるのが正解。正しいリサイクル方法を知らしめるには、テレビは手っ取り早い。「地球の健康は人間の健康につながる」という視点で取り上げた番組の姿勢に共感。ドイツに行ったとき、ガラス瓶を色別に分別する細かさに驚いたが、「地球を大事にする」教育が徹底しているせいかもしれない。


2002年03月09日(土)  映画『カンダハール』

■今日は一人だ。何をしよう。映画を観よう。何にしよう。新聞の映画情報欄とにらめっこ。『アメリ』がいっぱいと思ったら『アメリカン・スウィートハート』が混じっていた。アメリはタイミングが合わず、予告を見て気になっていた『カンダハール』(監督・脚本・編集 モフセン・マフマルバフ)を選ぶ。それにしても東京で上映されている映画の数と言ったら!■新宿武蔵野館で単館上映。早めに着いて新宿で買い物する。大阪で一目惚れしたファッションブランド『EL RODEO』がルミネに入っていたはず。「そっちからDM送らせますわー」と大阪の店の姉ちゃんは調子いいこと言ってたが、いまだに来ないので、探し当てて乗り込む。こちらの店員さんもノリノリで、「お姉さんが入ってきた瞬間から、おすすめしたい服がぱーっと浮かんだんよ!」と大阪弁で次々と勧めてくれる。襟と袖に毛糸のフリルのついた長袖Tシャツと裾がカギ裂きになった黒いパンツをお買い上げ。パコダテ人のチラシを渡すと、レジの後ろの壁にバンッと貼ってくれ、「映画好きなんですよ。うちの兄貴もむっちゃ好きでねー。今日はお姉さんに会えてよかったわー。また来てねー」。大阪弁の買い物は気持ちいい。■新宿武蔵野館に入るのは初めて。入場券売場で「学生さんですか?」と言われる。観る目あるのかないんだか。作品のセレクションはなかなかよく、『少年と砂漠のカフェ』『鬼が来た』などそそられる予告編がいくつかあった。さて本編。カナダ在住のアフガン人ジャーナリストが、命の危険を冒してカンダハールをめざす。地雷に両足を取られてアフガニスタンに置き去りにされ、自殺を思いつめる妹に、生きる希望を届けるために。救いのないラストはいただけないが、アフガンに生きる厳しさの一端を垣間見れたようで見ごたえがあった。とくに強烈だったのは「地雷」という現実。道に落ちた人形には地雷が埋め込まれているから触ってはいけないと指導される子どもたち。地雷で手や足を吹き飛ばされた人々。その生々しい傷口。数が間に合わず、サイズも合わない義足。落下傘で降りてくる義足に向かって先を争う松葉杖の集団。海外の公共広告で「LANDMINE」撲滅を訴えるメッセージをよく見かけるが、地球のあちこちにこんな恐ろしいものがまだいくつも埋まっているなんて、とんでもないことだ。劇場を出て、新宿の雑踏を歩く。踏んづけて困るのはガムぐらいだ。平和だ。同じ星に生まれてきて、この差は何なのか。


2002年03月08日(金)  言葉の探偵、『天国の特別な子ども』を見つける。

友達の男の子から頼まれた「詩の捜索」をメールでもやってみる。「ある詩を探しているんだけど、心当たりある人いますか。10年くらい前、朝の番組で紹介(たぶんテレ朝)。障害をもった子供の親たちの会の会報に掲載されたらしい。作者はイギリス人でフツーの女性。天国?で天使たちが、生まれてきたある子供の行き先について話し合うという内容です」と送ったところ、「テレ朝には聞いた?」とミナちゃんから。「友達が心の中で大切にしまっていた詩だから、人の記憶をたどって探したい」と返信すると、「『クイックレスポンスが一番大事』って思っちゃって、こころの余裕がなくなってる自分に気が付いたよ」と返事。続いてNちゃんから「ダウン症って別名:エンジェル病って言うんだよね。ダウン症の子供って、とっても心が綺麗で天使の様ってところからついてるらしいけど。そのあたりから探すと分かるのかな?」とアドバイス。「お母さんから子どもの頃によく似た話を聞いた」という情報も。そしてMちゃんから「Edena Massimilla(エドナ・マシミラ)の『Heaven's Very Special Child(天国の特別な子ども)』じゃない?Edenaは米ペンシルバニア州にあるマクガイア・ホーム(障害児療育施設)のシスターのはず。この詩は日本の障害をもつ子の両親へのメッセージらしいけど」と原詩と訳詩(大江裕子訳 『先天異常の医学』木田盈四郎著 中公新書より)が送られてくる。これから生まれる命の行き先を話し合う天使たちが天の神様に向かって「この子は特別の赤ちゃんで、たくさんの愛情が必要」だから「この子の生涯がしあわせなものとなるように この子のためにすばらしい両親をさがしてあげて下さい」と訴える。読んでみて、きっとこれだと思った。依頼人にメールを転送すると「ビンゴ!」。この詩を届けたい人がいるらしい。お騒がせした友人たちも「いい詩だね」「わたしもこころが豊かになったよ」「言葉って難しいけど感動もさせれるから凄いよねぇ」と言ってくれる。こうして『言葉の探偵』の初捜索は無事終了。

HEAVEN'S VERY SPECIAL CHILD

A meeting was held quite far from Earth!
It's time again for another birth.
Said the Angels to the LORD above,
This Special Child will need much love.

His progress may be very slow,
Accomplishments he may not show.
And he'll require extra care
From the folks he meets down there.

He may not run or laugh or play,
His thoughts may seem quite far away,
In many ways he won't adapt,
And he'll be known as handicapped.

So let's be careful where he's sent,
We want his life to be content.
Please LORD, find the parents who
Will do a special job for you.

They will not realize right away
The leading role they're asked to play,
But with this child sent from above
Comes stronger faith and richer love.

And soon they'll know the privilege given
In caring for their gift from Heaven.
Their precious charge, so meek and mild,
Is HEAVEN'S VERY SPECIAL CHILD.

天国の特別な子ども

地球からはるか離れたところで話し合いが開かれました。
また新たな命が生まれます。
天上の神に向かって、天使たちは言いました。
この特別な子どもには、たくさんの愛が必要です。

この子の成長はとてもゆっくりかもしれません。
成果は目に見えないかもしれません。
だから、地上で出会う人々に
人一倍目をかけてもらわなくてはなりません。

この子は、走ったり笑ったり遊んだりしないかもしれません。
この子の考えていることは、わかってもらえないかもしれません。
何をやってもつまずき、
障害児として認められることになります。

ですから、この子の行き先は慎重に選ばなくてはなりません。
幸せな人生を送れるように。
ですから神様、あなたのために
特別な任務を果たせる両親を探しましょう。

両親はすぐには気づかないかもしれません。
自分たちに求められている特別な役割に。
けれども天から遣わされた彼らの子によって
二人の信仰は強まり、愛は深まるでしょう。

やがて両親は悟るでしょう。
天国から贈られたこの子を育てることは
神様の思し召しなのだと。
優しく穏やかな、彼らの尊い授かりものこそ
天国の特別な子どもなのだと。

By Edna Massionilla
December 1981
The Optomist- newsletter for PROUD
Parents Regional Outreach for Understanding Down's Inc.
訳:今井雅子


2002年03月07日(木)  誤植自慢大会

会社の仕事では企業の広告を書いているが、先日ヒヤッとする出来事があった。「1,000円」と打つべきコンマがピリオドになっていて「1.000円」と1000分の1にデノミされていたのだ。恐ろしい価格暴落!初校(印刷屋さんから最初に上がってくるチェック用の刷り原稿)段階で気づいたからよかったものの、見落としたまま雑誌に掲載されていたら、首が飛ぶところだった。1000円だったら欲しくても買わない物でも、1円だったら要らなくても買ってしまうのである。誤植はコピーライターの命取りだと常々脅されているが、慣れは油断を生む。たまにこういう緊張が走ると、しばらくは血眼で校正するようになる。

コピーライターが集まると「今までにやった、いちばんすごい誤植自慢」話になる。「活き活きキングほっき貝」の「ほ」に濁点をつけたまま世に出してしまったE氏が、わたしの知る最強の誤植王。彼を超える失敗はまだ聞かない。「植」は「写植」の植。誤植は文字の植え間違い。この頃はコンピュータで作ったデータをそのまま印刷に回すので、写植を使うこともめっきり減った。

文字を見たら校正してしまうクセがついているので、人よりも誤植が目についてしまう。職業病だ。函館港イルミナシオン映画祭から送っていただいた前回のシナリオコンクールの入賞作品集を一気に読んだが、「てにをは」や漢字の間違いがあまりに目についたのが惜しまれた。せっかく作品の世界に入り込んでいるのに、誤植のたびに立ち止まり、現実に引き戻されてしまう。校正したのに作者が見落としたのだとしたら、もっと自分の言葉に責任を持つべきだし、出版する側も気をつけてあげて欲しい。かく言うわたしも、ちょくちょく誤植をやらかし、気づいては訂正している。


2002年03月06日(水)  家族

■ひとりで食事をするのが苦手なので、仕事が早く終わってしまった日は、ダンナの実家に行くことが多い。「おかえり」とダンナの両親に迎えられ、一緒に晩ごはんを食べる。「お嫁さんが一人で来るの?って珍しがられるわよ」と言うお義母さんは、うれしそうだ(多分)。パコダテ人のチラシを特製プレスリリースとともにせっせと知人に送ってくれているお義父さんは、嫁がかわいくてしょうがない(恐らく)。円満のコツは、「相手に好かれていると自惚れること」かもしれない。もうひとつは、「思っていることは遠慮なく言うこと」。わたしが美容院の兄ちゃんの気まぐれで金髪にされたとき、「あら失敗?」と正面から突っ込んできたのは義母だけだった。わたしも気がねなくダンナが酔ったときの醜態や料理の失敗談を披露し、笑い飛ばしてもらう。ダンナの無断外泊に怒り狂ったとき、「うちに家出する?」と言われたのには笑った。実家に帰るならともかく、ダンナの家に帰らせていただくなんて、聞いたことない。■嫁というより娘(この年で図々しいが)になれたのは、高校時代の留学経験が役立っているとも思う。写真でしか会ったことのないアメリカ人一家にいきなり送りこまれ、家族として過ごした一年。アメリカ人とだって家族になれるんだから、好きな人の両親やきょうだいと家族になれないわけがない。


2002年03月05日(火)  情熱

■秘書のKちゃんと会社近くのアジアン・ヨーロピアンダイニング『STYLO(スタイロ)』でランチ。このお店の人気メニューはトマト風味のイタリアン石焼ビビンバ。すぐに売りきれてしまうのだが、今日もまた「ついさっきまであったんですけど」と言われてガックリ。そこに隣のテーブルについた外人さんの男性二人組が「ビビンバ!」と注文。ないと告げられた途端、男の一人が"Oh,no"と身もだえして、全身で不満を表現し、相棒の男に「Sorry.俺が誘っておきながら、なんてザマだ」と頭をかきむしって悔しがった。「That's OK.他のものを注文しようよ」と相棒がなだめても、「It's my fault.すべて俺が悪いんだ。俺のせいだ」と頭を抱える。「お前は悪くないよ」「いいや、俺は悪者にされたっていいんだ。だけど君はわざわざこの店までビビンバを食べに来たというのに……」と延々とやっていて、わたしとKちゃんは「ビビンバ一杯でこんなドラマチックな展開になるとは」と顔を見合わせつつ、「この剣幕に気おされて、ビビンバが出てきたら、今度はわたしたちが暴れよう」と話した。結局、男二人はカレーを食べることで落ちついたようだ。向かい合って座っている相棒君に「ねえ、こっちに来ない?」と自分の右横の席を指差す、かきむしり君。ビビンバにかける情熱の正体は、こういうことだったのか。

<<<前の日記  次の日記>>>