日々の泡

2010年03月31日(水) 高橋克彦自選短編集 3時代劇編読了

後輩のOさんに大江戸線で久しぶりに会い、翌日貸してもらった一冊。電車の中で説明されたが、なかなかイメージを浮かべることができなかったが、読んでみて納得。解説によれば、高橋克彦は作中人物に肩入れするため、何度もいろいろなシチュエーションで描きたくなるらしい。有名な歴史上の人物が惜しげもなく配置され、自由に動き回るのが本当に楽しい。最後の牢名主となっている高野長英には驚いたが、史実であることを知り、さらに驚いた。シリーズ物から何編かずつ選ばれているのだが、どのシリーズも読んでみたくなった。それぞれに丁寧な解説がついているのも興味深かった。



2010年03月25日(木) 山本一力著「赤絵の桜」読み始め

高橋克彦の短編集の合間に味見をする。図書館で借りたのだが、返却期限を過ぎてしまった。読むか、返すか、微妙なところである。高橋克彦と同時に読んでいるので、時代が同じこともあり、かなり混乱しているが、やはり読んでみたいという結論に達する。



2010年03月15日(月) 松本清張著「草の陰刻」読み始め

裏表紙より「松山地検庁舎の怪火で事務官が焼死、事故として処理された。だが、死亡した元検事の娘からの手紙に不審を抱いた青年刑事は真相追跡を始めた。そして浮かび上がるのは暗い過去を抹殺しようと普請する黒い影」若いころに犯罪を犯した人間が、政治家となるが、未解決事件として保管されている調書を焼くことによって過去を隠蔽しようとする。なかなか面白かったが、題名が出てくる箇所を見落としたらしいことが残念である。



2010年03月12日(金) 我孫子武丸著「弥勒の掌」読了

お弁当特集をしている「ESSE」を買うために立ち寄った啓文堂にて購入。書店のお薦め本NO.1そして大どんでん返しという帯の言葉についつい買ってしまった。本当に懲りない人間である。読み始めてすぐに後悔したが遅かった。昨日まで松本清張を読んでいたせいか、作品の品格の違いにうんざりした。語り手は、共に妻を失うことになる高校教師と警察官である。最後のどんでん返しとは、この二人がお互いの妻を殺害していたというオチであった。驚くことでもなんでもない。もはやどうでも良いという感じだった。そこにITをふんだんに利用して情報操作により10年で多くの信者と資金を得ることができた新興宗教がからむ。最後は高校教師も警察官もこの宗教法人に取り入れられていく。悪は悪といなおっている宗教法人のほうが、かえって一市民として偽善家ぶっている二人より清清しく感じた。 早く古本屋に売ってしまいたい一冊だった。



2010年03月10日(水) 松本清張著「球形の荒野」上下巻読了

一年ほど前に冒頭の数行が雑誌に紹介されていて、妙に惹かれ読みたいと思っていた一冊。先週図書館で1975年1月発刊の文庫を借りてきた。年月で紙が劣化し今にも破れそうだ。芦村節子が薬師寺から唐招提寺への道を辿るあたりから話は始まる。懐かしい道のりである。節子には戦時中にヨーロッパの任地で亡くなった外交官の叔父がいた。野上顕一郎という。彼は奈良の美しさを幾度となく節子に語った。唐招提寺の芳名帳にふと節子は「田中孝一」と書かれた文字を見る。それは亡き叔父の筆跡にそっくりだった。叔父は北宋の書家米フツの書体を習っていた。冒頭を詳しく書き込んでしまったが、結局彼は、戦争を早く終結することが日本を救う唯一の手段と信じ、表面上日本を売り、死亡したことにしフランスに亡命し、フランス国籍を得、結婚もした。節子は顕一郎の日本に残した妻の妹であった。 娘もいた。久美子といい、既に勤めに出ており、添田という新聞記者の恋人もいた。この二人もからみ、ストーリーは展開していく。最後は、久美子が実の父とも知らない顕一郎と海を眺めながら「七つの子」を歌う場面で終わる。なかなか充実した読後感であった。そうそう、題名の「球形の荒野」は次の一節に由来する。「野上さんにとっては、パリも砂漠も同じことさ。地球上のどこへ行っても彼には荒野しかない。結局国籍を失った男だからね。いや、国籍だけじゃない。自分の生命を十七年前に喪失した男だ。彼にとっては、地球そのものが荒野さ」



2010年03月03日(水) 松本清張著「波の塔」上・下読了

3/1に上巻を読み始めるが、深大寺が出てくるあたりで、これが3度目であることに気づく。それでも全く登場人物・筋に記憶がない。そういえば、記憶にある深大寺は深夜であったから勘違いかもしれないと思えば、しっかりと夜の深大寺も出てきた。大体、10年以上前に読んだときも深大寺のところで過去に読んだことを思い出したのだ。ここまで記憶に残らないというのはさすがの私も驚いた。深大寺よりも最後の場面となる樹海の方が余程記憶に残りそうなものなのに。本文もさることながら、今回あとがきが記憶に残った。当時、樹海でこの本を枕にした女性の遺体が見つかったそうだ。枕にするくらいだから文庫本でなく、単行本だろう、などと変なことを思った。あとがきを書いているのは女性であり、自分でもいかにも女性らしい見方であると自覚しつつ、最後に頼子が自殺を選んだことに対して、結構意地の悪い書き方をしている。確かに彼女は、嫌悪しつつも夫の穢れた金で、着飾って生きてきた女性である。検事という職を失った小野木との今後の生活は、幸せになれるだろうかと思わざるを得ない。テーマは官庁の汚職で、頼子の夫はいわゆる政治ブローカーであった。彼の頼子に対する愛の葛藤も、結構後から思い出すと美しいような気がした。


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