日々の泡

1998年04月29日(水) 遠藤周作 深い河

純文学小説
作者:現代 日本
出版社・値段:講談社 1,748円 [ダディー購入時カムフラージュ本

死ぬ間際に自分は必ず転生するから探してほしいと言い残した妻の言葉に半信半疑ながらも妻をさがす旅に出る男をはじめとしてインドツァーに参加した数名の男女にスポットを当ててその心の旅を描いています。  死と再生、そして宗教と愛が語られていきますが、作者自身の探求の道であったであろう事は間違い在りません。 現代では[死]は誰もが避けられないものであるにもかかわらず、覆いをかけられて日常からは隠されているため、生と死があまりにも隔絶しているように思います。(それだけに死が恐怖の対象となっているのでしょう) 作中、[(ガンジス)河は相変わらず黙々と流れている。 中略 ここでは死が自然の一つであることが顕然として感じられるのだった] という文章に、飛行機嫌いの私ではありますが、いざとなったら死期が近づいた象が象の墓場に行くようにインドに行こう...などとふと思いました。 河にちょっと足を踏み入れるように[死]に入っていけるのであれば、人間はどんなに幸せに生きられることかと思います。  学生時代、何冊か遠藤周作の宗教物は読みましたが、そのころはまだ基督教的神の愛に重点が置かれていたように思いますが、ここに至って、すべての宗教の垣根を取り払ったところに真の神の姿を求めようとする作者の思いを感じるように思いました。 作中人物はそれぞれの苦しみを持っているのですが、その救済としてたとえば[鳥]やボランティアの青年が登場します。 神はあらゆる物の中に存在するという文中の言葉が単に表面上の言葉ではなく、妙に説得力をもって読了後の余韻として残りました。 1998/4/29



1998年04月28日(火) 三浦綾子 銃 口

純文学小説
作者:現代 日本
出版社・値段:小学館 上下各619円

純粋で理想家の主人公は、小学校時代に既に教師こそが自分の天職だと思い定めるが...。 大正天皇の崩御に始まり、昭和天皇の大喪の日に終わるこの小説はまさに昭和史そのもの。治安維持法に触れたとして監獄に入れられたり、結婚式の直前に赤紙が来たりと、さまざまな挫折を経験しながらも、主人公が成長していく様を、常に迷い続ける心の葛藤や宗教の問題などを織り交ぜながら描いています。   と、ぐちゃぐちゃ書きましたが、 とにかく全編を通して人間味があふれかえっていまして、なんだかんだと言いながら、圧倒的に善人が多く登場する小説です。 実はこういう小説に一番弱い...。1998/04/28



1998年04月26日(日) ジェフ アボット 図書館の死体

ミステリー小説
作者: 米国
出版社・値段:早川書房 680円

続刊が出ているというのにいまさらですが。いわゆる素人探偵物。 ミステリーなので詳細を書くことは控えますが、殺された女性の持っていたリストには町の人々の罪が聖書の中の一節で示唆されていたりして最後まで面白く読めます。 また帯に有るように感動的で心温まるラストシーンもあります。(でも帯にこう書かれると、感動しなかったらどうしよう、とか涙を拭くハンカチを用意してしまったりして、ちょっと身構えてしまいます)でもちょっとひっかかるのが、素人探偵という設定。 確かにおもしろいのですが、素人ゆえのあまりに無防備で感情的な捜査にはちょっと首をかしげたくなります。 一体公の機関は何をやっているのか、と思われるほど、全体としてのバランスが悪いときがありますね。 余程必然的な状況作りが為されていないとちょっと弱くなりがちです。  1998/4/24 9:10AM



1998年04月15日(水) 郷ひろみ ダディー(爆)

ノンフィクション・ドキュメント
作者:現代 日本
出版社・値段:幻冬舎 1,555円 もうすぐ古本屋に出回るでしょう

ファンの方には怒られるかもしれませんが....言葉も思想も借り物ですし、真剣であるべきところで笑いをとろうとする姿勢には怒りすら覚えます。でも反対に、読者をだませるくらいの誠意のある文章は書こうと思えばいくらでも書けた筈なので、かえってそこに著者の偽善のない真実が語られていると思えないこともありません。 昔ファンだった妹が是非送ってほしいというので買いました。(言い訳がましく付け加える....)



1998年04月10日(金) 町田 康 くっすん大黒

純文学小説
作者:現代 日本
出版社・値段:文藝春秋 1、429円

芥川賞候補作品。 116回というとそのときは一体なにが受賞したのか、なぜ選から漏れたのか、気になるところです。 図書館でその月の文芸春秋を借りてこようと思いつつ。   それにしても こんなに散らかって混乱している部屋なのになぜ落ち着けるのか? そんな感じの小説です。 カフカなみのわけのわからない世界ですが、実は底辺に「愛」があるところが魅力です。  他に「河原のアバラ」を収録。 



1998年04月08日(水) 町田 康 夫婦茶碗

純文学小説
作者:現代 日本
出版社・値段:新潮社 1300円 はまりました!!

今日ちょうど読み終わったのは町田 康の[夫婦茶碗]好き嫌いはあると思いますが、とにかく面白いです。茶化したような語りの中に作者の[真剣]が感じられます。新しい時代の純文学という触れ込みですが、作者は古風なタイプだと思いました。帯が面白いのでご紹介します。[金がなく職もなく潤いすらない無為の日々。そんな私に人生の茶柱はたつのか]続きは後刻...(すみません 他所に書いたものをそのままコピーしました。1998/04/08



1998年04月06日(月) 舟崎克彦+10 シエスタの庭

その他
作者:現代 日本
出版社・値段:パロル舎 1、700

実験小説とのこと。 船橋克彦がプロローグとエピローグを執筆し後は10人の白百合女子大生がそれぞれの章を受け持って書くという創作演習をそのまま本にしたようです。知人のお嬢さんも執筆しているという事で読みました。それぞれ純文学風もあれば怪奇もの、SFもの、少女小説風もあり、と言う感じで試みとしてはおもしろいと思いました。それぞれのエピソードは並列関係にあるので、リレー小説とは違ってあとがきにもありましたがパッチワークのような感じでした。 学生時代にリレー小説は書いてみたことがありますが、出来はともかく楽しいですね。 98年4月6日


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