【シュークリーム作成日誌】

2002年10月29日(火) 楽しい乗り物

北海道在住の方はご存知かもしれませんが、北海道テレビのキャラクターは、オンちゃんです。
どんなのかというと、こんなの。


挨拶には脱力ですが、O次郎みたいで可愛いです。
このオンちゃんの乗りもの(?)が、私は大のお気に入りです。
名前は「ぐち」。なげやりなプロポーションととぼけた顔とあるんだかないんだか判らないような短い足が可愛いです。

ページの右側、オンちゃんの隣に居るオレンジ色の細長い奴がそれです。
…別に名前が某自称美少年を髣髴とさせるから好きなわけではないですよ?
いや、本当に。信じてください(笑)


そういえば、全然話が変わりますが、うちのたかちゃんが近頃元気がありません。
水はやりすぎていないつもりなんですが…。
日照不足かも。一応窓のところに置いているのですが、私の部屋日当たり悪いからなあ…;
葉っぱが紫から緑色っぽくなってきたので、「栄養不足を補おうと光合成しようとしてるのかも。このまま全部緑になったらどうしよう。パープルじゃなくなっちゃう…」などと要らぬ心配をしてみたり。
ひょろりと背が伸びてきたのも心配で、園芸用品店で液体の肥料を買い込んで使ってみる。

ふと自分の姿をふりかえってみると、「妻が旅行中に子供が熱を出してしまい、おろおろするもあまり役に立たない若い父親」みたいだなあと、ぼんやり思いました。
ほんとに可愛がりすぎで枯らしそう…(苦笑)


さらに話題転換。
過去の(今年一月からの)日記でも時々SSSを書いていたのですが、途中で日記を変えたので、今は見られないのですよね。
はっきり言って書き捨てな駄文ですが、もう一度読んでみたいという方がいらっしゃればSSS部屋を作って再録しようかと思っています。
でもなあ…どうせ流れていくからと思って、物凄くバカな話も書いたし…(笑)




2002年10月27日(日) 週末の時間の使い方

だめだ…(いきなり何?)

なにやらいろいろダメでした、今週の週末は。
なんだか時間の使い方を間違ってますよ、私は…。もう日付変わって月曜日なんですが、話いっこも書けなかったし(涙)

貧乏人のくせにスーツを二着も買い込んでしまいましたよ。セールでもないのに。
黒(…反応するダメ人間v)のパンツスーツと、ベージュのツイードの上下。
両方とも凄く気に入って買ったのに、10万越えの買い物は後からなんだか怖くなります。「ほんとにこれで良かったのか…!?」と物凄く葛藤して七転八倒。貧乏性の小心者。ほんとは秋冬ものの、あったかい遊び着を探しに行ったのに…。
いいんですけれど…いいんですけれどね!
お、おのれ〜!!(←やり場の無い憤り?)

まあそれは良いとして。
11/3のセトハヤオンリーイベント【さんどいっち☆TANGO】で、打ち上げ会が開催されるそうです。スタッフの方中心で、お手伝い神矢もデフォルトで参加です。
詳細は、http://tango.acz.jp/ こちらから。
人数制限ありなので、参加希望者の方は、早めに主催者様宛てtango@tokutoku.or.jpまでご連絡下さいませv
よろしくお願いします。



2002年10月25日(金) SSS#32「瀬戸口→水色速水 ギャグ2」

調子に乗って第二回。…ひょっとして連載?





【瀬戸口隆之受難の日 2】







茫然自失から立ち直るなり、瀬戸口は速水をぎゅうぎゅうと抱き締めた。

「なんで準竜師!?姫さんならまだしも…。あんな24歳にあるまじき老け顔のおっさんの
 どこが良いんだ!ソックス大好きっ子な変態で、国民の血税で自宅の地下室に100坪も
 あるソックス保管庫を作るような奴で、ギャグセンスも無いくせにオヤジギャグが
 大好きで陳情画面で遺影の真似しながら『イェーイ☆』とか言っちゃうような奴だぞ!」

そこまでやってません。
瀬戸口のあまりの誹謗中傷に、速水は困った様子で眉を下げた。

「あんまり酷い事言わないで。僕には大切な人なんだから」
「大切な人!?」

青年のすらりとした長身が、脳天に鉄球でも喰らったかのように仰け反る。
そのまま大袈裟によろめきつつ、瀬戸口は長い指で額を押さえた。

「待てよ…。ほんとにどうしてあんなのを好きになったんだ?
 てか、ほんとに好きなの?何か企んでるんじゃないのか?」
「違うよ、僕は…」

速水はえへへと小さく笑って頬を染める。照れ臭そうに肩を竦め、片手で柔らかな髪をかき混ぜるその様は、まさに恋する乙女そのものだった。
瀬戸口の目は死んでいる。

「だってね。初めて、僕の事、好きって言ってくれた人なんだもん」

それだけ言うと、速水は真っ赤になった頬に両手を当て、小さな子供のようにイヤイヤをした。

(まさか…早い者勝ち…?)

『鳶に油揚げ攫われた』

教室に居た全員の脳裏に、瞬間同じ言葉が浮かんだ。

「そ…」

瀬戸口は震える手を離し、速水の肩を掴んで自分と向き合わせる。

「それなら俺だって幾らでも告白してやる!
 ……。
 好きだ、速水。
 お前が今はあの男を好きでも、必ず振り向かせる。
 七つの世界にかけて、俺は君を好きなんだ。どの世界にあろうとも。
 いつか、かならず、この距離を縮めてみせる。世界を越えて…!」

瀬戸口…。いくら本命の前では上手く告白できないからって…パクリまくりである。
当のイワタマンは幸いにも、ひとり踊り狂っていて気付いていない。
速水はそうとう驚いた様子で、目をぱちくりさせている。
きょとんとした表情が愛らしい。
だが、数秒して事態を把握すると、少し困ったように笑った。

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいな。でも、ごめんね。
 僕、勝吏さんの恋人だから」

恋人…。しかも名前呼び…?
瀬戸口のみならず、その場に居た全員が心に深い傷を負った。
一気に通夜の如き雰囲気に包まれた教室の中で、速水の周囲半径1mのみが明るい雰囲気である。

コンコン。

教室の戸が、控えめにノックされた。

「誰ですか?」

善行の誰何の言葉に、応える声に全員耳を疑った。

「俺だ」
「勝吏さん!!」

速水がぱっと顔を輝かせる。
肩を抱く瀬戸口を振り払い、仔鹿の跳ねるような足取りで教室の入口へと駈けていく。
振り払われた瀬戸口は、衝撃と精神的ショックでその場に仰向けに倒れる。
後頭部でも強打したのか、ゴチンと鈍い音がしたが誰も気に留めていなかった。
芝村準竜師の前に立ちその顔を見上げる速水の微笑みは、天使も斯くやと思わせるほど、幸福の息吹に満ち溢れている。

「どうしてここに来てくれたの?」
「ふ。可愛い厚志の顔が見たくなってな」
「お前が『厚志』言うな!!」

いつの間に起き上がったのか。
半泣きになりながら、ヨーコさん仕込みの光る右ストレート(※精霊手)を繰り出す瀬戸口。
黙って事態の推移を見守っていた善行が、ここに至って初めて動いた。
左手で愛用の眼鏡を押さえ、右手をパチンの鳴らす。
若宮が、そして来須が、瀬戸口と準竜師の間に割り込んだ。
回り込もうとする虚弱体質オペレーターを、熊本最強スカウトズが羽交い絞めにする。

「離せ!お前ら速水が準竜師の嫁になっても良いってのか!?」

叫びながら渾身の力で振り払おうとする瀬戸口を、これまた渾身の力で押さえつけるマッスル。
いや、そんなに押すと…。




ぷち。




あ、つぶれた。







つづく
…てか、こんなトコで切るな。




2002年10月23日(水) SSS#31「瀬戸口→水色速水 ギャグ1」

事あるごとに食事にお酒にお付き合いくださる我らが小隊一の美女ことシラタマ姐さんと、先日、悪企みのために集結しました。
場所はシラタマさんのテリトリー(?)銀座…ではなく、今回は新宿でした。
私の記憶が正しかったなら、昼から夜までほぼバンビづくし。バンビの饗宴な一日でした。
お昼ごはんはシラタマさんに連れて行って頂いた、洋食屋「バンビ」で。
こもの屋さんを通る度に、レーダーでも付いているのではないかと疑われるほど、バンビグッズに反応する、挙動不審者二名。
目的を果たした後は、若い女性の二人連れらしく…ケーキとお茶ーvと行ったのですが、やはりこのメンツですから(微笑)夕ご飯は呑み屋さんでと相成りました(笑)
更にその後は近くのバーに入ったのですが…、若干酔いの回ったうら若き乙女(謎)、店の片隅でペーパーナプキンを使っていきなり連想ゲームを始めてしまいました。その証拠品は私が押収(?)しました。
こうして後日になってみると、なんだかおかしいです。酔っ払いの思考。

それにしても、私は当日風邪を引いていてへろへろで、シラタマさんに「今日は薬を飲んでいるし、体調もあまり良くないので、お酒は控え目にします…」とか言っていたのですが…。
一体どこらへんで自分の言った事を忘れたんでしょうねえ。私は。








【瀬戸口隆之受難の日 1】





誰かがあからさまに普段と違う態度で接してきたとき、人は必ず不安に駆られる。
曰く、今日の俺は傍から見てどこか可笑しいのだろうか。
曰く、こいつは何らかの下心があって俺に話し掛けているんじゃないか。等。
特に、普段は愛想というものをどこかに置き忘れてきたんじゃないかというような人物が、にこやかに天使の如きぽややんとした微笑を浮かべながら話し掛けてきた時、思わず身構えてしまった瀬戸口に、「お前は疑い深い。もっと素直に生きろ」と説教できる人物はそうそういないだろう。

「瀬戸口君、あのね。僕、お願いがあるんだけど」

にっこり、微笑みつつ小首を傾げる速水のさらさらとした青い髪が、重力に連れて一方向に流れる。
愛らしい顔つきに、愛らしい仕草、愛らしい口調。
例えようもなく似合うはずのその仕草は、瀬戸口の目にはとてつもなく不吉に映った。
普段の速水なら、「お願い」などと余計な前置きなど無い。「士翼号を陳情しておけ」とか、「NEPを接収(?)しておけ」とか。命令一号。二言なしである。
更に、瀬戸口はここ一月ばかり、「不適な微笑み」以外の速水の笑顔を見たことが無かった。

「お願いって何だい?速水…」

出来るなら見なかったことにして立ち去りたい気分で一杯だったが、教室中から注がれる「何とかしろ」視線が全身に痛い。
愛の伝導師の習性か、この上なく愛想良く微笑んでしまう自分が悲しかった。

「お願い聞いてくれるの!」

きらきらと輝くサファイアブルーの瞳が眩しい。
目どころか全身が重圧で潰れそうになる。

「…俺に出来ることならいいけれどな…」

どこか遠くを見つめる瀬戸口。

「君にしか出来ない事なんだ!」

世界も征服出来そうな可愛さ全開の笑顔で応える速水。
クラスメイトたちが固唾を飲んで見守る中、ついにその瞬間がきた。

「お願いっていうのはね…仲人を…やって欲しいんだ」

下を向いて照れながらそういう速水の頬は、桜色に染まっていた。

「な…なこーど?菜コードって…ナコウドのこと?」

ショックのあまり一時的に言語中枢がイカレたらしい瀬戸口は、なぜか片言になっている。
壊れた洗濯機の如く、がくがくぶるぶると震えながら、少年の華奢な肩に手を置いた。

「仲人って事は…結婚…するのか?お前さんが?」
「うん」
「だれ…もしかして、芝村……」
「そう…」

速水の頬はますます紅くなり、しっとりと潤んだ瞳は夜空の高みの星の如き輝きに彩られた。

「そう、僕、結婚するの。芝村…









準竜師と 」






「………。
 …はぁ!?

瀬戸口だけではない。教室中の人間の口が、開きっぱなしになった。


つづく
(↑続くんかい…;)


というか…

という方はクリック。



2002年10月20日(日) 理系じゃない人

すみません。って何がすみませんて週末だというのに、サイト管理何も出来なかった事が。

実は昨日は愛する筆頭様とめくるめく妄想に明け暮れた一日だったとか、いろいろあったんですが、そのご報告は後日にさせていただきます。

今日は一日私の大の苦手な構造力学の授業で死にました。案の定(?)よく判ったり判らなかったりで帰って来てから復讐…いや、復習したり。
三歩歩いては忘れる私の頭では、「後で〜v」とかやってると絶対に訳が判らなくなるからです。まさか始めたばっかりで挫折するわけにもいかないし(苦笑)

頭を悩ませるといえば、尊敬するとある方からSSの添削を依頼されているのですが…どうしよう。添削するまでもなく物凄く面白いし!(困惑)
でも添削…というかアドバイスするからには、これ以上良くならないとしょうがないのですよね。というか、その方のほうが私よりずっと上手なのに、なんで私が添削してるんだか…。
時間かかってすみません;(←私信)
近日中にお返事いたしますゆえ!(明日とか明後日とかには!)


と、仕事の合間にちょこちょこ書いた(書くな)とてもお馬鹿なお話ができあがったので明日辺りSS部屋にアップします。
【赤ずきんちゃん気をつけて】というタイトルですが、パラレルでも何でもありません。赤ずきんちゃんという言葉の意義はありません。普通に小隊の日常風景(?)な、久々にギャグです。
本当は日記に書こうとしていたSSSだったのですが、SSの長さになったのでとりあえず。
こうして脱線ばかりしているから、いつまで経っても依頼品が上がらないのですね…。

ちなみに依頼者の名前は明記しませんが、現在溜まっている依頼品。

・お姫様抱っこな瀬戸速。
・来瀬戸イラスト一枚。来瀬戸速SS二本。
・完全ギャグな裏SS。
・お風呂ネタな裏SS。
・白あっちゃん出演によるダークな裏SS。
・監禁ネタな裏SS(…)
・Fentanestの3話目(…くっ;)
・瀬戸口もてもて話(←微笑v)
・セトハヤパラレルもの。
・ラブラブな来速

あと…まだあったかな。
あったかも(汗)あ、依頼じゃないですけれど、フリフリエプロンでベランダで裏というシチュエーションがありました!(←…)
これだけ溜め込んで…なんて奴だ、神矢。
次のキリ番50000hitで、しばらくキリ番は停止にします。(そりゃそうだ/笑)


↑投票をお願いします(笑)



2002年10月17日(木) 風邪にご注意

今現在、私の周囲では風邪がめっぽう流行っております。

部署内42人中13人が風邪をひいています。
つまり、今私のいる職場に行けば、30.95%の割合で風邪がひけるという事です。
斯く言う私も一昨日あたりから、思う様体調がおかしいです。

ぞくぞくと寒いし、皮膚の表面がちりちりと痛くて、そのうえ首筋のリンパ(?)がずきずきするのです。(熱あるんじゃないのか?)
でも例に拠って熱は測りません。精神的ショックの防止のため(笑)
でも市販の風邪薬を飲んで、大人しく早く寝ることにします。


話は変りますが、現在、私の席はバンビグッズに侵食されつつあります。
例えば、難しい作業をしている時に、パソが5回連続でダウンした時。
思わず椅子を蹴りあげて、周辺の書類を残らずひっくり返したくなるそんな気持ちも判りますでしょう?
そんな時。
机の上の、小さなバンビちゃんのマスコットが目に入ります。
大事ないただき物です。
手のひらにちょこんと乗るサイズの小さな水色のバンビちゃんと、それよりひと回り小さな紫色のバンビちゃんです。
バンビちゃんたちが、そのおっきな目で語りかけます。

「怒っちゃだめだよ。それより、落ち着いてサポートセンターに電話した方がいいよ。サポセンのKさんは友達だから、きっと他のお客を後回しにしてすぐ来てくれるよ。そうだ、ついでにメモリも増設してもらったら?どうせ偉い人たちはパソコンの事良くわかんないんだし。ね?」
(※速水なので、例えぽややんでもアドバイスは冷静かつ打算的)

「…そうだね。電話してみるよ」

という具合に、精神安定(?)に一役買ってくれています。
そんな私の携帯やら手帳やらも、筆頭から頂いたバンビちゃんのシールで、バンビ尽くし。
先日友達に見せたところ。

「ほら、可愛いでしょ?」
「ふーん、可愛いねえ…。でも神矢さんのキャラじゃない」
「う…うん。そうかも」

うちに帰ってからふとんをかぶってこっそり泣こうと思いました。


と、思われた方はぽちっと↑スイッチを押してください。



2002年10月14日(月) SSS#30「瀬戸口×速水 ラブラブ?」

今夜は友人の結婚披露宴に出席します。大学の同窓である彼は物凄くカッコ良い人だったので、正装姿が今から楽しみですv


話は変りますが、神矢は技能習得資格習得のため、予備校に通う事になりました。毎週日曜日と祝日は学校の日です。
でもサンドイッチ☆タンゴ(※11/3、大阪にて開催されるセトハヤオンリーイベント。topページ参照)のお手伝いのためと、祖父の一周忌のために11月は3日も休んじゃうので、振替えで土曜日も結構行く事になるかもです。
私は一体いつSS書いたり、サイト管理したらいいんでしょうか(苦笑)
一次試験が来年の6月。二次試験が9月末です。大体一年近くの戦いになりますが、地道に頑張ろうと思います。
昨日と今日、早速授業に出てきました。きちんと勉強するなんて学生の頃以来。結構面白かったです。
でも、ちょっとでも判らない所が出てくると、苦痛になっていくんだろうなあ…。
頑張って予習復習しないとv(←ちょっと若返った気分/笑)


まあ、そんな感じでわりかし多忙っぽくなってきた神矢ですが、今、いい感じでスランプです(謎)
本編…といいますか、きちんとサイトにアップ出来るようなSSがさっぱり書けませんで。
リハビリと称して、こうしてSSSを頻繁に書きまくっているのですが、なかなか復活しません。

これは同盟発足作業の方を頑張れとのセトハヤの神様のお告げでしょうか(←絶対違う)
CGI苦手…。








【happyness】






うららかな晴れた昼下がり、穏やかに流れる時。
午後の授業はサボる事に決め、可愛い恋人と午後のお茶と洒落込む。
食堂の窓からは、広いグランドを挟んで、向こう側の桜並木が滴るような新緑で目を楽しませてくれていた。
目の前の恋人は、先程から熱心に料理の雑誌を読みふけっている。
自分のために和食のレシピを増やすのだと言ってくれた彼は、折れる程抱き締めたくなるくらい、とてもとても可愛かった。

―――キス、したいな…。

ぼんやりと速水の小さな顔の下方、唇に視線を注ぐ。
薄く小さいのに、どこかふっくらとして柔らかそうで、紅を差している訳でもないのに、淡く綺麗な桜色の。
ぼうっと見つめていると、視線に気付いた少年は照れたような微笑を返してきた。
無邪気な笑顔に後ろめたくなり、慌ててこちらも笑顔を取り繕う。

「コーヒー、もう一杯飲む?」
「ああ…すまんな」

何となく出てしまった謝罪の言葉に、速水は笑って首を振る。
機敏な動きで調理台へと向かう華奢な後ろ姿を見送り、瀬戸口は溜息を付いた。
今の自分は、もしかしてかなりもの欲しそうな顔をしていたのではないだろうか。
速水と恋人になって、もう二週間も経つのだ。
二週間も経つのに。
速水のキスは、どんなに甘いだろうか。
…瀬戸口は知らなかった。



***



意外と愛の伝道師は本命には奥手だった。…と言う理由ではない。
瀬戸口は自分は手広くよろしくやっているくせに非常に独占欲が強く、従って速水厚志という少年を特別だと認識してからは、彼を出来る限り側に置きたがった。
側に、出来るだけ近くに。
出来る事なら彼を自分だけが知る場所に閉じ込めて、朝も昼も夜も愛し合えたら…などと、かなり妄想じみた考えまで抱くほど。
そんな彼が速水にキスも出来ずにいるのには理由がある。
…そういう雰囲気にならないのだ。
笑うなかれ。雰囲気とは大事な物だ。
幸せな滝川と違って、瀬戸口はその場の雰囲気を自分色に染め上げる事すら可能な、何処に出しても恥ずかしくない立派なホストNo.1…いや、愛の伝道師である。
そんな彼に雰囲気を無視して欲望のままに行動するなどという、カッコ悪い真似が出来るだろうか。
いや、出来ない(反語)。
恋人同士がふたりっきりでいれば、自動的に辺りの空気をピンク色に染め上げるようなBGMが何処からともなく流れてくるのが普通である。だが、この恋人達だけは、世界の摂理から外されているらしい。
速水と瀬戸口がふたりっきりで居る時の雰囲気は、「明るい雰囲気」に保たれていた。
常に。

(俺ってもしかして、恋人扱いされてないんじゃ…?)

瀬戸口が遠い目をしてしまうのも、無理はない事かもしれない。



***



しゅんしゅん、とお湯が沸く音がもう少しだけ続いたら火を消そう。
沸かしすぎると水の中の酸素が完全に抜けてしまって、コーヒーが美味しく煎れられなくなってしまう。
コーヒーフィルタをメーカーにセットし、速水は挽いた豆を取り出す。
合成物だったけれど、良い匂いのコーヒーだった。瀬戸口が喜ぶだろう。
速水の口許が自然にほっこりと微笑みの形になる。

(今日は、ずっと一緒に居てくれるのかな。そうならいいな…)

速水は瀬戸口を振り返る。
瀬戸口は、自分が女子高生や人妻に呼び出されて行く事について、「軍の特命を受けて呼び出されている。女性達は軍の工作員だ」と肝心な所は伏せて、しかし完全に嘘ではなく説明した。
普通に考えれば信じられる事ではないだろう。彼は熊本に誇るエースパイロットでも、士官学校出のトップ候補でもなく、一介のオペレーターに過ぎない。
しかし速水は、初めて自分の事を好きだと言ってくれた人の言葉を、全く疑う事無く素直に信じた。
瀬戸口が女性に腕を取られるたび、不安そうに揺れる瞳。
それでも、それは浮気を疑ってではなく、純粋に瀬戸口の身を案じての不安だった。
そうして出掛けて行った人が、自分の側に帰ってきてくれるだけで、嬉しかった。
瀬戸口はいつも優しい。

やさしい声。
やさしい腕。
やさしい眼差し。
やさしい笑顔。

瀬戸口の側にいるだけで、速水は幸せな気持ちになれた。
彼が自分に向けてくれる笑顔は、いつでも極上に甘い。
こんな風に愛情を注いでもらえる事が、こんなにも嬉しい事だなんて知らなかった。

「どうぞ」

コーヒーを置くと、ありがとうと礼を言う声さえ耳に心地よい。
暖かな手のひらが、頭にぽんと置かれる。
そのまま、髪をくしゃくしゃとかき混ぜられた。

「瀬戸口さん」
「ん?」
「呼んでみただけ」
「はは…」
「ここに」
「…?」
「ここに、居るよね」
「ああ」

―――好きな人が側に居てくれるだけで、幸せになれるなんて知らなかった。



速水は幸せで幸せで、その幸せ加減は半端ではなかった。
どれほど凄いかと言うと、瀬戸口とふたりで居る時の速水の状態が「幸福状態」であるのが通常になるほどに。
彼の醸し出す「明るい雰囲気」が、恋人同士のふたりきりのデフォルトである「Hな雰囲気」を圧倒するほどに。
瀬戸口がその事実に気付くまでには、まだまだ時間が掛かりそうだった。







Fin
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
Hな雰囲気すら押し退ける、無敵のぽややんあっちゃん。
あっちゃんからの愛情に負けて、瀬戸口はある意味幸福かもです。
…ラブラブバカップル…。



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2002年10月13日(日) 瀬戸口抱き締め隊 発足前臨時会合レポ


タイトルにも御座います通り、暫定ではございますが記念すべき【瀬戸口抱き締め隊 第一回臨時会合】を執り行いました。
…会合っていうか、出席者は隊長と隊員No.1だけだったんですけれど(笑)
このレポは会合の翌日に書いています。

そんなわけで、土曜日はどんべ隊員とお茶とお食事をご一緒して、実に8時間に渉りセトハヤ話に華を咲かせて参りましたv(語りすぎ)

主な議題。
1.瀬戸口がいかにヘタレで情けなくカッコ可愛いかについて。
2.瀬戸口抱き締め隊の入隊資格(失笑)について。

第三者が聞いていたら、そこに愛はあるのかと疑いたくなるんじゃないでしょうか。
それぐらい、私達の認識の中の瀬戸口は情けなさ全開でした。
でも、瀬戸口のへたれっぷりについて熱く語りつつ、それぞれの最後に「でもそこが、可愛いんですよねv(カッコ良いんですよねv)」と付く辺り、やはり瀬戸口への愛は本物と見ました!(爆笑)

入隊資格も半分ぐらい決まりました。本当に隊員が集まるのか不安になるような入隊資格です。物凄いピンです。マニアです。(笑)
あと半分は隊員No.2(Kさん)のご意見も伺いたいと思っておりますv


それでですね。どんべさんから素敵なプレゼントを頂いてしまいました。小さな観葉植物の鉢なのですが。

その名は「パープルハート」vvv

紫色の葉っぱの可愛らしい鉢植えです。
検索してみると、学名はセトクレアセア・パリダ。水色〜薄紫(ピンク?)の花が咲くようです。
和名は紫御殿(笑)。瀬戸口いっぱいなお城ですよv(…)

たかちゃんと命名しました。(←重症)
早速翌日アンティークショップで青い硝子の園芸用霧吹きを購入。
これであっちゃんの愛がたかちゃんに降り注ぐ事に…vうふふーvvv(危険)と喜び勇んで帰宅。

パープルハートは、あまり水をたくさんやらない方がよろしいようです。愛を注ぎ過ぎると不安になって却って枯れてしまうようで(笑)
で、一日1回少しだけ水をやることに。
あっちゃんの霧吹き(違)でやりましたよ、本日の分を。


南アルプスの天然水を。(←もはや末期)


もしかして愛情注ぎ過ぎ!?大事にしすぎですか!!?
だって、だって、たかちゃんですよ!もうこれは可愛がって甘やかすしかないじゃないですか!
花が咲くのが楽しみですv
可愛がりすぎて枯らさないように注意します(←ほんとにな…)





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応援してくださると嬉しいですv
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2002年10月10日(木) SSS#29「瀬戸口×速水 コネタ」

会社で打ち合わせの最中に足が攣りました。
苦悶の表情を押し隠して(笑)話に耳を傾ける神矢。
物凄く真剣に聞いているのだと、好意的に受け取ってもらえました。
ばれなくて良かった…。

週末には頂きもののSSを公開ですv
甘くてちょっと切ないお話なのです。







【betting!】




速水  「瀬戸口さん。ちょっと運試ししてみない?」
瀬戸口 「運試し?くじ引きか何かするのか?」
速水  「そんなとこvえっと…ここに紅茶のパックが二個あります。
     外見は全く一緒だけど、一個は売店で買った普通の甘い紅茶。
     もう一個は裏マーケットで買った塩味の紅茶です」
瀬戸口 「しおあじって…」
速水  「甘い紅茶だったら当たり。瀬戸口さんが当たりだったら、何でも言うこと聞いてあげるね」
瀬戸口 「…!なんでもっ?」

瀬戸口君、目がきらきらしています。俄然やる気になったようです。
1000年以上も生きてるくせに、ずいぶん浅はかです。

速水  「どっちか好きな方選んでよ」
瀬戸口 「俺はこっちだな」
速水  「じゃあ僕はこっちだね。ふたり同時に確認だよ」
瀬戸口 「はいはい」
速水  「いっせーの、せ!」
瀬戸口 「〜〜〜っ!!!」

思い切り顔を顰める瀬戸口君。あっちゃんは美味しそうに紅茶を飲んでいます。

速水  「はずれちゃったね」
瀬戸口 「…(涙)」
速水  「三回勝負にする?」

瀬戸口のあまりの落ち込みぶりに、速水も少し可哀想になったようです。

瀬戸口 「ほんとに!?」
速水  「うん。…ホントはみんなでやろうと思っていっぱい買ってきたんだ。
     でも良く考えたら、塩味に当たった人がかわいそすぎるかと思って」
瀬戸口 「…」(←塩味に当たった人)
速水  「さ。選んで」
瀬戸口 「…よしっ。これだ!」


三回勝負、終了後。


瀬戸口 「……………………」
速水  「瀬戸口さん、そんな落ち込まないでよ。
     明日はきっと今日よりいい日になるよ(田辺流ポジティブシンキング)」
瀬戸口 「…そうだな。明日になったら机の中に綺麗に畳まれた紙が入っていて、そこにある言葉通りに
     屋上に行くと速水が居て、『瀬戸口さん、僕の事、好きになってくれないかな?だめかな?』なんて
     可愛らしく告白してくれるかもしれない…!(具体的)」
速水 「さすがにそれは無いと思うけど(あっさり)とにかく元気出してね」
瀬戸口「あ、ああ…(心で泣く)」


***


瀬戸口「というわけで、俺は紅茶があまり好きじゃなくなったのさ」
来須 「……(どうでもいい)」





Fin
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
たぶんこの場合、瀬戸口の運が悪かったのではなく、速水の運が良かっただけのような…。両方か。


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2002年10月08日(火) SSS#28「瀬戸口→速水。ほのぼの」

やっと、ファンデその他諸々を秋冬物に変えました。
プラウディアのスティックファンデ。一枚肌になるかどうか荒れ気味な私ではよく判りませんが、たぶん普通程度に状態のいい人なら、きっとそうなると思われます。
化粧崩れが少なく、いい感じの使用感です。

昼休みに同僚の女の子と化粧品を変えたという話をしていると、同じく同僚の男性(年少)が来て、私をじっと観察したのち。

「なるほど。最近の化粧品は良く出来てるんだなあ。
 薄暗い所で(昼休みはオフィスは消灯されます)凄く遠くから見れば
 美人に見えないこともないかもしれない。
 …いや。そうでもないか…」

と率直な感想を述べていました。
ぐーで殴ってやりたくなりました。(※ハメで13コンボぐらい)








【楽園の果実】






授業終了と共に、見えざる争奪戦はすでに幕を開いている。
そう、特に教室の窓際最前列の辺りでは。
瀟洒な姿で泳ぐように教室を横切り、速水を誘おうと瀬戸口は口を開きかける。
それに一瞬機先を制し、少女の声が凛と響いた。


「速水、仕事をしに行くぞ」

「うん!僕も頑張らないとね。…瀬戸口さんごめん、また後でね。」


さっさと教室を出て行く舞に、犬コロの如く付き従う速水を止めようとして、伸ばした手は空しく宙を掻いた。


「〜〜〜面白くない」


憮然とした呟きを聞きとがめて、ののみが瀬戸口の服の裾をひっぱる。


「なにがおもしろくないの?」

「…あっちゃんと芝村が仲良しなのが面白くないの」


思わず正直に答えると、ののみは不思議そうな顔になる。


「どうして?なかよしなのはいいことなのよ。みんななかよしさんがいちばんなの」

「ああ。判ってはいるんだが、俺は心が狭いらしい」


ののみにそんな事を言ってもしょうがない事は判っているのだが、愚痴らずにはいられない。


「ののみ。例えばな、林檎がひとつあるとする」

「りんご?」

「そう林檎。その林檎はすごく美味しそうで誰もが食べたいと思ってる。
 しかし、林檎はあんまり小さくて皆で分けることは出来ないんだ。解るか?」

「うん」

「そして、俺はお腹が空いている。もう飢え死にしそうなんだ。
 そんな時、その美味そうな林檎を独り占めしたいと思ったら、それは我侭かな?」

「う〜ん。たかちゃんにはののみがおべんとうあげるのよ?」

「…その世界には食べ物はその林檎しかなんだ」

「…たかちゃんはりんごたべないとしんじゃうの?」

「そう」

「たかちゃんがしんじゃったら、ののみはかなしいのよ。あっちゃんもかなしいの。
 みんなかなしいの。かなしいのはめーなのよ」

「じゃあ、俺が食べてもいいのかな?」

「…でもね。りんごのいしもたいせつなのよ。
 もんだいはだれがりんごをたべたいかじゃないの。
 りんごはだれのためにうまれてきたか、なのよ。たべるひとをきめるのはりんごなの。
 そして、それはせかいがはじまるそのときからきまっているのよ。
 それもせかいのせんたくなの」

「………」


林檎の例え話のはずが突如としてスケールが大きくなる。
だが、ののみのその言葉は瀬戸口の胸を強かに刺した。


「そう、だな。俺は相手の意思を無視しすぎてるかもしれない…」

「だれかをあいするってことは、そのひとのいしをそんちょうするってことなのよ」


ののみは嬉しそうに笑って言った。
瀬戸口はののみの頭を撫でて苦笑する。


「俺が愛について教えられるとはね」

「みんなたりないものをあたえあっていきてるの。
 だから、おしえたりおしえられたりするのは、わるいことじゃないのよ」

「そうだな」

「たかちゃんはののみにいろんなものをくれるの。
 だから、ののみもたかちゃんにいろいろおしえてあげたいの。
 ののみがおしえられることはほんのすこしだけど…。
 たかちゃんがたいせつなひとにあげられるものは、きっといっぱいあるはずなのよ。
 いろんなものをなくしても、きっとそれだけはずっともっていけるものなの。
 だいじなひとをしあわせにできるまほうなの」

「そう、か」


独占欲に支配された醜い魂が洗われるようで、瀬戸口は心からののみに感謝する。
本当に女神のような少女だ。
彼女のように綺麗な心で自分は彼の事を想えるだろうか。
罪に汚れたこの魂では不可能な事なのかもしれない。けれど、努力するだけ無駄ではないだろう。


「本当にありがとうな。ののみの言う通り、俺も大切な人に愛を届けに行くとしよう」


席を立った瀬戸口の背中にののみが声をかける。


「たかちゃん!あいしてるのきもちはかならずとどくのよ。おもいやりがひとをうごかすの。
 あっちゃんもたかちゃんのことだいすきよ」

「………、…そうだといいな」


この子はどこまで知っているのだろう。
瀬戸口はちょっと怯えながら、教室を後にした。






Fin
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

オチが少々弱かったか…。
この4者、偉さ(?)で言えばたぶん


速水ののみ>>>>>>>>>>>>>>>>>>(中略)>>>瀬戸口


そんな気がして。
ちなみに速水がののみより偉いのはお色気担当もこなす分です。(は?)









2002年10月04日(金) あっちゃん、18歳おめでとう。

と、いうわけで2002年10月4日、速水厚志さんの18歳の誕生日です。
おめでとう!


ちなみにこの日記を書いているのは10月8日(火)未明です(最低)
月曜日っから騙されましたよ。
「神矢さん、30分ぐらい残業できる?」
「(30分ぐらいならいっか)はい」(←良い子のお返事)
…30分じゃなくて5時間30分でした…。
やられた…。やっぱり騙される私がアホなのか…くっ;


あっちゃんの誕生日企画SSは、アップが遅れに遅れ6日になってしまいましたが、お祝いはきちんと当日に致しました。


シラタマさんと神矢ご案内の青山の(←行きつけないくせに/笑)イタリヤンレストランで、アポロニア丼を…いえ、鯛のブイヤベースとワインでお祝いしましたよv
ちゃんと(小声ながらも)「あっちゃんおめでとうw」と乾杯しましたv
美人と一緒に可愛いあっちゃんのお誕生日を祝えるなんて、二重の至福でありました。
しかも、シラタマさんからという御香と、焼き鹿の子を頂いてしまいましたv
を先に楽しみ、鹿の子を後にご馳走になると、美味しさ倍増ですvvv(妄想技能MAX)
その後も素敵なバーに連れて行って頂いたり、あっちゃんの誕生日当日が終わるまで楽しく過ごさせて頂きましたv(楽しみすぎ)


お知らせ…といいますか、今日BBSにお返事を付けられれば良かったのですが。
企画SSはお持ち帰りOKでサイト掲載OKです。作者が神矢である事を明記して頂ければ結構ですので。
というか、持ち帰っていただけるだけでも嬉しいのに、掲載して頂けるなんて申し訳ないような…でも凄く嬉しいです。
健気な(失笑)瀬戸口クンをよろしくお願いしますv



2002年10月03日(木) SSS#27「瀬戸口×速水 恋人未満・明るい雰囲気」

【Give and Take】





「師匠〜、女の子にもてる方法教えてくださいよ!」
「いいぜ。貸し1だな」

毎度聞きなれた滝川と瀬戸口との会話を聞きながら、速水はふと思った。

(貸し1ねえ…。
 そういえば茜が森さんの秘密を教えてもらってたときも、『貸し1』って
 言われてたっけ。口癖なのかな)

「速水ー、お前も一緒に聞けよ。
 特別講義だってよ」

嬉しそうな滝川の声に苦笑する。
速水と視線が合うと、瀬戸口はにっこりと優しそうに微笑んだ。

「……」

思わず赤面してしまう。
目を逸らした速水の方へと、瀬戸口は笑顔のままで近寄ってきた。

「どうした?ほら、愛の伝道師の匠の技を特別にレクチャーしてやるぞ」
「僕はいいってば。
 そうだ。それより…瀬戸口さん」
「ん?」
「後で仕事付き合ってくれないかな。
 誘導技能が欲しいんだけど、上手くいかなくて」
「可愛い俺のバンビちゃんの頼みを断れないが…タダって訳にもいかないな」

(貸し1って言われるのかな?)

黒目がちな目を向ける速水に、瀬戸口は悪戯っ子のような笑顔になる。

「キス30回でどうだ?」
「………はぁ!?」

大きな目をまんまるに見開いて、速水は素っ頓狂な叫び声を上げた。

「何それ!なんで僕の時だけそんな…。
 っていうか、何その数!」
「ははは、いい提案だろv」
「どこが!僕、嫌だからね!!」
「誘導技能欲しいんじゃなかったのかい?」
「ぐ…」

思わず言葉に詰まって拳を握り締める。
その前に立つ男は、飽くまでも爽やかに笑っていた。

「じゃ、1回前払いだな。さ、どうぞ」
「ま、前払いって…」
「初回ってことでほっぺにちゅうに負けておいてやるぞ」

身を屈めて、はい、と頬を寄せる青年に、速水は口をへの字にする。
動く気配のない彼に、瀬戸口はぱちりと片目を瞑ってみせた。

「ほっぺちゅーも出来ない?やっぱりお子様だねえ」
「な!僕だってそれぐらい出来るよ!!」
「なら、どうぞ?」
「……」

新進気鋭のエースパイロットでもやっぱりお子様らしく、瀬戸口の誘導にあっさり引っ掛る。
いや、もしかしたら、これこそが誘導技能の真骨頂なのかもしれない。
引っ込みがつかなくなった速水は、瀬戸口の方へと顔を近づけ…。

かぷり。

「…っ!?」

今度は瀬戸口が目を見開く番だった。
首すじにぱくっと噛み付いた速水は、パッと離れて得意げに笑う。

「えへへ、びっくりしたでしょ。
 あんまり僕の事からかってばかりいるから、お仕置きだよ」
「……」
「前払いしたからね。放課後になったら、ちゃんと教えてね。約束だよ」

出会ってより一ヶ月。初めて瀬戸口を負かした速水はご機嫌で去っていく。
瀬戸口は中腰になったまま固まり、首だけを動かしてその後ろ姿を見送った。

(…速水。「噛み付く」ってキスよりも色んな意味でヤラシイんだが…。
 あの様子じゃ判ってなさそうだな…)

滝川は、不幸にも一連の出来事をすべて目撃してしまった。
彼は基本的には善良な少年で、しかも色事の師匠である瀬戸口を尊敬してもいたので、瀬戸口がなぜか微妙に腰を引いたまま動けずにいる理由をわざわざ追求したりはしなかったのである。






Fin

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ぽややんでも最強。それがあっちゃん。
基本的には大人だけど、あっちゃんには勝てない。それが瀬戸口さん。








いよいよ明日があっちゃんの誕生日です。
もはや決定的に間に合わなさそうなので、こうなったら納得のいく物にしようと思います。週末にアップ出来ましたらご喝采☆



2002年10月01日(火) SSS#26「瀬戸口×速水 ダーク」

台風…凄かったですね。なんでも戦後最大だそうで。
幸い部長が「これから台風酷くなるみたいだから、女の人たちは早く帰ったほうがいい」と発言して下さったので、終業の30分前に女の子はみんな帰りました。
残った人たちはどうなったんでしょう。
みんな泊まったのかなあ…。あんな半端じゃなくごちゃごちゃした所に。
人間が寝られるような所じゃないと思うが。
でも、会社に住んでるんじゃないかと思うほどいつも遅くまで残業してる人も何人か居ます。
皆タフですねえ…。



水曜、木曜と頑張ってみようかと思っています。
それでも間に合わない可能性大。ごめん、あっちゃん。







【crystal cage】






話をしていただけだった。
それなのに、来須と速水との間に身体を割り込ませた瀬戸口は、氷のような目をしていた。
「帰るぞ」と、一言。
速水の手を掴み、引き摺るように連れ出した。

「痛いよ、瀬戸口さん…」

速水の言葉も無視して、瀬戸口はどんどん歩いていく。
いつもは歩幅を合わせてくれるのに、今は速水は小走りになっていた。
通行人がみんな振り返って見ている。
息を切らし顔を歪める小柄な少年と、平気そうな顔をして肩で風を切って歩く青年と。
でもそのポーカーフェイスが辛い顔を隠すためのものだと知っているから、速水は泣きそうになっていた。
折角大好きな瀬戸口と一緒の帰り道なのに、少しも楽しくない。

「瀬戸口さん!」

何度目かの呼びかけに、瀬戸口はようやっとちらりと速水を振り返った。
その事に少しだけ安堵した表情に向かって投げつけられる、冷ややかな声。

「どうせお前には俺ひとりって訳じゃないだろうからな」

酷い言葉に立ち竦む。
けれど、ぐんと引かれて肩が外れそうになった。
瀬戸口は再び口を噤んでしまった、
そのまま、どれくらい歩いただろうか。

「加藤がさ…羨ましい」

瀬戸口がぽつりと口を開いた。
いつの間にか、人通りは無くなっていた。
瀬戸口が立ち止まるのに連れ、速水も足を止める。
見上げる青年の横顔は、沈痛な面持ちだった。

「狩谷と加藤見てると、羨ましくなってくる」
「……」
「狩谷みたいに、お前が半身不随になったらどうだろうって考えるんだ」
「…」
「そしたら、俺がずっと面倒みてやるのに。一生側に居てやるのに。
 それでお前が、俺なしじゃ一日も生きられないようになったら幸せなのにって…。
 そんなこと、時々考えたりする」
「……………」
「気持ち悪いか?それとも怖い?俺の事………嫌いになった?」

血を吐くようにそう言うと、瀬戸口は壊れ物を扱うようにそっと速水の手を離し、向き直った。
そして、悲しい顔のままで速水を抱き締める。
逃げ出そうとはしない温もりに、心底安堵した。
速水の顔は制服の胸に埋もれて瀬戸口からは見えない。
柔らかく響く高めの声が、胸元で響く。
くぐもった声。

「じゃあ僕、歩けなくなる」
「……?」
「歩けなくなったら…瀬戸口さん、ずっと側に居てくれるんでしょう?
 なら僕、歩けなくなっていい」
「速水…」
「手も足も、僕、なんにもいらないよ?
 側に居てくれる?好きでいてくれる?」
「速水、ごめん」
「脊髄のところ壊したら、動かなくなるよ。
 そうしていいからね」
「ごめん、俺が悪かった」
「瀬戸口さんになら、僕何されても平気だよ。
 …僕の事、どんな風にしてもいいからね。
 好きでいてね」
「やめろ!……変な事言ってすまなかった。何も酷い事しないから」
「お願いだから…飽きた顔をしないでね…」

震える手で瀬戸口の上着の胸を掴んで、握り締める。
細い肩を震わせ、速水は今にも泣いてしまいそうだった。
華奢な身体を折れそうなほど強く抱き締めて、瀬戸口は唇を噛む。
速水は強い。誰よりも強くてどんなに傷ついても何度でも立ち上がるだけの力がある。
でもその強さの中に、薄刃の通る隙間ほどの小さな柔らかい部分がある事を瀬戸口は知っていた。
自分の言葉が、狙い違わずそこを傷つけたことも。
速水はいつだって万難を排して立ち上がれる。飛び発てる。
誰かひとりでもいいから、ほんの僅かの本物の愛情を注いでくれる人が居たらならば。
それさえ失ったなら、速水は生きながら壊れてしまうだろう。

―――『速水が歩けなくなったら側に居られるのに』?

(なら、僕が歩けるなら?
 いつか、僕の側から居なくなっちゃうの?)

その可能性に気付いて青褪めた速水は、瀬戸口にただ必死にしがみ付くしかすべがない。
どうしたら捨てずにいて貰えるのか判らない。
いっそ本当に歩けなくなってしまおうかと、調理室にあるアイスピックを思う。
無意識に何かを掴むように空を掻いたその手を、大きな手が包み込んだ。

「飽きたりなんかしないよ…そうじゃない…」

必死に自分を求めるような仕草をする速水に、暗い喜びが湧き上がる。
それを見ない振りをして、瀬戸口は痛みを堪える顔をした。

「お前が、いつか俺の腕の中から飛んで行ってしまうような気がして…」

過去にも未来にも、一歩も進む事の出来ない瀬戸口を置いて。
もっと明るい未来へ。例えば…輝ける彼女の手を取って。
…そんな事は、決してさせないけれど。

こうして少しずつ少しずつ、速水に不安を与える。
瀬戸口が居ないと寂しくて、苦しくて、生きていけないと思い込むように。
本当は、速水は瀬戸口なしでも幸せになる事が出来るのだ。彼を心から愛してくれる人なんて、幾らでもいるのだから。
速水無しには正気を保てないのは、瀬戸口のほうだった。

けれど、『本当』なんてどうでもいい。
速水が、瀬戸口を愛していると思い込んでいる間は、瀬戸口は満たされるのだから。

「僕がどこかに行くわけないじゃない。
 瀬戸口さんが…好きなのに。
 瀬戸口さんの腕の中以外、幸せになれる所なんてないのに」

想いを込めて見上げてくる速水の言葉が、胸を甘く切なく締め付ける。
男はこの上なく優しく慈愛に満ちた微笑みで、少年を抱いて口付けを贈る。
その裏の闇の深さを識らず、ただ優しく暖かい腕に心から安堵して、速水は目を閉じた。





Fin
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ダークのご依頼。裏で一本考えている過程で出てきた、おまけみたいなものです。
本編には入れられなさそうだったので、これはこれで一本にしてみました。
酷い瀬戸口さんて、意外と書きやすいかもしれません。
基本的に弱い人なので。…弱いからこそ、至上に優しくもなれるし、酷い人にもなれる。その分かれ道は…小さな違いなんでしょうね。






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