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2003年07月25日(金) 2003年はまだまだすごい

サマソニっつう今年は奇跡のような大イヴェントもありますが、これまた8月以降出る新譜が、どうしようもないほど待ち遠しいですな。

トラヴィス、ストロークス、ミューズ、ジーヴァス(シングルはクソ名曲!アメリカ!)、スターセイラー、アンドリューW.K.、BRMC、エルボー、レモンジェリー(日本ではようやくの発売)、ベンズ(ベン・フォールズ、同・リー、同・クウェラーの大メロポップ企画?バンド)、新人だとブリティッシュ・シー・パワーとかね。

幸せ。なんか音の求道者みたいだけど、そうなんだよなー。新譜が聞けるのをワクワクするこの性格はホントいろんな意味で幸せですね。いやー、でもトラヴィスのアルバム名とかスゴイね。「12メモリーズ」だって! 泣き決定!


2003年07月20日(日) 最高/MANDO DIAO"bring 'em in"

夢の中で聞こえた声、それを言葉にしたのがMANDO DIAOなのだそうだ。何か懐かしくて不思議な響きを持つ、特定の言語を超えたマンドゥ・ディアオというこのバンド名。そしてこのバンド、肝心の音楽も、何かその名をなぞったような巨大な魅力を携えている。夢の中で聴いた、理想のロックンロールを鳴らすバンド。心を奪われることをその欲求不満の若い体の中で今か今かと待っている、ロックンロールに自分の青春を捧げる予備軍である少年少女達へ。君達の時代のロックンロール・バンドがやってきた。

デビュー・アルバム”ブリング・エム・イン”は、最高。その一言でいいよな。前置きが長すぎたかもしれない。

全世界がネットワークで結ばれ、モノや情報がうざったいほどに氾濫するこの2003年の今。音楽も例外じゃなく、様々なジャンル、アーティストがごちゃまぜに輸入され、もてはやされ、歴史や国という線引きすらとっぱらわれて、なんだか何が本物か分かりづらくなってきた。でも、頭を抱えなくたっていい。救世主は、いつの時代も本当に分かりやすい形でやってきてくれるんだから。

とにかく曲が書ける、このバンド。スウェーデンのバンドではあるが、60年代の英国バンドそのものだ。ビートルズ、ザ・フー、スモール・フェイセズ……。つまり、もっともロックンロールが幸せでまだ始まったばっかで贋作がないんだから本物でしかありえなかった蒼い時代!! その熱狂と感動を強引にそのアレンジ力、ルックス、メロディーの素晴らしさで今に甦らせた。ストロークスもまた違った時代でロックンロールを再生したバンドなんだが、誤解を恐れずに言えば、彼らは「知性」。マンドゥ・ディアオは「天性」だけで鳴らしている。彼らの、時にいけてない行動を見聞きするとそう思う。曲もやりすぎ! それで、そこが良い。

そして、もう一つのポイント。それは、オアシスっつう、今更言うのもなんだけど超超最強のバンドの見せてくれる希望と同じものがこのマンドゥ・ディアオからも見えるってことかな。音の壁のような重さのあるギターが鳴ってたりしないし、こいつらの方が性急でエッジが効いている。だから直接には違うんだけれど、ある何点かの共通点がオアシスへ感じるワクワクさと同じものを強烈に与えてくれる。それはビッグマウス、二人の超個性的な天才、歴史を走馬灯の様に鳴らすアイディア、声の住み分け具合のばっちりさ、ダサさ、カッコよさ、ビートルズ、曲調を問わず不思議にも同じ光を目指しているメロディーなんかなんだろうな。アレンジが違うだけで他はほとんど一緒じゃないか、こんなこと言ってしまったら。でも、そうなんだよなあ。

試聴機にでもあったら、まずは5曲目の「ザ・バンド」をとにかく聴いてみてほしい。大音量で、ヘッドホンでも付けて。そこからが、僕らが追い求めてやまない感動へのコンタクトになる。確実に。アルバムの曲には触れない。説明はいらないし、事前にはないほうがいい。

最高。世界に鳴り響くべき、正真正銘、本物のロックンロール。青春の衝動に突き動かされて、とにかくは自分の理想をまっしぐらに目指す。簡単に言えば、汚れなき希望への憧憬と努力。ロックンロールが、ユース・カルチャーとして強力に機能する、若者だけに許されたリアルな共有感情であることを完璧に証明し、そういったロックンロールの現代のサウンドトラックとして永遠に歴史に刻まれるだろう熱狂の瞬間。それが、まさしく2003年のマンドゥ・ディアオだ。最高。


2003年07月14日(月) そこにあったアメリカン・ドリーム/The Thrills"So Much For The City"

代わり映えのしない東京の暮らし。お金や期限や人生設計(デザイン・フォー・ライフ)に追われ、高層ビルに囲まれた広告や装飾や化粧でぐちょぐちょに塗りこまれた街を歩きながら、週末に大好きな笑顔を見るためだけに頑張っているような人達。誰もが東京という物質都市の中で全て満たされながら、退屈そうで疲れた表情を浮かべて吊り革につかまっている。そしてそれは俺も同じであって。

そんなどうしようもない日々で、俺はときどき春休みに旅してきたアメリカの西海岸を思い出す。LAXから降り立った瞬間の目もくらむような陽光。どこまでも広がっていきそうなブルーの空。その輝きと眩しさがずっと続いていった毎日。観光者特有の浮かれた感想かもしれない。実際に怖い姿だって見てきた。メトロでは死人だって見た。

けれど、ウエスト・コーストっていうのは本当に本当に、感動的な体験だった。毎日ずっと晴れているサンシャインの下、すぐにでもボードを担いでサーフィンしたくなる海岸線とその開放感。真っ直ぐなハイウェイを100マイルを越えて飛ばしながら見たどこまでも広がる地平線。砂漠。野生動物。牧場。ガソリンスタンド。巨大なトラック。地球の歴史と巨大さを感じる観光スポットの大自然。そして、自分の思いをはっきりと伝えながらコミュニケートするアメリカ人の率直な人間性。これでもかというくらいのボリュームで大味な食事。サンタモニカやベニスのビーチ。グランドキャニオン。壮大な夕暮れ。宇宙がそのまま広がる星空。笑い声。巨大モール。ハンバーガー。グレイハウンド。アムトラック。バスケットボール。抱き合ってキスをする恋人。ハリウッド。

アメリカン・ドリーム。それは、まったく嘘じゃない。そこには光も影も、そして成功と挫折がはっきりと存在するけれど、夢を目指すだけの大きさと光景ときっと今も続く未来があった。最高の夏が続く西海岸。バケーション。逃避行。

ザ・スリルズのデビューアルバム、『ソー・マッチ・フォー・ザ・シティ』はそんな気持ちと完全にリンクしてしまう、アメリカという国の理想的な希望と愛に満ちた、そして、それを手に入れられなかった哀しみすら抱き込んだ大名盤だ。

ビーチ・ボーイズつまりブライアン・ウィルソン、ザ・バーズ、バッファロー・スプリングフィールドなんかがすぐに連想される西海岸の最強のサイケ・フォークミュージックの先達からの反響。そしてそこから繋がって、アメリカの幸せだった時代のポップスの黄金律が聞こえてくる。素晴らしく切なくて、ノスタルジックで、苦くて甘いアルバム。完全に今のシーンでは浮いているが、際立っている。

アイルランドのバンドなんだよ? でも、だからこそ、俺が屈託もなく見てきたアメリカの素晴らしさを書ける様に、彼らもよそ者だからこそ、素直に感動をそのままの温度と密度で表現できるんだろう。主体だけではもはや描けない音楽。

このアルバムが出るまでに何枚かシングルがあって、収録曲はけっこうかぶってはいるんだけれど、そのものとはバージョンが違っている。すごくゆっくりとした演奏をしていて、伝わる様に一つ一つの音と歌詞をはっきりとさせているのが見事に成功している。カップリングというわけではなかったんだ。絶対に聞かせなければならない曲の集まりだったわけだ。

#1の"サンタ・クルーズ"はもう全展開が名曲。ゆっくりと歌われる導入部、「どこにあのとんでもない歌をいくつも置き忘れてきたのか教えておくれよ」という問いかけ。ハーモニカ・ソロ。そしてその後にすかさず入るビーチボーイズの切なさを携えたコーラス。

#4は完全に現時点で世界トップ5に入る感動的なバラッド。この何の個性も無いコード進行を辿っていくピアノは、コールドプレイとベン・フォールズのほとんどのピアノ・プレイの上を行っているといえるまでの切なさ。そして、囁かんばかりの歌声に乗るメロディが切ない。ディレイ効きまくりのギターソロも切ない。後に乗るアコギの鳴らし方もずるい。切な過ぎる。こんな新人が出てきたら、トラヴィス、どう出るよ?

#5、完全なアメリカの田舎町を思い起こさせる歌。グランドキャニオンに向かう途中、ガソリン給油のために立ち寄った、アリゾナの町はまさにこの曲が似合う。若者のむやみな希望にも溢れているな。バンジョーがばっちり。

#6も現時点で世界トップ5に入るだろう、人目もはばからずぐっと来てしまうバラッド。ザ・ヴァーヴやオアシス並の弦楽の重奏が入るけれど、そこを大仰な曲にしない所が良い。アメリカの等身大の記憶、そのままで鳴らしている。「オールド・フレンズ、ニュー・ラヴァーズ」と囁き歌った後、盛り上がっていくメロディはこの時点で音楽の感動性の沸点を記録する。その後に来る、ありえない音作りのギターソロは、「泣く」という感情と完全にイコールになった奇跡だ。

#8は曲目通り完全なハリウッド。なんで音で表現できるんだろうか。天才。#9は三拍子のこれまた名曲だなあ。アメリカの星空ですね。

#12の"プランズ"という実質のアルバム最終曲はカーペンターズから展開していく、「誰だって計画を立てなくちゃ、だってガソリンばっかり入れてるだけじゃ笑顔すら浮かべられないでしょ」っていうメッセージが胸に突き刺さるソング。そう。そして、このアルバムの通奏低音であるメッセージがこのフレーズに凝縮されている。

理想、希望、夢。それは口先だけでは、まったく理想や希望や夢として完成しない。モラトリアムを延期しつづけて、ガソリンばかり貯めていても、何も満たされない。とにかく、実行しなきゃ。この現状から逃げ出さなければ。立ち切らなければならないものはすべて捨てて。自分の人生の青写真を正確に描こうと努力しなければ。その予定表には、苦しみも書きこんで。

ザ・スリルズの音楽は、世界で一番夢と希望に溢れていることが分かりやすい存在であるアメリカン・ドリームにどっぷりと浸かりながら、その夢への旅立ちを描こうとしている。そして、それができないことへの心の痛みまでも表現している。ウエスト・コーストの大きさと自由という開放感を鳴らしながら、退屈な日常と、それを作り出しているのはまた自分であることを気付かせながら、まさしく音楽だけで夢と希望の真実を映し出している。


2003年07月12日(土) 歌いながら/fountains of wayne"WELCOME INTERSTATE MANAGERS"

また今年も夏がやってきた。そして、2003年のこの夏に、ファウンテインズ・オブ・ウェインは、時が巡っても永遠に変わらない恋と切なさを連れて帰ってきた。この目も当てられないような世界に。変わらないこんな素晴らしいバンドがアメリカにいる。

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6月まで、俺や仲間にマス・コミュニケーションとは何かを叩き込むために教育係が付いていた。時に厳しく、時に優しい人。条理も不条理も引き連れたこの世界を叩き教えてくれた、大ベテラン。7月からは一人立ちっていう訳ではないけれど、彼から卒業した。その彼がつい先日、解散式を開いてくれた。

都内屈指の中国料理の高級店でありもしないような料理を食べた後、カラオケに行った。そこでは歌いまくったなー。カラオケなんてここ何ヶ月か行ってなかったから、めちゃくちゃ気持ち良かった。ぜんぜん今の歌は歌えないけどね。空っぽの青春パンクや、金の匂いに塗れた民謡なんて歌いたくも無いし。

なんか大きな決意がそうさせたんだろうか、次の段階に進む不安と期待が表出したんだろうか、選曲がみんな名曲。イノセント・ワールドや30じゃないけど、イージューライダーは本当に良い曲だね。教育係の彼は「『歌は世につれ、世は歌につれ』っていうけれど、素晴らしい歌っていうのは何も変わらないね」と感動してくれてた。

そう、そうなんです。

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"彼は携帯電話の爆発で死んだ/遺灰は海にまかれ/海水はベビー・ローションの原料になった/そして商業主義の歯車が回り始めた""それでも夏には太陽が輝く/僕は君のもの 君が僕のものになるならね/変わろうと努力したさ けど気が変わったんだ/メキシカン・ワインをもう一杯もらおう"

1曲目の"メキシカン・ワイン"でFOWがポップ・メロディの魔法に乗せて力強く宣言するのは、そういうことだ。全部詰まってると思うな、この数行で。何も変わらない人間模様っていうのが。

変わり続ける世界の景色の中で、絶対に色褪せることがないのはメロディであり、根本的な想いと決意を描いた言葉だ。FOWの3rd、この「ウェルカム・インターステイト・マネージャーズ」はそれを証明しきっている。

1st、2ndから見抜けることだったけれど、この3rdはもうはっきりとパワーポップの域を軽く飛び越えてる。そしてそれと同時に、ほとんどの最高と言われている現在のポップ、ロック・アーティストを追い抜いてしまった。ノエル・ギャラガーよりも、リヴァース・クオモよりも、このFOWのニ大ソングライター、アダム・シュレシンジャーとクリス・コリングウッドは優れている。そう言わざるをえないな。

#1の一曲の時点で、数多のパワーポップバンドは蹴散らされる。切なさのコードに乗せて歌われる、痩身の泣き虫男の決意。そしてアメリカの広い広い青空に解き放たれるギターソロ。窓から星空を眺めながらの子守唄。OK、号泣。

#6は、なんかチューリップやオフコースを思い起こさせる透き通ったカントリー・ソング。前向きになることの大切さ。そうなれない思いの悲しさ。でもだんだんと季節は夏に近づいていくこと。

#8、#14、#15はこう鳴らしてくれよ、オエイシス、リアム、こう歌ってくれよという願いなのか? 圧倒的なオアシス・ロック。これは……、本当に素晴らしい。と言うしかないな。これをオアシスが歌ったら、世の中はもっと変わるかな。メロディも、轟音も、全てがあの右上向きの矢印を思い起こさせる。

#9はミスターチルドレンの"雨のち晴れ"のような小粋でちょっとおセンチな歌。こういうのが沁みるようになったらいけないのかな。

#10、#12はポール・マッカートニーなのだろう。ギュッと胸が締め付けられる思い出の歌。懐メロ。

#13は軽くアイロニーを込めながら、でもだからこそ強く響く平和への唄。恋人や家族、友達と過ごす日常を大事にしようという大命題を、口笛のような気楽な歌に乗せて。

締めの#16(日本盤ボーナス・トラックでは、そのあとに理想的なオアシスソングが続くけれど)。子供が眠りについた後、絵本が優しく閉じられるようなアコースティック・ソング。君と僕の部屋で過ごす時間が一番素晴らしい瞬間。そういうこと。

ファウンテインズ・オブ・ウェインは、君が人を信じられなくなったならば、世の中が嫌になったならば、何かに破れて途方に暮れているならば、絶望と希望を行き来する日常に疲れているならば、絶対に聴いて欲しいアーティストだ。そして、この3rdを真っ先に手に取って、CDプレーヤーに放り込んでほしい。泣いているのは君だけじゃない。でも、君も前を見て、人を愛していかなければならないよって教えてくれる。

さあさあ、ようこそ、俺らの日常を蹂躙してくるお偉いさん方。でも、俺らは変わりたくない。変わらない。そう言って、笑いながら、歌いながら。


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