written by 田村 MAILHOME
#CCCDについて
2003年02月07日(金)

前回同様、随分久方ぶりの更新となってしまった。それでも以前のように、半年放置した後にリニューアル、などと暴挙に及んでいないだけマシだと思って欲しい。思ってくれないだろうか。お願い、思って。



本日の話題は、CCCDについてである。
結論としては、「CCCDは購入しない」。


以下、理由である。



インターネット上の各関連サイトにおいては散々話題に上っており、今更改めてCCCDのなんたるやをここで語る必要も無いと思うので、詳細についてはリンクを貼ることで逃げておきたい。


JAYFREAK ONLINE-CCCD FAQ

C堂7 CCCD特集


文才が無いので、思っていることをブロックごとに分けて記述する。


<CCCD導入の説得力の無さ>
発端はエイベックスであり(日本初CCCDは、BoA「Every heart ミンナノキモチ」(2002年3月13日))、その後各レコード会社とも追随、CD店のCCCD率は更なる高まりを見せている。

導入の理由は、「PC普及に伴い違法な音楽ファイルの交換・共有、CD-Rへの複製によってCDの売上に大きな影響を及ぼしている」ということである。

確かに原因の一つとして考えられるが、果たしてそれがすべてであろうか。
「違法コピーによるファイル交換」を音楽CDの売上低下の直接的な原因と出来ない理由について、


・ファイル交換を主として音楽を聴いている層の比率はどの程度か
→音楽を聴く層における比率はそれほどまでに高いのか?
・気に入った音楽であれば対価を出して購入する層が居るのではないか
→「所有したい」というニーズを引き出す作品が現在どれだけあるのか?
・趣味嗜好の多様化の影響はどの程度か
→皆が同じ音楽を聞くことのほうが異常では無いのか?


など、素人考えでもいくつか挙げることが可能だ。

弁護士である小倉秀夫氏のweb日記で、更に詳細な考察が述べられている。

小倉弁護士の説と、「違法な音楽ファイルの存在が近年の音楽CD売上の低下に直結している」という説では、果たしてどちらが納得できるであろうか。私は、後者を理由とするにはあまりに乱暴過ぎると思う。
レコード会社は、消費者側の不正コピーに責任転嫁する前に、自社製品のクオリティについて検証を行ったのであろうか。


<メリットの無いCCCD導入>
CCCDの導入について、アーティスト、メーカー、消費者が得をすることなど、何一つ無い(あるのならばご教授願いたい)。

CCCDはコピーを完全にコントロールできるわけではなく、著作権保護の機能として不完全であること。音楽媒体としても不完全であり、環境によっては再生不可能であること。にもかかわらず導入を推進させることにより、レコード会社がアーティスト・消費者をどれだけ軽視していたかを表出させたこと。

一体どこに得があったのだろうか。
あるいは私たちの手の届かないどこかに、何らかの利益が転がっているのかもしれない。邪推かもしれないが、そう推測されても仕方の無い状況を作り出しては居ないだろうか。



<アーティストの選択権、アーティストと消費者の無用な摩擦>
今回の件について、アーティスト側の反応も様々である。作品がCCCDとしてリリースされることを避けるために反対の声をあげるアーティストも居るが、実際そういった姿勢を取ることが出来るのは、レコード会社の売上に大きく関与している一部のアーティストのみであろう。名も知れていないアーティストが同様に反対の声をあげられるかといえば、不可能であろう。
結果、多くのアーティストが選択権を持てないまま、不本意ながらCCCDでのリリースを余儀なくされているのではないか。

また、CCCDで作品をリリースしたことに対し、アーティストのオフィシャルサイト等へ批判の声を寄せるケースが散見されるが、本来意見を伝えるべき相手はレコード会社であり、アーティストではない。CCCDは、アーティストの音楽に対する姿勢を浮き彫りにさせるフィルターには成り得ない。

CCCDの導入によって、アーティストと消費者の関係に無用な摩擦を生み出していないだろうか。CCCD導入以前であれば、まったく発生する余地の無い摩擦である。両者の間に、つまらない不信感を漂わせる結果となっていやしないだろうか。


<敢えてCCCDを買うか?音楽購入の機会損失>
これだけの問題があるCCCDを、敢えて購入する気になるだろうか。
先日CD店へ行った際、以前より気になっていたbloodthirsty butchersの新作「荒野ニオケルbloodthirsty butchers」にCCCDのステッカーが貼ってあった時には、さすがにがっくり来た。散々迷った挙句、CCCDの気持ち悪さが手伝い、購入を断念したが、同様の理由で見送りとなった作品がいくつかある。
その中には、これまで聞いたことが無かったが、ちょっと気になったので買ってみようと考えていたものも含まれる。CCCDは、そういった衝動買いのきっかけすら奪ってしまう。

エイベックスのwebサイトのコンテンツである「ABOUT CCCD」におけるFAQの設問2「なぜコピーコントロールCDを出すのですか?」では、下記の通り述べられている。


これらの行為(違法な音楽ファイルの交換・共有、CD-Rへの複製、ファイル交換)は、作詞・作曲家、実演家(アーティスト)、レコード製作者等音楽産業に関わるすべての人達の生活を脅かすことになります。その結果、新しい楽曲も、新しいアーティストも、この世に生まれなくなってしまうことになりかねないのです。


自ら「新しい楽曲も、新しいアーティストも、この世に生まれなくなってしまう」きっかけを作り出しているとしたら、随分と皮肉なものである。


<CCCD導入についての体制作り・啓蒙の不足>
CD店の店長に、CCCDについて聞いたところ、販売する側としても複雑であるとの回答であった。CCCDについての消費者の認識はやはり高くなく、そもそもCCCDがどういったものであるか知らない人がほとんどらしい。
CCCDの啓蒙を促すパンフレットも見せていただいた。記憶違いだったか、「以前からパンフレット置いてありましたっけ?」と尋ねたところ、最近になってようやくレコード会社より配布されるようになったとのことである(CCCD自体の販売は昨年初頭より行っているにもかかわらず)。更に、パンフレットは現在手元あるのみで、在庫は無いとのこと。

「パンフレットが無くてもお客さんへの説明は出来る、けど、もうちょっとどうにかしてほしいというのが本音」

苦しい立場を吐露されていた。何かあったときに真っ先に苦情が来るのはここであろう。消費者への説明は十分であったか?販売を行うにあたって、環境の整備状況は妥当であったか?疑問の残るところである。



以上つらつらと思ったことを書き連ねてきたが、結局我々に出来ることは、CCCDがなんたるかをより多くの人に知ってもらうために情報を発信することと、CCCDを買わないことぐらいである。単純且つ気が遠くなりそうな活動であるが、やらないよりは増しなので、今回記述することにした。

今後、CCCDの占める割合は更に増加するであろう。好きなアーティストがCCCD化されることも数多くあるだろうし、実際にいくつかCCCD化されている。
すべてのCDがCCCD化された場合にどうするか。懐古主義に走るかもしれないし、断念してCCCD購入に踏み切るかもしれない。もしかしたら新しい音楽媒体が出現し、そちらに乗り換えているかもしれない。

現時点ではなんとも言えないが、それでも「知らないよりは知っていたほうが増し」であるし、「何もしないより何か発した方が増し」であることには変わりない。今回の日記で、CCCDについて興味を持ってくれた方が居たら、幸いである。

前日本レコード協会の会長が、「不況の時代、人々は癒しを求めている。本来ならば、癒しや励ましを与える音楽需要が高まってもいいようなものだ。しかし、期待に反して音楽CDの販売額はマイナスを更新し続けている。元凶は、間違いなく家庭用パソコンによる不正コピーが横行しているからだ」という素晴らしい発言をしてみたり、日本レコード協会新会長にエイベックス会長兼社長が就任してみたりと、なかなか笑えそうで笑えない、しかし笑うしかない現状であるが、自らの首を締めるような行為に加担したいとは思わない。



追記:
・企業の都合で新たなサービスを行うことなどいくらでもあるであろう。要は落としどころの問題であり、どれだけ納得できる理由と、納得できる環境を整えることが出来るかであると思うがいかがだろうか。

・今回の件は、「不正コピーが不可能になるため反対」ではなく、「不正コピーを防止するにあたって、CCCDという不完全な技術を採用したことと、それを発端とした現在の状況がおかしい」という立場である。

・導入にあたって、十分な説明がなされていないこともおかしな話であるが、恐らく私たちが知らない間に「いつのまにかすりかわっているもの」なんていくらでもあるのではないだろうか。
興味を持たないこと、興味を持てないこと、興味を持っても動かないこと、自戒をこめて、抵抗する活動に繋がらない消費者側にも問題があるのではないか。

・音楽が生活の一部となっている人は、一体どれだけ居るのか。

自由−それとも著作権?




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