読了日記

2009年06月22日(月) 「千年の黙」

「千年の黙」(森谷明子著,東京創元社)


内容:紫式部を物語の中心に据えた、ミステリー色のある歴史小説。三作から成る。


図書館から借り物。

うわぁ、久々に他角度から面白い小説読んだー!…最近小説を読んでいない所為もありましょうが。

このお話、
・ミステリー
・歴史小説
・エンターテイメント
という面、どれにおいても面白いです。で、上手い事に、良い意味でどれも浅い。
ミステリーは人死にもなく、謎によっては頭から読者に答えが分かっている。温いという言い方も出来るかもしれませんが、下手にトリックに凝ってそっちに内容が偏っていない。
紫式部が、その時代の貴人の慣わしにより、アームチェア・ディテクティブに近くなっているのも面白い。(実地検分もしたけど。)

人間描写も、夫々に味があり、適度に薄い。視点がころころ変わるので、誰か一人に思い入れが分散するのをある程度防いでいる。

歴史小説としても、紫式部に藤原道長といった馴染みの深いところを持ってきているので入り込みやすい。
源氏物語が大きく関わっていて、平安ものではあるけれど、古文の引用は最低限で、知らない人間でも平易に読み解ける。
源氏物語を読んだことがあり、周囲の人物に造詣が深ければより楽しめるつくりになっています。
私はこの時代とか源氏物語は全然深くなく、源氏は「あさきゆめみし」が私の全てではありますが(だって文学としてはどうか知らないけど、チャラ男の女性遍歴なんて興味ないもん。…え?そんな話じゃない?)、此処は源氏物語を知っていれば面白いんだろうなーという所がいくつもありました。まあ、知っている人には逆に間延びしてタルかったかもしれません。あと、古典に深い人には文章なんかが平易すぎるかも。
「かかやく日の宮」が存在しないことを知らないからこそ「どうなるんだろう」と楽しめたフシもあります。
「若紫」は、いくつか異本があるのでしょうか。写本の中に、最後の文があるものとないものがあるとするなら、その真相にこういう解釈で来たか、とにやりとした気がします。
藤原実資についても。もうとっっっくの昔に忘れていた人ですので、ウィキで調べてみました。「仏教徒であったが、・・・・その死に臨んでも出家することはなかった」。これは、読後に見てもにやりとしました。一生手放せなかったのねと。

読解不足が物語を深くしましたよ(笑)。
「かかやく〜」を持ってきたのをてっきり小侍従だと思っていたのに、賢子でしたか、騙された!と思ったのですが、後で読み返すとちゃんと小少将の後について…とか書かれているじゃん!でも、小少将=あてきだと分かったのはもう少し後だったので、その頃には忘れていたよ!
賢子については昔、歴史小説を読んでいるので、「まーまー、あの賢子ちゃんが…」と近所のおばちゃん風に見てしまいました(笑)。

しかしあれよね、当時は「源氏物語」など一人の為政者に潰されかねない儚いものだったというのに、時代の妙というか。望月は理通り欠け、藤原は消え、源氏物語は残った。ペンの強さというものを、これでもかと教えてくれた話でもあったかと。



2009年06月20日(土) 「おでんの丸かじり」

「おでんの丸かじり」(東海林さだお著,文藝春秋社)


内容:独特な角度から切り込んだ、食べ物エッセイ。


ここ数冊、前に比べて面白くないなー。
いや、食エッセイとしては面白いんですが、今までの「丸かじり」と比べて…という意味。
あまり共感できないのが多かったのと、前置きが長くて本題がぶつっと切れるものが多いところが原因かな。あの前置きが本題で、本題は付けたしだろうというのは分かるのですが、タイトルでそのテーマに期待してしまうので、そのテーマに関する東海林節も聞かせて欲しいです。

共感できなかったもの、No.1。「落雁」。
いや!や!落雁はそんな底辺の菓子じゃないから!!
金沢の人間にとって…、少なくとも私にとって、「落雁」と言えば「長生殿」で、高級菓子です。
長方形の小ぶりの板で、歯で挟むとかきっと歯応えがあり、一瞬後、ぽきっ、と折れる。咬む度にかしっ、と歯応えがあるのにじゅわっと解けてとろとろと喉の奥に流れ込む。上品な甘さで、当時は小6本500円だったか…、食べての割には高めで高級品でした。大学の時も帰省土産に胸張って持って帰ったものです。
東海林さんの落雁が落雁でないとは言いません。多分、その落雁が東海林さんの落雁で、卑下しつつも大切な思い出なんでしょう。でもなー、長生殿も食べて欲しいなーと、故郷思いの私は思ってしまうわけです。



2009年06月03日(水) 「カストラート」

「カストラート」(アンドレ コルビオ著,新潮社)


内容:とあるカストラート(去勢歌手)の生涯。小説。


んーと、実在したカストラートをモデルにした映画の原作、かな。原作を映画にしたのでなく、初めから映画にするつもりで書いた話らしい。
カストラートの時代と周辺を知りたくて古本で購入したんですが、人物に焦点が当たりすぎていて、当時の「社会」や「環境」や…、背景が全然見えませんでした。使っていた小物とかもね。
ただ、それらは描かれていなかっただけで存在する、その存在感はありました。
人物にここまで焦点を当て、周辺を描かなくても時代小説って成り立つんだーと感心しました。
描かれている部分があまりに少なく、いや、物足りないとかそういうことでなく、最低限の描写しかしていないので、これは映画を見てその副読本にするものかと。

どうでも良いけど、先日、複数のカウンターテナーの曲を集めたCD買いました。最後のカストラートの録音も1曲入ってました。…フツーに女声のが良いや(カウンターテナーも含めて)。どうしても男声は頭声になるので、頭声独特の濁りが強い。
高音域に関しては高さ(より高く)より透明度の方を重視してしまいます。


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やまだ