| 2006年05月14日(日) |
「大阪ハムレット 1」 |
「大阪ハムレット 1」(森下裕美著,双葉社)
内容:大阪を舞台にした日常叙事詩的まんが?オムニバス形式?
「ぼくんち」を西原理恵子のあの方向での集大成とするなら、これは森下裕美のこの方向での集大成というか。 りえちゃんよりヒネた毒があるので、万人には勧めませんが。 というか「ぼくんち」は普段毒の強いモノを多く描くりえちゃんのピュアな部分を凝縮させたのに対し、こっちは「少年アシベ」や「ウチの場合は」でほのぼのを描く裕美さんの、黒いというか毒というか…えーと、そういう部分を凝縮させた?…えーと、森下さんのほのぼのじゃないものを知っている人はそっち方面…や、でも「まるでん」とかとはまた違った…えーと。
この絵でもストーリィ漫画って描けるんですよね。 「この絵でも」って失礼ですが。 もっとも、森下さんの絵はポージングとか表情とかが非常に生き生きしていて流れるようで、上手な絵ではあります。 最近さー、ペンタッチとトーンワークは良いんだけど、ポーズが全然描けてない、表情も素人アイドル上がりがやるドラマみたくカチコチの、ド下手くそな漫画が多いじゃないですか。昔は、描くのが好きで好きで、たくさん描いて描いて描いて漫画家になるから、そういう人は居なかったんだけど…あ、違うか。ストーリィを漫画で描きたいからそういうのを数こなして描ける漫画家になっていたのに、最近はストーリィでなく「格好良い男の人」とか「綺麗な絵」とか、キャラを描きたくて、そのキャラの一番良い顔だけたくさん練習しただけの人が増えただけか。 とにかく、下手っっっっっくそな漫画家が多いですが、森下さんの絵は「上手い」です。 お話も「巧い」。
好き嫌いで言うなら、森下作品はほのぼの(ちょっと毒入り)4コマのが好きです。 でも、ファンとして、こういう漫画が出るのは非常に嬉しい。そういう作品。
シンデレラ(だっけ?)演って踊る時、ヒロくんの顔が本当に可愛らしい女の子に見えたのがびっくりしましたよ、はい。
「冬の旅人上,下」(皆川博子著,講談社)
内容:時は19世紀末。子供の頃一枚の西洋画に魅せられた川江環は、聖像画を学ぶ為、17歳で帝政ロシアに渡る。幾つかの行き違いから留学先の修道院を追い出され、日本に強制送還される直前に逃亡し、貧民街に身を寄せつつ、衝動に突き動かされるままに絵筆を取る。やがて、ロシアは革命への道を歩み、環ことタマーラも否応無しにその渦に巻き込まれて行く。小説。
Iサンより借り物。
物語は環の17歳から始まり50代まで、一人称で語られる。 望まぬ出産,異郷での生活,無実の罪により流罪となった友人(?)に付き添ってのシベリアでの生活。 美しい少年に美しい少女との出会い。 ラスプーチン,皇帝一家との交流等々。
激動の人生に関わる人夫々の描写がとても中途半端だ。 不満…もあるけど、それ以上に、人の人生とはそんなもんなんだろうなと思ってみたりして。 一人の人間にとって、時と共に流れていく他人は多い。どんなに鮮明で美しい思い出でも、その人にとっては過去のもので再びの邂逅はそうあるものではない。 そして激動の人生だからこそ、流れる過去を頻繁に振り返っている暇なぞない。本人は。
でもこっちは読者なんだし、小説なんだし、あそことかこことか拾って欲しかったな、あの子はどうなったのかな、何処へ行ったんだろう、と、書いて欲しい所はいっぱいありました。 個人的な好みで言えば、そんな話では作品の完成度は落ちただろうけど、フュージャとの軟禁生活…環が想う「選択しなかったもう1つの未来」の方が見てみたかったです。
子供はどうなったのだろう。花乃は?リョーリャは? 環の人生にはもう交わらなかった。だから、書かれないのが正しいのだけど、知りたかったです。
後半は凄くもったりして感じました。 多分、私が皇帝一家に関する文献とか一時期集めていたからだと思う。皇帝一家の軟禁生活や、アレの病気の事や、知らなかった人には新鮮だったかもしれませんが、あの最期の日々のレポートを、私はかつて貪るように読んだ事があります。だもんで、「そこは知っているからもっと違う所を!」とイライラしたわけです。
…まあ、なんだ、「傑作だ」と言う人には文句をつけるつもりはありませんが、もちっとエンタメ度が高い方が私は好み。
ところで環って、ショタコン?と思ってしまったのは私だけではあるまい。
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