たそがれまで
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2004年11月29日(月) 紫陽花の詩






先日、家族で大型電器量販店に行った時のこと。
お目当ての暖房機を購入した後、夫がキョロキョロしていた。

何か探してるの?

うん、ちょっと・・・

目当ての物が並ぶ棚を見つけたのか、
そそくさと歩いて行ってしまった。
慌てて付いて行くと、そこにはポータブルCDや
ポータブルMDが並んでいる棚だった。
(つまりはCDウォークマンの類)


東風が今度帰る時に、あれば便利かなと思って・・

そう言って、夫はあれこれ物色していた。

そう、今週末、私は一泊で里帰りすることにした。
何かないと帰らないから、無理やっこ時間を合わせてもらって
昔の仲間と忘年会をすることにしたのだ。

いつもは自分で運転して帰るのだけれど、
それだと強行軍になって疲れるからと
夫に高速バスを強く勧められた。

ただ、私はちょっとバスというやつが苦手で
前にバスで帰った時に、車酔いをしてしまった。
3時間半という時間を何もしないで過ごすのは苦痛だから、
車内のモニターで流されているビデオを見ていると酔った。

その記憶が強く残っていて
夫の言葉に素直にうんと言えなかった。
疲れても自分で運転した方がいい。
そう言い張ってみたけれど、夫は意見を変えなかった。


どうせこれからちょこちょこ帰るんだから
無駄にはならないから、買ってあげるよ。

そう言って、ポータブルCDを手に取った。


ふと思い出した。
昔、まだ私が就職したての頃、彼(夫)の赴任先に遊びに行くのに
JRで3時間かかった。
その時、私はウォークマンを買ったのだ。
当時は当然まだまだテープの時代で、
交換用のテープを何本も用意したらわりと荷物になった。



あの・・・
せっかくだけど・・・
MDの方じゃダメ?


CDとMDでは明らかに価格が違う。
だけど荷物を軽くしたい私は、厚かましいお願いをした。


まぁそれでもいいけど、MDなんか録音しないくせに。

昔、車にMDコンポつけてた時のが沢山あるから。

じゃ、これで決まり。




というわけで、予期せずポータブルMDを買って貰った。
本当は子供達を置いて帰らせてもらうだけでも有り難いのに、
交通費を出してくれるだけでも有り難いのに、
(宴会費用までおねだりしてみたけど、それはダメだった)
なんと細やかな心配りだろう。

ありがとう。
うんと楽しんで、リフレッシュしてくるね。



あの頃、夫に会うために車内で聴いた曲を
早速MDに録音していこう。

それが
紫陽花の詩

ただ長崎に行くというだけで選んだ曲だったのだけど
私には忘れられないこの一曲





紫陽花の詩
   アルバム わすれもの(1974)より





2004年11月23日(火) 検察側の証人





さだまさしの曲の中に
「検察側の証人」という歌がある。
別れた恋人同士の、それぞれの友人の立場からの
言い分で成り立っている歌詞。

「一生懸命愛したあいつを裏切ったあの女は許せない。」

「確かに心変わりが原因ではあるけれど、
 血を吐くほどに泣いて謝っていた彼女も傷ついているのよ。」

と大まかにはそのような内容。


同じ出来事でも立場が違えば、捉え方が大きく違う。
歌詞の内容とはまったく違うけれど、私も感じたことがある。




元夫と離婚した後、もう随分と経ってから元姑と話した時のこと。
離婚の原因は元夫のギャンブルと借金で、何度も家族を放りだして逃げた。
後始末はいつも両親で、自分でなんとかしたことなどただの一度も無かった。

当然私の親・姉妹は元夫のことを悪く言う。
娘を出産する時の費用さえ持って逃げたのだから、当然と云えば当然。
離婚の話し合いに立ち会ってくれた義兄は、元舅姑を目の前に
ボロクソに元夫をけなした。
(本人は逃亡中で出席さえしていない)

その時の話しになった時、元姑がほろりと言った。

こんなことを言えた義理じゃないけれど、
東風ちゃんがもっとしっかりしていてくれたら
こんなことには成らなかったんじゃないかと思う時もあるの。
息子の出来の悪さは充分わかってる。
でも、でも、もっと東風ちゃんが・・・
例えば居心地のよい家庭を作ってくれていたら、
息子もフラフラ出歩かずに済んだんじゃないかと・・・


その言葉を聞いた時、この「検察側の証人」の曲を思い浮かべた。
言葉の内容の善し悪しは別として、
その立場からしたら当然かもしれない。
決して良い妻でなかった。と云うより、良い夫婦ではなかった。

お互いを押さえつけ合うことに必死で、
二人で協力するとか、一緒に頑張ろうとかそんな気持ちにはなれなかった。
だから元姑が言った言葉にも一理ある。
当然、そのことについては反省している。


一つの出来事も立場が変われば
感じ方や捉え方が違う。

だから本当は正解なんて無い。
あるとすれば、その人にとっての正解だと思う。
そしてそのことをちゃんと解っていなければ、
生きていくってすごく難しいことなんだろうなぁ。














と云うわけで、
しばらくさだまさしの曲名から連想する内容で
「黄昏迄」を書いていきたいと思ってます。
ずっと聴いていなかったのだけど、
最近は編み物の時のBGMになっていて
懐かしいアルバムを引っ張り出しております。


検察側の証人   
    アルバム 印象派 (1980) より









2004年11月17日(水) 望郷




最近、どうも調子が悪かった。
体調もだけど、精神的にも滅入っていた。

ほんのちょっと誰かに愚痴れば気が済む程度のものを
少しずつ少しずつ溜め込んでしまったようで
一気に爆発してしまった。


人間というのは身勝手なもので
いつでも心の中で不満を作り上げてしまうようだ。
人間という大きな括りは大袈裟かもしれないけれど、
少なくとも私はその中の一人だ。

苦しい生活の中では苦しいなりの
ぬるま湯の生活の中ではぬるま湯なりの
そんな不満。

昔、シングルマザーで髪振り乱して生活していた頃には
「ど〜ってことないよ」と笑いとばせたような些細なことが
今の私には笑い飛ばせない。
気持ちが負の方向へ進んでしまうのが分かる。



ある夜、どうしても寝付けなくて夜更けに部屋着のまま車で家を出た。
そして少し走ったところで気が付いた。
私には行きたい場所が無い。

少し行けば車で走るには最適な海沿いの道はある。
車を止めれば星もたくさん見られるはずだ。
だけど行く気にならなくて、山に向かって走り出した。

だからと言って何の目的も目的地も無い。
ふと、思った。
このままずっと走れば、故郷に帰れる。
このまま4時間も走れば故郷に帰れる。

そうだ、私が見たいのは故郷のあの海だ。
湾の向こう岸に街の夜景が見えるあの海だ。
往復のことも考えれば、気が済むだけドライブできるはず。

帰りたい
帰りたい
帰りたい



このままの帰ろうか
明日は休日
ガソリンは満タン
高速代も何とかなる。
いや高速になど乗らなくも良い。
着替えも姉の家に行きさえすれば何とかなる。

そんな気持ちがだんだん膨らんで
すっかり帰る気持ちになった。

だけどあの海を見るには欠かせないCDが無い。
あの海沿いを走る時には必ず聴く曲が無い。

ただそれだけを取りに、一度家に戻ることにした。
ついでだから着替えとお金も取ってこよう。
そう思って家のドアをあけると
寝ていた筈の夫がリビングのソファーに座っていた。

突然里帰りすると言い出した妻に、ひとしきりの動揺。
とにかく話せ。何があったか話せ。
なんでもいいから話せ。思っていることを話してみて。

と言われても、これといって明確なことはない。
職場での人間関係のゴタゴタは前々からあったこと、
それに随分改善されたと思う。
確かに人が減って負担が大きくなったことはあるけれど・・・

そうだ。
仕事をスタートした時から一緒に頑張ってきた相棒が
今月半ばで辞めた。
体調不良が原因だから無理に引き留めることは出来なかった。
女性特有の病気で、来月入院して手術を受けることも決まっている。
同じ年代だから彼女の離脱の原因は確かに堪えた。

だけどそれだけが理由じゃない。


ほかは?

そう訊かれたところで現在の私には、
家と職場にしか日常的な人間関係は存在しない。
実はそれが一番の原因かもしれない。


そしてきっと、
故郷に帰ったとしても何かが大きく変わることはない。
本当に帰りたいのはただの故郷ではなくて
楽しくて笑い転げた時代の故郷だ。
時間を遡ることは不可能で、
つまり本当に帰りたい場所には戻れないのだ。





結局、夫と話し込んで時間を消費してしまったので
その夜は帰らなかった。
もう寝ようとベッドに入ったのは午前3時を過ぎていた。

翌日にも翌々日にも私は帰らなかった。
「いつでも帰っていいんだよ」と
夫のその言葉だけで良かったのかもしれない。



まだまだ本調子ではないけれど、
少しずつ「元気」に向かって前進中。
冬が来るまでには・・・




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