たそがれまで
DiaryINDEXpastwill


2004年07月30日(金) 不相応な服






子供達の祖母から・・
つまり私の別れた元夫の義母からメールが届いた。
従姉妹達と一緒に写った写真付きのメール。

その中に写る息子は私が知らない服を着ていた。
ふぅ〜ん、買ってもらったんだ。
正直言うと有り難い思いと同時に
なにかもやもやした気持ちになった。


食べ物と着る物に何かとうるさい人達で
いつも「お金がな〜い」と言いつつ、
それなりに贅沢をしていた義父母。

汚し盛りの子供達に安物の服を着せていると
それとなく注意されることがしばしばあった。
「この間買ってあげた服は着せないの?」なんて・・・


だからというわけでは無いけれど、
子供達を祖父母の元に行かせる時は、わりと着る物に気を使う。

昔、元夫と夫婦で居た頃ならそんなことは気にしなかった。
自分達の身の丈に合った服を着て、不相応な服には袖を通さなかった。

それは、無言の抵抗だったのかもしれない。

「あなた達の息子の稼ぎでは、こんな服しか買えません」
「あなた達の息子の借金が無ければ、もっと可愛い服を着せられます」




今回のホームスティの子供達の荷物を詰めていると、夫に叱られた。
娘にたくさんの服を買い与えたのがバレたから。

「これは仏様をお参りに行く時に着る服だよ〜」

と無邪気に話す娘には、そうかそうかと頷いていたのだけれど・・

「見栄を張るな」

そんな夫の言葉だったけど、言われてみれば確かにそうかもしれない。
だけど私が見栄を張りたいのは、決してお参りに行く私の親戚じゃない。

子供達の祖父母
私の元舅姑
ただこの二人だけだ。

それも見栄という気持ち以上に
見返してやりたいだけだ。

「今の生活なら、こんなに可愛い服を着せられるのですよ」
「あなた達の息子が出来なかったことを、夫はちゃんとしてくれてます」

そんな無言の責め。



しがらみのある関係では、
お互いににこやかな顔で駆け引きをしている。
子供達には見せたくない部分。
それならそんなしがらみを捨ててしまえば良いのだろうけど
そんなに簡単にいくことじゃない。



割り切っているようで、割り切れない気持ち。
もう少しで子供達を迎えに行く。
あのTシャツは着ていて欲しくない。









2004年07月27日(火) 手持ちぶさた





夏休みが始まって、二日目から子供達は出かけた。
大好きな祖父母の家に、2週間のホームステイ。

空港に送っていく途中でも、よく笑うよく喋る。
あそこに行って、あれを食べてと希望は膨らむ一方で











それとは正反対に、私だけがなんか淋しくなった。





多分、私の実母や姉妹の家に送り出すのだったら
そんな気持ちにはならないんだろう。
夫の実家に行くのなら大喜び。




元夫の両親の家に送り出す時はいつもこう。
子供達が嬉しそうにすればするほど
私は淋しくなる。
夫は何も言わないけれど、きっと同じだと思う。

もう4日。
一回の電話も無し。






だけど自分達で決めたことだ。
つき合いを続けさせると、私と夫が決めた。

だから今更、うじうじ言ったところで仕方が無いのは解ってる。

でもなんか淋しい。
ちょっとだけいつもより時間が長く感じてしまう。





2004年07月07日(水) 七夕





今日は七夕

あいにく、私の住む町の空は厚い雲に覆われていて
星の一つも見えない。
けれどその方が人目を気にせずに
二人は再会を喜び合えるかも・・・



ゴールテープを切らせてあげたい我が娘は
空を眺めて言った。

「今日の七夕は雨だから、明日に延期だよね」

あのね・・
遠足や運動会じゃないんだから
七夕の順延なんてないの。


「えぇ〜、そうなの?
 だって今日の宿題は星を見ることだったのに
 できなかったら明日に延びるんだよ。
 なんで七夕は延びないのよ。」

それは人間の都合であって、
彦星や織り姫にはな〜んにも関係無し。
そうそう自分達の思い通りになんていかないの。


人生も同じ
ちっとも自分の思い通りになんかならない。
それが理解できるようになるまでには
何度も何度も地団駄を踏むんだよ。




来年は晴れるといいね。

・・・・こんな気の長い話し、
鬼も笑う気にならないだろうね。








2004年07月06日(火) ゴールテープ 2



昼間の一人でいる時間帯はなんとか我慢もしていたのだけど、
もうすぐ子供達が帰って来るという時間になって
やっとエアコンのスイッチを入れた。

昨年の夏、涼しいはずだと信じて帰宅した息子が
部屋に入った途端、あまりの暑さに泣き出したこともあったから。
どうせすぐに遊びに行くのだろうけど、ちょっとだけでも
涼しい風に当ててやりたかった。



で、娘が帰宅してまだランドセルさえ下ろす間も与えずに私は尋ねた。

「今日のリコーダーのテストどうだった?」

にやりと笑いながら娘のピースサイン。
どうやら合格点は貰えたようだ。

「ひゃほ〜! やったやった〜」

強引に娘の手を取り、大振りの握手を・・・
どうやら娘自身より私の方の喜びの方が大きいようだ。


なんでも、テスト前に音楽専科の先生が言われたそうだ。

先生は上手に吹くことなど望んでません。
正しい姿勢で、リズムをとって、一生懸命吹いた人は不合格にはなりません。
お家で練習をしてきたかどうかは、ちゃんと聴けばわかります。
努力をした人はちゃんとわかります。


娘の言葉を聞きながら、涙が出そうになった。
そうさ、娘は努力をしたから正当なる「合格」を頂けたのだ。

本人も言うとおり、完璧には吹けなかったとのこと。
だけど、朝の登校前にも復習をして出かけたし
休み時間にも練習したらしい。
その甲斐あって、昨日よりピーと上擦った音が減っていたらしい。

そして、吹き終わった時先生から
「ちゃんと音符の長さが合ってたよ」とお褒めの言葉も頂けたらしい。

やった。と私がガッツポーズをするものどうだろうかと思うけど
あれだけ何度も何度も鍵盤ハーモニカで聴かせたんだから
楽譜なんて見なくても、音符の長さとリズムは完璧に近いものがあったはず。


喜びに浸っていると、娘はだんだん雄弁になっていく。

「隣のお友達にね、教えてあげたんだよ。
 ほら、ママから教えてもらったアレ。
 ただの丸が一つしかないのは音符の王様で4つ数える(全音符)。
 縦線がくっついてるのは2つ数えて(二分音符)、
 それに点がくっついてるのは、おまけの1がついて3数えるって・・
 でね・・・小東風ちゃんすご〜いって言われちゃった。」

ま、まあいいんだけど、そんな付け焼き刃の知識を
よくも知ったかぶりできるなと感心。
ただ4つとか3つとかっていうのは曲によって違うから
それをそのまま覚えておいてもらうとちょっと困るかも。



でも、昨日練習したことは娘にとって
私にとって、本当に有意義なことだったと思う。
努力をすれば報われるということを、肌で感じてくれたようだ。

それにしても、先生の大きなお心に感謝。
正直言うと、もし不合格だったらどうしようかと心配をしていたから。
「一生懸命練習したってダメじゃん。」なんて思ってほしくなかった。



で、さりげなく訊いてみた。
「何人くらい合格したの?」


「え〜っと、笛を忘れた人が一人不合格だったかな」


そ、そーよね。
やっぱりそーよね。
娘が合格だったんだもの、やっぱりそーよね。


「さあ、今日も練習しよっか」

そのためにエアコン入れたわけだし、私はもうやる気マンマン。

「あっ、リコーダー忘れてきちゃった」

やっぱりね。そーゆーことよね。
これでちゃんとオチになったよ。
母はちょっとだけ淋しいけどね。







2004年07月04日(日) ゴールテープ

毎週楽しみにしている大河ドラマを見ていると
娘が珍しく神妙な顔で近づいてきた。

「ママ、リコーダー教えて・・」

息子からは時々鍵盤ハーモニカの練習につき合わされるのだけど
娘からは初めてお願いされた。

私自身も子供の頃にほんの少しだけオルガンからピアノを
習ったことがある程度(ピアノはバイエルで挫折した)で
特別に上手いわけではないが、鍵盤ハーモニカとリコーダーの指使いくらいなら
なんとか子供に教えてあげられる。

娘の練習を始めてわずか1分で、私は愕然とした。
まるで音が出ていない。
いわゆる、ドレミファソラシドでさえちゃんと吹けない。

いくら明日がリコーダーの曲のテストだからって、これじゃあ話しにならない。
まずはドレミファソラシドの音をきちんと出すところから始めた。
高いドから初めてだんだん下の音に下がってくる。
どの音できちんと指が押さえていないかチェックチェック。

しばらくは横でアイロンがけをしながら(この時点で既に大河は終了)
娘の練習を聴いていたのだけど、ふっと気がついたことがある。

息子が練習する時は、必ず何度か大きな声をださなくてはいけない。

「もうできな〜い! もうやめる。」

何度もそんな言葉でリコーダーや鍵盤ハーモニカを放り出す息子を
宥めたり、怒ったりで結構大変なのだ。
だけど娘はというと、確かに相変わらず音はでない。
でもいじけたり腐ったりしないで、黙々と練習を続けている。

だんだん音が出てきたので、まだまだ早いとは思いつつ
明日のテスト曲の練習を始めてみた。

・・・・・・・・案の定、音符の意味も長さも解っちゃいない。
これでは曲にならない。




だけど、黙々と練習する娘がいじらしくて
私はアイロンがけを休んで横にどっしり座った。
息子に鍵盤ハーモニカを持ってきてもらい、まずは曲の全体を聴かせた。
楽譜を見るのも大切だけど、曲を頭で覚えてしまえばこっちのものでしょ。

次ぎに私の演奏と一緒にリコーダーを弾かせ
最後には一人で弾かせる。
ステップアップの練習で、最初の娘の演奏(というのもおこがましい)とは
段違いに曲らしく聞こえるようになってきた。
つっかかってはやり直し、音がはずれたらやり直し
おかげで最初の1小節だけは完璧になった(あー、なんて低レベル)。

だけど、
嬉しかった。
本当に嬉しかった。

リコーダーがなんとか音が出るようになったことより
一度も『やめる』と言わなかった娘が嬉しかった。
あー、伝わってます?
どれだけ嬉しかったか。
本当に飛び上がって喜びたいくらい嬉しかった。





何度も何度も同じことを言わせる娘に落胆し、
それでもできない娘が悲しくて、
私自身が泣きながら叱ったことが何度もある。
なんでもそつなくこなす息子が対照だから
娘にとってはどれだけきつかったろうと思う。

確かにのろまのカメさんタイプだということは解っていたけれど
それが歯がゆくて悲しくて、いつもゴール地点をうんと手前に設定し直して
親の都合で無理やりゴールさせてきた。

だけどゴール地点を設定し直すことは
娘の為にならなかったんだ。
どんなに遠いゴールでも、いじけず腐らず一歩一歩
歩いただろう娘の足取りを、強引に止めていただけなんだろう。





もう寝る時間が近づいたので、練習は終了。
だけど完璧にはほど遠く、『吹けている』というレベルにも達していない。
もっと練習する時間があればなんとか普通のレベルまではいけたと思うのだけど、
なにせ言い出すのが遅すぎる。

お尻に火がつかないと何事も始められないのは
絶対的に私の遺伝であるようだから、これはもう仕方がない。

「明日テストが終わっても、リコーダーを持って帰っておいでね。
 また練習しよう。
 テストのための練習じゃなくて、最後までちゃんと吹けるための練習。」

そう言った私に、娘は笑顔で「うん」と答えた。
そして

「教えてくれてありがとう」

そんな言葉が付け加えられた。

もうそんなこと言われたら、嬉しくて飛び上がった勢いで
屋根を突き抜けてしまうんじゃないかと・・・

この嬉しさ伝わってます?




娘が自室に行ってから、夫と喜びを分かち合ったのだけれど
ふと、夫がこんなことを言った。

「もしかしたらこれって普通のことじゃない?
 ただ今までうちの娘だけが出来て無かっただけで・・・
 いや、させてなかったんだよね、きっと。」

そうかもしれないけれど、嬉しかったのは事実。
最近宿題以外の自学も頑張っていて、
その自信が良い方向に向いてきたのだろう。



明日も娘と一緒にレコーダーを練習しよう。
ぜひとも本物のゴールテープを切らせてあげたい。













東風 |MAILHomePage

My追加