あまおと、あまあし
あまおと、あまあし
 2003年02月27日(木)

ビリーにさよならを言ってね

昨日と明日の坂道で
口笛ばかり吹いていた
ビリー、手のひらには
誰かに投げつけるための石ころ
撃ち落されたの、だからさようなら

蝶結びは崩れないように
ちゃんと締めなさい
靴の後ろの泥も忘れずに落として
きちんと、きちんと
飴玉は吐き出して
蟻にでもくれてやればいいわ

ビリーにさよならを言ってね
どこへも行けなかったあの子に
花束なんかいらないから
せめて笑ってやって
坂を登ることも
下ることもしなかったあの子を

右手で銃のかたち
バン、バン

ほら、永遠に

ビリー



 (断片)ひの、のこる 2003年02月13日(木)


ひそめて、夜の話をしよう

私たちの瞼は閉じられたままで
輝きも温もりも暗闇すらも
薄い皮膚の上にあった
ぬるんだ水ごしに
知っていた
いつか出会うことを

指を開いては伸ばし
伸ばしては握り締めて
数え切れぬ望みを、ひとつひとつ

届くだろう、きっと届くだろう
暖かな声の降ってくる
その
みなもとに、いつか
信じていた

名残は瞼の上に
閉じれば現れるひかり、ここに



 2003年02月09日(日)


偽りの月に騙され
君は手に入れた
太陽、激しく燃えるものを

けれど君
どうして熱が虚空を渡ってこれよう
空の星は
いつだって冷たく輝いている
この背中が温もるのは
焦がれているからだ
あの輝きに

傍らの輝きに身を染める
月を望んでいた君は
行ってしまった
小さな星になるために




 夜を渡る 2003年02月02日(日)

夜の底には
まだ届かないらしい
耳たぶで測りながら
月までの距離を考えている

この身体は結局
リンゴひとつほどの物質で
原子核と電子の距離は
永遠に縮まらないのだ
寄り添って漕ぎ出しながら
私たちは廻っている
からっぽを中心に

世界は歩みを止めないだろう
廻りつづける星の
隙間を埋める熱が
どこから生まれるのか
繋いだ手は
教えてくれるだろうか

夜の底で
船は静かに





 2003年02月01日(土)


届かないことを覚悟して
差し出す言葉
いくつ重ねても
重ねても、足りない

たりないね







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 著者 : 和禾  Home : 雨渡宮  図案 : maybe