ちいさな ちいさな おはなし
日々の妄想。ジャンル・CPこだわりなく書いちゃったりします。

2006年11月12日(日) キツネシマちゃん(TOQ)

「ちょっとの間だけ、我慢してね」

母親がシマの頭を撫でて、ぱたぱたと外出していった。
シマは頬を膨らませて、部屋の隅っこで膝を抱えている。

「シマ、仕方がないよ」

「いやや……」

ふるふると首を振り、目にはいっぱいの涙を溜めている。

母親の友達が親戚の結婚式ということで、まだ小さいその家の子を2日ほど預かることになった。
小さい子供用の布団は1組しかなく「じゃあ、シマちゃんの貸してもらえるかな」と言う母に、シマは何も考えずにコクリと頷いたのだ。

今、シマの布団は天日に干してある。

貸す=他の子が使うということを理解したのは今朝になってからだ。
鳩が豆鉄砲をくらったように目を丸くして、尻尾の毛を逆立てたシマは、母親が出ていったあとは、ただひたすら泣いている。

「嫌なら、別に普通の布団を貸せばいいから……」

別の布団の準備をしようかと立ち上がろうとしたら、はしっとシャツの裾を掴んできた。小さな手で力いっぱい握り締めて、見上げてくる。

「いやや」

「どっちなんだ」

「貸すっていうたもん。小さい子には優しいせなあかんのやろ?」

シマはお兄ちゃんやもんと、呟いて俯く。
甚は片二重をかすかに動かし、ふふっと笑った。

「じゃあ、久しぶりに一緒に寝ようか」

「ええの?」

「一つ約束。今日はおねしょしないこと。そしたら、シマの手、ずっと握っててやる」

「ホンマ?ホンマに甚くんと一緒に寝てええの?おてて、繋いでくれる?」

「ああ、おねしょしなかったら」

「せんよ!!シマ、お兄ちゃんやもん!!おねしょせぇへん」

泣いた子はどこへいったのか。ぱぁっと笑ったシマは、うれしそうにぱたぱたと尻尾を揺らした。


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しないと思いますか?

私はすると思うのですが。
そして、またアリンコのせい?で、アリンコに裏切られるの?
アリンコは、きっと甚くんに怯えつつもその魅力に言うことを効かざるを得なくなるんです。
きっとアリンコ文字で「ごめんねー」と謝罪にきてくれるはずです。
読めなくってもニュアンスで。
謝罪の品はあけびらしいです。

こそりとSば様へ。



2006年11月02日(木) うみまるハイツ物語(TOQ)

■□■ うみまるハイツ物語 其の一

天高く馬肥ゆる秋。

薄水の空を見上げて、嶋本はうんと背伸びをした。
背中の筋肉が、ぴくぴくと心地よい痛みを生む。
こんなに天気のいい日が引越し指定日だったのはラッキーだったかもしれない。
暑くもなく、然程寒いわけでもない10月下旬。
少ない荷物を持って、新生活をスタートさせるのが楽しみになってきた。





「え?俺の部屋、ないんですか?」

「仕方ないじゃない。準備してたけど、こんなになっちゃってるんじゃ」

管理人の五十嵐はふぅとため息をつき、涼やかな眼差しを向けてきた。
うっと声を詰まらせた嶋本は、そっと部屋の中を覗きこんだ。
華美でないその部屋は、悲しいかな水浸しだ。

「お掃除しようと思っていたのよ。そしたら、うっかり電話が掛かってきて、ちょっと水を止めるのを忘れていたのね」

そのまま長電話をしてしまった五十嵐が、水が溢れかえっているのに気づいたのは、2時間ほど経ってからだった。
とりあえず程度に取り付けられた簡素な洗面台から流れ出た水は、四畳半の部屋の大半を濡らしていた。
帰宅した隣室の人間が、廊下にまで溢れ出た水に慌てて管理人室に駆け込んだのだ。
「慣れないことはしないことね」
と、平然と首を竦める。

「どこかホテルでも取ってといいたいところだけど、生憎この辺り、そういうものないのよ」

「でも、俺、今日から此処に住むつもりやったから、泊まるとこあらへん」

「とは言っても、流石に私の部屋に男の子泊めるわけにもいかないし……」

か弱い乙女だからと白々言うのは耳を塞ぐことにした。
どうしたものかと暫く思案した五十嵐は、ひらめいたと言わんばかりに、ポンと手を打った。

「丁度、出張でいない人間がいるから、その部屋使いなさい」

「えっ?」

「我ながら、ナイスアイディアだわ。長期出張だから、私時々空気を入れ替えるように言われているのよ。部屋が整うまでそこで生活していればいいわ。どうせ2,3日なんだから、文句はないわよね。もちろん、部屋を借りるんだから、空気の入れ替えも、ついでに部屋の掃除もするわよね」

最後は有無を言わせない勢いで、五十嵐は綺麗な口元に弧を描いた。

「いや、でも勝手に」

自分なら、留守中に知らない人間に部屋に入られるなんてと絶対に嫌だ。
きっとここの家人も管理人の五十嵐だから頼んだことに違いない。
そんな嶋本の心内を知ってなのかどうなのか。
五十嵐はぽんと嶋本の肩を叩いた。

「大丈夫、此処の法律は私だから」

口元が笑っていても、目元はちっとも笑っていない。
「逆らってはならん」
と、本能が告げる。
嶋本は手にした荷物を床に落とし、大人しく頷いた。


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仕事中に、脳が沸点に達して完成したシリーズ?です。

これから暇があったら、ちんまり更新予定。
たまったら、また加筆修正してサイトにUPする予定です。


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