2004年12月31日(金)  根拠ない自信。
 
大晦日だというのに朝から仕事。今日は管理者日直という何が何だかわからない当番で婦長さんも仕事に来ていた。婦長さんに伝えたくて伝えられないことが一つあったので、今日こそは婦長さんにしっかりと言おうと、強く胸に近い、朝から胸の中で「婦長さん、来月で仕事辞めさせて頂きたいのですが、婦長さん、来月で仕事辞めさせて頂きたいのですが」と、何度もリハーサルしてとうとう僕は婦長さんの前に立った。
 
「婦長さん、えっと、来月で仕事辞めさせて頂きたいのですが……」
「……! 何よいきなり。どうしたの? 何があったの?」
「いや、ちょっと心当たりがございまして……」
「何? 心当たりって? 意味がわからないんだけど」
「えっと、今日ですね、当選発表でしょ。年末ジャンボの。それ、なんかすげー当たるような気がするんです」
「あそ。それじゃあ来月から仕事に来なくてよろしい」
「あ、ちょっと待って。嘘です。きゃー」
 
と、馬鹿みたいな会話をしていたのだが、年末ジャンボ。なんかこれすごく当たるような気がしてならないのだ。この僕の嬉しい予感を決して侮ってはならない。というのも、「恋愛歪言」をネオブックオーディションに応募した時も、「なんかこの作品絶対受賞するような気がする。受賞しない訳がない」なんて根拠のない自信のようなものがあり、本当に受賞して、本当に出版されて今思えばなんて恥ずかしい本を出版したのだろうと思うけど、あの時の根拠のない自信のようなものはやけに信憑性をまとい僕の全身を包んでいたのだが、あの時の根拠のない自信が再び年末に蘇ったのだ。
 
「というわけでお世話になりました。どうかお体には充分気を付けて」
「あら、どうしたの。仕事辞めるの?」
「はい。来月で。今日3億円当選する予定なので」
「あそ。それじゃあせいぜいお元気で」
 
と、患者さんすら僕の根拠のない自信に付き合ってくれない。畜生。絶対見返してやる。と、午後5時半になるとすぐ白衣を脱ぎ捨て一刻も早く帰宅し、インターネットで当選番号を照会しなければと、自転車にまたがったが外は大雪。道路ツルツル。マンションまであと10メートルというところで転倒。きっとその時に根拠のない自信がどっか転がっていっちゃったんだと思う。
 
2004年12月30日(木)  生きる楽しさ、愛する歓び。
 
「生きる楽しさ、愛する歓び」というキャッチコピーを心から味わおうと思い、「ハウルの動く城」を観にいった。何の予備知識もない、というかCMだけ見て映画館に行ったので、僕はあのお婆さんが動く城の主で魔法使いか何だか怪しいキャラで、若い男、これがハウルって名前だったんだけど、ハウルが何かの都合で動く城に入ってそこでジブリ的なラブストーリーが展開するのかと思ったら大間違い。
 
ラブストーリーどころか愛を受ける、もしくは与える対象がまだ母親しか知らないような子供でごった返しており、あ! トトロ! あ! ハク様! と、そんなキャラクターは登場してないのに館内のあちこちからジブリ的な歓声が聞こえるので、僕も負けてはおられず、彼女に「ねぇ、あの主人公の女の子って小公女セーラに似てるよね」と小声で言うと、「え? 何? 装甲車セーラって何?」と、小公女セーラすら知らない8歳の歳の差に愕然。
 
映画のストーリーはとても面白かった。笑いあり涙ありポップコーンがない。上映前に売店でポップコーンを購入したかったのだけど、売店の前には冬休みの小学生、正月休みの家族連れがごった返しており、ポップコーンが手に入ったときにはおそらく上映は終わってしまうと思われたので、彼女の手を引いてパン屋に行ってサンドイッチを購入し、上映中にモサモサ食べた。しかし。
 
普通ね、ハムエッグサンドとカツサンド買ってね、共に2つずつ入ってるんだよ。で、僕たちは8歳の年の差があれど、ちゃんと交際しているカップルなんだからさ、ハムエッグ1個食べて、残りの1個はキミのカツサンドと交換しようよその方がお得だし。なんて彼女に交渉したいわけですよ。
 
なのに気付いた時は彼女はカツサンドを2つとも平らげ、小声で「ティッシュ、バッグからティッシュ取って」なんて催促してくる。ひでぇよと思ったけど、彼女がカツサンドのソースが手に付着しベトベトしてさぞかし不愉快だろう思ったので素直にアイフルのポケットティッシュを彼女に渡し、私の胸の片隅に咲いてるー小さな花に名前はないけどーと、小公女セーラの主題歌を心の中で寂しく歌った。
 
2004年12月29日(水)  僕とマスオさん。
 
東京のデートの定番ともいえるお台場にまだ行ったことがないのは、彼女とは遠距離恋愛で会える期間が限られているということではなく、ただ単に僕が出不精なだけであって、いくら同じ東京といえども板橋からお台場はちょっと遠い。埼玉の川越の方が近い。だけどまぁお台場なんて彼女でも来てる時じゃないときっと一生行かないであろうと思うので、ここは一念発起、お台場ごときで一念発起する僕も僕だが、天気もいいことだしお台場にでも行こうじゃないかと彼女を誘ってゆりかもめ。
 
さて、フジテレビ。おぉぉテレビで見たことあるー。と、興奮するのも束の間、フジテレビの社屋はテレビで見たことあるが、フジテレビの番組、というかテレビ全般をあまり見ない僕は、番組で実際に使用した小道具や出演者の写真、スタジオ内部を見てもさっぱりわからない。実に世間に疎いことよなぁ。こんなことになるんだったらもうちょっとフジテレビを研究してくればよかった。つーかプレステ以外にもテレビを活用すべきだったと悔恨の念に苛まれ、唯一得ることの情報といえば、サザエさんを紹介する部屋で、サザエさん一家の相関図のようなものがあり、ノリスケさんは、ただのマスオさんの友達ではなく、遠からず近からず血が繋がっていた関係だったという事実で、説明するの面倒臭いし間違ってるかもしれないけど、波平さんの妹の子供の子供がノリスケさんで、サザエさんの従兄弟にあたるのである。驚いた。知らんかった。そして僕は途方に暮れた。
 
なぜフジテレビの社屋で途方に暮れたのかというと、マスオさんの年齢が28歳だったという事実に対してである。マスオさん、ヨシミさんと同じ歳なのである。なんだかマスオさんが老けて見えるのか、28歳という世の中の位置付けのようなものがマスオさんに表れているのか、どっちにしても嬉しい材料は一つもない。サザエさんだって当に30超えてるのかと思ったらまだ24歳である。24歳で裸足で駆けてくガッツを持っているのである。そりゃあみんなも笑うしお日様も笑うであろう。
 
そしてノリスケさんである。マスオさんと仕事帰り上野辺りの屋台で一杯ひっかけることくらいが生き甲斐の世の中の中年男性の象徴のようなノリスケさん、実は26歳なのである。僕より2つ年下である。まだまだクラブで踊ってても全然大丈夫な年齢である。ノリスケさんの妻、タイ子さんに至っては22歳である。4年前はまだ高校生である。波平さんあんなにハゲてんのにまだ54歳である。もう何が何やらこの世の価値観が年齢という概念が全くわからなくなったのであるフジテレビ本社で。
 
2004年12月28日(火)  東京ななぜ美人が多いのか。
 
まぁ彼女と手を繋ぎながら思うのもなんなんだけど、東京って綺麗な人が多いなぁと思うのであります。みんなオシャレして研究され尽くしたメイクして颯爽と街を歩いている。キレイだなぁ。べっぴんさんやなぁ。「やだ。今他の女の人見てたでしょ」と、勘の鋭い彼女は僕の鼻の下が1ミリでも伸びるとすかさずそれを察知。繋いでた手を振りほどく、尻をつねるという暴挙にでる。
 
しかしキレイな女ばっかり歩いてるからしょうがないやんけと思うのだけど、なぜ東京はこんなにキレイな人が多いのか、なぜ東京はこんなにキレイな人が多いのか、あ、あかん。二度言ってもうた。まぁキレイって言ってもみんな似たようなファッションで同じようなメイクしてるからそこに個性はないんだけれどもね。個性はないんだけれどもね、そこには美しさがある。没個性美! 美的同一化! んまぁ! 今擦れ違ったコもべっぴんさん! あらまた向こうからべっぴんさんがやって来る! うひょー。東京ってべっぴん天国じゃないかー!
 
なんて興奮してばかりいては思春期の少年のそれと全く変わりないので、28歳の僕は、美人が多い理由を冷静に考えてみましたよ彼女と手を繋ぎながら。彼女も美人なんだけどね、怒ると人目をはばからずブーツで蹴りを入れたりするというバイオレンスな部分もあるので、戦々恐々しながら日々を送っているけど、街を往来する美人は全然暴力的じゃない。話したら暴力的だったりなんかバカっぽかったりするんだろうけど、どうせ擦れ違うだけだしね。見た目だけで生きてるようなものだからね。もし僕があなたを見たとする。僕はあなたを知らない。与えられた手段はただ一つ。見た目で判断する。要するに一生関わらないであろう他人に対しては「見た目だけでしか判断できない」逆に言うと、「見た目だけで生きている人たち」ということになる。ならない? なるっぽくない? あそ。
 
で、なぜ東京には美人が多いか。答えは簡単。簡単だったけど、それに気付かずに28年間も生きてきたし東京に住んで1年以上経とうとしているので、今まで一体僕は何を考えて美人を見てきたのだろう。何を思って美人じゃない人を見てきたのだろう。
 
要するに、東京は「美人が多い」のではなくて、ただ「人が多い」のである。
 
そんなの当然じゃないか馬鹿野郎。殺すぞぼけ。なんて町田康タッチになってしまったが、そんなことすら気付かなかった僕は、東京の、例えば新宿駅の人波に揉まれながら無意識的に美人を選出。あ、この人キレイ。あ、この人もキレイ。なんて考えている。美人ではない人は無意識的に選出されない。よって僕の意識上には美人しか存在しない。よって東京は美人が多いという安直な答えに収まっていたのである。
 
そんな重大な過ちに気付いた僕は、擦れ違う女性全てに好意を抱いてみようというどうでもいい実験を敢行。すると今まで見えなかったものが見えてくるようになった。それは具体的にいうと、美人、ちょっと美人、ちょっと美人じゃない人、美人じゃない人、オバサン、オバアサン、子供と、世の中には男と女の二種類しか存在しないはずだが、そのうちの一種類である女は様々なジャンルに分類されているということに気付く。
 
要するにこれは確立の問題であって、30人に1人の割合で美人が存在するとしたら、新宿駅では30人なんて10秒あれば擦れ違うことが可能だが、サハラ砂漠であれば10年歩かなければ擦れ違わないということ。だから決して東京に美人が多いということではなく、ただ人が多いってだけであって僕が他の女に目移りするのも、ここがサハラ砂漠じゃなくて東京だからという、怒り続ける彼女に対して必死の弁明。
 
2004年12月27日(月)  時間差プレゼント。
 
もう一生こんな無意味に高いマフラーは購入しないであろうと、僕の人生最高値を更新したCOACHのマフラーを彼女にプレゼントして、彼女は翌日早速、愛のクリスマスプレゼントを首に巻いて待ち合わせ場所に登場した。
 
「どう? 似合うでしょ?」彼女はそう言って、阿呆みたいに人が行き交う池袋駅の構内でくるりと一回転してお茶目なポーズをとったなんて嘘を書くとまた彼女に制裁されるので、実際は、「どう? 似合うでしょ?」「うん似合う」「それじゃあ行きましょ」と、まぁこの程度の会話で、だいたいこれは真実を書く日記ではないので、誇張して当然。なんか足の指の毛が伸びてきてるような気がするなんて真実ばかり書いてても誰も喜ばない。よって誇張。全部誇張。COACHのマフラーが高額だったということを除いては。
 
しかしここは僕。大人の僕。COACHのマフラーでさえ欺く為の手段として用いているのだよワトソン君。僕の部屋に来た彼女。DVD見て、プレステして、あと、新しいベッドの上でなんやかやした後、靴箱に隠匿してあった大きな包みを彼女に渡す。何気なく渡す。ちょっとちょっとこれ絶対ビックリするから直ぐ開放するがよろし! よろし! と目を輝かせて渡すのではなく、何気なく渡す。頭を傾げて包みを受け取った彼女はそのままの姿勢で歓喜の雄叫びを挙げる。包みの中身はシナモロールの抱き枕。
 
シナモロールを知らない人のために説明、っていうか僕もよくわからないので、サンリオのウェブサイトから転載。
 
「ある日、カフェのお姉さんが空を見上げると、 雲のようにフワフワと、白い子犬が飛んできました。「シナモンロールのにおいにひかれて、飛んできたのかしら?」 お姉さんはその子犬のシッポが まるでシナモンロールのようにくるくる巻いているので、 “シナモン”という名前をつけてあげました」
 
まぁそのなんつうか、まず飛んできたことがおかしいっつーか。飛んできた飛ばないはずの哺乳類に安直にシナモンという香辛料を結びつけて、どうして飛んできたのか知らんがお前はとにかくシナモンだ。と、飛んできた犬にしては少し迷惑な話で、その誕生の理由というか存在の理由みたいなやつが一切記入されておらず、まぁキティちゃんも下降気味だし今後こいつで売っていきたいと思うのでみんな抱き枕とか買って下さいというサンリオの戦略が見え隠れで、彼女はとてもチャーミングで素直で可哀想な女の子なので、サンリオ、というか時価総額70,360百万円、発行済株式数77,745,378株のいわゆる株式会社サンリオのマーケティング戦略とかよくわからずに、ただとにかく遠いお空の雲の上から飛んできたシナモロールかわいい。キティちゃんよりカワイイ。よってシナモングッズが欲しい。もうすぐクリスマスだし。と、12月が入った頃から、プレゼントはシナモングッズにして頂戴光線を浴び続けていた僕はそれを一切無視。
 
お前はもう二十歳になったんだから、そのような子供相手に商売してるような会社のグッズなど買わずに、OLを中心に人気が高いCOACHのグッズを身にまとい、もう少し大人を演出しなさい。フッ。その歳でシナモンだなんて。という態度を一貫して取り続け、彼女もCOACHを貰ったら貰ったで大喜びして、これにて一件落着。これにてクリスマス終わり。はいはいもう気持ちは来年ですよと見せかけてシナモンの抱き枕。彼女の喜びようは尋常ではなく、「んぎゃぁ!」と意味のわからない歓喜の悲鳴を挙げて、抱き枕と共にベッドに潜り込んでしまった。部屋のソファーの上には、昨日プレゼントしたばかりのマフラーが魂を抜かれたように投げ出されていた。
 
2004年12月26日(日)  膨張クリスマス。
 
昨日、彼女が東京にやって来るということで、まぁ、迎えにでも行ってやるかと、本当は嬉しくてしょうがないのに、あまりに嬉しい感情を爆発させると、ふっ、可愛いわね。28歳にもなって。そんな可愛い貴方に私は会いに行ってあげると、なんだか彼女が精神的立場上優位に立ってしまうので、どうせ暇だし夜勤明けだし。うちにいてもゲームばっかりだし。で、どこ? 羽田? はねだー? ちょっと遠いなぁ。夜勤明けにはちょっときついかもなぁ。でも折角東京に来るんだから迎えに行くよ。行ってやるよ。というような口調、態度で速攻髭を剃って顔洗って手にはしっかりクリスマスプレゼントを抱えて。
 
と、モノレール。羽田まであと5分というところで僕は気付いた。そういえば羽田って第1ターミナルと第2ターミナルに分かれたって言ってなかったっけ。確かそうだ。げ。嘘。彼女、どこの航空便で来るんだろう。JALかしら。JALだったら第1だよな。いやANAのような気がする。だったら第2か。どうしよう。遠距離の醍醐味ってのは、この再会の瞬間にあるのではないか。彼女が登場する所にちゃっかり待っている彼氏。目と目を合わせ、互いに表情を和ませ、人目もはばからず抱き合うそこはターミナル。おおお。ちょーかっけー。でもそのかっこいいターミナルが第1と第2に分かれている。そして僕は彼女がどっちのビルから登場するかわからない。よって僕はJALだと邪推。近いしね。第2だともうちょっと先まで乗らんといかんしね。と、第1ターミナルで降りて彼女からの電話を待つ。
 
「今着いたよ」
「どっちのターミナル?」
「ん? 第2だけど」
 
と、彼女は第2に降りて当然。航空会社といえばANA、ターミナルといえば第2しか考えられないといった口調で応える。よって僕は再会の場所を間違えた。よって僕は彼女に謝った。よって僕はきびすを返し再びモノレールへ乗り第2ターミナルに向かった。「モノレールの改札で待ってるから」と、彼女からメールが届き、僕は第2ターミナルで降りた瞬間、跳び上がるように階段を駆け抜け改札を目指した。彼女が頬を膨らませて立っていた。遠距離で久々の再会となると、頬は赤らめるものだが、彼女の頬は明らかに膨張していた。またかという表情で怒っていた。彼女が東京に到着したというのに僕が迎えられるという、遠距離の再会のシチュエーションが逆になった瞬間であった。
 
でも僕は切り札を持っていた。1年に1回しか使えないとっておきの切り札を持っていた。彼女の頬の内側の空気を抜くには充分すぎる程の切り札。サンタが第2ターミナルにやってきた。僕はバッグからプレゼントを取り出し勝ち誇った表情でそれを渡した。
 
「まぁ、ありがとう。でも私、第2ターミナルで降りるって行く前に電話したはずよ」
 
彼女の頬は少ししぼんだだけだった。
 
2004年12月25日(土)  再疑心クリスマス。
 
暗い夜道はピカピカのお前の鼻が役に立つのかも知らんが、僕は暗い病棟を懐中電灯片手に巡視しているのであって、今頃街中ではカップルがイヴだの聖夜だの精子だの卵子だので大騒ぎしているのかも知らんが、僕はトナカイの鼻よりも役に立たない電池が切れかけた薄暗い懐中電灯片手に小声で「ホー、ホー、ホー」とサンタのような低い口調で叫びながら患者さんの頭元にそっとティッシュペーパーのケースを置くなどして楽しんでいる。つーか全然楽しくない。
 
イヴを彼氏と過ごすことのできない遠距離の僕の彼女はというと、「今日高校の頃の部活の同窓会があるから」なんて、思う存分怪しいことを言って外出している。イヴに同窓会ってどういうこっちゃと思ったけれど、遠距離恋愛で相手を疑っては愛は始まらない。つーか終わってしまうので、ここは素直に行ってらっしゃいと声を掛け、素直に言ってしまったはいいものの、内心ドキドキで、なんなんだイヴに同窓会ってなんなんだと内心乱れ放題乱れていると、「あ、そういえばその同窓会、もしかしたら元彼が来るかもしれない」なんて尋常の口調で言う彼女。
 
これは一体どういう種類の宣言なんだ。まずイヴに同窓会。これ怪しい。つーかおかしい。更に同窓会に彼氏。これも怪しい。つーかかなりおかしい。この文章を繋げると、イヴに同窓会で元彼と会う。そしてそれを現在の彼氏に報告する。なんなんだこれは。僕はどう対処すればいいんだ。どういう種類のイタズラなんだ。嫌がらせなんだ。こっちは真面目に夜勤してんのにさ。と、平常心を失った僕は患者に刺すはずの注射を我が腕に刺す、患者に添えるはずの紙オムツを自分の下半身に装着させるなど混乱を極め、今頃絶対センチメンタルでロマンチックでクリスマチックな気分になってる。手とか繋いでるかも知らん。もしかしたら双方の身体自体が繋がってるかも知らん。やだな。すごいやだな。なんて悶々とした気分に陥っていたら、「今から帰る」というメールが届く。
 
ここはヤッタと喜びたいが、手放しで喜べない事情は、既に彼女は元彼と手を繋ぐ、もしくは口と口を繋ぐ、ややもすれば身体を繋げるという行為を終えているかもしれず、一夜限りのサンタと別れ現実に戻った彼女は、ドラクエと夜勤しかしないつまらない彼氏に、ショーガネーナーメールデモスッカくらいの心意気で送信したのかも知らん。ちょー悲しい。ちょー侘しい。今年のクリスマスはチキンライスでいいや。なんて自暴自棄になって、とりあえず彼女のことは忘れて仕事に没頭しよう。と、電池が切れかけた懐中電灯を左右に振りながら、きよしこの夜を歌おうと思って口ずさんだ歌は、なぜか蛍の光だった。
 
2004年12月24日(金)  臭いけど遊んだよ。
 
昨日は上野の屋台でくさやを食って、その悪臭が服やら皮膚やらに染み付いて、口臭も焼酎とくさやが混じり、明らかに臭く、終電前の満員に近い山手線の車内で、僕の背後で「クサっ!」とか「ワキガがいるよ」なんて言い合うカップルのコソコソ話が耳に入り、ワキガじゃねぇよ! 俺ワキガじゃねぇよ! と、耐え難い憤りを感じ、僕を侮辱した背後のカップルを目黒辺りで降ろして、すっぱたいた後、土下座して謝らせようと思ったが、くさやを食った僕は、ワキガじゃないにしろ現に臭い存在であって、ということは土下座して謝るのは僕の方であって、僕の背後のカップル他、僕の周囲に立って顔をしかめていた乗客に非常に申し訳ないことをした。よって僕は今日は外出しない。なんかまだ皮膚に臭いが染み付いてるような気がするし。と、朝から不貞腐れてドラクエをしていたちょっぴり二日酔い、もしくは二日臭い気味の本日祝日、あるメールが届いた。
 
「何気なく関東にいるのでメールしてみました。おげんこ?」
 
はーびすである。親友といってもいい存在のはーびすからのメールである。名古屋出身のはーびすが関東に来ているという。何用で関東に来ているのかわからんが、何気なくと書いてあるので、おそらく何気なく関東に来ているのだろう。返信。
 
「よし。おげんこなので飲みに行こう」
 
突然の友人の上京に、我が身が臭いということも忘れ、待ち合わせ場所の新宿へ向かう。前回名古屋に行ってから2年の月日が流れたというのに、まるで昨日も会っていたように感じるのは、お互いの波長が合うのではなく、お互いが投げっ放しであるからであって、双方良い意味で好い加減なものを持っているということに起因しているのであるが、それを具体的に言うと、新宿で待ち合わせた後、秋葉原を物色して、渋谷へ行くという、どういう種類のコンボ技なのかわからない行動をしても、お互い何とも思わない。秋葉原は秋葉原で楽しめるし、渋谷は渋谷で楽しめる。僕なんて東京に住んでいるが、渋谷なんていけじょさんと飯を食べに行ったきりで、もう1年以上も行っていない。それなのにこっち行こう。こっち人多いね。こっちなんかおっかないねなんて言いながらウロウロして、はーびすももうこんな感じで、どっちかっつーとこっちっつーか引き返してみよう。なんて、言葉自体に目的がなく、それはそれですごく楽しいのである。
 
「それじゃあまた来年」と、どこの駅で別れたかすらもう忘れてしまったが、僕は来年は所用で、つーか、今年ほとんど勉強しなかった通信大学のスクーリングの為に、来年名古屋に行かなければいけないので、その時はまたその時で、目的もなく、というかひたすら目的を見つけないことが目的のような行動を楽しみたいと思う。その頃には僕も臭くないと思うし。
 
2004年12月23日(木)  くさやくった。
 
僕達は上野の居酒屋なのか屋台なのかわからない所、店内にカウンターはあるが、そのカウンターの延長線上は屋外に繋がっており、カウンターの他にも折りたたみ式の長机が二、三点在している場所に身を震わせて座っている。
 
ここが青山とか代官山であれば、オープンカッフェーなんて洒落たことが言えるが、ここは上野で、店も繁華街の筋を入っていった賑やかなのか陰気なのか、楽しいのか怖いのかわからないような所に存在しており、オープンカッフェーで屋外に設置されたテーブルに座り、エスプレッソなんて飲むと、オレってオシャレ。オレって今風。オレってすごくグルーヴィーなんて思うのかも知れんが、僕達が座ったオープン居酒屋、もしくは店舗付き屋台は、むやみにオープンなだけで、ただただ寒く、「ショ、ショウチュウヲ、オユワリデ」なんて全然お洒落じゃないことを言ってどうにかして暖を取りたい。一緒に行った女性も、「ワタシ、ショウチュウナンテ、ノンダコトナイ、ナイケレド、ワタシモ、オユワリデ」なんて、身を震わせるうら若き女性に焼酎を飲ませるあたり、僕ももう終わってると思った。
 
しかし終わっている理由はそれだけではなく、屋外で飲んでいるのだから、僕達の背後は普通に通行人が歩いている。そしてその通行人が僕達の背後を通る度に、顔をしかめる、鼻をつまむ、すこし離れる、何の配慮もない者になると、「臭っ!」と大声を挙げるなどして、まるで僕達に対してくさやを見る、もしくは嗅ぐような扱いをする。なぜか。それは僕達がくさやなのではなく、現にくさやを食っているからであって、これが本当に臭い。僕もそうだが、一緒に座っている女性もくさやが初めてらしく、まるでくさやでも噛むような表情でって、現にくさやを噛む表情でくさやを一口噛んで、「あーっ!」と何かひらめいた、もしくは発見した時に発するような声を発したが、それは単に悲鳴であって、悲しいことに彼女はそれから「あーっ、臭っ。あーっ、臭っ」としか言わなくなった。
 
僕の彼女は、僕が彼女ではない女性と飲みに行くという報告を受けたとき、少し残念そうな感じであったが、隣の女性が「あーっ」とか「臭っ」としか言わなくなったので僕も少し悲しくなった。そして彼女はたまらず悪臭放つくさやが入った茶碗を、隣のテーブルで飲んでいる青年2人、中年1人、若い女性1人、計4名のグループに、「これ食べて下さい」と言って渡し、言葉自体は善意が篭っているが、内心は一刻でも早くワタシのテーブルからくさやを遠ざけたいという口調になっており、男は馬鹿であるから、彼女のようにコザッパリとしたオシャレでキレイなOLに、「これ食べて下さい」なんて言われたら、言われなくても食べますよ。最初から狙ってましたよみたいな感じで鼻を伸ばして受け取るのであるが、そのグループには若い女性が1人座っており、さすが女性。同性の色気に屈することなく、「臭っ!」と言い放つ。それを聞いた他の男連中も、ただただ嬉しそうにくさや茶碗を受け取り鼻を伸ばしていたのだが、その声に我に返り、「臭っ!」と同時に身を後ろに反らした。
 
馬鹿だなァ。男って馬鹿だよなァ。と、その一部始終を眺めていた僕は、早く彼女が「臭い」意外のことを話してくれないかしらなんて思いながら焼酎を飲んでいたが、彼女は隣のテーブルの男連中に「松嶋ナナコに似てますネ!」なんて言われて、チョーご機嫌になって、ナイス隣の男! なんて心の中で叫んでいたが、くさやをもらってあまりの臭さに身をよじらせても尚且つ、松嶋ナナコに似ていると、この場では諸悪の根源ともいえる存在に、そのようなことを言える男は、かなり馬鹿だと思ったが、くさやを与えて尚且つ、松嶋ナナコに似ている彼女は、明らかにスゴイと思った。
 
2004年12月22日(水)  自分を大切に。
 
先日、池袋の旭屋書店で小説を購入する為に会計に並んでいると、隣の会計に並んでいた中年男性が図書券でもって支払いを行おうとしている。はは、いいね図書券。僕は持ってないけれど、本の購入方法として一度は経験してみたい支払い方法だよね。意味わかんないけどね。「図書券」という仕組みというか概念というかそういうのあんまり意味わかんないんだけどね。と、ちらちら横目で眺めていると、会計の女性が、「こちらを使用するとお釣りの払い戻しはできませんがよろしいでしょうか」と言っている。僕が図書券の仕組みというか概念というかそういうのが意味わからない理由の一つにお釣りも返ってこない使えないものというものがあるのだが、まぁ、そういう仕組みになってるのだからしょうがない。よって僕は会計の女性にそう言われても「はい」と、素直にそれを納得、受容するのであるが、その中年男性は違った。
 
「知ってます」
 
知ってます! 知っているのである。お釣りが返ってこないのは百も承知なのである。僕だって中年だって百も承知なのである。だのに。だのになぜ、僕はお釣りが返ってこない事実に対して、「はい」と受容するのに対し、隣の中年は「知ってます」などと当然のことを言ったのだろうか。
 
これはきっと自尊心の問題であると僕は思うのである。「こちらを使用するとお釣りの払い戻しができません」と僕は言われて、できないものはしょうがないんだからしょうがないものはしょうがない。ここは素直に「はい」と言って、とっとと支払いを終えてスタバにでも寄って買ったばかりの小説の項を開こうなんて思うのであるが、この中年男性は違う。「これは図書券といって、例えば貴方が500円の文庫本を購入して1000円の図書券を差し出しても、私どもはあなたに500円のお釣りを渡すことができないのです原則として。なかにはこの事実を知らない人もいて、なんでお釣りが返ってこないんだーって大騒ぎする人もいるので、まぁ、あなたもいい大人ですからご存知かとは思いますけれども、一応確認の意味を込めて言っているだけなんですよ。こういうのも仕事なんですから。だからお釣り返ってきませんからね。そういう仕組みになってるんですからね」という意味に受け取ったのである。ひどくプライドを傷付けられたのだ。お主、俺様を馬鹿にしやがってである。子供のように扱いやがってである。そういう状況に陥れられては出てくる言葉は一つしかない。馬鹿への否定、自尊心の挽回、「知ってます」
 
なんて子供らしい返答だろうと思った。なんて自分を大切にする人なんだろうと思った。僕ももっと自分を大切にしようと思った。意味のない自尊心も時には大切なような気がした。
 
 
2004年12月21日(火)  愛だけで生きていけるような気がしましたよ。
 
僕より齢が八も下のくせに、彼女がいいこと言った。忘れずうちにそれを記そうと思ったきっかけは、先日、いつものように喧嘩をして、どうせ僕が悪いんだ。悪いのは僕だ。キミはちっとも悪くない。キミをつまらない思いしかさせない僕がいけない。いけないったらいけない。二人の間に存在する悪を、罪を、罰を、僕が全て背負い込んだ。あぁ僕はなんていけない奴なんだろう。だらしない奴なんだろう。僕が悪い。悪いったら悪い。はいはいはいはい僕が悪いのですよ。と、これもまたいつものように「僕が悪いんだから喧嘩やめようモード」に突入した時にふと気付いた。
 
もし僕が女で、僕のような彼氏がいたら、僕は私は絶対嫌いになる。速攻別れてしまう。しかし彼女は僕のことを「嫌い」と、そして時にはその「嫌い」の具体的内容を説明するというのに、「別れよう」という言葉は一切発しない。僕なんて本当は別れるつもりもないのに「別れよう」と言ったり、本当に別れるつもりで「別れよう」と言ったりと、彼女を度々混乱に陥れるのだが、彼女は健気にその言葉に耐え忍び、暗い話はよしましょう、ほら、路傍に花が咲いている。とでも言うような風情で、口元に柔らかな笑みを浮かべ、今日も「大好き」というメールを送ってくる。
 
どう考えたっておかしい。何が大好きなんだ。こんなに非道い男なのに。嘘なんじゃないかもしかして嘘なんじゃないか。大好きなんて言ってごまかしておいて、ごまかしておいて、……。ごまかして、何するんだろう。ごまかす必要などあるのだろうか。ゴマカス。それにしてもヘンな言葉。と、思考がまたもやよからぬ方向へ行きそうになったので、僕は彼女に単刀直入に聞いてみました。キミは僕のことをよく嫌いというけど好きとも言う。しかし別れようとは言わない。これは一体どういうことだ。なんだこのちょっとした矛盾は。
 
彼女は言った。「簡単なことよ。私はフィレオフィッシュバーガーは嫌いだけど、マクドナルドは好きってこと。要するに好きの大きさと嫌いの大きさの比率の違いよ」
 
愛だけで生きていけるような気がしましたよ。
 
2004年12月20日(月)  恥部見せます。
 
この日記を読んでいるということは、この日記を読んでいる人は皆インターネットを利用しているのであって、ほら、この画面の上の方、ツールバーっての? そこんとこに「お気に入り」ってボタンがあって、そのボタンをクリックすると、この画面の横に、その人それぞれの趣味嗜好が表れたお気に入りのウェブサイト名が表示されるようになっていて、他人が自分のパソコンを使うとき、この「お気に入り」ボタンを押されるイコール、プライバシーの侵害、もしくは精神的損害に結びつくような事態に陥ることは、インターネットを利用したことがあれば誰しも経験したことがあると思う。
 
しかし今日はあえて「お気に入り」という自らの恥部を曝け出し、恥部にこそ真実が隠されている。どうぞ本当の僕を知って下さい。これでも愛してくれるのなら僕もそれ相応のお返しをしますよ。ボンレスハム送りますよ。コーヒーギフトはA・G・F!
 
「トーキョー-不在-ハムレット」これは来年公開される舞台のウェブサイトです。僕の大好きな宮沢章夫氏の作品です。なんてちょっとインテリっぽいサイトを公表して、お、なんかセンスあるな、ちょっと格好イイナなんて思われようとは思っていない。今日の日記は恥部を曝け出すことに目的があるのだから。
 
「若槻千夏のページ」これは僕の大好きな若槻千夏が雑誌に掲載された写真をスキャンして公開されたページです。もうホント大好きなんです。乳小さいけどねー。でもいいんです。僕は若槻千夏の乳が好きなわけではないのだから。若槻千夏の心の部分が好きなのだから。と、会ったこともないのにこういうことを言う男は安倍なつみが歌詞を盗作しても必死で弁護したりするのです。
 
「語源由来辞典」何を隠そう僕は語源マニアでもあるのです。語源マニアの具体的な活動内容は、ビールを飲みながら、この「語源由来辞典」を読んで、ほぉほぉほぉとしきりに頷く。ただこれだけ。例えば「指切りげんまん」の「げんまん」は、指切りだけでは満足できないので、もし約束を破ったら「拳骨万回(げんこつまんかい)」要するに、こぶしで1万回ぶっ叩く。という意味なのです。ほぉほぉほぉ。と、ビールを飲みながら今日はこのくらい書けばもういいでしょ。
 
2004年12月19日(日)  幼児的、バカ、無責任、無神経、うそつき。
朝日新聞の記事。【女子大生に聞く:今時の男子は「幼児的、バカ、無責任」】
 
「女子学生は、いま時の男子学生をどう見ているのか? 大阪国際大学人間科学部(守口市)の心理コミュニケーション学科の12人が、女子学生を対象にしたアンケートを、「男の値打ち 女の目」と題した卒業論文にまとめた。結果は、「幼児的、無責任」など、どうも評判はよろしくない」
 
なんて今更なようなことを書いているが、同年齢での精神年齢は女性の方が高いに決まっているのであって、それを女は男に向かって「幼児的、無責任」なんて罵倒して、怒りを通り越して全く当然だと思うよ僕は。謝りたいと思うよ僕は。
 
「評価を具体的に聞くと、意思がかたい、迫力がある、節度がある、マナーがよいの質問で、「ノー」が「イエス」を上回った。また、デリカシーがない、がさつ、見えっ張り、下心が見え見え、未熟、うそをつく、口が軽い、の質問で「イエス」が多かった。この項目では、「元気がない、社会性がない、幼い」という分析をしている」
 
と、ここまで記事を読んで、このなんか偏差値高そうな大学の卒業論文の内容がどうも稚拙なような気がしてきたけど、僕は専門学校卒かつ鹿児島生まれヒップホップ育ちなのであまり偉そうなことは言えないけど、この程度の論文だったらいくらでも書けそうな気がする。
 
「授業態度では、不まじめは61%を占めた。理由として、183人が「寝ているか、しゃべっている」を挙げた」
 
っておい。お前。そこのインテリ女。阿呆女学生。お前は授業態度は良いかも知らんが、私生活では誰かと寝ているか、しゃぶっているじゃないか。と、もうこういうこと書くだけでセクハラだの最低だのこれだから男は幼稚で馬鹿で無責任だの言われるので、これ以上言及はしないけど、幼稚で馬鹿で無責任であったから【恋愛歪言】なんて著書だって書けるわけで、大人っぽくて頭良くて責任感が強いからこれ全て素晴らしいってわけではないと思うよ僕は。
 
「全体では、マイナス回答の総計が8702で、プラス回答の7659を大きく引き離した。これらから、男子学生の5悪を「幼児的、バカ、無責任、無神経、うそつき」とまとめた」
 
と、もう言いたい放題で、こういう記事を見て、そうかもね。へへ。的を射ているかもね。おでばかだから。みたいな感想しか持たない男は駄目だと思う反面、やっぱり反面なんて書いたけれど、駄目だと思う。しかしムカつく。しかしムカつくだけ。やだな男って。生理さえなければ女になるんだけどな。
 
2004年12月18日(土)  老成しました!
 
日記なんて書くものがなければ「〜診断」ってやつを適当にやって、それをコピペして自分とはこういうものですみたいなやつをやってればそれなりに形にはなるだろうけど、僕はそういう日記は絶対に読まない。何の得にもならないと思う。そういうのってエゴエゴでエスエスでイドイドだと思う。だけど僕は運悪く今日は何も書くことがないので「恋愛成績表」をやってみました。僕が僕じゃない僕で僕の日記が目に留まっても絶対読まない日記を書きます。
 
【総合評価】
恋愛レベル 「大学生恋愛級」 (18段階中 7位)
恋愛タイプ 「人気沸騰型」

【恋愛タイプについて】
ルックスも良く好感度の高い行動をするヨシミさんは、短い期間で多くの人を虜にする「人気沸騰型」と言えるでしょう。人道に反しますが、望めば二股三股も叶うでしょう。恋愛を謳歌できる羨ましがられるタイプです。

【総評】
総合的にはまぁまぁ良い成績でした。ヨシミさんにも欠点はいくつもあるでしょうが、恋愛に大きな希望を抱いても決して罰当たりではありません。 個別では「オプション」が最も良い成績となりました。ヨシミさんの魅力は大変他の人から見てもわかりやすく、モテる人だと思われていることでしょう。ただその内面はというと、かなり冷静で計算高く、一筋縄ではいかない感があります。ここに気付いた人ならば、かなり自信がなければヨシミさんには手を出さないことでしょう。
 
さて、突っ込みどころ満載ですが、僕は人道に反する生き方をしているようなので気にしません。羨ましがられるタイプみたいだし。なくて七癖あって四十八癖、人間なんて欠点なんてあって当然です。しかし欠点がいくつもあって一筋縄ではいかないなんて書いてあると自分でもどういう人間かわからなくなるし、自分でもヨシミさんには手を出したくありません。次。
 
【そのほかの語りたいポイント】
・女性を弄んで捨てることができる素質があります。可能だとしてもやめてください
・28歳のわりには、かなり老成した考え方をしています
 
可能だとしてもやめてください。可能だとしてもやめてください。と、素性のわからぬ誰かの価値観でもってお咎めをくらってしまいましたが、まだ自分のそういう可能性に目覚めていない状態なので大丈夫です。まだ考え方若いっスからなんて書いた矢先、老成した考え方をしているとか言われてる。むふー。弄んで捨てる。後ろめたさがなきにしもあらずにしもあらずだけれども、現在はこのように真っ当に生きている、いわゆる真人間なので、僕が彼女を騙すといったら、誕生日なんてスッカリ忘れてる振りして、しっかりとプレゼント贈るとか、なんていうか自分の短所をプラスに転換させる力として利用しているので大丈夫であります。と、そういうのが、老成っていうの?
 
2004年12月17日(金)  金色のライオン。

シャラララ ララ シャラララ ララ 金色のライオン〜と、顔から火が出てきそうな鼻唄を歌いながら、あ、今日の日記アレ書こ、と、家に戻りパソコンの電源を入れると、アレとは一体何のことだったのかさっぱり忘れているのは、同郷の者として長渕剛を努力して好きになろうとするけど全く好きになることができないわけでも、相川翔と同じ町で育ったわけでもなく、単に歳を取ったからであって、最近どうも頭が固くなってるような気がしてたまらないのである。
 
具体的にどう固くなったかというと、ほら、もう忘れてる。今日仕事の帰り道、自転車こきながら頭が固くなったことの具体的事例について考えていたのだけど、どうしても思い出せないのは彼女がなんだか最近冷たいからである。と書けば彼女からのクレームは必至であって、多分また「ふぇーん」て泣く。僕の彼女は本当に「ふぇーん」と泣くので少し可愛いと思う。
 
しかしまぁ遠距離恋愛とは、愛に距離はないといえども体は距離を感じるわけで、海を超えると恋愛は終わるかもなんて考えるときもあるけれど、海を超えつつ1年を経過しようとしている現状を踏まえてみると、終わる奴は終わる、続く奴は続くという結論になるわけで、そうであれば遠距離恋愛に関わらず恋愛なんてものは続く奴は続くし終わる奴は終わる。ということは愛に距離はない。しかし体は距離を感じるわけで、海を超えると恋愛は終わるという僕の中でお決まりの思考の無限ループに陥ってしまい、そういうなんとも気持ち悪い状況を打破するために、シャラララ ララ 金色のライオン〜なんて鼻唄を歌って自己嫌悪。
 
2004年12月16日(木)  新しい詐欺を思いついたよ。
 
「振り込む詐欺」とかね。と、先日書いた振り込め詐欺の少年たちに負けないように新たな詐欺の手口を考えていた僕は天啓の如く、この新手の詐欺を考案しましたよ。
 
まずハローページなどで無作為に抽出した電話番号に電話するという従来の手法ではなく、「もしもし、オレだけど」と、実際に自分の親に電話をする。「ホントにお前なの」と実の親が訝った場合は、多少のショックを受けながらも、「たまに電話しかできなくて、ゴメン」と、自分の非を詫びる。
 
「急な電話でゴメン。さっき人身事故にあっちゃって腰を強打した。僕にぶつかってきた運転手は刑事告訴をされたくないみたいで、示談して単なる物損事故として処理したいと言っている。ちょー腰痛くって膝から血とか出てるんだけど、治療費として300万もらったので、せめてもの親孝行としてそのうちの半分をお母さんにプレゼントしたいので至急口座番号を教えて欲しい」
 
と、矢継早にまくしたて、うろたえつつも口座番号を教えてくれた我が親の銀行口座に速攻150万を振り込む。そしてその夜、再び母親に電話。
 
「なんだかキツネにつままれたみたいだわ」
 
だって詐欺なんだもん。
 
2004年12月15日(水)  タンス貯金を開放しよう。
 
「少年5人組が…振り込め詐欺で2500万円豪遊」
 
とまぁ相変わらずどうしようもない世の中だが、この少年、年齢が18〜19歳というではないか。まぁ若いから殺すわけにはいかないにしろ、死ぬ気で罪を償いつつ金を返しつつって思うのだけれど、まぁ犯した罪の重さはとにかく、この歳でこの犯罪のスケールのでかさに僕は驚いたのであるよ最近家でドラクエばかりしてるから。
 
「2500万以上騙し取った」この事実を馬鹿だなー許せないなーとばかり思っているのではなく、まだ未成年の少年がこれだけの金を手に入れることができたという事実。窃盗や強盗など力に任せた犯行ではなく、しっかりとマニュアルを作って、チャートなども作って、架空の銀行口座も購入して、あとなんやかや。そのなんやかやがスゴイなぁと素直に関心する僕もいるわけであるドラクエばかりしてる28歳と比較したときにね。
 
「バブルがはじけたのは、田舎のババアが金を貯めこんで使わないからだ。奴らはタンス貯金をいっぱい持っている。俺らが詐欺でそれらを取って使えば、世の中の景気がよくなる」
 
主犯格の少年の大義は馬鹿としか言いようがないが、まぁ、不景気の要因もタンス貯金が増え金の動きが滞ったり、まぁ銀行に預けてもほとんど利息つかないから、日本人の預貯金額約1200兆円のうち5%を消費税として徴収してもそれは結局、国債の更なる増大に結びつくと思われるので、かえって生来に対する不安は増すだろうけど、それをば詐欺で徴収して、一流ホテルに宿泊したりフルコースに舌鼓を打って景気を回復させようなんてムシが良すぎるというか、良い悪いじゃなくてただ子供なんだろうけど、そういうのをトータルしても、許せないという感情の少し下あたりにスゲーなぁと感嘆する感情が存在するのである。
 
2004年12月14日(火)  名鑑に載りましたよ。
 
先日発売された「全国ライター・講師ガイド2005」という名鑑、要するにタレント名鑑のライター・講師版みたいな本なのだが、それに僕も掲載されていて、それを媒介にして僕に仕事の依頼がきて、小説やコラムを書いて、報酬を貰い、生計を立てるということができるのだが涙が出てきます。
 
どうして涙が出てくるのかというと、僕の顔写真のショボさで御座います。皆、どこぞかの写真館に依頼したのか、かなりちゃんとした写真が掲載されているというのに、僕の写真は、えっと、あれはどこだっけ、彼女と東京ドーム横の遊園地の観覧車に乗る前に、観覧車のサービスの一環である記念写真、観覧車で1周した後には現像が出来上がっていて、それを千円かそこらの値段で売りつける、そして気の弱い客はそれを買ってしまうと、その時に買った写真を胸から上の部分だけメールで添付して、それが掲載されて、もう彼女が横にいるものだから鼻の下は伸びてるし口は半開きだしでどうしようもない。
 
というのも、写真を送ってくださいと出版社から言われたとき、めんどくせーなー。お前が撮りにこいよなんて面倒くさい病が発病、といってもこの病気は慢性的に発症しているのだけど、それにも強弱があって、小便するのさえ面倒くさいと思うサイクルに写真を送れなんてメガトン面倒くさい級のことを言われたので、一番手元にあった写真、本棚に飾ってある例の観覧車の写真に手を伸ばし、スキャンして加工して、メールに添付して出版社に送って先日出来上がりの本が届いて涙が出てきたのは全て身から出た錆。こんな顔では来る仕事の依頼も来ないかもしれない。しかしモノを書くということは顔は全然関係ないからね、こんな写真でも関係ないかも知らん。と、ポジティブ思考。そのままプレステの電源を入れ、ドラクエのオープニングの音楽を口ずさみながら。
 
2004年12月13日(月)  クリスマスが今年もやってくる。
 
どうやら今年のクリスマスは彼女じゃない女性と一夜を過ごすことになりそうで、彼女には申し訳ないが、今からもう胸がドキドキ。何話そう、何食べよう、何着て行こうと気分の高揚は収まらず、彼女はクリスマスは誰と過ごすか知らんが僕は彼女じゃない女性と一夜を過ごす。
 
二人で何話そうって、お互いの仕事の話をするわけで、何食べようって地下の食堂で定食食べるわけで、何着て行こうって白衣しか着るものがないと、要するにクリスマスは夜勤なのであって、彼女じゃない女性は看護婦さんなのである。
 
わー。私ケーキ買ってきまーす。って看護婦さんはとても楽しそうで、よーし、僕はプレゼント買ってくるぞー。わー。ホントにー!? ありがとー! じゃあ私もヨシミさんにプレゼントあげるー! と、盛り上がった瞬間にお互い大きな溜息を吐く。
 
まぁ、クリスマスはどっちにしろ彼女とは会えないので、部屋にいてもどうせドラクエしかすることがないんだろうけど、看護婦さんはそれなりの予定が入っていたらしく、そのショックは計り知れないものがある。よって気は優しくて力持ちの僕は、その看護婦さんのショックを和らげようと、クリスマスのオムツ交換は僕一人で全部やりますと宣言。わーホントにー!? ありがとー! と、看護婦さんその宣言を受諾。ロッカーに戻りどうしようどうしようと鏡を見ながら困った顔。
 
2004年12月12日(日)  ダズンローズデー
 
12月12日! 同じ数字が並んでる! と、小学生クラスの感動を覚えてしまった僕は、今日は何の日、ふっふー。と、調べてみたらダズンローズデーだったということをすっかり忘れてて大急ぎで近所の花屋へ薔薇を買いに行った。
 
というのもこのダズンローズデー、言わずもがな、ブライダルファッションの第一人者である桂由美さんと内田和子さんが提唱した、12本の薔薇を愛情の印として恋人に贈る日であり、仕事帰り池袋に寄った時、今日はやけに12本の薔薇を持った男を見かけるなぁと僕はそこで気付くべきだった。近所の花屋にはもう11本の薔薇しか残っていなかった。なんて初めて聞いたよダズンローズデー。適当な記念日ばっかり作ってんじゃねーよと憤慨。そして驚愕。
 
「12月21日は遠距離恋愛の日」です。
 
そんな記念日もあるのか。記念日大国じゃないか。ダズンローズデーはさておき、遠距離恋愛の日と聞いては、遠距離恋愛真っ只中の僕としては彼女としては聞き捨てならぬ。具体的に何をすればいいのか。遠距離恋愛を育む二人にだけ特別に与えられる何かがあるというのか。
 
「遠距離恋愛中の恋人同士が、クリスマス前に会ってお互いの愛を確かめあう日です」
 
っていうか誰の都合だよ! 勝手にクリスマス前に会うとか決めるなよ! 遠距離恋愛というのは物理的に離れているのは勿論、それに加えて互いの都合とか、旅費、宿泊費などの経済的理由とか、気持ちの近さとか、その、遠さとか、そういうものが関係してくるというのに、たかが記念日の分際で「クリスマス前に会って」なんて勝手な都合で、「クリスマス前に会わない遠距離恋愛のカップルなんて付き合う資格すらないよ」みたいな傲慢な態度がちょー見え隠れ。

「1221の両側の1が1人を、中の2が近附いた2人を表します」
 
ギャグの世界じゃないか。シャレの世界じゃないか。僕たちはそういう世界に住んでいる覚えはなーい。もっと高尚なそれでいて純情なそれでいて潔癖なそれでいてちょっと倦怠な世界に住んでいるんだ! 僕はこんな記念日に左右されないぞ。絶対左右されないぞっと楽天市場をクリックして郵送で彼女の12本の薔薇を手配したそんなダズンローズデー。
 
2004年12月11日(土)  恰幅!
 
僕の人生をこのように駄目にした要素の一つにドラクエがあることは明らかで、今日クリアしたんだけど、クリアした時の達成感と同じレベルの絶望感を味わったのは、高校の同級生などはとっくに結婚して夫婦二人三脚で子育てに励んでいるというのに、休日に珍しく早起きしたかと思えば速攻プレステの電源を入れてドラクエに勤しむというこの体たらく。この歴然とした人生の重みの差。
 
一方は我が子にあらゆる教育を行い一喜一憂しているのに対し、一方はモンスターを倒しレベルアップするキャラクターに一喜一憂するという、僕は一体どこで、その、なんていうか、そういう人並みの人生の道を踏み外してしまったのかなんて書くとまるで僕がヤクザものにでもなったみたいだが、生来小心者の僕はヤクザになんてなれるわけでもなく、ただ貴重な休日に、貴重な人生のこの1日に、1日の約半分の時間を費やして、はぐれメタル倒したーやったーちょーレベル上がったー。小便。わーすげーゴールド溜まったー新しい武器買いに行くぞー。飯。あー壷の中に小さなメダル入ってたーもうけもうけー。風呂。でもアンタ、ボス強すぎですから! 残念! 就寝。と、何なんだこの人生は。絶対間違えている、と、思うよー。でも拙者、もうすぐメタルギアソリッド2が発売されるから急ピッチでドラクエクリアしましたから! 切腹! みたいな。割腹!
 
2004年12月10日(金)  老後のことを考えたよ。
 
老後を真剣に考える人にとって「有料老人ホーム」は頼もしい味方です。と、新聞広告に書いてあり、そりゃそうだ。いつまでも病院に入院してるわけにはいかんし、老人ホームだって入居制限があるし、自宅介護だって大変なものだ。だから有料老人ホームなんてのは今後ホントに大きなニーズがあるかも知らんね。と、その広告を仔細に読みだした途端驚愕。
 
何に驚愕したかというと、「有料老人ホーム」は頼もしい味方です。なんて書いてるくせに、入居一時金なんてのが3千万円もかかる。なんなんだ3千万円て。一時金なんて書いてあるから、何かしら一時的に必要な金かも知らんが、3千万円て。誰に対しての頼もしい味方なんだ。この値段は確実に大衆に対しては敵である。普通に払えない。更に月額利用料が25万2千円と書いてある。とことん意味がわからない。ここに入居する老人はそれなりの介護サービスを受けて安心して楽しく暮らせるかも知らんが、金を支払う方は一大事である。仕事が終わってからもバイトである。
 
まぁこれは都心の有料老人ホームだから話が極端なのかもしれないが、まぁ今更言うこともないだろうけど、世の中金がなければどうしようもない。僕だって現在のマンションの家賃をやっとのことで支払っているというのに、今後結婚して子供生まれて、幼稚園に入園して10月には運動会。ビデオカメラ欲しい。でもビデオカメラ高い。どうしようか妻に相談。ビデオカメラ買う金あったら今日の夕食の食材買いに行け。と、東武ストアへお買い物。もやし1袋48円の購入すら迷う生活。なんてことにもなりかねず、僕は歳を取ることが怖い。お金がないので。入居一時金3千万円なんて払えないので。
 
よってそろそろ資産づくりと思っている私にきっかけになるプランができました。その名も東京三菱のウェルカムパッケージ。円定期預金+投資信託で、投資信託の割合で、円定期預金の金利が異なるプランをご用意しているそうだが、全く意味がわからないので、セブンイレブンに行ってウィスキーを購入。部屋に戻りストレートであおり卒倒昏睡。
 
2004年12月09日(木)  誠に遺憾です。
 
「誠に遺憾である」と痛切に思ったのは、ボーナスが去年より少なかったことではなく、北朝鮮のあの人を馬鹿にしたような態度である。DNA鑑定なんて方法すら知らなかったのか、他人の遺骨を「これ横田さんの骨です」と差し出し、日本も馬鹿だから、「あ、あぁ、そうですか。どうもどうも」なんて素直に受け取り、うちに帰ってルンルン気分でエルメスの袋を紐解いたら、「あんたこれニセモノだよ」なんてことを姉だか母親だかに言われて、ンマー! 騙されたー! と憤っているのである。なんだこの茶番劇は。と思うのである。
 
それじゃあ相手は明らかに悪いことをしたんだから、経済制裁でもやりましょ。と、普通だったら思うのだけど、経済制裁を行うには、6者協議とか国連安保理事会とか、そういう、興味がなければそれについて学ぶことも面倒臭いような問題が山積みであって、僕のように、そういうのを面倒くさくて学びもしない連中は、経済制裁すらもできないんじゃ日本もダメだね。と、清原が打たなきゃ巨人もダメだねという思いと同レベルのことを考えて勝手に怒っているのである。
 
というわけで僕ももっと対北朝鮮問題を勉強しなきゃいかんな、と、新聞の記事を読み終えて思ったのだけど、思ったのも束の間、北朝鮮問題の記事の真下に女性セブンの宣伝が掲載されていて、『独占スクープ! 杉田かおる(40)もう黙っていられない「(交際3ヶ月)恋人はこの人!」』なんてことが書いてあり、恋人はその人かも知らんが、本当にどうしようもない国だ。騙されるはずだよ。と、脱力脱糞。何に対しても考える気力を失った僕は、その横の『君島十和子 あの巻き髪「毎日洗わない」』なんて見出しを見ても、それが一体どういうことなのか、この国にどのような影響を及ぼすのか、日本の経済制裁は国際的に意味を持つのかなんてことを漠然と考え、そのまた横の『叶美香さん美胸の秘訣 プエラリアミリフィカで「はさみ上げ」マッサージ』という見出しを読んで頭が爆発。
 
2004年12月08日(水)  ボーナスと放屁。
 
夜勤明けて、午後眠り、深夜に目覚め、朝方眠り、昼過ぎに起きて、夕方から再び夜勤という、何がなんだか、ここは何処だか僕は誰だか今は昼だか夜だかにんにきにきに混乱を極め、自転車を漕いで職場へ向かうけど、なかなか進まず、おかしいなと思ってたら逆方向に漕いでいたり、職場を間違えていつのまにかセブンイレブンでレジを打っていたりするという、とうとう本格的に内部からの崩壊が始まり、ヤベーチョーヤベー、シゴトヤメナキャなんて呪文のように唱えたりしていたが、本日ボーナスの支給日だと聞いた途端、内部の崩壊が止み、再構築が始まった。
 
ボーナス、出たことは出たのだが、大して欲しいものがない僕は、これ全てを貯蓄。余裕のある明るい未来。なんてことを考えていたが、それでは少し、つうかかなりつまらない人間になってしまうのではないかと危惧。未来は明るくても現在が暗くては意味がない。お金はある時に使わなくちゃ。明日死ぬかもしらんし。と、今まで28年間生きてきて明日死んだ確立は0%なのだが、とりあえずそういうことを考えて、今回のボーナスはぱーっと使おうということになって、よし、ここぞとばかりに欲しくもないものを買おうと、マッサージチェアー、腹に巻くと自動的に腹筋が鍛えられるやつ、高枝切りバサミ、冬のソナタDVD4巻、ウィスパー夜用、タイヤのホイール、冬のソナタVHS2巻、読売ジャイアンツの帽子などを購入。有意義な買い物をしてご機嫌。ウィスパー夜用を尻にはさみ放屁。
 
2004年12月07日(火)  お金がなくても大丈夫。
 
プリンタが壊れてしまったので、ビックカメラにプリンタを買いに行ったのだが、プリンタ売り場は6階であって、エレベーターは満員。面倒臭いけどエレベーターで行こうと、3階まで行ったとき、DVDでも見ようか知らんとDVDを2枚購入。次の階に行き、僕はホームページを4年以上やっている割には、知識に関しては素人、ということはホームページの作成全て「ホームページ・ビルダー」に頼っているのであって、そのアップデート版が安価で売っている。買おうかなどうしようかな買っちゃおうかな。と、最近ホームページの更新なんて他人事のように考えている現状を敢えて無視して、ホームページ・ビルダー・アップデート版を購入。さて、そろそろプリンタ売り場に行こうかしらん。その前にCD−Rが切れてたっけ。と、CD−R12枚組を購入。ようやくプリンタ売り場へ行き、プリンタを購入し、レジに並び、財布を開けると金が足りない。
 
あちゃぁ。誠に恥ずかしい。誠に遺憾である。目の前の欲求に支配され、後先の事を考えずにDVD2枚、ホームページ・ビルダー、CD−R12枚組など買ってしまったものだから今こうやって金が足りない。2千円くらい足りない。どうしよう。こういうときクレジットカード持ってたらいいんだよな。だけど僕は意思が弱い人間なので、お金が財布に入っているときもクレジットカードを使用し、ご利用はご計画的になんて言葉を人事のように感じ、もうホント四面礎歌。もうホントどうするアイフルって事態に陥ることは明確であるのでクレジットカードの類は持たない。プリンタは13000円だが僕の人生はプライスレスである。どうしよう。金が足りない。よって僕はこの購入を見送らざるを得ない。よってゴメンなさい。よって銀行行って金を工面してきます。よって後ほど伺いますので。ということを店員に告げると、「あ、だったらポイントから引いときましょうか」と言う。
 
そうか! その手があったのか! ビックカメラナイス! ベリークール! ポイントを使うという手段があったのか。全然思いつかなかった。なんと有意義なポイントの使用法なんだろう。みんなに教えてやろう。ビックカメラはお金がなくてもクレジットカードがなくても大丈夫。そこにポイントがあるから。すげぇ。すげぇよレジのお姉ちゃん。お金が足りないという屈辱的状況から救ってくれたレジのお姉ちゃん。僕には彼女がいるからあれだけど、彼女がいなかったら確実に告白してます。僕の人生全てのポイントをキミに捧げます。捧げないけど、本当にそのくらい嬉しい。何度も礼を言って、いい加減こいつうぜぇと思われる辺りで礼を切り上げてスキップしながら自宅へ戻り、鼻唄うたいながら新しいプリンタを接続しようとした際、USBケーブルが付属されておらず卒倒昏睡。
 
2004年12月06日(月)  話題のない男。
 
最近私が話してばかりで、お前はというと相槌ばかり。きっとお前は大した話題も作れないつまらない男だと思う。私だからいいものの他の女だったらとっくに愛想を尽かしている。というようなことを彼女に言われて、これはまずいなと危機を感じ、どうにかせんければいかんなと、今日の休日は話題作りに励むことにした。
 
朝10時起床。ソファーに座りテレビのスイッチを入れ、さて、何しよう。何かスゴイことをして彼女をビックリさせるような話題を作りたいのだが、具体的に何をすればいいんだろう。そういえば床って結構汚いよな。クイックルワイパーで見える埃だけ取っても駄目だよな、と、思い、雑巾を絞り、フローリング用の洗剤で床を拭き終わった所で天井を見上げて叫ぶ。これって全然スゴクない。彼女を退屈させない話題を作りたいのにどうして休日の朝から床なんか拭いてんだ俺は僕は。と、雑巾を投げ捨て、もっとスゴイことをしようと意気込み、ホッペをパンパンと2回叩き、服を脱ぎ捨て、下着を切り裂き、シャワーを浴びた。
 
はぁスッキリした。と、ドライヤーで髪の毛をブローしている途中に天井を見上げて叫ぶ。これって全然スゴクない。彼女が身を乗り出して耳を傾けるような話を提供したいのにどうして休日の朝からシャワーなんか浴びてんだ俺は僕は。ちょっと小洒落た休日のOLか俺は。OLの休日か僕は。と、ドライヤーを投げ捨て、この髪の毛以上に傷んでしまった僕の心をどうトリートメントするか考え、シャワーも浴びたことだし、とりあえず着替えて、話題を作りたければ人がいっぱいいるとこに行かなければという短絡的思考を持って池袋に行った。
 
さて池袋。何をしてやろう。ナンパでもしてやろうか。しかしナンパが成功するとそれなりの話題になると思うが、とても彼女向けの話題になるとは思えない。じゃあ何しよう。と、右手に宝くじ販売店。これだ、と思い、何がこれだと思ったかというと、「今日宝くじ買ったんだ」「へぇー。当たるといいね」「うん。当たるといいね」「ねぇ、もし3億当たったらどうする?」「そうだね、まずマンション買って……」と、話題が膨らむこと請け合い。「もし3億当たったら」なんて話題はこの季節の黄金律であって、何度話しても飽きることはない。よし、これだ。これでやっと彼女に退屈な思いをさせないで済む。30枚下さい。と、9千円支払い、年末ジャンボ宝くじを購入。本当は3億なんて当選しなくてもいいから、毎日こうやって退屈だろうけど、僕とお話して下さいと彼女に伝えようかと思ったけど恥ずかしくてやめた。
 
2004年12月05日(日)  板橋事変。
 
夜勤明け。9時30分に職場を出て、CDでも買いに行こうか知らん。と、自転車を走らせ、僕が住んでいる町は立派な商店街があるのだが、ラーメン屋ばかりでCDを売っている店が1軒もなく仕方ない、隣町に行こうと、隣町に向かい、CD屋を発見したのだが、時計を見ると9時50分。あちゃぁ。まだ開店してない。帰ろうかな。どうせ欲しいCDは「東京事変」のアルバムだし。と、ここ数ヶ月僕の中でJーPOPだせぇという風潮があって、たまには日本語の歌が聴きたいなぁと思いつつも、気取って通振ってジャズを聴いたりブラックミュージックを聴いてたりしたんだけど、つい先日、ヒライケンのニューアルバムを購入し、このCDがなかなかいい出来だったので、いいじゃないかJ−POP。全然恥ずかしくない。だから東京事変も恥ずかしくない出来であろうと、勝手な解釈ばかり始め、CDショップの開店まで10分あったが、10分我慢できる意思を得た僕は、意思は我慢できるけど、四肢体幹が寒くて我慢できないので、近くのドトールコーヒーに避難した。
 
こんな朝早くから何用があってこの大衆達は悠長にコーヒーを飲んでいるんだと思うほど店内は人でごった返しており、皆、新聞を読んだり小説を読んだりノートパソコンを広げていたりする。そんなの家でやれよと僕は思うのだけど、CDショップの開店を待っているという間抜けな立場上、ドトールに鎮座する客を責めることはできず、端の方のテーブルを確保し、ブレンドコーヒーを飲みながら煙草を吸いながら。
 
視線を感じる。こういうものは不思議なもので、「視線を感じる」という感じは確かに存在する。一体この感じはどこで感じているのだろう。耳かしらウナジかしらクルブシかしらと考えながら、視線のもとを探ると、齢3つほどの少女がこちらを見て微笑んでいる。そして僕と目線が合うと、ひょいと僕の死角に当たる部分に隠れてしまった。
 
ちょーかわいい。僕は、ロリコンとかそういう性倒錯ではなく、単に子供が大好きなのであって、このようにお茶目な行動を取られてしまうと、僕は前後左右の感覚を失い、その子供の行為の観察のみに没頭してしまう悪癖を持っている為、右手に持った煙草も吸わぬままフィルターの前で燃え尽き、ブレンドコーヒーもなんともいえない温度になり、周囲の大人たちは僕に冷たい視線を送るという、何もいいことなんてないんだけど、僕は気にしない。そこに子供がいるから。
 
しかし子供が好んで用いる、視線が合ったら死角に隠れややあって少し顔を出し再び目線が合うと恥ずかしそうに慌てて隠れるというあの行為は何の意味があるのだろうか。ちょーかわいいじゃないか。飽きることなく同じ行為を繰り返すその姿勢。継続は力なり。雨だれ石をもうがつなんて言葉もあるけれど、そんなこと繰り返したって何の意味もないじゃないか。意味がわからない。意味がわからないけど可愛いから万事オッケー。時々故意に視線を合わさずに、僕はもうキミに興味がなくなった。これ以上僕に視線を投げ掛けても今後一切反応しない所存です。という無言の意思を相手に伝えつつ、不意打ちでカッ! っと目線を合わせた時の慌てふためく少女の反応! ちょちょちょちょーかわいー! ちょっと母親の視線が気になるけど、僕は貴女に用はない。僕は貴女の子供と無言のコミュニケーションを行っているのだ。親は黙ってコーヒーを飲んどけ。と、大人に大してはひどく冷たい反応をする僕はCDを買うことなどすっかり忘れて、ご機嫌になってスキップしながらトイレで小便。
 
2004年12月04日(土)  イカない女はなぜイカない。
 
「私、テレビみたいに料理食べて『舌がとろけるように美味い』なんて思ったこと一度もないわ」と、言ったのは僕の妹であるが、同じ血を引いている関係、その気持ちすごく分かる。というのは、うちの家庭は、今はなんとか人並みだが、昔はひどい貧乏で、貧乏なのは僕の所為でもましてや妹の所為でもなく、これ全て両親の所為であって、教室にたたずみ、周囲の新しいゲームの話題に耳を傾けながら、どうしてうちはこんなに貧乏なんだ。どうして周りみたいに好きな物が自由に買えないんだ。いやだな。みんな努力してんのかな。僕ももう少し努力せんといかんな。と、妙な勘違いをして小学3年生から新聞配達を始め、親が小遣いを与えないものだから、欲しいゲームソフトは全て自分の稼いだ金で買い、時々は妹に駄菓子を買い与えたりしていた。と、このような境遇で育ったので、美味しいもの美味しくないものの区別がひどく曖昧で、口に入れることができ、尚且つ咀嚼できれば万事オッケーという概念を幼い頃から植えつけられたものだから、「食」は「グルメ」と結びつかず、どっちかというと「生命」に結びつくので、牛が枯草を貪る如く、ひどく概念的なものになってしまったのである。
 
やがて時は経ち、今じゃ雑誌のカヴァーまでとはいかないけれど、著作を出版するなどして、尚且つ看護師という職業を生業とし、経済的にも少しく余裕が出てきて、時々寿司、フランス料理、イタリア料理などを食いに行ったりするけれど、万人が口を揃えて言う「美味しい」という感じが、もうなんつーか三つ子の魂百までっつーか、どうしても感じられず、心から自然に湧いてくることもなく、相手が美味しいと言ってるから、おそらくこれは美味しいものだろう。うん。これは、美味い。と、思う。しかし舌は、僕の舌は、とろけてない。頬は、僕のホッペは、落ちてない。と、愕然とするのはきっと幼い頃が貧乏だったとかそういうことではなく、これはメディアの所為だろうと僕は思ったのである。
 
というのも、メディアというものは、何にしろ今あるものをそれ以上に見せようとする傾向があり、例えば露天風呂の紹介などでも、確かに露天風呂は素晴らしいのだが、辛気臭いロビーは放映しない。露天風呂から見える情緒溢れる景色を映したり、露天風呂に使っている女優の胸の谷間ばかり見せるものだから、ここはきっと素晴らしい場所なんだと視聴者は勘違いし、番組に影響されて実際そこに赴いてみると、なんだ意外と普通じゃんと軽い愕然を覚えるのである。
 
グルメ番組もそれと同じで、美味しいことは美味しいのだが、それを箸でつまんで口に入れてモグモグしながら、うん、美味いね。美味い美味いと思いながら普段通りに無言で食べていたら番組的にちっとも面白くない。よって芸能人達はそれらの行為を過大に表現して、舌がとろけるだの口の中に広がるだの頬が落ちるだの、わーわーきゃーきゃー喚くのである。しかしその根底は僕の妹が考えているそれと大して変わらないのである。
 
AVだってそう。僕も男だから、昔はAVを見ながら鼻の下を伸ばしたり、下の下を立たせたりと、そういう青春時代を過ごしてきた。それはどういうことかというと、AV女優は1本のAVで、おいまたかよ。さっきもイったじゃねぇか。と思わず突っ込みたくなるような回数のオルガニズム、通称「イって」いるのであって、男は馬鹿だから、女はセックスでイって当然イカせて必然という思い込みを抱いてしまい、彼女とセックスするに至って、なんでコイツはイカねーんだ。他の女はすぐイクってのに。と、そいつが考える「他の女」は全てAV女優のことであって、美味しいという感じを「舌がとろける」と口に出して表現する芸能人と同じく、AV女優は「気持ちいい」という感じを「イク」と表現しているのであって、情報が偏っているから偏った人間を生み出し、美味しいものも美味しくないと、イカない女は不感症だと弾劾する人間になるのである。
 
2004年12月03日(金)  デートしたい気分。
 
あぁ。たまにはデートしたいなぁと思ったのは、ここ数日、休日の度に寝る間も食う間も惜しんでドラクエをしているのであって、未踏の大陸を歩き、手強いモンスターを倒し、新たなストーリーに一喜一憂するという、やっている間はすごく楽しいんだけど、問題はプレステの電源を切ってからであって、真っ暗になったブラウン管を見ながら、「何やってんだ俺は」と、まるで射精後のような面持ち。窓を明ける。空が青い。太陽が輝いている。鳥が歌っている。柿の実が熟っている。世の中は僕を置き去りにして動いている。やばい。すげぇ置いてけぼりくらってる。大都会東京で。しかし埼玉寄りの板橋で。ゲームだけの冒険で満足しているようでは駄目だ。四肢体幹を駆使してリアルな冒険に出掛けたい。でもモンスターの代わりがチンピラで剣の代わりが拳銃とか、そんなリアルな冒険は嫌だ。怖いし。だからもっと平和な冒険に出掛けたい。空を見て青いと思うとか、花を見て綺麗だと感じるとか、そんな冒険に出掛けたい。でも一人じゃ無理だ。空が青いネ! なんて一人で感動してもちっとも面白くない。よって僕はデートがしたい。平和的でリアルな冒険に出掛けたい。
 
というわけで彼女に、「デートしたい!」と、衝動的とも思える内容のメールを送信。内容自体が衝動的なので返信はなく、少し寂しい気分。理由くらいは訊ねてもらいたかった。「デートしたい」というたった6文字だけど、そこには僕の苦悩が込められていたんだ。と言ってみても、現在二十歳の彼女にはそんな苦悩は理解できるはずがなく、仮に三十歳だったとしても理解できるとは思えないけれど、彼女は学校で友達とワイワイキャッキャ、時には切磋琢磨などして学生特有の苦しくとも楽しい日々を送っているのかもしらんが、僕はこのように毎日病院で働いて、口には出さないけれど、何かとストレスも溜まりやすく、ストレス発散といったらドラクエしか手段がなく、デートでもしたいけれど彼女は遠い距離。しかしデートしたらしたで、デート特有のストレスも生じるわけで、だったら今の状態でいいのか。僕はドラクエやってたらいいのか。時々依頼された原稿を書きながら自分の怠慢を棚に上げて世の中にぶーぶー文句垂れてたらいいのかと自問自答の日々。
 
よって、彼女が遠距離で好きなときにデートできないのであれば、好きなときにデートできる彼女を作ればいい。遠距離の彼女とは会った時に思う存分デートすればいい。と、太陽が輝き、空が青く澄んでいる日に名案を思いついたのだけど、世の中ではそれを浮気と呼んでいるらしく、つまんねーなー。ちっとも合理的じゃねーなー。遠くに彼女がいて近くにも彼女がいて何が悪いんだよ。ちょー合理的じゃないか。と思うけれども、世の中はそれを倫理の問題だ。などと意味のわからぬ概念で僕を弾糾しようとする。わかったわかった大丈夫大丈夫。近くに彼女なんて作らないから大丈夫。落ち着けよ。そんなこたぁしないから落ち着けよ。と、青い空に向けて、まぁまぁというゼスチャー。
 
2004年12月02日(木)  優しい人間。
 
コイツもうホント洗濯物のことしか書かない馬鹿じゃねーの全然読む気しねーんだけど。などと思われているかもしれないけど、僕だってこの日々溜まっていく洗濯物について、いつかは解決しなければいかんなぁと考えているのであって、地球を大切にするんだったらゴミを減らせばいい。空気を綺麗にするんだったら二酸化炭素の排出を減らせばいい。ということは洗濯するのが面倒であれば洗濯物を減らせばいい。なんだ簡単じゃん。
 
というわけで人に優しいことも大切だけどまずは環境を大切にせねばならん。と、日頃当然のように二足一組で使用している靴下を片方だけ履き、師走に入ったというのに部屋の中ではパンツ1枚。風呂上りは朝に顔を拭いたタオルでチンチンを拭くというようなエコロジーな人間を目指したために風邪をひいた。
 
病床で天井を見上げながら、どうして人生というものはこう上手くはいかないのだろうね。と考えていたら、人生の辛さを味わっているのは僕だけではないらしく、枕の横で鳴り響いていた携帯を取ると彼女が泣いている。
 
普通、人が泣いていると、「なんでもないの。気にしないで」なんて言う人は皆無であって、皆だいたい「えとね、うんとね」と泣いている理由を話し、私もこんなに悲しいのだからお前も悲しめといわんばかりに悲哀の共有を強いるので先ほどまでチュッパチャップスをお茶目に舐めていたような僕も気分が陰になり、28歳にもなってチュッパチャップスを舐めていたという自分を責めたくもなるので、泣いている人を見たら話し掛けないのが一番なのだが、彼女が泣いているとそういうわけにもいかない。結婚すれば財産でも共有するんだけど、恋愛で感情を共有しなければ何を共有すればいいんだという話になる。で、面倒臭いなぁ。こっちも風邪ひいて悲しい気分なんだけどなぁと思いつつも、泣いている理由を問うとヒックヒックさせながら「ソツケンダメダ」と言う。
 
「ソツケンダメダ」の意味がわからない僕は、その意味を尋ねずに、おそらく彼女の家で買っているソツケンという名の猫が屋根から落下して絶命したのだろう。それは悲しい。よしよし。もういい? 僕は寝るよ風邪ひいてるから。と電話を切ろうとしたら、「ふぇーん」と彼女の悲しみは強くなるばかりで、そりゃぁペットが死んだら悲しいのかもしらんが、生き物はいつか死ぬ運命なんだし、そういうのいつまでも引きずってたら私生活にまで影響を及ぼすよ。腹が減ったらお湯を沸かして3分待てばいい。要するに何にしろ時間が解決してくれるんだ。その悲しみは3分で解決されるかわからんけど、僕の風邪は1日寝たら解決されるかもしらん。ちなみにどうしてソツケンダメダったの? と尋ねると「ダツリンしたの」とおかしなことを言う。ダツリンとは何のことであろう、たしか彼女は現在自動車教習所に通っていたなァと思いながら、枕元に置いてあったティッシュで鼻水を拭こうとしたが勿体無いので上着の袖で拭いながら、「ダツリンかぁ。運が悪かったんだね」と、話が噛み合っているのか噛み合っていないのかその後30分間悲しみを共有した僕は地球にも人にも優しい人間。
 
2004年12月01日(水)  世界の中心でベギラマを唱える。
 
ここ数日、新しい呪文を覚えられるのであれば仕事を休んでしまっても構わないという心意気でドラクエをやっていて、その心意気は認めるけれど、いくら新しい呪文を覚えても新しい武器を購入しても莫大なゴールドを得ることができても、実生活には何のプラス要素もなく、むしろマイナス要素満載で、このように日記を書いている時間さえもが惜しいと思っている僕はかなり駄目な方の人間。人生を勝敗で表すつまらない今の世の中の表現を借りるのであれば確実に負け組であり、ここは人生の一発逆転でも狙って北朝鮮にでも亡命して悦び組にでもなろうかしらんとも思う。
 
ドラクエは教会でゲームの記録を行うのだが、このゲームの記録をされたとき、プレイ時間が表示される。いつもはたいして気にもならないのだが、ふと見てみると25:05と表示されている。
 
あちゃぁ。なんだこれは。僕はもう25時間もドラクエをやっているのか。25時間て。25時間あれば何ができる。僕は一体何を得たのであろうか。25時間あったら、はがねの剣だって買えるし、レベルだって10以上上げられる。あの憎きゴーレムだってトロルキングだって一発で倒せる力を得ることができるじゃないかと、思考すらドラクエに侵されていて僕はもう駄目だ。外に出て彼女とデートにでも行きたいけど彼女とは遠距離なので自由にデートすらできない。あぁ。ルーラを唱えられたらどんな町にもひとっとびなんだけどなぁ。と、もう救いようがない。
 
彼女は最近、「シナモンロールかわいい!」なんて、何かの病に侵されてしまったかの如く、サンリオのキャラクターであるシナモンロールの名を連呼しているのだが、たかがぬいぐるみ風情にうつつを抜かしやがって。もうキミはハタチになったのだからもう少し大人らしい振る舞いをしたらどうなんだと、口には出していわないけど、心の中で彼女を戒めつつ、僕は今日も手強いモンスターを目の前に、勇猛果敢にベギラマを唱える。
 

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