聞こえよがしに悲嘆をさけぶ
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セーラー服なんてバカみたいだと彼女は言っていたけれど 彼女にはそのバカみたいな服が多分、どんな服よりも似合っていた。 セーラー服と彼女はふたつでひとつだった。 だから彼女がセーラー服を着たまま死体で見つかったというニュースを聞いて 彼女の最後が一番似合う服と一緒だったということに あたしは不謹慎ながらも少し感動した。
どうしてあたしのところに。 そう思ったのは、彼女と特別仲が良かったわけではないということもあったけれど 彼女の死を悼むどころか、受け止めてさえいない自分のところにどうして という疑問の方が大きい。
我ながら自分のことを間抜けに過ぎると思う。 生きている時の彼女だったらきっと呆れている。 なにせ、見て最初に言った言葉が「やっぱり似合うね」だ。 セーラー服姿の彼女の幽霊を。
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我ながら、ほんとうに、間が抜けている。 まさか「似合うね」と言って彼女が「ありがとう」とでも答えるわけないし、 なのにあたしは彼女がなにか言うのをじっと待っていた。 ひたすら待った。なにか言うべきことがあるはずだと思ったから。 けど沈黙。 それであたしは結局その沈黙にあらがいきれず、 またこう言うのだから憐れなほど空気が読めていない。 「うんうん、やっぱり似合うね」と。
彼女はきっと、教室の姫。 ちょっと冷たい、誰にも媚びない(媚びる必要がない)。でも。 みんな「あの人少し違う」と思いながらも、 彼女に憧れてた。 黒く長い髪の毛がすごくうつくしかったし、セーラー服がとてもよく似合っていたから。 先生だって、彼女を指す時には卑屈な笑みを添えていた。
だから、二回目の「似合うね」の直後に彼女がぱっと消えたのも、 彼女らしいなと思った。 よっぽどメールでみんなに知らせるか、 お母さんに言おうかと思った。 けど止めた。 すこし怖くなって逃げ込むようにベッドに入ったけど、 鼓動が速い。ものすごく速い。
あたし高一のとき、 隣の席になった男の子とたまたま好きなマンガが同じで、 仲良くなって、一緒に遊ぼうなんて誘われたけど、 ドタキャンしちゃった。 平凡な男の子だった。 でも一緒に行けばもしかしたら、 彼女みたいになれたのかもしれない。 ベッドの中でもじもじしながら、そんな憶測する。 まるで胸が高鳴るみたいな、 恋愛してるみたいな速さで心臓が打ってる。 そういえば、彼女はどうして死んだのだっけ? そんなことさえ思い出せず、 そして眠れないのがもどかしく、 瞳を開けたらまた、セーラー服姿の彼女がベッドの傍らに立っていた。
彼女は、リボンの結び目の恰好が気になるらしく、 リボンの端を右に引っ張ったり、左にすこしずらしたり、している。 彼女の視線は、その手元から離れない。 彼女らしくない仕草だと思いながらもじっと、 あたしはその彼女の白い指先のきびきびした感じに見とれていた。 そうしたら彼女の黒い瞳が突然あたしを向いて、 同時に指先の動きも、びたっと止まった。 なに見てんのよ。 そう言われてる感じがした。
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「あ、ごめんね」 眼が合った瞬間思わずあたしはそう言った。 また、的外れな事を彼女に言ってしまったのかもしれない。 でも、あたしの気持ちを表すのにぴたりと当てはまるのはその言葉しかなかった。 それは例えば友達のメールの内容を間違えてみちゃった時のような、後ろめたさと驚き。
いつも彼女のセーラー服姿は完璧だった。 セーラー服は彼女に着られるためだけに何十年も前に発明されて、彼女もセーラー服を着るために生まれてきたとしか思わないほど、ぱしりとセーラー服と彼女は組み合っていた。 だから、彼女のセーラー服が毎日シワもなく汚れもなく、リボンの位置が毎日1ミリも違わない事なんて、当たり前だと思っていたのだ。 彼女が朝起きて、適当にセーラー服を着たら、そのセーラーには汚れが一切ついてなく、リボンも偶然毎日同じ位置にある。 そうにちがいない。そんなバカな確信を持たせる説得力をセーラーと彼女は持っていた。 だから、リボンをいじってる姿は、その確信を覆すものであったし、彼女の細やかな信念(彼女とセーラー服が完璧であるということ)を覗き見てしまったような気分にあたしをさせたのだ。
「あ、ごめんね」 そう言ったあたしに、やっぱりなにも言わずに、彼女はリボンから手を離した。 あ、すごい。定位置になってる。 そこにまた感動して、彼女が眼を合わせてくれているうちに、彼女に話しかけてみる。 それは少し独り言みたいだったかもしれない。彼女に届けたくない言葉だったから。 「もう、あと1週間で卒業式だね」
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そう言うと、それが合図だったみたいにすっと彼女の姿が消えた。 あたしはおいて行かれたような気がして、少し胸が痛んだ。
実際彼女はもういってしまったんだけれど。
改めてあたしはそう思って、そう思ったら涙がボロボロ出てきた。 いまさら泣くなんてあたしはやっぱりおお間抜けだ。 それもあたしは、たぶんなにより、彼女において行かれたことがいちばん悲しいのだ。
だいたいあたしは彼女の何を知っていたんだろう。 クラスの誰よりも、きっと、あたしが一番、彼女のことを。 「セーラー服と彼女は一心同体」「完璧なセーラー服姿」 あたしが一番、彼女のことを。 「恋愛してるみたいな速さで心臓が打ってる」 クラスの誰よりも、きっと、あたしが一番、彼女のことを、見ていなかった。
「もうあと一週間で卒業式だね」なんて 簡単に、そうやって、思い出にして切り捨てようとするあたしを、彼女は笑いに来たのだ。 どうしてあたしは、彼女がなんで死んだのかさえ知らなかったのだろう。
そう思ったら、おいて行かれた悲しさに、今までの後悔まで襲ってきて。 あたしは涙と鼻水でぐじゅぐじゅになりながら、布団にくるまって 悲しさと、後悔と、恥ずかしさでしばらく泣いていた。
それで、しばらくして起きた。 寝ていたことに気付いた。 間抜けだ。
(仮)まだかく
こたろうにならって日々の出来事を綴ろうと思うよ。 ほぼ自分用になる。
今日は巡回教員ごとに分けたプリントを午前中に配ってやれやれとか思ってたら 配属名簿の施設名と施設住所とか学生の名前とかが超食い違ってるのに気付いて死ぬ。 死ぬ気で直したよ。A→B→C→D→E→F→G→H→Aみたいな入れ替わりの輪が 4つくらいできていた。暗号作成機にでもかけられたのか。
あと台風が来るとか言ってクソ蒸し暑い。スーツ憎悪。
薔薇の名前を読み終わった。 いかようにも読めるとかあるけど 自分は出された物を黙々と食べるタイプなんだなーと思った。ひどい。
明日からなに読もうかなー。鉄鼠をちょっと拾い読みするか…。 あの四角四面な感じがたまらん。
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