愛玩人形の抱き方+

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2007年03月21日(水) 人形のいなくなる日

とりかえしのつかない致命傷をうけて

身体を引き裂かれる痛みに泣き叫び

失われてゆく人工血液を必死でとめようとし

零れ落ちる部品に悲鳴を上げ

絶望のうちに機能が止まるのだと


おもっていた


けれど その日を迎えてみれば
それは
おどろくほどあっけないものだった


まるで眠りにおちる直前みたいに

体温と同じ温度の水へ沈み込むように

ふわふわとあたたかく

つつみこまれるようにひんやりして

まどろみのなかにいるみたいに 心地好い


もうめざめないのだ とおもうと

それはすこしかなしいけれど

でもしかたない



それすらも

もうすぐ 光のなかにとけるんでしょう


* * *


ひとつの結末をむかえましたので
愛玩人形の抱き方+ は これで終了です
人形はいなくなってしまいました

いままで読んでくださった方
通りすがりに眼をとめてくださった方
そっと言葉をかけてくださった方
そして 結局 この場所をおしえることのなかったあなたへ

どうかどうか 心からの感謝を


どうもありがとうございました


2007年03月16日(金) 魔法の解ける音

いつからだろう?
響かなくなったのは

魔法がとけたのは 一月のバスルーム

いつの頃からかわたしのそばには
いつも幽霊みたいな絵があった
なんだかそれはひどく不恰好で
気味のわるいいきものがかかれてて
わたしはそれがあまりすきではなくて
あまり見ないようにしていた

わたしがたのしくてもうれしくても
その絵はあいかわらず不気味にそこにあるので
腹立たしくて
蹴ったり 布をかけてみえないようにしたり していた


ある日
気づく


それは絵なんかじゃなくて
鏡だったんだ

ああ
あのかわいそうないきものは わたしだったんだ


そうしてわたしはうごけなくなる


わたしは
自分を動かすエネルギィは
内側で生み出せる機構の人形で
そこが故障していたことに気づかなかった
それまで作っていたエネルギィでうごいてたみたいだけど
とうとうそれも なくなってしまった

なくなってしまった


ichino |MAILBoardText庵Antena

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