終わりなき戯言
幻水&日和サイト共通日記。pixiv関係はこちら→ pixiv / 企画用ブログ / twitter
2005年08月31日(水)
堕天の徒
01:呼吸が途切れる

 地上は嫌いだ。
 湿っぽかったり埃っぽかったり、風の匂いが毎日のように変わる。
 足の下は行き止まり。土の色しか見下ろせない。
 地平線が広すぎる。何処を見回しても地面が続く。
 小さな星が見え難い。太陽と月の光も少し弱い。つまり、暗い。
 空が――故郷が遠い。

 駄目だ。この肉体には慣れない。気持ち悪い。

 体が重たい。ほら、すぐに息が切れ始めた。
 いや、これは疲労じゃなくて。
 脆くなった肉体が慣れない環境で軋み始めた音がする。

「・・・苦しい」

 だけど、どこか懐かしい、始まりの場所。


02:消える波紋

 最初から何処か違和感はあった。
 絶えたと言われる青い髪。
 それは夜が訪れても決して黒くはならなかった。
 早すぎた両親の死。
 誰にでもあり得て、だけど今まで他の誰にもなかった死。
 何故彼女は病を患ったのか。
 何故彼は自ら死を選んだのか。
 『呪いの血』
 人は忘れて久しいその言葉を密やかに囁いた。

 疑問の波紋は続く。いつまでも、どこまでも。
 この身に纏わりついて、決して消えないだろうと思っていたそれが。
 どうしてこんな簡単に。

 世界が停まる。その瞬間に、速やかに。
 波紋が消えて凍っていく。


03:澄み切った空

「貴方は何処から来たの?」
「上からさ」
「どうやって来たの」
「落ちてきた」
「どうやって帰るの?」
「飛ぶ意外にはないな」
「飛べるの?」
「残念ながら飛べないんだ」
「飛べたらいいのにね」
「どうだかな。そもそも上にいなければ落ちなかったかもしれない」
「ねぇ、此処から貴方の来た場所が見える?」
「見えない」
「こんなに晴れてるのに?」
「此処からじゃ遠すぎるんだ」
「じゃあどうやって帰るの?」
「さぁ、どうやって帰ろうか」


04:花は咲かない

 子供の頃、早く花を咲かせたくて花壇に沢山の水をあげた。
 そうしていたらその花はいつの間にか他の花より成長が遅れていた。
 余計にムキになって、もっと沢山の水をあげた。
 その花は、翌日には腐っていた。

 僕は泣いた。泣いて母に縋った。
 母は僕をあやしながら、静かに諭した。
 『何事も必要以上にしては駄目よ』
 何故母は花が腐る前にそれを言ってくれなかったのだろうか。

 その数年後に僕の時間が止まった。
 他人よりも遅れがちだった成長は、いつしか完全に終わっていた。
 僕は怖い。怖くて怖くて堪らない。
 自分が生まれる時期を見誤ったのを知ってしまったから。
 僕はいつまでもこのままなのか、耐え切れずに腐って朽ちるのか。

 どちらにしろ、花は咲かない。


05:無音の雨

「君にこの音が聞こえるだろうか?」

 幼い外見に似合わない大人びた微笑みを浮かべた少年に青年は眉を顰めた。

「音?」
「今、世界中に雨が降ってる」

 青年は窓の外を見る。それは気持ち良いくらいに晴れていた。

「俺には聞こえない」
「僕には聞こえる。君が此処に来てから音が強くなった。思った通りだ」
「その為に俺をわざわざ落としたのか?」
「一応正解、と言っておこうかな」

 謝罪の言葉もなく呆気なく言った少年は不意に笑みを消して。

「僕にはまだやることがあるんだよ」
「雨を止めるか?」
「いや・・・寧ろ、逆、かな」
「え?」

 訝しげに聞き返した青年に少年は答えない。
 その代わり、音に聞き入るように目を伏せた。

「ずっと雨の音だと思っていたけど・・・」

 これはきっと、壊れる音。


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オリジナル書きたい病が発症しました。
「Our days」の方じゃなくてファンタジーの「堕天の徒」ってやつを。
Galleryのその他に絵があったりします。結構前から設定を煮詰めてるやつです。
上のはそのイメージ文的な。
実は最近こそりとお題サイト作ったのですが、その中のお題を使ってみたり。
因みに此処からお題サイトへのリンクは貼ってません。探せばあります。

そして昨日滅茶苦茶嬉しい事実を発見・・・!
見た瞬間「ほあああ・・・!!」ってなりました。言葉にならない。
嬉しくて泣きそうになることもあるんですね。有難や。


**拍手お返事**

>いるかさん
まずこれだけは!お返事微妙に遅れましてすみません・・・っ!
24時間テレビの策略(?)に嵌ってしまったのですね・・・!(笑)
私も恐竜ものは好きなのです。ジュラシックパークは3が一番好きです。そしてハリウッド版ゴジラが途中からジュラシックパークに見えるのは私だけではない筈だと勝手に思ってます。ていうかあれをゴジラだと認めたくない・・・(笑)
農家ですか・・・!ということはこれからお忙しくなる時期でしょうか?
一面稲穂というのはいいですよね〜。風が吹くと波のように揺れるのが最高です。身近にこうゆう光景が見れるって幸せだなー、と思いました。

>聖らいむさん
短編集お読みになられましたか!可愛いですよね〜。
大丈夫です、私も同じ部分でにやけます(何が大丈夫なのか)(笑)
私もバンプに嵌ったのが二、三ヶ月中のことなのでもっと早く知っていればと後悔中です。
「K」や「ダンテライオン」は凄くグッときます・・・!
余所様の主人公設定を見るのって楽しいですよね。時には「こうくるか!」な設定もあって、私がWリーダー好きなのも色々なWリーダーがいるからなんだろうなと思いました。
アルドの手ほどき・・・!今まで考えてそうで思い付きませんでした。弓歴(?)はテッドの方が長いのにちょっとしたことを教えられて複雑な気分になっているといいですよ(笑)
そして1テッドの服はどうなってるんでしょうかね・・・。テッドのコスプレしている人があの服をどう作っているのか気になります。
2005年08月28日(日)
テレビばっかり
昨日は24時間テレビをチラ見しつつダイナソーみてうっかり感動して(二度目なのに)スマステでやってたヨガやってみたりその後PC付けたにも関わらず他のことを色々としてて結局午前1時頃に寝てしまい某所様で絵茶があることをすっかり忘れてましたちっくしょう!(一息で)
ダイナソーは音楽が好きです。
そして今日は平成教育委員会を一時間ほど眺めて丸山弁護士がゴールするのを見届けて行列で笑ってウルルンで再び感動。そして今は堂本兄弟一問一答。
2005年08月26日(金)
あっつー
最近やっと涼しくなってきたなぁと思ったら今日は暑かったです。
何日かぶりにクーラーつけた。
因みにこの辺りでは稲刈り真っ最中ですよ〜。
幻水3の小麦畑のように一面の金色の稲穂が風に揺れる様子が好きなのでちょっと残念。


やっとキリリク小説をちょっと進めれたかなと思ったら書ける時間はそう長くは続かなかった・・・。書きたい場面は浮かぶのにそこに至るまでが・・・っ。
2005年08月25日(木)
サイト容量
サーバ上のファイルを整理しているとふと現在使用中の容量が気になったので調べてみた結果、約18MBでした。
因みにここのサーバで使える容量は100MB・・・・・・まだ全然余裕じゃないですか。
私が借りているサーバ(C.M.O.Japan)は本来は有料なのですが、クリエーター割引というものがありまして、それを利用すると実質無料なのです。
無料で100MBで広告無しでCGIは制限付きだけど使用可。
本当に有り難いです(改めて有難みを実感中)


**拍手お返事**

>24日22時
フェイを大好きですか・・・っ!有難う御座います!
何考えているのかわからないような掴み所のない人になってしまいましたが割と皆様に好いて頂けているようで嬉しいです。妙に達観してそうなそうでなさそうな。あとキレた時の滅茶苦茶っぷりとか最強かもしれないです・・・。
最近ちょっと影が薄くなっているような気もしますがこれからも見守って頂ければ幸いでございます。それでは拍手&メッセージ有難う御座いました。

>いるかさん
ホラーチックなギャグ終わりです!(笑)
やっぱりネタになりますよね。夢って「実際ありえねぇだろ!」というほど突拍子もない展開になったりして、それなのに夢の中の自分は特に疑問に思わず至極真面目だったりするので面白いです。
・・・・・・私、夢を元ネタにして日記で小話書いたことあります・・・(汗笑)
続きは書きませんでしたが考えると面白いかもしれませんね。そういえば夢の続きを見る方法をテレビで見たような気がするのですが忘れてしまいました・・・。
2005年08月23日(火)
約三ヵ月半振り
時間的には少し今日より遅れましたがトップ絵変更です。
と申しましても今のトップ絵は臨時です。これから色塗ります。
・・・・・・ぶっちゃけると前のやつに飽きたんです(ぶっちゃけすぎ)
気付けば三ヶ月半も4主に頑張ってもらってました。うわぁ、びっくりだ。


というか私、今日は小説を書こうとしていたんじゃ・・・?


**拍手お返事**

>いるかさん
殺される夢にはそうゆう意味があるのですね。なるほどー。
流血は激しいほどよい・・・めっちゃ血ドバドバ出てました・・・(喜んでいいのかどうか)
撃たれるのは要注意って本当に何に要注意なんでしょうね(苦笑)
でも気力のコントロールが云々というのはちょっとドキリとしました。
以前何かで見たのですが、人が死ぬ等の不吉な夢というのはそう悪いことではないらしいですね。でも悪い夢を見ても普段からあまり気にしてません。元々夢の内容を一々覚えている人間なので一つ一つを気にしていたらキリがないと申しますか。
寧ろどんな強烈な夢を見ても日記のネタにしか・・・ゲフゲフ。
余談ですが、昨日の夢、実は最後はギャグで終わってたりします・・・。
2005年08月22日(月)
「敵は意外にバカです!」
とあるアニメの参謀長のこの台詞が頭に残って仕方ないです。
あの提督と参謀のコンビは面白いなぁ。
何のアニメかわかった方は是非とも握手しましょう。


特に日記に書くようなことは何もないのですけれども・・・。
印象深いことといえば、また殺される夢を見ました。正確には死んでませんが。
銃で頭を撃たれました。銃で死ぬのは二度目です。
場所は私が通っていた中学校で、相手は小中で同級生だった男子。
撃たれて倒れたあと頭からドロリとしたものが流れてきて、血の鉄っぽいような生臭い匂いがした。感触もすごくリアルで。
意識が朦朧としてきて、意識失ったら死ぬとわかっていたので必死に色々考えてました。
もしあそこで意識失っていたら目が覚めたのかもしれません。
でもその後何事もなかったかのように歩き回ってましたからね。頭に穴あいてるのに。普通死ぬって。今思い返せばちょっとしたホラーだ・・・。
それにしても私は一体何回夢の中で死ねばいいんだ・・・(今のところ計四回)


**拍手お返事**

>いるかさん
はわわわ・・・ご心配おかけしました・・・っ。どうやらネットに関してネガティブになっていたようです。でももう大丈夫でございます。浮上しました。ネットでなければ出会えなかったいるかさんや他の方達と出会えた事を感謝するとともに、これからもそういったものを大切にしていきたいと思います。
そうですね、無理をしてはいけませんよね。いるかさんにそう言って頂けて気持ちがとても楽になりました。有難う御座います。
サイト三年やってて一度も閉鎖しようと考えたことがないのでこれからも頑張れると思います。何よりも創作意欲はまだ溢れております故。今までどおりマイペースでやっていきたいと思いますので改めて宜しくお願いします〜(ペコリ)

>22日15時
ユエイザに最高とのお言葉を頂き狂喜乱舞です!有難う御座います!
そこはかとなく裏的な二人でございますが気に入って頂けたなら嬉しいです。
このコメントを頂いて初めて気付いたのですが、拙宅の坊主を略すとユエイザが一番しっくりきますね。発見です。他は何だか略しにくい・・・;
それでは拍手&メッセージ有難う御座いました。
拍手コメントはとても力になります。お言葉を糧に頑張ります!

>聖らいむさん
改めてキニスンに惚れて・・・!?うわわわ・・・思わずガッツポーズです・・・!
日記を拝見すると短編集をお探しのようですね。短編集のキニスンは可愛いですよ〜(何せ子供時代!)(あ、私もバンプの「K」好きですよ!)(こそりと)
お酒、リオンは弱いイメージですか・・・。いえ、そうなのですけれども(笑)坊と2主は強いか弱いかしか思い浮かびませんね。「普通」というのは珍しいような気が・・・。
テッドは4をプレイした後だと「強い」という印象が付け加えられてしまっているので、今1を再プレイしたら驚くかもしれません(笑)確かにテッドの弓術は気になりますね。基本は誰かに教えてもらって後は我流で腕を磨いたのではないかと思います。
それではこの辺で。絵板にもコメント有難う御座いましたー!
2005年08月20日(土)
鋼錬を観に行きました
今日はインテだったようで。
私も行きたかったですよ・・・!
坊主とかテドアルとか買いたかったですよ・・・!
でも大阪までの交通費(往復)+パンフだけで結構な痛手です。

一昨日(18日)に地元に帰省中の友達と映画を観に行きました。
ハガレンです。シャンバラです。
そうゆうのを一緒に観に行ける友達っていいですね!
<以下ネタバレにつき白文字>
内容は何と言うか、社会的な批判が込められているのだろうけれどもその前に考慮するべきものはあるのではないかと思いました。
この映画は完全に大人向けだと思います。
内容もですが、血が大量。あれは子供には見せられん。残酷な死が多過ぎる。
あとこれだけは言いたい。言わせて。
ハイデリヒの死を等価交換で済ますんじゃないエドワード・エルリック・・・!あの場面で等価交換って何のことだと思ったけれど意味に気付いた後もスッキリしない・・・。
でもアニメとしては面白かったですよ。テレビの未消化部分を上手く消化していたと思いますし。そして気球は笑えました(笑)

感想終わり。


最近日記書かなかったのには理由がありまして、自分の中でモヤモヤとした疑問がありました。人様の日記を読むのは好きだったのですが、ここ数日は人様の日記を読むのが怖かったのです。詳しい理由は書くべきではないでしょう。自分の日記を書こうという気も起きませんでした。実は今もちょっと怖いです。でも持ち直しましたので大丈夫です。これからも変わらずにいきたいと思います。

というわけで(何が?)思い出した時に続けるオリジナル連載小説。
当サイトの限界はキスまで。この文章に嫌な予感を覚えた方は読まない方が吉。
このオリジナルにはBLが含まれております(今更)


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【Arcadia 5】



「ただいまー」
 そう言っても返事のない部屋に甲斐は首を傾げた。彼の同居人はどんなに機嫌が悪いときも必ず挨拶だけは返してくれるのだ。
 今日、彼が何処かに出掛けるという話は聞いていない。現に靴は玄関にあった。
「司?」
 訝しく思いながらリビングに向かったが、そこに司の姿は見えなかった。
 甲斐は司の部屋のドアを開けた。しかしそこにも司はいなかった。
 甲斐の表情から気楽さが消える。腰のベルトに差した小銃に手を添えて、僅かな焦りを抱きながら、それでも慎重に一つずつ部屋を見ていく。二人暮しには広すぎる家をこの時初めて恨めしく思った。

 そして自分の部屋を開けた途端に甲斐は目を丸くした。ずっと小銃に添えていた手を下ろし、呆気にとられたように肩から力を抜く。甲斐のベッドに丸まって眠る司の姿がそこにはあって、安堵すると同時に馬鹿らしさが込み上げてきた。それが相手に対してか自分に対してかはわからなかったが。
「何で人のベッドで寝てるんだろうね、この子は」
 自然と緩む口元を押さえてベッドの縁に腰を下ろす。微かに軋んだベッドに身動ぎをした司は甲斐の方に顔を向ける格好となった。無防備さを曝け出している寝顔を眺めながら甲斐は邪魔だと言うように司の前髪を払う。中途半端に伸びた栗色の髪が司の額を流れた。
 幸せだ。少なくとも甲斐はこの日常をそう感じていた。共にいたいと願い、そしてそれが現実となっている。この日常がいつまでも続くという保障はどこにもないが、今この瞬間は間違いなく幸せだった。
 そう感じている自分が周囲に比べると幾らか特殊であることを甲斐は知っていた。そして誰よりも現状に満足しているのが自分であろうことも。
 一度全てを失った時に比べれば、こうして大切なものが傍にあるだけで充分だった。例え幾人を殺そうとも、彼にとってはこの日常を続けることに比べれば大した代償にもならない。自由だとは思わないが、不自由だとも感じない。不満などあろう筈がなかった。
「清音さん、あなたは傍にいるだけでは駄目でしたか?」
 冬夜の言うように甲斐には桂を殺した犯人の見当がついていた。証拠はない。しかし司令部の方も同じ考えを持っていることは彼らがこの役割を与えられた時点で確信していた。
 わからないのは彼女は何を求めてそれをしたのか。
「桂を殺して何を得る?自由か?」
 静流と清音は、冬夜や朔夜と同じく幼年期に親に売られて政府に引き取られたと聞いている。ある程度成長してから政府に拾われた甲斐だからこそ判ることだが、此処の人間は外の世界に憧れるような節があるのだ。
 そして甲斐の知る限り桂と冬夜はそれを既に諦めていた。
「・・・自由なんて、それだけでは空しいだけだ」
 果たしてそれは愛する者を殺してまで手にしたいものなのだろうか。
 その為に父と友を亡くした甲斐はその疑問に頷けない。政府に拾われなければ自分はあのまま孤独に耐え切れず狂い死んでいたかもしれないのだから。
 だから今はこの『日常』を何よりも大切にしたいのだ。

 そっと司の頬に触れる。いつもならそれだけで飛び起きるのに、今日は何故か反応が鈍い。甲斐が部屋に入った時点で目が覚めないのだからかなり熟睡しているとみていいだろう。
「襲うよ・・・?」
 クスリと小さく微笑んで甲斐は呟く。司に覆い被さるようにシーツに手を突くとキシリとベッドが鳴った。うん・・・、と司が小さく唸って、甲斐は笑みを深くする。
 さあ、どうしようか。このまま口付けようか。そうすれば司は確実に起きるだろう。もう少し寝顔を見ていたい気もするけれど、触れたいと思う欲望の方が大きい。
 最初は触れるだけのキスをして、少しずつ確かめるように深くする。ピクリと司の眉が動いたと思うと、突然彼は目を覚ました。
「っ・・・かっ・・・!」
 逃れようとしてもがく両手を無理矢理ベッドに縫い付ける。口内を侵し、充分に楽しんだ後に甲斐はやっと顔を離した。
 途端に下から浴びせられる非難の声。
「な・・・っにすんだこのバカアホマヌケ!」
「僕のベッドで寝てる君が悪い」
「ていうかさっさと手を離せー!」
「いやー、僕としてはこのまま続けたいんだけど・・・駄目?」
「駄目に決まってるだろーが!」
「でも君が此処で寝てる時点で誘ってるよね、絶対」
「・・・コロス」
 これ以上ないというほど思い切り睨まれ、甲斐はハイハイと軽く肩を竦めて司の両手を解放した。同時に司は甲斐を押しのけてベッドから飛び降りる。
「どうして此処で寝ていた?」
「俺はペンを借りに来ただけで・・・寝るつもりなんてなかった!」
「へー、ペンはベッドにあったっけ?」
 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべながら尋ねる甲斐に司は荒げそうになった声を押し止めた。甲斐相手に余計な言い訳をすると更に墓穴を掘るだけだろう。ここはさっさと話題を変えてしまった方がいい。
「それより、仕事の件だけど・・・」
「ああ、それ。なくなった。他の人に回すって」
「え・・・何で?」
 キョトンとした顔で首を傾げる司に甲斐は明確な答えを示さない。
「それから僕は暫く冬夜と組むことになったから」
「えぇ・・・!?」
「というわけで司は暫く休めるよ。良かったね」
 ポンと軽く肩を叩いて甲斐はにっこり笑う。訊きたいことは色々とあったが、最初に司の口を突いて出たのは突然仕事がキャンセルされた理由ではなかった。
「甲斐と冬夜って前にも組んでたんだよな・・・?」
「気になる?」
「そうじゃないけど・・・どんな感じなのか想像できそうでできない」
「そりゃもう優秀なコンビでございましたよ。結局長くは続かなかったけどね」
「へー・・・何でパートナー解消したの?」
「合わなかったんだろうさ。パートナーと言ってもお互いに一人でやってたようなものだったし、何かもう協力し合う感じじゃなかったね。はっきり言っていてもいなくても同じ」
「・・・そんな相手をよくも友人と呼べるものだ」
「今の距離が僕達には一番合っているのさ」
 表情も声の調子も変えずに言い放ち、甲斐はそこで言葉を切る。ふと今回の冬夜との仕事もあの頃のような感じになるのだろうかと思った。
 ふーん、と呟いて司は再びベッドに腰を下ろした。そして隣に座る甲斐にもう一つだけ質問する。
「仕事、何するの?」
 それに甲斐はいつもと変わらない笑顔を向けて。
「秘密」
 悪戯っぽく人差し指を口の前で立ててみせた。
2005年08月17日(水)
もうネットしかないのだろうか
車で30分くらいのちょい遠めのところへ買い物に行きました。
割と大きな本屋があるので覗いてみました。

なんでOZ攻略本がないんだ・・・!(悔涙)

幻水4ブレリュードが 三 冊 も あって何故OZがないのか。
いえ、三冊あったので驚いたんです・・・何故今更ブレリュードが三冊も・・・。
因みによく行く本屋には幻水大辞典が置いてあるのでうっかり伸びそうになる手を理性で抑えます。
幻水熱は常に燃え盛っておりますがOZは少し落ち着いたと思ったら一気にきますね。腐女子的な萌えはまだ胸の奥にしまっておくんだ私・・・!(しまいきれてません)(やはり私は腐女子だったことを改めて確認せざるをえないというか・・・)


**拍手お返事**

>聖らいむさん
こ、こちらこそ同盟参加してくださって有難う御座います・・・!
らいむさんのお名前を見つけた時はかなり嬉しかったですよー!
そういえば正義の味方というのもありましたね。ふと「我が家に正義の味方を名乗れる坊なんていないな・・・」と遠い場所に思いを馳せてしまいました・・・。
お酒の強さは何故か「坊はザル」というのが多いような認識があります。拙宅で決まっているのはティル(強)とリオン(弱)と桜焔(キツイのは無理)ですかね。ユエとイザヤも何となく強そうな気がします。ユエが弱いのもとても楽しそうですが(笑)
1テッドの弱さについては、考えていてふと実力を隠していた説が浮上してしまいました。ソウルイーターを隠していたように、ただの子供に見せかける為に坊に合わせて手を抜いていたのですよきっと!そう考えないとレベル上げに費やした時間が報われません・・・(笑)
それではいつものことながら長々と失礼しました。

>15日15時
カイフィはむしろ王道ですか・・・!私もそうだと信じたいですっ!
最初は親子であるという葛藤を(一寸だけ)抱えましたが、カインにとって親子であることの壁などないに等しいことに気付いてからは一気に落ちてしまいました(笑)
しかしカイフィサイト様は少ないように見受けられます・・・(涙)
いえ、だからこそ当サイトでもできる限り健全を掲げつつ且つさりげなくカイフィを布教していきたい所存でございます(それ健全じゃない)
それで拍手&メッセージ有難う御座いました!

>17日18時
アルテドアルを見尽くして頂けたのですか!?はわわわ・・・有難う御座います、すみません・・・!(凄く謝りたい気分です)(あんなアルテドアルで申し訳ないです)
き、境地・・・!?いえ、ただこっそりとそして時には大胆に(?)テッドとアルドを愛でているだけでございますよ・・・っ。境地はきっと余所様に!
「枯渇」は続ける気満々でございます。しかしながらいつ続けるのかと訊かれればすみませんとしか言い様がなく。いつか必ずや・・・!
楽しみにして下さるとのお言葉を胸に頑張ります!有難う御座いました!
2005年08月16日(火)
タイトル思い付かない時は無題でいいやー
皆様本日の地震は大丈夫でしたでしょうか?
広範囲で揺れたそうですね。私のところは全く揺れませんでしたが県内で揺れたところはあるそうな。この辺りは東海地震と東南海地震が発生した時が怖いです。
去年あたりから災害(天災・人災問わず)が多くないですか日本・・・。


最近食欲があまりないせいか何かものを食べるとえずいてしまいます。
実際には吐きませんが。咳で押し止めます。
しかし食欲はなくとも腹は減る。
というわけで夜食食べちゃった・・・(結論:今も微妙に気持ち悪い)


結局今年のお盆はお墓参り行けなかった。ご先祖様ごめんなさい。


拍手お返事は明日に必ず・・・!拍手叩いて下さって有難う御座いました!
2005年08月14日(日)
同盟
キニスン同盟作りましたー(早速登録して下さって有難う御座います・・・!)
実はアップするのにそれなりの勇気を要しました・・・。
髪下ろし隊といい、マイナーなところで主催してしまうのは何故だろう。
どなたか地進星同盟を作ってはくれませんかー・・・(他力本願)(その前に私以外に必要としていないと思われ)
2005年08月13日(土)
流星
 空は明るかった。
 太陽も月もないというのに、それは眩しいほどに輝いていた。

「星が流れたら君に会いに行こう」

 軽々しく囁かれた、他愛もない約束。
 紡がれることのなかった、未来への契り。
 運を天に任せよう、その言葉のままに。

「僕の星が流れたら、必ず君に会いに行こう」

 だからさよならは言わない。
 停滞した世界が再び混沌を生み出して、涙が再び天地を別つ時。

「僕達は、今度は違う道を歩めるだろうか・・・?」

 それでもまた僕は君に会いに行く。

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リハビリー。短いので精一杯・・・。


「24」シーズン4もうすぐレンタル開始のCMを見て「一度見始めたら抜け出せないあのある意味恐怖の24時間がもうすぐ始まってしまう・・・!」と一瞬色んな葛藤が頭の中で駆け巡ってしまった砂原です、こんばんは。
カロリーメイトのCMでも反応する私は重症ですね。
電車内で女子高生の集団にもまれるジャック・バウアーは面白いです。
でも今回はメイソンもシャペルもいないのが寂しい・・・(親父上司が好きでした・・・)
2005年08月12日(金)
こんなの作ってます


本気です。メモ帳とにらめっこしてタグ打ちまくっております。
これは髪下ろし隊の主張ページを作っている時と似ています。
つまりは情熱と勢いと気力でガツガツと。
今更キニスン?とか言っちゃ駄目です。愛に時間なんて関係ないのさ。
でも本音は「ないんだから自分で作るしかないじゃないか!」だったり。
キニスンFC様が消えて何ヶ月かわからないほど時間が経ってますが、あれはなくなったとみるべきでしょう。そうすると本当にないんですよ・・・。


最近どうにもこうにも小説が書けません。
キリリク遅れてて申し訳ありません;
ネタは!ネタはばっちりしっかりあるんですよ・・・っ!
なのにそれを文章として纏めようとすると手が動かなくなってしまいます・・・。
2005年08月10日(水)
「ビートのディシプリン SIDE4」
最終巻が発売されたのでいそいそと本屋へ。
ついでにゲーム攻略本コーナーも覗いたのですがやはりOZはなかった・・・。
ピート・ビートって本当にとばっちりだったんですね・・・彼の不運っぷりには涙でそうです。
今回も名前出ないだろうなぁと思っていたマイラブキャラ・ユージンですが、舞阪さんがやってくれましたー!あなたやっぱりユージン大好きだろう!?
あそこで思い出すなんて反則だよー!(ごめんなさい、フォルユ好きなんです)
しかし好きキャラが生死不明の行方不明っていうのは凄くじれったいですね。
もし!もし生きているのならそろそろちゃんと登場させて下さいお願いします。新刊が出る度にいないだろうと思いつつも彼を探してしまう自分がいる・・・。
死んだなら死んだとはっきり言ってくれればいっそ楽なのに、中途半端に名前だけが出るものだから蛇の生殺し状態ですよ。でも名前出してくれるだけでも嬉しいです。フォルテッシモがいる限り名前は今後いくらでも出てくれそうです。
<以下ネタバレなので白文字>
フォルテッシモといえば彼の能力名がやっと判明。「ザ・スライダー」というらしいです。そうか、滑るのか。彼の解放された能力っていうのは凄いですね。フォルテッシモってあの世界でかなりの重要人物だったりします・・・?(やっと気付いた)
ディシプリンは終わりましたが何やら新しい話が始まる模様。今度の主役は凪でしょうか。楽しみです。しかし登場人物の把握が既にできていないのですがどうしましょう。羽原って誰だ。
ところでビートが元人間ってことは、ユージンも元人間・・・?(ドキドキ)



**拍手お返事**

>聖らいむさん
こんばんは。記念絵お持ち帰りして頂けましたか!有難う御座います!
ええ、もうどんどん誘拐してやって下さいませー(笑)
2主は時々ナンバになりますよね。ゲーム中は無口なので面白さを求めてそっちを選択してみたり(笑)私的には坊ちゃんの「大女」も強烈でした。
・・・柳は酒に強いのか弱いのか、どうなのでしょうか?(訊くな)決めてませんでした。酔っていても顔色が変わらず、傍から見たら全くわからないかもしれません。
そう、テッドも150年前はあんなに強かったのに・・・!訓練所であんだけ鍛えて上げたレベルをどこに捨ててきたんだと小一時間ほど問い詰めたくなりました。
そしてラクガキ場のルクキニ(だったらしい)にも感想有難う御座います!キニスンがあんなんで大丈夫ですか・・・?ルックは前衛ですよね。鍛えればそれなりに戦ってくれますよね。はうあ!同盟参加して下さいますか・・・っ!わー、嬉しいです!頑張って作ります!
2005年08月08日(月)
おお!?
いつものように今週のWJを読んでいたらラプソディア情報の中に子供時代の4主とスノウとキリルがー!噂には聞いてたけどWJで見れるとは思わんかった。
4主の武器が棒切れなんて哀しすぎるよ・・・!可哀相すぎるよ・・・!
ああ、だから幻水4は松明でもちゃんと闘えたんだね(笑)
子供スノウはやっぱりスノウでした。イラストからして既に偉そうです。
でも今後彼の辿る道を考えるとそれさえも微笑ましく見えてしまう・・・。
4主やスノウも充分可愛いですが、個人的には子供キリルが大変可愛いと思います。
子供ながらに高潔そうで、一言でいうと美少年(私基準)
購入する気はありながらいまいち煮え切らなかったラプソディアですが、餌に釣られて予約しそうです。


えっと、七万打御礼絵をアップしました。
前回の坊よりは御礼らしくなっていると思います(汗笑)
いつくか「しまった」というところがあるのですが細かすぎるので言わないでおこう。

最近絵ばかり描いているせいか、私の絵ってどうなんだろうと考えることが増えました。
本当にお上手な方の描かれる絵は魅力があって、惹き付けられるものがある。
それを凄いと思う半面で凹む部分も無きにしも非ず。
私の絵には何か魅力と言えるものがあるのだろうか。自分ではわからないのです。
楽しいから絵を描いているわけでそれで充分だとも思うのですが、サイトで作品を公開している以上周りからどう見られているかはやはり気になるものです。


**拍手お返事**

>7日23時
OZバッドEDはイイ味出してますか!楽しみです!
バッドなので悲しい結末になることを覚悟しつつちまちまと頑張ります。
なるほど、全滅という手もありますね。ボス戦ならステージ始めからやり直す必要はないですし、便利かもしれません。因みに今日1話と2話をプレイしたのですが、ひたすらアルミラやレオンから逃げ回って時間を潰しておりました・・・。
2005年08月07日(日)
萌えバトン
昨日は珍しく日付が変わる前に就寝。
そして今日は昼の12時くらいに起床。
・・・・・・一日の半分を睡眠で潰すなんてことはよくあることだ(え?)


明月さんから萌えバトンを頂きました。有難う御座います。
萌え・・・私の萌えとは一体何なのだろうか・・・。


1:萌え属性を正直に告白せよ

男女共に黒髪長髪東洋系美人に弱いです。
性格悪。腹黒。天邪鬼の意地っ張り。素直で優しい人。天然。
そして弓兵属性。

2:萌え衣装を答えよ

中華系(否チャイナドレス)
ロングコート。白のワイシャツ。マフラー。
やたらひらひらした布を使ったもの。マント(全身を覆うタイプ)
きちっとしたものよりゆったりとした服、更に言うと手足が少し隠れるようなものがいい。

3:萌え小道具を答えよ

ピアス。他装飾品。剣(長短問わず)。包帯。頬についた返り血(小道具?)

4:萌え仕草を答えよ

髪を掻き揚げる。じっと見つめる。微笑む。苦笑する。見下す。空を仰ぐ。背中合わせ。
傷を舐める。自嘲気味に口の端を吊り上げる。倒れる(仕草じゃないって)
照れ隠しに怒るまたは顔を背ける。

5:萌え場所を答えよ

水辺。風の吹く場所。森の中。遺跡。狭い路地。放課後の学校。何もない部屋。

6:バトンを渡す5名

個人的にお聞きしたい方もいるのですが5人となると難しい。
というわけで今回も此処で止めさせていただきます。
ここにバトンをそっと置いておきますので答えてみたいという方はどうぞ遠慮なく。



**拍手お返事**

>7日14時
OZバッドEDのアドバイス有難う御座います!
エテリア数と時間でDをとればいいんですね。わかりました、頑張ってみます。あえてランクCをとるというのは微妙に大変そうです。さて、どうやって時間潰そうかな(笑)
しかし最後にバッドを見る羽目になるとは思いませんでした・・・。
それではメッセージ有難う御座いました。
2005年08月06日(土)
途中経過


只今七万打御礼絵を鋭意制作中。2主です。
因みにBGMはひたすらOZです(意外と合うんだ、これが)
これは原寸大なのですが、己の線の汚さが明らかになりますな。
目を塗るのが一番楽しいのですが、いつも面積が小さくなるので今回でかい目を塗れて嬉しかったりする。でもやっぱり全体から見ればあっという間に終わるんですけれども。
頑張れば2、3日中にアップできる予定。
やっとバナーが更新できるぞー!(変えたくて仕方なかったんです)


昨夜はほたるの墓を横目に坊主同盟様のなり茶会にお邪魔しました。
結局テレビの方は見てるんだか見てないんだかで覚えてません(笑)
長い間「坊主でなり茶やってみたいなー」と思っていたので楽しみにしていました。
楽しかったです。有難う御座いました。
うわー、砂原ファミリーって言われたよー(とても嬉しいらしい)
そして拙宅以外の2主さんとお話をして、桜焔は矛盾だらけだなと思いました。


ところで日記を書いている現在は午後3時半なのですが、書ける時に書いておこうというわけでこんな時間に書いてます。今夜は書けるかどうかわからないので。
テドアル絵茶・・・昨日の今日なのでおあずけになるかもしれない・・・(体力皆無)


あ、バトン有難う御座います!あれって私ですよ、ね・・・?
明日辺りに答えさせて頂こうと思います。
2005年08月03日(水)
「皆、勝手に騙されてた」
「くそ・・・ルックの傍にいるのにアツイ・・・」
 果たして彼がそこにいたのはいつからだったか、随分と長い時間隣に座り込んでいたユエが不意に零した言葉にルックは不機嫌そうに眉を寄せた。
「勝手にやって来て勝手に居座って勝手なこと言わないでくれる?そんなに涼みたければそこらへんの岩壁にでも引っ付いてればいいんだよ」
「いっつも涼しい顔してるからルックの隣は涼しいかと思ったんだけどなー」
「それは君の勝手な思い込みでしょ」
 その勝手な思い込みで勝手に失望されても不愉快だとルックは更に眉間に皺を寄せる。ユエは力なく石板に背を凭れ、どこかぼんやりと小さな部屋の壁を見つめていた。だらりと落ちた腕はピクリとも動かない。
「・・・アツイ」
 ルックの不機嫌さを気にも留めずユエは独り言のように何度も呟いた。アツイアツイとすぐ傍で何度も連呼されてはルックも流石に苛立ってくる。だから次の言葉にわざと多少の棘を含ませた。
「大体さ、君が何で此処でのんびりしてるわけ?軍主様はご多忙なんじゃありませんでしたっけ?」
「アツイんだよ。こんなんでやってられるか。そこの風使い、ちょいと風送ってくんねぇ?」
「何でそんなことに僕の魔力を消費しなくちゃいけないのさ」
「やっぱ駄目か・・・ちょっとはマシになると思ったんだけど・・・な・・・」
「・・・ユエ?」
 ふとユエの声に違和感を感じてルックはユエに視線を向けた。見下ろすと、鮮やかな藍色の瞳は少し長い前髪に隠れて見えなくなっている。僅かに俯いた顔は、注意深く見れば微かな朱色を差していた。
 最初はただ暑さにバテているだけかと思った。だけど良く考えてみれば、冷たい石壁に囲まれた部屋は外よりは多少は涼しくて、バテるほどの暑さではない筈で。
 不意にユエの手がルックの手を掴んだ。手袋をしていない素肌は、ルックには少し熱かった。
 一瞬ルックの思考が止まった。これは、もしかして。
「何でお前の手ってそんな冷たいんだ?子供の体温は熱いっていうのは嘘か?」
「僕の手が冷たいんじゃなくて君の手が熱いんだよ阿呆!」
 掴まれた手はそのままに、膝を折って反対側の手でユエの額に軽く触れる。そしてその熱さに絶句した。
「あー・・・気持ちいい・・・」
「・・・君・・・っ・・・熱あるじゃないか!」
「・・・・・・うそぉ」
 数秒の沈黙の後の、あまりにも間抜けな声。ピキリ、とルックの顔が引き攣った。
「あーもう!馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけどここまで馬鹿だとは思わなかった!体調管理ができないどころか自分の体のことさえわからないのかい!お付きがいないと何もできないのか君は!?」
「お前さぁ、仮にも病人に対しての労りとか心配とかないわけ?」
「君に関しては一切ないね。とにかく誰か呼んで来るから此処に・・・」
「いらねぇ」
 そう言って腰を浮かしかけたルックだったが、掴まれたままの手を強く引かれて止められる。何なんだよと訝しげに眉を顰めたルックに、ユエは握る手に力を入れたままあくまでも強気に、それでも少しだるそうに口の端を吊り上げて笑ってみせた。
「ほっときゃ治るから、このままでいい」
「放っておいて治るわけないだろ」
「いいんだよ、俺は」
 何がいいのかルックには理解できなかったが、手を掴む力の強さにそれ以上の反論ができなかった。悪化したら自業自得だと心の中で納得して、浮かした腰をその場に下ろす。するとユエが小さな声で「サンキュ」と言ったのが聞こえた。
「・・・僕に伝染(うつ)さないでよ」
「保証はできないな」
 不本意そうに告げたルックにもう一度だけ笑って、ユエは小さく息を吐き出す。熱を自覚したら余計にあつくなったような気がした。
「情けねぇな、俺。こんなんじゃ守れるもんも守れなくて当然だ・・・」
 今になってやっと思い知ったよ。
 何気なく零された言葉はユエにしてみれば珍しい弱音だったのだろう。ルックはただ繋いだ手の熱さを感じながら、らしくないな、などと考えた。ユエも、自分も、らしくない。
 強い奴だと思っていた。傷付かない人間なんだと思っていた。今まで決して涙を見せなかったから。それまでと変わらず、ずっと強気な態度を崩さなかったから。
 そうだと勝手に思い込んでいた愚かさは、一体どこからきたのだろう。弱さのない人間なんていないのに。彼が自分を責めない筈がないのに。

 それはソニエール監獄でグレミオを失って数日後のことだった。


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ユエとルック。解放戦争時代。
弱っているユエを書くのは楽しかったです。
いくらユエでも家族同然の人が死ねば弱りますよという話。
テオやテッドの時はどうなるんだろうと思いました。
2005年08月02日(火)
シルクロード
昨日23時からNHKで放送していたシルクロードの番組が面白かったので今日も見ようと思っております。
遺跡とか、とてつもなく長い時間を経てそれでも現代に残っているものが大好きです。
想像も出来ないような遥かな昔に誰かがそこで生活していて、意味のあるものを遺し、現代人がその意味を考える。その推測が当たっているかどうかは別として、それによって知り得ることのなかった過去が明らかになり、今は何も無い廃墟にかつて生活していた人の姿が明確に浮かび上がる。その人たちはきっと私たちと同じように笑い、泣き、様々なことを思い、考え、生きていたのでしょう。そう、彼らは確かにそこに生きていたのです。それを考えるととてもドキドキします。
昨日放送していた楼蘭の小河墓遺跡も数千年前にはかつて河が流れ、緑が広がり、そこに住む人は小麦を育て牧畜を行い、そこがとても豊かな環境だったことを教えてくれます。しかし現在の同じ場所には広大な砂漠が広がっています。本当にそこに緑があったと言われても想像できないような砂漠です。そうゆうものに膨大な時の流れを感じ、その間に失われたものや変わっていったものを考えると何とも言えない気持ちになります。

あー、言葉が纏まらない。わけわからん文章で申し訳ないです。
でも私が歴史好きでも近代史に興味が薄い理由が自分で納得できました。古代〜中世が好きです。時代がかったものや古い歴史を感じさせるものが好きです。特に中国辺りは最高だと思いますが、ヨーロッパも興味深いです。

ってこんなこと書いていたら番組が始まってしまった・・・!



**拍手お返事**

>聖らいむさん
らいむさん、こんばんは!いらっしゃいませ。試験に労いのお言葉有難う御座います。
うわわわ・・・サイトデザインをお褒め頂けて感激です・・・っ。基本的に無彩色に頼る傾向があるので見る分にはとてもつまらないかと思います;
シュウは、ルカ戦もアレですが私的には和平交渉も印象に残っています。子供を盾にするとは・・・。2主や坊ちゃんも選択肢によっては黒くなりますね(笑)
柳は台本でもないと進んで喋ってくれませんね(笑) 劇だとしてもゲドやジャック並みに喋らないと思います。シリアスだと喋ってくれるんですけどシリアスな対談ってのもどうなのかと思いました(笑)
そして1再プレイ中ですか!私も偶には1や2をやり直してみようかな・・・。最強と囁かれる坊ちゃんもレベルの低さはどうにもなりませんね(笑)金運の封印球ほしさにテッドとサラディを目指し、マイマイに一撃死させられまくった思い出が蘇ってきました・・・。
2005年08月01日(月)
小話のみ
思い出した時に続けるオリジナル連載小説。
最大の疑問は読んでいる方がいるのかどうか。でも所詮は自己満足の代物です。
当面の目標は終わらせること=途中で放り出さないこと。



【Arcadia 4】



「でもさ、僕は別の仕事が入ってるんだけど、そっちはどうするの?」
 一通りの話を終えた後、甲斐が思い出したように尋ねた。静流もまた言い忘れていたことにたった今気付いたかのように、ああ、と声を上げる。
「それは他に回すから司にも言っておいて」
「・・・極秘ってことは司に仕事内容は言っちゃいけない?」
 だとしたら少し面倒なんだけど、と小さく首を傾げた甲斐に静流は軽く息を吐く。
「その辺はあなたの判断に任せるわ。司が必要だと思うなら言いなさい」
「・・・・・・わかった」
 一瞬だけ沈黙して甲斐は頷いた。注意しなければそれとは判らないような間だったが、冬夜には察せられただろうなと内心思う。しかし冬夜はそれに関して特に何を言うでもなく、眺めていたファイルを閉じて席を立った。資料の内容は大方覚えたのでファイルは机の上に置いていく。
「終わったなら行くよ」
「はいはい。さて、どこからあたりますかね」
「それならまず屋上に行くことをお勧めするわ」
 冬夜に続いて立ち上がった甲斐が何となしに零すと、静流が二人を呼び止めた。そしてどうしてかと言葉に出さずに問う二人ににこりと微笑みを返す。
「現場は見ておいた方がいいわよ。と言っても、もう何も残っていないでしょうけど」



「現場は0区5−32か・・・確かに厄介かも」
 吹き付ける風に髪を弄ばれながら甲斐は溜息混じりに呟いた。先程まで静流と話していた部屋の真上、聳え立つビルの屋上は太陽を近く感じて日差しが強かった。周囲には同じくらいか、あるいはもっと高いビルが至るところに乱立している。
 『0区』とはこの国の政治経済の中心部でもあった。
「本部の真上で殺されるってありえなくない?」
 そう言った甲斐に冬夜は振り向かずに沈黙する。桂の遺体が発見されたという屋上は既に何もなくなっていて、本当にそこで殺人が起きたのかさえ疑わしくなるほど綺麗に片付いていた。
「毎度の事ながら見事に消してくれるよ、全く。この様子だと家の方も全部無くなってそうだね」
 これでは現場に来た意味がないではないかと愚痴を零しながら甲斐はその場に座り込んだ。どこから吹いているのかこの乱立するビル群の中ではわからないが、それでも真っ直ぐな風が気持ちいい。冬夜も同じなのか、目を細めて風の吹く方に顔を向けていた。
 どれほどの時間が経っただろうか、暫くの沈黙が続いた後に冬夜がポツリと言葉を漏らした。
「・・・・・・見当、付いてるんじゃないの?」
 何をとは言わず、それでも甲斐にはそれが判っていた。だから甲斐もそれを言わなかった。
「証拠はないよ」
「写真、見ただろ?」
 冬夜は甲斐を見ない。しかし声が僅かに大きくなったのを甲斐は聞き逃さなかった。
「桂にあんな顔をさせることができる人間なんて、この世に一人しかいないじゃないか」
 薄く目を開けたまま天を仰いで、桂は微かに笑っていた。それは他の人から見れば気のせいで片付けられそうな些細な表情。だけど桂のそれは、あまりにも穏やかで。
「彼女しか、いないじゃないか」
「・・・まだ決まったわけじゃないよ」
 言って甲斐は立ち上がり服の汚れを払う。そして何を思ったのか、冬夜の隣に立つと程よく力を抜いてその頭を叩いた。
「何する・・・っ」
「何そんなに苛々してんの。らしくない」
 文句を言おうとした冬夜の言葉を、甲斐の言葉が遮った。睨み上げる紺碧の瞳を暗い金色の瞳で一度見返すと、ふと冬夜から顔を逸らす。黒髪が何度も風に揺れては舞った。
「さっき、思い出してたんだけどさ・・・僕が前のところを抜けて、さぁこれからどうしよう、って時に迎えに来たのが桂だったんだよね。今にして思えば、僕にとっての死神であり案内人だったわけだよ、彼は」
 突然そんなことを話し出した甲斐に冬夜は思わず眉を顰めた。その冬夜には構わず、甲斐はいつもの真面目なのかそうでないのか判断がつかないような調子で続ける。
「つまり、彼は僕の人生において結構重要な位置にいたりするわけ。迎えに来たのが桂じゃなかったついて行こうなんて思わなかったかもしれないし」
 第一印象は『派手な男』。少しの会話の後では『嫌いじゃないタイプ』。
 未来を決めかねていた甲斐にとって、この男について行くのも悪くないと思えた相手だった。
「だから桂が死んだのは正直キツイし、驚いた。でも死に顔が穏やかだったから、ちょっと救われた気もするんだ。僕達みたいなのでも笑って死ねるんだな、なんて」
 そんなことを思う僕はおかしいだろうか。
 最後は苦笑混じりに呟いた甲斐に、冬夜は何も言えなかった。

 甲斐はスッキリしたように小さく息を吐き出すと、何事も無かったかのように口を開いた。
「さてと、今日はこの辺にしといて帰ろうかな。詳しいことは明日にでも話せばいいさ・・・・・・そういえば冬夜と組むのは久し振りで懐かしいよ。何年振りだっけ」
「・・・司はどうするつもり?」
 これ以上は此処にいても無意味だと屋上の出入口に歩き出した甲斐に冬夜はそう尋ねた。甲斐は足を止めて冬夜を振り返る。
「冬夜はどうしてほしい?」
「甲斐の好きにすれば?」
 そうか、と甲斐は考えるように小さく頷いて、当然のようにそれを口にした。
「司には言わない」
 にこりと笑って告げた甲斐は、再び冬夜に背を向けて歩き出す。
「一応、極秘扱だしね。相棒だからって何でも喋っていいわけじゃない」
「でも、好きなんだろ?」
「好きと信頼は別物だよ」
 あっさりと言い放って甲斐は屋上から姿を消した。バタンと重そうな扉が閉まる音を背後に聞くと、そのまま扉に背を預ける。そして口の端を吊り上げてコンクリートの天井を見上げた。
「司を必要だと思うなら、か・・・キツイことを言ってくれるね、静流さんも」
 それが自嘲なのかは甲斐自身にもわからない。
 ただ、静流にそう言われた瞬間、反射的に答えは出ていた。
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