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2003年05月24日(土) 湖国で燃えろ!!春季近畿地区高校野球大会(1)

春の高校野球を観に行こうと思う。春の高校野球、といっても甲子園で行われる選抜大会ではなく、6府県の上位校が頂点を目指す近畿大会である。この春季大会というのは勝ち進んでも全国大会が待っている訳でもなく、有力校は夏に向けた戦力の底上げを図る為に控え選手を中心としたチーム編成で試合に臨んだりするのであまり盛り上がりはしない。そんな大会ではあるのだが、半年前に秋の大会を初めて観たから今度は春の大会も観てみよう、というしょーもない動機と、個人的に好きなチームの試合がこの日に集中している、という理由で大会第1日を観戦すべく、目覚ましを8時にセットしておく。で、就寝。ほんで、起床。おー、いい天気だ。空が青いねぇ。ふと壁に掛かった時計に視線を転じると、短針は方位磁針でいえば北西、同じく長針は真南を指している。第1試合のプレイボールは午前11時。あと30分切ってるやんけー。

速攻で身支度を済ませ、11時台最初のバスに乗り込む。道は混んでいた。11時45分、山科駅前。ホームに上がって程なく新快速電車が滑り込んできたが、運悪く湖西線に乗り入れる列車だった。次の電車は12時03分発。案内によると、駅から試合会場までは徒歩20分。まあ、試合終盤のおいしいところは観られそうだなー、と思いつつ、柱に貼られた所用時分表を見て驚愕。彦根まで新快速で最速40分!!彦根って、守山のちょっと先ぐらいのイメージだったんだが、米原の一駅手前だったのね……。

重い足取りで電車に乗り込む。補助椅子しか空席がないという中途半端な混雑ぶりが追い打ちを掛ける。おまけに発車したら速攻でトンネルに入って景色は見えんは耳ツンは鬱陶しいわで踏んだり蹴ったり。が、大津で車両の端っこの4人掛けボックス席がごそっと空いたのでそこを占有してちょっといい気分。やっぱり車窓というものは誰もいないボックスシートを占領して、進行方向左側座席から眺めるのがいちばん贅沢だと思う。

よくよく考えると、東海道在来線を東へ向けて上っていくのはどえらく久しぶりである。つい5日前にも浜大津に行ったばかりだし、滋賀にはちょくちょく足を伸ばしているのだが、汽車に揺られて湖国を縦貫するのは、名古屋で連れを待ち合わせて下呂まで日帰りした99年のGW以来の筈。その丸4年ぶりの景色を特等席からたっぷり味わう。もっとも、車中から見えるのは殆ど水田と宅地ばかりではあるが...。

途中、石山から向かいの座席に座ったいかにも遊びまくってそうな風貌の女子高生が、下車する守山に近づくと髪を整え、ネクタイを締め、指輪やピアスを外し……、と席を立つときにはすっかり優等生ルックになっていたのに驚きつつ、12時43分、いよいよやって来ましたキャッスルシティ彦根。なかなかいい感じの駅前から、前日頭の中に入れた地図イメージを頼りに道を進んでいくと程なく照明灯のやぐらが見えてくる。後は道路の反対側に出ればいいだけなのだが、いちいち地下道を上り下りするのが面倒くさかったのと、お堀に沿ったこちら側を歩いた方が気持ちよさそうだったのでそのまま歩を進める。ほたら全然信号がありまへんがな...。歩道が車道よりも高いところに設けられているから自主的に平面横断も出来ない。結果、泣く泣く野球場を通り過ぎて数百メートル先の陸橋まで歩かされる羽目に。おまけに陸橋は進行方向とは逆さまのコの字型だった。うーん、もすこし余所者向けに案内表示を付けといてよ滋賀県さん。で、クタクタになりながら辿り着いた彦根総合運動場には、まだたっぷりと訪問者の足を収容可能な無料駐車場が実に広大に拡がっていた。電車賃だけで片道950円、夏の様な陽気の中を汗だくでここまで歩いてきた拙者の立場は...。

さて、私がさっきからどうしてこんなに余談に何行も費やして一向に観戦記に入らないのか、不思議に思っている人もひょっとしたらいるかも知れない。答えは簡単。こうしてゼェゼェ言いながらやっとこさ現地に着いた頃には終わりかけていたんですよ、ゲームが。入場券と大会パンフ(←秋にも同じ様な事書いたけど、高校生のクラブ活動の大会で計900円も徴収するか、高野連)を購入し、スタンドへの階段を上がっていたらワーワー聞こえてくる(その後、どんな珍プレーがあったのか判らんが、場内は何故か笑いに包まれていた)。急いで階段を駆け、スタンドに出てみるとスコアボードに「6」の文字が。シートに腰を据える間もなくバッターが凡退してチェンジ。大会第1日第1試合。天理高校対近江兄弟社高校。それまでずっとリードを許していた天理が8回裏に一挙6得点して試合をひっくり返したのだが、私はその大逆転劇が起きたまさにその直後にスタンドにやって来たのであった。ちくしょ〜!!

9回表、兄弟社の攻撃。相手の雑な内野守備エラーで出塁するも、後続が抑え込まれてゲームセット。実際に観戦した部分を記すとこれだけで収まってしまう...。う゛ぁ〜、天理の猛攻も観たかったし、近江戦で12奪三振したという兄弟社のエース松居くんの投球も観てみたかったよぅ。加えて、この雑記欄で「メンターム打線が天理投手陣に襲いかかる」とか「その後なかなか相手投手を打ち崩せないメンソレ戦士達」等と書く事を密かな楽しみにしてたのに...。

で、秋に続いてこの春の大会でも天理は鳴り物応援がありませんでした。あるのはお揃いの紫タオルを首に巻き付けたおばちゃん達の歓声ばかり。逆に近江兄弟社の吹奏楽部の皆さんが出塁時に天理風のファンファーレを吹き鳴らしておりました。嗚呼、そろそろ天理のブラスが聴きたいよう。試合終了後、♪てんり〜せ〜ねん〜 す〜すめわ〜れら〜、という懐かしい校歌(校歌兼天理教青年歌?だっけ)を耳にすると、ますます天理のマーチングバンドが恋しくなってくる。是非ともこの戦力、この勢いを夏の予選決勝まで保ち続けて久しぶりの甲子園での勇姿を、そして久しぶりの天理マーチを切に切に希望致します。


2003年05月23日(金) 湖国で燃えろ!!春季近畿地区高校野球大会(2)

インターバルの間に初めて訪れたこの県立彦根球場をウロウロと探訪する。テレビで観ている分には西京極を遙かに上回ってそうな構造物というイメージがあったのだが、実際のそれは思っていたよりしょぼかった。しょぼい、といってもNPBの試合なんかを誘致するには何も不足しないスペックを十分に持ち合わせている野球場ではあるのだが。まあ私個人が勝手に物凄く立派な球場と思い込んでいた分だけの落差がしょぼさを感じさせただけの話である。逆に言えば、西京極を過小評価し過ぎていた、という事になろうか。あちこち回っていたら尿意を催してきたのでトイレに行き、誰もいなかったのでついでに駅から早足で歩きまくっている間にすっかり汗まみれとなった顔を洗う。便所の水ながら、心なしか無臭で気持ちいい感じの水ですっきりする。それが琵琶湖のお膝元だから、ちょっと遠出してきたから、という先入観によるものに違いはないが、浄化された滋賀県民の下水が幾分か含まれていて、夏は墨汁の様な臭いのする我が京都府の水道水よりは確実に上質の水なんだろう。

さっぱりとした気分でスタンドに戻る。やはり春季大会というのは相当に人気がないようで、移動するにも困る程の観客はおらず、席が探しやすい。結果、バックネット裏中央出入口の真上という上等なシートをゲットする事が出来た。よっこいしょ、と尻を降ろし、周囲を見渡す。バックスクリーンの向こうには先程歩いてきた道路が走り、高さの揃わない駅前商業地のビル群がごちゃごちゃと建ち並んで少々うるさい。折角、国宝の彦根城が南西隣にあるのだから、どうしてセンター方向に天守閣が見える様な造りにしなかったのか不思議に思う。それだけで集客効果があるかどうかは判らないが、プロ野球や各種大会を誘致する際に球場の付加価値としてアピール出来る様な気がするんだが。

さて、間もなく試合である。第2試合は平安高校対比叡山高校、真宗本願寺派と天台宗の代理戦争である(んな事言ったら第1試合も宗教対決だし、京都の有名私学対決なんてみんな宗教対決だが)。ま、鎌倉大乗佛教系と密教系が、某巨大新興宗教とその敵対宗派みたいな険悪な関係にある、なんて聞いた事もないけども。ほぼ同時に一塁側と三塁側で坊主頭の少年達が合掌礼拝してグラウンドに駆け出していくのは清々しくもあり滑稽でもある。関西は坊さん系の強豪校が多いので見慣れた光景ではあるが、他地域の人からすりゃあ、ひょっとしたら奇妙に見えるかもしれない。

両校のシートノックが行われる。それにしても、平安の原田監督のノックは見ていて惚れ惚れする。堅守平安を象徴する試合前の一シーンだろう。そのノックの間、スタンドにはいつもの様に校歌が流れていたのだが、何故か平安の時にはそれが鳴り終わって暫く経ってから再び♪む〜ら〜さ〜きにおう〜 く〜もの〜か〜なた〜、とスピーカーから流れ出してきた。何故に一番が2回も(高校野球用に一番だけが入ったテープなんだろうけど)、どうしてそれを最後まで(機器操作の誤りで連続再生してしまったが、途中で止めると格好悪いので全部流した、とか?)という疑問を我々観客に抱かせつつノックが終了し、両校のボールボーイが仲良く放水ホースを持って水を撒く。グラウンドを綺麗に慣らしてくれた整備員の皆さんが撤収し、両チームの選手がダッシュの構えをしながら一列に並ぶ。それまで騒がしかった場内も急に静かになる。生観戦でいちばんワクワクする瞬間。が、一向に審判員の皆さんが出てこない。往々にしてよくある事だが、ワクワクした状態で静寂がずっと続くと何故かイライラしてくる。きっと自身に集中力がない故なのだろうけれども。そんなこんなでいよいよ試合開始である。

1回表、近畿大会秋春連覇を狙う平安の攻撃。おっ、京都大会でも上に勝ち進まないと滅多に来ない(何せ、この秋の近畿大会も地元開催にも関わらず決勝まで全試合やって来なかった)吹奏楽部が応援してるぞ。でも、同じ応援テーマなのにちょっと迫力に欠けるのが正直悲しい。まあ、京女や東山に京都学園といった府内各校の友情応援で質的にも数的にもボリュームのある甲子園大会のそれと比べてやるのは可哀想だけど。今日は鳴り物の応援があるからいつも声が嗄れるまでアカペラで応援している控え部員達はさぞ嬉しかろうと三塁側スタンドを見てみると何かいつもと様子が違う。あのお馴染みの特大赤メガホンを誰も手に持っていない。人数分のメガホンを用意すると移動時にかさばって仕方がないからなんだろうか、今日は荷室に楽器も入れんにゃならんし(ちなみに球場横には平安学園のバスが2台だけ停まっていた)。しっかし、青々とした坊主頭の少年の集団が音楽に合わせて一心不乱に手拍子しているのは少し滑稽な風景である。そんなこんなを観察しているうちに平安が先制、なお一死満塁。さあ、選抜八強の平安が大西投手の立ち上がりを攻め込んで一気に勝負を決めてしまうか、という局面であるのだが、平安の応援スタンドはしーんとしている。おいおい、ブラバンの連中はよチャンステーマ吹いたれやー。静寂のまま、プレーは続いている。何してんねん、早く、早くぅー。そうこうしている間に後続がファーストライナーでゲッツー、チェンジという最悪の展開に。この実に幸先の良くないスタートが、この日の試合の流れを決めたような気がしてならない。

さて、春の京都大会をエースの服部くんを温存して勝ち抜いてきた平安の本日の先発は背番号12をつけた日笠くん。三番手以降といえる番号を背負っているとはいえ、やはり強豪の投手陣の一角を担っているだけあって、なかなかいいピッチャーである。初回は危なげなく相手打線を封じ込める。しかし比叡山とてれっきとした強豪校、なめられてたまるかと早くも2回に日笠投手を捉え、二死満塁。続く長尾くんもヒットを放つ。同点打で済むと思われる浅めの当たりだったが、ライトがその打球処理に手間取っている間に二塁走者まで生還してしまう。堅守の平安らしからぬプレーにより、叡高が労せず逆転。以降、平安サイドからすれば走者を出しながらも得点には至らないという嫌なムードで試合が進んで迎えた5回裏。比叡山は馬場くんが大活躍。見事なセーフティバントで出塁しチャンスメイクしたかと思えば犠打で二進した後に三盗を決め、更にチャンスを拡大。彼の頑張りが呼び水となったのか、叡高打線はそこから3連打し2点を追加。6回には二死一三塁で二盗の間にあっさり本盗を決めて1点、7回には4番石暮くんがレフトスタンドに叩き込むという効率の良い加点の仕方で6−1に点差を拡大。8回に平安は2点を返して意地を見せるも既に時遅し。結局、終始比叡山のペースで進んだ試合はそのままゲームセットを迎えた。

この試合、本気モードで必死に勝利を掴みに行った比叡山が夏に向けて戦力の底上げを重要テーマとして試合に臨んだ平安に勝っただけ、という見方も出来るだろうが、私的には少し平安はこの夏大丈夫かいな?また昨年みたいに無様な負け方するんとちゃうやろか?という不安がよぎるばかりの試合内容だった。まずは投手陣。この日は日笠くん、井上くん、芝村くんという3人の3年生投手がマウンドに上がったが、全て叡高打線に打ち込まれた。失礼な物言いだが、例年平安以上に打線の非力さでの敗戦が目立つ比叡山の打撃陣に13本ものヒットを食らっている様では、昨夏の成美みたいなチームと当たった時にはちとやばいのではないだろうか。夏の連戦を勝ち抜く為にもエース服部くんを途中できちんと休ませられる控え投手陣の存在は言うまでもなく必須だろう。加えて守り。この日はあまりにもしょうもないミスが多すぎた。6回の本盗なんて、口があんぐり状態。京都一の守備力を誇るチームがこんなことをしていては、春の甲子園出場で慢心しきっている、と批判されても仕方がないだろう。そして何よりも打撃。背番号17を付けた1年生の池田くんがこないだまで中学生とは思えない様な三塁打を打ってその存在を大きくアピールした程度で他に特筆すべき様な事は何もなし。いや、各打者が別に不振だったという訳ではない。問題は、安打数は比叡山と同じながら残塁数11という見事なまでの打線の繋がらなさっぷり。強打者が揃っていてもそれが線にならなければゲームには勝てまへん。まあ平安からすればこの日は悪いところを全て出し切った、ダメ出しするにはちょうど良い試合内容だったと言えましょうな。各自課題を克服すべく、亀岡で地獄の練習頑張ってくれい。

反対にいいところがいっぱい出ていたのが比叡山。13安打4盗塁6得点、そして甲子園八強に対して3失点、と打って投げて走ってみんな大活躍。滋賀大会準決勝でライバル近江にコールド負けを喫して以降の暗いムードが一気に吹っ飛んだのではないだろうか。特に、打たれながらも要所を締めて相手打線を封じ込めた2年生バッテリーには大きな自信が生まれただろう。来年はチームを甲子園に導いてくれるかもしれない(今年は、と書きたいけど、今シーズンの近江は恐ろしく強いしなぁ〜・ω・)。


2003年05月22日(木) 湖国で燃えろ!!春季近畿地区高校野球大会(3)

さて、私は繰り返すまでもなくずぶの野球素人。上述した様な偉そうな事を書いてはいるが、半分以上は間違っているかもしれない。だが、素人の私でもこれだけは断言できる。この第2試合、応援の差が何割かは勝敗に直結している、と。あまりにも比叡山が元気で、平安が間延びし過ぎていた。

得点圏に走者が進塁しても三塁側からは一向にチャンステーマが流れてこず、平常時の穏やかな楽曲が延々と繰り返される事が多々あった。ご存じの方ならよく判ると思うが、またこの各回の応援テーマが本当にのんびりまったりしていて攻め立てている感じが沸いてこない。昔、平安の吹奏楽部員の人間から「よう負け試合でおっさんどもからお前らの吹き方が悪いから負けたんじゃ!的な罵り方されて困る」という話を聞かされ、流石は古くから理不尽な罵倒や暴動を繰り返す平安ファンやな〜(府の高校野球史にもその種の記録が幾つか残っている)、と同情したものだが今日は少しだけその様なオールドファンの気持ちも判る様な気がした。平安を応援している時には押せ押せの雰囲気に、平安の相手チームを応援している時にはひたすら胃が痛くなる、あの独特なチャンステーマがしかる時に流れていれば、場内が独特な空気になってひょっとすれば違った試合展開になっていたのかも、という気がしないでもない。昨夏の西京極では実際にスタンドの大きな後押しが勝負そのものに影響を与えていたであろうゲームが多々見受けられた。

その様な意味で、この日の一塁側は背番号のない選手達が本当によく実際にグラウンドに立つ選手一人一人を支えていた。予想通り鳴り物こそなかったものの(何せ皇子山での夏の決勝が行われている時すらないもんなここ、というか滋賀の学校はアカペラ応援ばっかだし)、大声で迫力があり尚かつレパートリーが豊富で実に飽きの来ない応援であった。7回の攻撃時でもまだまだ新曲が出てくるのには本当に感心した。基本的にベタな応援曲と甲子園を賑わす各校の応援テーマのパクリの連続だったが、口ラッパで奏でられるジョックロックや横高応援歌はなかなか新鮮だった。しっかし、実際に試合をしている相手である平安のチャンステーマを堂々と歌ったり、アルプス一万尺に併せてライバル近江のチャンス時と全く同じ様に「勝利は近いぞ、えっ・いっ・こうっ!!」とやってるのには笑った。いいものは気兼ねなく取り入れているからこそ、応援も楽しくなるんだろう。まあ、ネット裏に陣取るおっさんの野次が少々鬱陶しくはあったけれども(余談だが、2回に大西くんに死球を当ててしまった日笠くんに対し、このおっさんが謝らんかいこのヴォケ!等とどなったところ、日笠くんが帽子を取って改めて深々と頭を下げていたのが印象的だった―そして彼はその直後に逆転打を許す)。

そんなこんなで球場を後にする。

折角ここまで来たのだから彦根城にも足を伸ばしたかったが、平安の負けっぷりに精神疲労が激しく、時間も遅いのでまたの機会にして速攻で彦根駅へ。電車全くな〜い(実際には高槻まで各駅停車の快速電車があったが、んな鈍足ライナーに乗りたくなかった)。端っこのホームから発着している近江鉄道に乗ってみようと思うもこちらも20分以上待たねばならない。突如として襲ってくる空腹感。彦根市街にはなんなと食い物屋があれども悲しいかな既に改札を通ってしまった身の上。仕方ないので停車中の長浜行きにダッシュで飛び乗り米原へ向かう。

程なく右手に新幹線の試験車両らしき3種類の電車の展示が見えてきて米原着。見慣れぬ東海方面の電車が停まっている他は何もなく、相変わらず殺風景なところである。駅前に魅力的なところはこれといってない。近畿圏と中京圏・北陸圏のジャンクションとして鉄道・道路ともに交通の要衝ではあるが、こと米原の駅前そのものに特筆すべきものはない。実際の米原町内をじっくり堪能してみたいが、歩きではちとしんどい。そうこうしている間にもますます腹が減る。平和堂の軽食コーナーで取り敢えず空腹を満たしてもいいけれど、彦根にもあったし、醍醐・宇治・城陽と家の近所にもいっぱいある。何より平和堂は好きだけれども、遠路はるばるやって来てスーパーで食事する、ってえのは侘びしすぎる。かといってホームのベンチや車内のシートで独り駅弁を貪るのも恥ずかしい。駅蕎麦が無性に食べたいが基幹駅だけに構内の規模がでかく、汽車時代の名残で恐ろしく長大なホームを少しうろついただけでは見つけられない。そうこうしているうちに、新快速が入線してきた。これの次はまた暫く時間が空くのだろう。結局、何も果たせぬまま短時間で米原を去る。尿意が催してきたので車内トイレで用を済まし(今の新快の便所って扉も排水も自動なのね)、そのままトイレのある先頭車の前部の座席に腰を下ろす。電車は快走してあっという間に再び彦根へ。ホームには人が鈴なり。さっき見た顔もある。つまり、私が米原へ往復している間に京都方面へ向かう電車はなかった訳だ。

一気に満員となった電車は西進を続ける。車内はおっさんおばはんの会話で非常にやかましい。みんな野球の話ばかりしている。車内後方であるおっさんグループが大声でこんな会話をしていた。「スケジュールに併せてわざと負ける事もある。今日はそのケースや。」と。確かに、春の甲子園行きや夏のシード権を獲得したら次の試合で適当にダラダラやって敢えて勝ちに行かないチームは全国的にあるし、修学旅行と神宮大会が重なるから地区大会でわざと負けた、と噂されたチームもある。しかし、この時期で大事なスケジュールって何なんだ?ちゃんとした野球場で行われる(平安には亀岡に立派なグラウンドがあるのであまり関係ないかもしれないが、京都は野球場の絶対数が少なく、秋春の大会も序盤は各校のグラウンドで行われる状態なので球場を使った試合は非常に貴重な機会だったりする)公式戦より大事な練習試合ってなんぞや?他地域の強豪校が関西遠征に来るのか?で、平安関係者は自らが出場しているにも関わらず近畿大会期間中にわざわざ練習試合を組んだのか?

かような疑問を感じていると、別のおっさんがこう合いの手を入れた。「そやそや、あんな相手なんてこっちが本気でやったらコールドで楽勝や。」おいおい...。確かに今日は控え投手陣が打ち込まれたのが大きな敗因やろうけど、甲子園経験メンバーで殆ど揃えた打撃陣が叡高の2年生バッテリーに抑え込まれたのは無視かいっ!!更におっさん達はこう続けた。「広陵なんて高陽東に負けて中国大会すら出られへんかったんやろ。ワシらは甲子園優勝校よりは上やっ。」………。

阪神電車の車内で一部の熱狂的・狂信的タイガースファンを見ている様だ。この人達は野球のプレーそのものよりも、自分の贔屓球団や母校の勝ち負けや優劣ただそれだけを見る為に野球場に何年、何十年も足を運んでいるのだろうか。それとも、熱狂しながらもただの興業、ただのクラブ活動、と日本型野球を一歩引いた目で見ている私が冷め過ぎているのだろうか。それでも、私は中年になってもこのスタンスで純粋に野球少年のひたむきなプレーだけを見ていたいと思う。と書きつつも、まあ欲を言えば5年に一度くらいは我が母校の後輩達に甲子園のアルプスへと連れて行って欲しいけれども...。


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