■青空文庫からダウンロードして森鷗外の短編小説を続けて読んだ。 「独身」「里芋の芽と不動の目」「追儺」「カズイスチカ」。 ダウンロードしたものはもっとある。以前。「普請中」を読んでからの課題だった。(それにしてもこれらが全部無料というのはほんとに凄いし有り難い)
それまで鴎外の短編は「百物語」を読んだくらいだったけれど、これらはそれよりも短い。 そして文章も人物もが驚くほど活き活きとしている。 続けて読んだのでそのクスリは全身に回ったようだ。 いっぺんにすきになった。
「鴎外の短編を読むべし」というのは、大好きな庄野潤三さんが、師である伊東静男から言われたことで、 それを庄野さんの「自分の羽根」に書かれていたのを読んで、追体験しようとしたのだった。 結果、「日常から物語を立ち上げよ」というまさにそういう意図だったのだと、読み終えて理解した。
ただし、伊東静男が庄野さんに最も勧めた「うた日記」はさすがの青空文庫にもなくて、 たしか岩波文庫から出ているはずなんだけれど、たぶん手に入りにくいと思うので 古本をあたるか、図書館に行くしかないようだ。 庄野さんのいたく感激したようすが「自分の羽根」に書かれている。
■日常を書く、ということで今注目しているのが文学界新人賞を受賞した楊逸さんの「ワンちゃん」である。 芥川賞の候補にもなったはずで、史上初の外国人受賞かともいわれたのではなかったのかな。 日本で暮らす中国人(ワンちゃん)の日常をかいたものだ。
この本についての書評が京都新聞に載っていて、藤井省三・東大教授によるものなのだけれど、 凄く刺激的だった。 少し引用してみる。
…思えば日中両国の文学は一世紀に渡り相互に越境してきた。 上海・満州における欧米・日本の侵略と中国人の抵抗を見て生涯のテーマに「満州問題」を選んだ夏目漱石、 その影響下で医学から文学へと転向した明治の留学生魯迅、戦後この魯迅を胸に刻印した村上春樹、 さらにポスト��時代の上海で誕生した衛彗、アニー・ベイビーら村上”チルドレン”。これまで”越境文学”は 漱石と魯迅のように国家と国家の形成に取り組み、村上やアニーのようにポストモダンにおける家族の変容を書いてきた。 ところがいま私たちの前にフッと現れたのは、歴史の創造も記憶も語ることなく、もっぱら庶民の喜怒哀楽に終始する小説である。 …
そしてこのまったく新しい越境文学の誕生として藤井氏は祝福するのだ。早く読んでみたい。 しかしこのあいだ読んだ在アメリカの中国人イーユン・リーの「千年の祈り」はすでにその先鞭をつけていた。 すばらしい短編集だった。
それにしても藤井さんの俯瞰図は凄い。しっかりとした読み込みに裏付けられた発言なのだろう。 学の浅いぼくにはとにかく刺激的な言葉が並んでいる。
■こないだからいじり倒していた詩を書き終え、ようやく投稿した。 連載は書き始めたところです。
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