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2006年03月05日(日) 人間2.0

僕らは、アーキテクトである神が想定した人間、人間1.0を超えてしまっているかもしれないな、と思う。

身体としての僕らは、神の想定を超えてはいない。
クローンだろうと、身体のサイボーグ化だろうと、それは神の想定の範囲内なのだろう。

でも、今の僕らはの脳は、神の想定外の領域に踏み出してしまっている。
人間の「個」という概念が崩壊しつつある。
かつては、精神病、と診断されたであろう「他人と自分の境界がわからない」という環境が日常化した。
意志を持った個人が集合体として、複合した世界になった。
「集合的無意識」、ではなく「集合的有意識」である。
意識をもった個と個の、P2P、P2n、n2nの関係性の混在。
このnの値が無限に肥大化し、そしてメッシュ化した。
P2P、P2n、n2nという人間の関係性は、決して新しいものではない。
太古の昔から存在したものだ。
ただnの値が無限に加速度を増しながら、巨大化している。
nに代入されるべき存在は、個である人間だけではない。
そこには、外部記憶も代入される。
メッシュ構造には、デジタルもアナログも同居している。
リアルとヴァーチャル、アトムもビットも混在して構成されている。
これらの構造は、一見複雑に見えるけれど、良く考えてみると、実はとてもシンプルだ。

集合的有意識のメッシュ構造は、ネットワークのハブとして機能している少数の個によって、ネットワーク構造が既定されはじめている。
今の個によって作られているメッシュ構造は、いびつだ。

個と個によって形成されたメッシュ構造のなかには、明らかにハブとして機能している個が存在する。
強力なハブもあれば、小さくてもきちんと機能しているハブもある。
ハブとハブの間にもネットワークは存在していて、特定のハブは、強力なハブと相互に繋がることによって、異常進化を続け、力を持ちはじめている。

それは、人間2.0の階級社会なのかもしれない。
ハブとして強く機能している個、強力なハブと繋がっている個が、人間2.0社会のエリートである。
人間2,0社会は、ディレクトリ構造ではなく、メッシュ構造であり、そこにはツリー構造の階級は存在しない。
本来の構造は恐るべきフラットな平等社会だ。

でも、世界がメッシュ構造であり、そしてそれが加速している、ということに個が気づいているかどうか、それを受け入れて生きているかどうかの違いは大きい。
メッシュ構造の世界では、個がディレクトリの上位を目指して努力することは、価値を持たない。
ハブとして強力に機能している個、他者に自分を繋げてしまえば済むからだ。

僕は、何年か前、僕の脳を通過していくトラフィックを制御できなくなった。
nの値が無限に増加し、太さ、種類の異なるnとの関係性、情報を平等に処理し、ネットワークを制御しようとした。
全てを受け入れ、制御し、処理しようとした。
そんな事は不可能だ。
僕は、ディレクトリ構造のrootを目指さず、メッシュのハブになる道を選択した。
そして、僕の脳を通り過ぎるパケットの全てを平等に処理、制御することは放棄した。
nに代入されるべき個や他者のハブ、外部記憶との関係性、Push/Pullされてくる情報を再定義して、必要なトラフィックのみを制御することにした。
n2nのメッシュネットワークのなかのハブ機能を持ったPとしての僕の再定義だ。

ハブとしての僕が破綻したとしても、メッシュネットワーク全体としては破綻しない。
僕は、ただのひとつのハブに過ぎないからだ。
僕がハブとしてダウンしたとしても、他のハブにトラフィックが流れる。
メッシュ型のネットワークは、特定のハブが強力な力を得たり、ダウンしたとしても、自律的にネットワークが機能し、他のハブへと負荷は分散される。

メッシュ構造は、何ら新しい現象でもなんでもない。
ただn2nのnの値が、人間が処理できる範囲を超えつつあるだけだ。
nのトラフィックの全てを個の脳で処理しようとするな。
処理しようとしたら脳が破綻するだけだ。

僕らはもう戻れない。
僕は、ハブとして、ネットワークを制御する気もないし、ネットワークは自律性を持っている、と信じている。
僕は、ネットワークのなかのただの一つのハブに過ぎない。
全てのトラフィックを受け入れ、処理することは、不可能だ。
メッシュ構造のなかで、ハブとしてどうサバイブしていくか。
n2nのそれぞれのnである個との繋がりの強度をどう制御、処理していくか。
個としての僕は、どこまで個を保ちつづけていけるのか、個を保ちつづける事にどこまでの価値が存在するのか。

僕らが向かっている方向は明らかだ。
でも、それをどこまで受け入れるべきか、どこから先は受け入れざるべきか。

I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes?




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