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2003年07月31日(木) テロのオプション取引と神の見えざる手

米国政府が企画していた「テロのオプション取引」を断念した。
テロを博打化するのか、との批判に屈した形だ。

「テロのオプション取引」とは、金融市場にて、特定の時期にテロが起きるか起きないかについてカネを賭ける博打の事である。
そもそものオプション取引は、テロが起きると損をする企業が、リスクヘッジのために逆張りをするために存在する。

天気や気温のオプション取引は既に有名だ。
雨が降ると損をするようなテーマパーク。
雪が降らないと営業できないスキー場。
気温が上がらないと客足が鈍るプール。
天候の不順により作物の生産高が下がる農業。
そのような企業がリスクをヘッジするために天気や気温のオプション取引を行う。

米国政府は同様のオプション取引をテロをテーマに行おうとかん考えたのである。
米国政府の狙いはテロをテーマに博打をすることではない。
テロによって損害を受ける企業を助けるためでもない。

米国政府はテロをオプション化し、オプション価格の変動により、テロの正確な予測が可能になるのではないか、との仮説を立てたのである。

僕は米国政府はとても良いところに目をつけたな、と思う。

市場にはいわゆる「神の見えざる手」が存在する。
資本主義社会のなかにおいて、市場は常に公平であり、恐るべく正確さで経済の実態を反映し、予測する。

911テロの際も、航空会社の株価が妙な動きをするなど、異常値が検出されていたのだそうだ。
きっと、テロの発生をオプション取引として博打化すれば、正確なテロの予想ができるだろう。
危機が近づくにしたがって、テロは「起きる」のほうにベットする人間が増えるだろう。
そして、参加者が増えれば増えるほど、予測値は正確性を増すはずだ。
地下に潜伏するテロリストも、米国の特殊部隊の隠密行動も金融市場を騙す事はできない。
金融市場を支配するのは人間の利己的な欲望によって形作られた「神」である。

ギャンブルの世界でも同じ事だ。
競馬や競艇のオッズは常に正確である。

参加者が増えれば増えるほど、参加者が欲にかられ貪欲になればなるほど、利己的な人間が集まれば集まるほど、マーケットやギャンブルにおけるオッズは正確さを増していく

僕は市場が、人間の欲望が、一体どこまでの正確さでテロを見抜くのかを見てみたかった。
人間のカネに対する欲望や利己主義は集団化すれば、神の力としか言いようのない力で未来を見抜く。

僕はテロのオプション取引を見てみたかった。
きっと、人間の飽くなき欲望の集合体である金融市場は,恐るべき正確性を持ってテロを予測したはずである。
とても残念である。


*8月4日追記
僕と全く逆の意見が述べられています。
まあ、これが普通の感覚でしょうね。「一般的に言って」この意見のほうが正常です。
■狂気の「テロ先物市場」を生み出したペンタゴンの精神風土
http://itpro.nikkeibp.co.jp/members/ITPro/USIT/20030803/1/




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