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2002年11月19日(火) 固定通信に未来はあるのか?(いやない)

NTTグループが初の売上高減となった。

初の売上高減なんて言ってられるのは幸せである。
米国でワールドコムが破綻したことに比べればまだまだ平和。
通信事業の地獄はこれから始まる。

どう考えてもダメなのが固定通信である。
移動通信の未来も決して明るいものではないけれど、とりわけ悲惨な未来図しか描けないのが固定通信である。

固定通信と移動通信は構造が大きく違う。
移動通信(携帯電話)は公共かつ有限の資源である電波を使う。
無線の周波数帯域には限りがあるのだ。
圧縮効率の飛躍的な向上のような技術革新がない限り、電波の有効利用には限界がある。それに対して、固定通信は光ファイバーさえ敷いていけば、いくらでも容量を増やすことができる。
技術革新など何もいらない。
土管に光ファイバーさえ埋めていけば、無限に容量は増やせる。
今後、容量あたりの固定通信価格は無限に低下する。
そのうえ、実は光ファイバーインフラは世界的に既に供給過剰なのである。

ブロードバンドの普及により、リッチコンテンツの利用はこれから爆発的に増加するだろう。
ただし、ADSLにしても光ファイバーにしても利用料金は既に固定である。
いくらトラフィックが増えようが、通信事業者の収益は増えない。
無限に増やせる資源である固定通信料金は値下がりすることはあっても値上がりすることなどあり得ない。

そのうえ、音声通話はIP化が進む。
音声通話は既に固定料金で利用中のデータ通信料金のみとなる。
音声通話収入はいずれゼロになる。
NTTの固定電話事業の収入はごくごく近い将来に半分になってしまう。

じゃあ、リッチコンテンツの配信は伸びるのか?
近い将来は当然順調に増えていくだろう。
ユーザー側は既に固定料金なので、収益源にはならないとしても、一万歩譲って配信インフラやバックボーンの需要は伸びる。

が、興味深いのはハードディスク容量の伸びである。
現時点で160GBで4万円、映像を録画するとすればMPEG2クオリティーで100時間。
とんでもないスピードでギガバイトあたりの単価は下落している。
このペースでいけば、あっという間にTUTAYAの全ビデオが自宅のPCのハードディスクに入ってしまう時代が訪れる。
コンテンツ配信の効率的なネットワーク構築のためにはコンテンツ配信サーバーはエッジ(ユーザーに近い側)にどんどん寄せていく必要があるが、究極のエッジはローカルのハードディスクなのだ。
もはやキャッシュサーバーすらいらない。
そうなれば未来のTSUTAYAで全部入りのハードディスクを借りてきて、見たぶんだけお金を払えば良いのだ。

いずれは地球上の全てのコンテンツがPCのなかに入ってしまう。
そうなれば、ブロードバンドインフラそのものがいらなくなってしまう。
配信インフラどころかビデオオンデマンドすら必要ない。
必要なのはコミュニケーションとリアルタイムの情報だけである。
自分が見るTV放送の全番組など、現在でも既にハードディスクに録画可能である。
リアルタイムのブロードキャストなんて衛星で空から一斉配信したほうが経済的な効率性は高い。
未来のスカパーのチューナーはIPマルチキャスト化してるだろうし。

ああ、恐ろしい。
NTTには施設負担金の72,000円を返せ、とか意地悪を言ってはいけない。




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